S状結腸がんは、大腸のうち、直腸の手前にあるS状結腸に発生するがんです。
S状結腸がんと診断された患者さんやご家族の中には、
「ステージによって治療法は異なるのか」
「どのような場合に手術を行うのか」
といった不安を抱える方も少なくありません。
本記事では、S状結腸がんの原因や症状、ステージ分類と治療法について解説します。手術をする場合の入院期間や治療費の目安、日常生活での注意点も紹介しますので、治療を選択する際の参考にしてください。
目次
S状結腸がんとは

S状結腸は、大腸がんが比較的多く発生する部位の一つです。2023年に公表された国のデータによると、大腸を「結腸」と「直腸」に分けた場合、がん罹患数の順位は結腸が4位、直腸が6位と報告されています(※1)。
S状結腸がんの概要
大腸は大きく、結腸と直腸の2つに分類されます(※2)。
結腸には盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸が含まれ、それに続く直腸は直腸S状部・上部直腸・下部直腸に分けられます。
大腸がんは、粘膜に生じる良性の腫瘍(ポリープ)が時間をかけて悪性化する場合と、正常に見える粘膜から直接発生する場合があります。進行すると隣接する臓器に広がったり、腹腔内に散らばったりするケースも少なくありません。血液の流れに乗って遠くの臓器(肝臓や肺など)に転移することもあります。
考えられる原因
S状結腸がんを含む大腸がんの発生には、加齢や生活習慣、環境要因が関係していると考えられています。
喫煙や過度の飲酒、運動不足、肥満は、がんのリスクを高めるため、注意が必要です。また、食事に関して、日本人における大腸がんのリスクとしてはっきりした結論はまだ出ていませんが、国際的には、赤肉・加工肉を食べ過ぎないことが推奨されています。
そのほか、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患がある場合や、家族性大腸腺腫症などの遺伝性疾患がある場合は、大腸がんになるリスクが高いとされています。
現れやすい症状
早期の大腸がんの場合、自覚症状はほとんどないとされているため、便潜血検査を定期的に行うことが重要です。
進行すると、血便や下血、便が細くなる、便秘と下痢を繰り返すなどの症状が現れます。がんが大きくなり腸が狭くなると、貧血や残便感、お腹の張りが見られることも珍しくありません。
右側大腸(盲腸から横行結腸)と左側大腸(下行結腸から直腸)では、現れやすい症状が異なります。S状結腸では、腹痛や嘔吐、血便、便が細くなるといった症状が現れやすくなります。
S状結腸がんの検査・ステージ分類
S状結腸がんが疑われる場合、まずは「がんかどうか」を確定するための精密検査が行われます。確定診断がついた後は、がんの広がりや転移の有無を確認するため、必要に応じてCT・MRI・腹部超音波(エコー)検査などを実施します。
検査結果をもとに分類されるのが、がんの進行度を示す「ステージ」です。ステージは0期からⅣ期の5つに分かれ、大腸の壁に入り込んだ深さ、リンパ節転移の程度、大腸以外の臓器・腹膜への転移の有無によって決定されます(※3)。
| ステージ | がんの状態 |
|---|---|
| 0期 | がんが粘膜内にとどまっている |
| Ⅰ期 | がんが固有筋層にとどまっている |
| Ⅱ期 | がんが固有筋層の外まで浸潤している |
| Ⅲ期 | がんがリンパ節に転移している |
| Ⅳ期 | 血行性転移(肝転移・肺転移)または腹膜播種(ふくまくはしゅ)がある |
S状結腸がんのステージ別治療法

S状結腸がんでは大腸がんの標準治療を基本とし、内視鏡治療、手術(外科治療)、抗がん剤などの薬物療法、放射線治療を実施します。
ステージⅢ期までとステージⅣ期では、治療の考え方が異なります。
ステージ0期からⅢ期の治療法
ステージ0期からⅢ期では「がんが切除できるか」が重要な判断基準となり、切除可能な場合は内視鏡治療や手術が選択されます。
0期および、粘膜下層への浸潤が1mm未満のⅠ期では、内視鏡治療が優先されます。内視鏡を用いて、大腸の内側から病変を切除する治療です。病変の大きさや部位、形などを踏まえ、ポリペクトミー(内視鏡的ポリープ切除術)、EMR(内視鏡的粘膜切除術)、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)から適切な方法を選択します。
粘膜下層への浸潤が1mm以上のⅠ期からⅢ期の場合や内視鏡治療が難しい場合、内視鏡治療後の病理検査で手術が必要と診断された場合は、手術による切除が一般的です。開腹手術(お腹を切開して行う手術)、腹腔鏡手術(お腹に小さな穴を開け、カメラで確認しながら行う手術)などから選ばれます。再発リスクの高いⅡ期またはⅢ期では、手術の後に薬物療法を行うケースもあります。
ステージⅣ期の治療法
肝臓や肺、腹膜、遠隔リンパ節への転移を伴う状態が、ステージⅣ期です。
まず、遠隔転移巣(他の臓器に転移したがん)が切除できるかどうかを評価します。原発巣(最初に発生したがん)と遠隔転移巣のいずれも切除可能な場合には、原発巣を切除したうえで遠隔転移巣の切除を検討するのが一般的です。
遠隔転移巣の切除が難しい場合は、苦痛の緩和を目的とした薬物療法や放射線治療が選択されます。一方、遠隔転移巣の切除ができなくても原発巣の切除が可能で、腸閉塞や高度な貧血といった症状がある場合には、原発巣の切除を検討することもあります。
S状結腸がんの手術|入院・治療費の目安
治療後の生活は、治療内容によって異なります。内視鏡治療であれば、比較的短期間で普段の生活に戻れることが多い一方、手術を受けた場合は一定期間の入院が必要です。薬物療法や放射線治療では、必ずしも入院を要するとは限らず、通院で実施できる場合もあります。
ここでは、手術を受ける場合の入院期間や治療費の目安、合併症リスク、日常生活上の注意点を解説します。
手術をする場合の入院期間・治療費の目安
S状結腸がんの手術では、おおむね10日から2週間程度の入院が必要となるのが一般的です。入院期間や医療費は、がんの進行度、手術方法、術後の経過によって人それぞれです。
腹腔鏡下で結腸を切除する場合、手術料は診療報酬上59,510点(10割で595,100円)で、3割負担であれば約18万円になります(※2026年8月時点)。
なお、実際の費用はこれに加え、検査や薬剤の費用、入院基本料、食事代などもかかるため、実際の自己負担額は患者さんごとに異なります。
また、年齢や所得によって高額療養費制度を利用できる場合があり、医療機関の窓口で支払う自己負担額を抑えられます。事前に手続きや条件を確認しておくと安心です。
手術による合併症や後遺症リスク
手術の影響で、出血や縫合不全(ほうごうふぜん:手術でつなぎ合わせたところがうまくつながらないこと)、腸閉塞、創部の感染などの合併症が生じる場合があります。合併症が起こった際には、状況に応じた処置を行います。
また、排尿や排便を調節する神経が障害を受け、排尿しにくくなったり、便意のコントロールが難しくなったりする場合もあります。手術後も体調の変化に注意し、経過を観察することが大切です。
日常生活上の注意点
内視鏡治療後は、経過が順調であれば、治療後1週間程度で通常の生活に戻れることが多いとされています。一方、外科手術後は、年齢や体力の影響を受けやすく、回復までに時間がかかる場合もあります。
食事はゆっくりよく噛み、食べ過ぎないことが大切です。病状によっては、食事内容に注意が必要なこともあるため、担当医や看護師、栄養士に確認しましょう。
S状結腸がんが転移・再発したときの考え方
S状結腸がんが再発しやすい部位は、肝臓、肺、腹膜、リンパ節です。初発のがんが早期であるほど再発率は低く、ステージが進むほど再発率は高くなる傾向があります(※3)。また、再発の多くは、手術後5年以内に見つかることも少なくありません。
再発した場合は、手術、薬物療法、放射線治療が選択肢となります。
再発部位によって、手術が適応となるか、薬物療法や放射線治療を選択するかが変わります。
S状結腸がんの治療に迷ったときは専門家へ相談を

S状結腸がんの治療法は、ステージによって異なります。標準治療を基本として、本人の希望や生活環境、年齢を含めた全身状態などを総合的に考慮し、担当医と相談のうえで決めることが大切です。
治療法の選択や生活について不安があれば、担当医やがん相談支援センターなどの専門家に相談しながら判断していきましょう。オンラインの無料相談窓口を活用する方法もあります。
(※1)国立研究開発法人国立がん研究センター|最新がん統計
(※2)国立研究開発法人国立がん研究センター|大腸がん(結腸がん・直腸がん)について
(※3)国立研究開発法人国立がん研究センター|大腸がん(結腸がん・直腸がん)について


















