腹膜播種、胸膜播種の治療方法

腹膜播種、胸膜播種の治療方法

竹内 規夫

がんメディカルサービス株式会社 代表取締役

毎日、腹膜播種、胸膜播種についての相談が多く来ます。
それだけその状態に対して頭を悩ませているのだと思います。

目次

腹膜播種、胸膜播種という病気ではない

よく患者様からの質問で「〇〇という治療は腹膜播種にどれくらいの効果がありますか?」、「腹膜播種によく効く治療方法を教えてください」と言う質問があります。

そもそも腹膜播種や胸膜播種というがんの種類がある訳ではないので、腹膜播種や胸膜播種によく効く治療と言われても答えに困ります。その場合は、患者様の方であまり状態を理解することが出来ていない可能性が高いので、腹膜播種や胸膜播種がどの様ながんの状態を指すのかを説明するところから始めます。

腹膜播種、胸膜播種とは

腹膜播種や胸膜播種とは、別に腹膜播種というがんがある訳ではなくて、「腹膜と言う臓器に播種状にがんが転移した状態」を指します。原発が胃がんであれば、胃がんが腹膜という膜の上に広がった状態と考えます。腹膜の上に存在していますが、胃がんということになります。

播種は種を播くという漢字を書くのですが、ちょうど机の上に種をばらまいた様なのを想像してほしいのですが、小さいがんが腹膜という臓器に無数に飛び散っている状態になります。

他臓器への転移なので、ほとんどのがん種に於いて、ステージ4の扱いになることが多いです(卵巣がんなどはステージ3)。
小さながんが無数に飛び散っている訳ですから、当然手術などでは取り切れません。なので、手術の対象にはなりません。
一つ一つのがんが小さいので通常はPET-CTなどの画像検査には映らないことが多いがんです。仮に事前の検査では腹膜播種を見つけられず、手術の途中で腹膜播種を見つけた場合、インオペと言って手術を中断して何もしないでお腹を閉じることがほとんどになります。

腹膜播種、胸膜播種の手術

前述しましたが、基本的には手術はしません。ただ、手術を行っている先生も存在しています。

良いか悪いかのご相談をよく受けるのですが、判断の難しい話になります。主治医の先生に相談しても必ずと言ってよいほど反対されると思います。予後が良くないので、弊社の方でも薦めることはないですが、反対もしていません。

そういった手術を行っている先生のところに話を聞きに行って、結局は自己責任で決めるしかありませんが、腹膜播種や胸膜播種で手術の様な局所治療でがんを全て取り切るのは不可能だと思います。なので、仮にそういった治療を行ったとしても全身治療の併用が必要になると思います。

腹膜播種、胸膜播種の治療方法

腹膜播種や胸膜播種は腹膜や胸膜へのがんの転移の状態であるということは前述致しました。

例えばすい臓がんの腹膜への転移であったり、卵巣がんの腹膜への転移ということになります。すい臓がんが腹膜に播種状に転移している訳ですから、腹膜にあるがんは腹膜播種というがんではなくてすい臓がんと考えます。卵巣がんや胃がん、大腸がんでも同じ考えになります。

なので、使う薬はすい臓がんの腹膜への転移であれば、すい臓がんの薬を使います。卵巣がんの腹膜の転移であれば卵巣がんの薬を使います。

腹膜への転移が腹膜だけに散らばっているのであればまだ良いのですが、その状態だと体全身にがんが飛び散っているだろうと考えるのが普通です。CTやPET-CTなどに映らないレベルの小さながんを含めてそう考えます。なので、肝臓や肺に転移がまだ無いと先生に言われたとしても、肝臓や肺にもすでにあるだろうと考えて治療を行います。

全身に飛んでいることを想定するわけですから、治療方法は手術や放射線の様な局所治療ではなくて、抗がん剤の様な全身治療が中心になります。

仮に保険以外の治療を検討するとしても、重粒子線や光免疫療法の様な局所治療ではなくて、遺伝子治療や免疫細胞療法の様な全身治療を検討するという話になります。

遺伝治療や免疫細胞療法が腹膜播種や胸膜播種に効くのかどうかという話になるのですが、腹膜播種や胸膜播種に効くというよりもすい臓がんや胃がんなどに効くかどうかという考えが正しいです。

すい臓がんの腹膜播種であれば、すい臓がんに効く薬であれば腹膜にがんがあろうが肺や肝臓にあろうが変わらず効くと考えます。すい臓に効くのに腹膜だけ効かないとは考えません。それは抗がん剤も同じ考えになります。
ただ、腹膜には血管がほとんど通っていないので、薬が届きにくいという欠点があります。
なので、後述しますが腹膜に直接届くように、腹水に薬を入れる方法なども存在します。

腹水や胸水が溜まってくる

腹膜や胸膜にがんが存在すると炎症などを起こして、水がお腹や胸に溜まってきます。これがお腹に溜まれば腹水、胸に溜まれば胸水と言います。

始めは月に1リットルぐらい溜まる程度ですが、進んで来ると週に6~7リットル溜まってきます。この状態になると苦しくて夜も眠れません。なので、がんは治らなくても水だけでもなんとかしたいと考える人が多いです。

水を抜けば楽になるので抜いて欲しいとなるのですが、腹水や胸水にはアルブミンというたんぱく質が大量に存在しています。元々は腹膜や胸膜の浸透圧に関係しているたんぱく質なのですが、栄養分でもあります。水を抜くとなるとこの栄養分も抜いて捨てるということになります。

この状態のがん患者様はただでさえ痩せてきているので、さらに栄養分を抜くと栄養失調が進み、寿命を縮めます。なので、なるべく水を抜きたくないという矛盾が生じてきます。

ただ、最近は栄養失調が進んだとしても苦しいよりかは良いという考えで、水を抜く傾向にあると思います。

CARTによる治療

CARTによる治療と書きましたが、がん治療ではありません。

CARTは水だけを抜いて栄養分を体に戻そうという方法になります。ただ、がんを治す訳ではないので、またすぐに水が溜まってきます。なので、定期的に必要な処理になってきます。
実際は、ある程度水が溜まるまでは使えないということと、保険では2週間に一度しか使えません。
CARTは凄く理想的に考えても現状維持が精一杯なので、がん治療は別に考える必要はあります。

抗がん剤の腹腔内投与

パクリタキセルやカルボプラチンと言った比較的分子量の大きい抗がん剤を腹水の中に直接投与するという先進医療も存在します。
パクリタキセルなどは分子量が大きいので、膜を通過しないで腹水の中にずっと留まっていることを期待して、腹膜などにずっと抗がん剤の効果を期待するという治療方法になります。

がんに直接抗がん剤を届ける訳なので、点滴で投与するよりも腹膜に存在するがん細胞に薬が届きやすいというメリットがある一方で、全身に治療が必要なのにも関わらず腹膜に対してしか効果が期待出来ないというデメリットがあります。
その上、抗がん剤なのでお腹に副作用の痛みが発生します。

がんの治療というよりも腹水を止めるということを目的とした場合は、点滴で抗がん剤を投与するよりも効果は期待出来ます。
ただ、繰り返しになりますが、全身に飛んでいるかもしれないがんに対してお腹だけ治療することになるので、効果も限定的だと考えられます。

腹膜播種、胸膜播種は何年も前に起こっている。

胃がんや大腸がんなどの手術を2年前に行ったとします。
(肺、すい臓、肝臓、卵巣、子宮などでも同じです)

術後、定期検査を3か月や半年に一度行うのですが、腹膜や胸膜へのがんは小さいので画像検査では見つけることが出来ないことがほとんどになります。

胸水や腹水が溜まっているのに気が付いて、腹膜や胸膜への再発が分かり、胸膜播種や腹膜播種と言われます。

腹膜播種や胸膜播種は手術の後に再発として出来たとは考えません。手術の前から腹膜や胸膜にがんの転移が存在していたにも関わらず、手術の時は小さすぎたので見つけることが出来なかったという風に考えます。
なので実際は手術の何年前も前から腹膜播種が存在していたはずです。

あれだけ高い確率で起きる訳なので、手術の前後にあるかもしれないことを想定して全身治療をあらかじめ行っておくのが最良の治療方法ということになります。
ただ、保険では念のために抗がん剤(全身治療)を行ってくださいと伝えても行ってくれません。保険以外で考えるしかないのですが、主治医は相談に乗ってくれません。

なので、自分で治療を探すということになるのですが、色々無理があるので弊社に相談が多いのだと思っています。

竹内 規夫

がんメディカルサービス株式会社 代表取締役

がん相談実績20,000件以上の実績を誇る、がん治療コンサルタント。
メディアにも多く取り上げられ、「産経ニュース」、「賢者グローバル」、「医療最前線」(千葉テレビ)、「AERA」(朝日新聞出版)、「FLASH」(光文社)、「現代ビジネス」(講談社)など出演多数。

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