腎臓がんとは

腎臓がん

上腹部の背中側、腰に手をあてた位置に左右に1個ずつある、そら豆の形をした臓器で大きさはにぎりこぶしよりも少し大きいくらいです。

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腎臓がんは初期の段階で症状が出ることはなく、画像診断を受けないと見つけることができない病気でもあります。早期に発見するためには定期的に画像検査を受けること、また高血圧や肥満の人、喫煙者では腎臓がんになる危険性が高いため、適切な治療やダイエット、禁煙をこころがけましょう。

腎臓がんの治療の基本は手術であり、手術方法もいくつかの選択肢があります。また、腎臓がんは抗がん剤や放射線療法の効果が期待できない病気でしたが、近年は分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤といった新しい治療も開発されています。

年々増加傾向にある腎臓がんの発生率。元気な方はどのようにすれば腎臓がんになりにくいのか、どうすれば腎臓がんを早期発見できるのかについて、腎臓がんと診断された人は腎臓がんとはどのような病気なのか、どんな検査をしてどのように治療していくのかについて、このページではそれぞれ細かく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

腎臓とは

腎臓は左右に1個ずつある、そら豆の形をした臓器で、大きさはにぎりこぶしよりも少し大きいくらいです。上腹部の背中側、腰に手をあてた位置にあります。
腎臓は血液から体に不要な物質を漉しとって尿を作るのが主な役割です。腎臓は外側から皮質、髄質があり、さらにその内側には作られた尿が通る腎盂(じんう)という空間があり、尿管そして膀胱へとつながっています。腎臓はその上にあるホルモンを作っている小さな臓器、副腎と一緒に脂肪に囲まれ、その外側はゲロタ筋膜という膜で覆われています。

腎臓には尿を作るという機能以外に、様々なホルモンを作る役割もあります。腎臓で作られるホルモンは血球を増やす、血圧を調節する、ビタミンを活性化する、骨の状態を調節するといった働きをしています。

腎臓がんの主な原因と特徴について

腎臓がんになりやすい人は年齢では50~70歳、性別は女性よりも男性に多い疾患です。
常染色体優性遺伝の疾患であるvon Hipple-Lindau病や慢性透析を行っている人は一般の人と比較して腎臓がんになりやすいことが分かっています。このような特殊な病気ではなくとも、高血圧がある人、肥満の人、喫煙者、そして4年以上NSAIDに分類される痛み止めを連用している人では腎臓がんになりやすいことが報告されています。

腎臓がんの分類や腎臓がんになりやすい人の特徴、そして腎臓がん予防の詳細については「腎臓がんになりやすい人の特徴や原因リスクについて」をご覧ください。

腎臓がんの初期症状と診断方法

腎臓がんの初期に症状が出ることはほとんどありません。腎臓がんの7割はほかの検査で偶然見つかったという報告もあります。腎臓がんは進行すれば血尿、腹部のしこり、わき腹の痛みといった症状がでることもあります。
好発年齢である50-70歳の男性は検診や人間ドックなどでも腎臓がんを念頭に置いた健康診断や人間ドックを受けましょう。腎臓がんには特異的な腫瘍マーカーはありません。体に負担の少ない検査としては尿一般検査、尿沈渣、腹部超音波検査(エコー検査)があります。腎臓がんが疑われた場合には、腹部造影CTで確定診断を行います。

腎臓がんの初期症状から診断までの流れ、検査にかかる費用についての詳細は「腎臓がんの初期症状と検査方法、検診に掛かる費用とは」で紹介しています。

腎臓がんのステージ別生存率

腎臓がんのステージとは、がん進行具合を示しており、基本的にはこのステージに分類して治療方針を決定します。ステージは1から4までがあり、数字が大きくなるほど病気のひろがりが広いことを表しています。
そのほかに腎臓がんには予後を推測するためのリスク分類が存在します。もともと腎臓の細胞は様々なホルモンを作っており、腎臓がんになるとこれらのバランスが崩れることがあります。このバランスが崩れたままだと、予後が悪いと推測されます。
生存率とは病気ごとの治療効果を表現するための数値で、一般的には5年後の生存率を表す「5年生存率」が使われています。5年生存率は100%に近いほど治療効果の高い病気ということになります。

主要な腎臓がんの種類、ステージはどのように決められるのか、そして平均余命、罹患者数や死亡数の推移、末期腎臓がんの症状やケアについては「腎臓がんのステージ別生存率と平均余命」をご覧ください。

治療と副作用

腎臓がんは抗がん剤が放射線治療が効きにくく、治療の基本は手術となります。がんの量を減らすことは病気の進行を遅らせることができると考えられているので、遠隔転移があり、転移先に対して手術ができない場合でも、腎臓の病変だけを手術で取り除くこともあります。
切除する範囲としてはがんが存在するほうの腎臓を丸ごと切除する根治的腎摘除術と、腎臓の一部だけを切除する腎部分切除術があります。
手術の方法としてはお腹を開いて行う開腹手術と、お腹に小さな穴を数カ所開けて内視鏡などを挿入して行う腹腔鏡手術、そのほかに手術支援ロボットを用いて手術もあります。
病変がとても小さかったり、全身状態が麻酔に耐えられないと判断された場合には経皮的凍結療法やラジオ波焼灼術といった病変に針を刺して治療する経皮的局所療法という方法もあります。

腎臓がんは一般的な抗がん剤や放射線療法の効果が得られにくい病気です。そのためがんをすべて取り除けない場合や、手術療法が難しい場合には分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤といった全身投与できる薬の使用を検討します。

腎臓がんの治療とその副作用の詳細については「腎臓がん治療と副作用について」をご覧ください。

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腎臓がんの治療の基本は手術療法ですが、その方法は多彩です。手術には開腹手術、腹腔鏡手術、手術支援ロボット、経皮的凍結療法、ラジオ波焼灼術などの選択肢があります。また、腎臓の切除範囲も腎臓を丸ごと取り出す根治的腎摘除術と出来る限り腎臓の機能を残す腎部分切除術があります。どのような方法でどの範囲を切除するのかは、その医者や病院の装備、技術、経験値によって異なる場合もあり、このような場合には、腎臓がんの治療経験が豊富な病院で治療を受けるほうが安心かもしれません。

どの病院で相談したらいいか、ということの1つの目安に、その病院はどのくらいの腎臓がんの患者を診ているのか、ということが参考になります。そんな時に参考になるのはDPCデータです。厚生労働省が集計しているDPCデータでは入院患者の主な病名や行った治療などが公表されており、その数で腎臓がん患者をどのくらいみているか推測することができます。

「手術数で分かる腎臓がんの名医がいる病院ランキングトップ10」では実際のランキングや数字を載せています。さらにここではその病院でどのような手術方法が選択できるかを併記しましたので、参考にしてください。

春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医