大腸がんとは

大腸がん

大腸は栄養素を吸収した後の食べ物のカスから水分を吸収して便を作る臓器です。がん全体の5年生存率は男性で59.1%、女性で66.0%です。(2006~2008)

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大腸がんになる人は年々増えており、がんで亡くなった人の最も多い原因疾患でもあります。約10人に1人が大腸がんになる時代、決して自分と無関係な病気と考えてはいけません。

大腸がんは通常40歳過ぎから発症し、年齢が上がれば上がるほど発症しやすくなります。一部は遺伝が原因のものもあります。また、食事や生活習慣を見直すことで発症の危険性を減らすことも可能です。

元気な方は、どのようにすれば大腸がんになりにくいのか、どうすれば大腸がんを早期発見できるのか、大腸がんと診断された人は大腸がんとはどのような病気なのか、どんな検査をしてどのように治療していくのかについて、このサイトではそれぞれ細かく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

大腸とは

大腸の解剖

大腸はほぼ1周お腹をぐるっと取り囲むように存在しています。右下には虫垂と呼ばれる細長い臓器がぶら下がり、その上に盲腸があります。腸の内容物はお腹の右下の位置で小腸から大腸にうつり、その後右下から右上に上がります。この部分を上行結腸とよびます、その後右上の肝臓の下で直角に折れ曲がり、お腹の上の部分を右から左に進む部分が横行結腸です。その後脾臓の近くで直角に曲がりお腹の左側を上から下に進みます。この部分を下行結腸と呼びます。その後大腸はお腹の左下でSの字のカーブを描くため、この部位をS状結腸と呼び、おへその下あたりで直腸につながって、肛門につながります。

大腸の壁は複数の層でできており、内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜と呼びます。大腸がんの多くを占める大腸腺がんは内側の粘膜から発生し、大きくなるにつれて大腸の外側、漿膜に向かって進みます。

大腸がんの主な原因と特徴について

大腸がんになる危険性を上げると報告されているのはアルコール、タバコ、運動不足、肥満、肉の摂取です。現時点では便秘は大腸がんの原因であるという証明はなされていません。

一部の大腸がんは遺伝が原因のものもあります。リンチ症候群や家族性大腸ポリポーシス(家族性大腸腺腫症)です。遺伝の場合、通常より早く大腸がんを発症する可能性があるので、若い年齢で大腸がんと診断された家族がいる場合は早めに病院を受診することが勧められます。

大腸がんの患者は40歳代から増え、高齢になるほど発症率が上がります。性別では若干男性に多い病気です。

なぜアルコールや肉の摂取が大腸がんの危険性を増やすのか、どうしたら大腸がんは予防できるのかについてより詳細に知りたい方は「大腸がんになりやすい人の特徴や原因リスクについて」をご覧ください。

大腸がんの初期症状と診断方法

大腸がんは初期にはあまり症状が出ません。がんの部位や進行度によって排便異常や腹痛、便に血がつくといった症状が現れることがあります。

大腸がんである可能性が高い人を見つける方法として現在市町村の検診で行われているのは便潜血検査です。これは便を採取するだけで体への負担がないことがメリットです。ただし、大腸の進行がんであっても便潜血検査では異常なしになることもあり、正確度の高い検査ではありません。

直接大腸の形を見ることができる検査は大腸カメラ、大腸3DCT、注腸検査があります。大腸がんの可能性がある変化が見られたら、大腸カメラで病変の一部を採取して顕微鏡で確定診断を行います。大腸がんであることが確定したら、病気のひろがり具合を判断するための検査が行われ、結果により治療方針が決まります。

大腸がんの症状や診断までの流れ、検査にかかる費用についての詳細は「大腸がんの初期症状と検査方法、検診に掛かる費用とは」で紹介しています。

大腸がんのステージ別生存率

大腸がんの病変のひろがり具合はステージとして表現されます。ステージは0から4まであり、数字が大きくなればなるほど病気のひろがりが広いことを示しています。大腸がんの場合は病変の深さ、どのリンパ節まで転移しているか、ほかの臓器に転移があるかどうかの3つを評価して分類します。

生存率とは病気ごとの治療効果を表現するための数値で、一般的には5年後の生存率を表す「5年生存率」が使われています。5年生存率は100%に近いほど治療効果の高い病気ということになります。大腸がんのステージ別5年生存率はステージ1と2で96.6%、ステージ3で72.1%、ステージ4で15.8%でした。

大腸がんのステージや平均余命、罹患者数や死亡数の推移、末期大腸がんの症状やケアについては「大腸がんのステージ別生存率と平均余命」をご覧ください。

治療と副作用

大腸がんの主な治療は手術、抗がん剤、放射線治療です。手術には内視鏡手術、腹腔鏡手術、開腹手術があります。手術の切除範囲もガイドラインで決まっており、がんの再発の危険性を極力低くしつつ、手術後の生活の支障が最低限であるように考えられています。手術の一番のメリットは、病変を体外に取り出し、その病変の病理検査を行うことで、治療がうまくいったかどうか、今後の再発の可能性はどのくらいあるかがきちんと評価できる点です。

抗がん剤は病気のひろがりが手術範囲を超えている場合に手術できる範囲まで病気を小さくする目的で行われたり、手術の結果から再発の危険性が高い場合、もしくは再発の大腸がん患者に対して行われます。手術は目に見える病変をすべて取り切る治療ですが、抗がん剤は基本的に全身に作用するため、目に見えない病変があった場合にも有効です。ただし、がん細胞以外の正常の細胞にも作用するため、副作用の危険性があります。抗がん剤として使われる薬は複数の種類があるため、それぞれの効果や副作用を理解して治療を受けることが重要です。

放射線療法は主に直腸がんに対して行われます。

大腸がんの治療や副作用の詳細については「大腸がん治療と副作用について」をご覧ください。

全国の病院ランキングトップ10

大腸がんと診断されたら、どの病院で治療を受けるか悩むかもしれません。しかし、ステージ0~3の大腸がんはガイドラインで治療方針が決まっているので、どの病院であっても勧められる治療は同じであり、わざわざ遠くの病院まで足を延ばして治療を受ける必要はほとんどありません。

ステージ4の場合、転移先の治療については病院によって治療法が異なる可能性もあるので、場合によってはセカンドオピニオンも考慮しましょう。

実際の大腸がんの患者数を比較するデータはありませんが、厚生労働省が集計しているDPCデータでは入院患者の主な病名や行った治療などが公表されており、その数で大腸がん患者をどのくらいみているか推測することができます。

そのほかに参考になるデータとして治療に入るまでの期間や入院日数、5年生存率といったものがあります。また、治療内容によって聞いておくべきポイントがあります。

詳細は「手術数で分かる大腸がんの名医がいる病院ランキングトップ10」で実際のランキングや数字を載せていますので、参考にしてください。

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参照日:2020年2月

春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医