卵巣がんとは

卵巣がん

卵巣は女性だけにある臓器で、排卵や女性ホルモンの分泌といった役割を担っています。卵巣がんについては住民健診がなく、自発的に検査を受けなければ早期発見が難しい病気です。

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卵巣は女性だけにある臓器で、排卵や女性ホルモンの分泌といった役割を担っています。卵巣がんの頻度は他のがんと比較すると少ないのですが、再発しやすいという特徴があります。また、卵巣がんについては住民健診がなく、自発的に検査を受けなければ早期発見が難しい病気です。

元気な方はどのようにすれば卵巣がんになりにくいのか、どうすれば卵巣がんを早期発見できるのかについて、卵巣がんと診断された人は卵巣がんとはどのような病気なのか、どんな検査をしてどのように治療していくのかについて、このページではそれぞれ細かく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

卵巣とは

卵巣は子宮の左右に1個ずつある、ウズラの卵くらいの大きさの臓器です。生理周期に合わせて卵子を放出したり、女性ホルモンを分泌する役割があります。

卵巣がんの主な原因と特徴について

卵巣がんは40歳代から発症が増加し、50歳代前半から60歳代前半が発症のピークとなっています。

卵巣がんの発症は原因不明なものもありますが、一部は遺伝子異常が関連したものやチョコレート嚢胞からがんが発生するものなどがあります。こういった場合には予防的に卵巣を切除することがあります。

その他に排卵回数が多い人、女性ホルモンが多い人では卵巣がんが発生しやすいと考えられています。また肥満や動物性脂肪を多く摂る人、糖尿病の人では卵巣がんになりやすかったという報告もあります。

逆に食事の見直しや睡眠時間の確保で卵巣がんの発生率を下げられる可能性がある、という報告もあります。

卵巣がんの分類やステージについて、そして卵巣がんになりやすい人の特徴や予防の詳細については「卵巣がんになりやすい人の特徴や原因リスクについて」をご覧ください。

卵巣がんの初期症状と診断方法

初期の卵巣がんで症状があることはほとんどありません。それは卵巣が広い骨盤の中にある小さな臓器であり、かつあまり周りの臓器に固定されていないため位置が変わり、大きくなってもしこりとして触れることが難しいためです。そのため卵巣がんの早期発見には自分が卵巣がんになりやすい体質かどうかを知り、適切に検査を受けることが重要です。

卵巣がんかどうかを調べる検査としては産婦人科で行われる内診と経膣エコーがあり、そのほかに補助的な検査として腫瘍マーカーや腹部超音波検査、腹部CT/MRIなどがあります。卵巣がんを目的とした住民健診はないので、人間ドックなどで自発的に検査を受ける必要があります。

卵巣がんは画像検査だけで病気の状態を正しく診断することはできないので、卵巣がんが疑われた場合には開腹手術を行い、病変を取り出して治療を行いつつ、お腹の中の状態を診断します。

卵巣がんの初期症状から診断までの流れ、検査にかかる費用についての詳細は「卵巣がんの初期症状と検査方法、検診に掛かる費用とは」で紹介しています。

卵巣がんのステージ別生存率

卵巣がんにはいくつかの細胞の種類があり、発症しやすい時期や抗がん剤の効きやすさなどが異なります。さらに病気のひろがりをあらわすステージによって治療方針も異なります。卵巣がんは1から4までのステージに分かれています。

病気の予後を示す数字としては5年生存率や平均余命があります。5年生存率は卵巣がんではない人と比較して卵巣がんの人が5年後生存している割合を表しており、100%に近いほど治療効果の得られやすい病気、ということになります。
平均余命は100人がその病気になったときに半分の50人が亡くなる時期を示したものです。

主要な卵巣がんの種類、ステージはどのように決められるのか、そして平均余命、罹患者数や死亡数の推移、末期卵巣がんの症状やケアについては「卵巣がんのステージ別生存率と平均余命」をご覧ください。

治療と副作用

卵巣がんの基本的な治療方針は手術を行ってできる限りがんを取り除いた後、根治もしくは再発予防として薬物療法を行います。

卵巣がんは手術前にどれだけ検査を行っても、いざお腹を開けてみると予想外の状態であった、ということが多い病気です。卵巣がんの手術は治療でありつつ、がんの状態を正しく把握する検査でもあるのです。

卵巣がんは再発しやすい病気なので、前もって再発しやすい臓器などもあわせて切除することがあります。基本的には両側の卵巣と卵管、そして子宮と大網(たいもう)を切除し、病変のひろがりによってはその他に転移の可能性があるリンパ節や大腸、小腸、脾臓なども切除することがあります。手術はその後の治療経過に大きな影響を与えるので重要な治療ですが、お腹の中の様々な臓器を切除すればその後の生活も大きく変化します。さらに両側の卵巣や子宮を切除すればその後妊娠をすることはできなくなります。その他に手術後更年期症状が現れることもあります。

卵巣がんに対する薬物療法では抗がん剤に加えてときには分子標的薬を使用します。卵巣がんが再発したときにも基本的には薬物療法がおこなわれます。

卵巣がんの治療とその副作用の詳細については「卵巣がん治療と副作用について」をご覧ください。

全国の病院ランキングトップ10

卵巣がんの治療において、手術はとても重要な役割を担っています。卵巣がんの手術は切除範囲が広く、またがんによる炎症の影響などでお腹の中にさまざまな癒着をきたすので、何度も手術をすることが難しく、最初の手術でできる限りのがん細胞を取り除くことが重要となってきます。時には腸や膀胱などを切除する必要があり、産婦人科だけではなく消化器外科や泌尿器科などと連携して手術をすることもあります。

そのためどの病院でどのような手術を受けるかはとても重要です。卵巣がんはお腹を開けてみたら予想と違っていた、ということがありえるので、できれば治療経験の豊富な病院で手術を受けるのが理想的です。さらには術中迅速病理診断ができる病院であればより安心です。

病院選びの際に参考になるのは、その病院でどれくらいの数の卵巣がんの手術を行っているかという情報で、厚生労働省が公表しているDPCデータなどがあります。DPCとは病名や治療ごとに決められた医療費の定額支払い制度です。卵巣がんの手術数が多い病院は症例数も多いことが予想されるので、ここでは卵巣腫瘍の手術数でランキングを作成しました。

「手術数で分かる卵巣がんの名医がいる病院ランキングトップ10」では実際のランキングや手術の数を載せています。そのほかに病院選びの際のポイントも載せましたので、参考にしてみてください。

春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医