骨・軟部腫瘍とは

骨・軟部腫瘍はその名の通り、骨腫瘍と軟部腫瘍の総称です。若い方でもなる骨肉腫は、ひと昔前は切断という選択が多くされていたため、骨肉腫=切断という認識が強いですが、現在は患肢を出来るだけ温存する手術が広く行われています。また、装具や義手・義肢の機能向上も目覚ましく、治療の選択肢は広がっています。

目次

骨・軟部とは

ヒトの体は、骨・軟部によって構成されています。軟部には筋肉や脂肪、神経などが含まれます。これら各々の器官・組織が互いに連携しあうことで、なめらかな運動を行うことが出来ます。神経は脳からの司令を筋肉に伝え、筋肉を動かすことで骨の運動が起こります。

骨・軟部腫瘍はこれらに発生した腫瘍であり、疼痛や痺れなどの症状を引き起こすこともあれば無症状のこともあります。

骨・軟部腫瘍の主な原因と特徴について

骨・軟部腫瘍は、肺がんや消化器系のがんと異なり、飲酒や喫煙といった生活習慣で引き起こされるものではないため誰にでも起こりうる腫瘍です。腫瘍によっては、好発年齢があったり、好発部位があったりします。

腫瘍と聞いて、気になるのが良性なのか悪性なのかということだと思います。

悪性腫瘍は癌(がん)と肉腫に大きく分かれます。皮膚や胃・腸の粘膜など上皮性の細胞から発生した悪性腫瘍を癌(またはがん)といいます。 一方、筋肉・線維・骨・脂肪・血管・神経など非上皮性の細胞から発生した悪性腫瘍を肉腫(サルコーマ)と呼びます。肉腫とは、骨や軟部組織(脂肪、筋肉、神経など)といった結合組織にできる悪性腫瘍の総称です。また組織による分類も様々あり、極めて多様な希少な悪性腫瘍です。

悪性骨軟部腫瘍の特徴としては、

  • 大きい(5cm以上)
  • 深在性(表在筋膜より深いところ、筋肉内や筋間などに局在するもの)
  • 増大速度が速い
  • 無痛性が多い

などの特徴があるとされています。

このあたりの内容を「骨・軟部腫瘍になりやすい人の特徴や原因リスクについて」でまとめており、また予防と早期発見のコツについても紹介しています。

骨・軟部腫瘍の初期症状と診断方法

人間ドックやがん検診では、骨・軟部腫瘍についてはカバーされていないことが大半です。そのため、症状がない骨・軟部腫瘍に関しては「いつからか分からないけど膨らみがあって、それが徐々に大きくなってきました」と言って来院される方がいます。

骨腫瘍の初期症状としては痛み、腫脹、病的骨折などがあります。軟部腫瘍の初期症状としては、発生部位によって大きく異なり基本的に無痛性のものが多いですが、血管腫や神経鞘腫、グロムス腫瘍は有痛性であることが多いです。また、悪性の軟部腫瘍が血管や神経を巻き込んだ場合にも痛みが生じます。

骨・軟部腫瘍のチェックリストを挙げておきます。

悪性骨腫瘍のチェックリスト

  • ぶつけた記憶がないのに骨の痛みが続く
  • 骨が隆起していて左右差がある
  • 長期間に渡り熱感や発赤が続く

悪性軟部腫瘍のチェックリスト

  • 大きい(5cm以上)
  • 深在性(表在筋膜より深いところ、筋肉内や筋間などに局在するもの)
  • 増大速度が速い(月単位で急速に増大)
  • 無痛

上記のような症状があれば日中の整形外科へ受診してください。

診断方法に関しては、骨腫瘍ではレントゲン検査が最初のスクリーニングとして有効です。レントゲンにて腫瘍性病変が疑われる際には、CTやMRI、骨シンチグラフィ、 FDG-PET、血液検査などの追加検査を行います。軟部腫瘍はレントゲンには映らないので、多くはMRIにて精査を行います。

それぞれの検査によってかかる費用は異なりますが、「骨・軟部腫瘍の初期症状と検査方法、検診に掛かる費用とは」でおおまかに一覧にまとめました。

「骨・軟部腫瘍の初期症状と検査方法、検診に掛かる費用とは」では、初期症状、自己診断チェック項目、検査項目、診断までの過程、検査にかかる費用をまとめています

骨・軟部腫瘍のステージ別生存率

一般に“がん”と聞くと、生命予後が気になるところです。生命予後に関わる要素としては、手術で摘出可能か、化学療法・放射線療法が効くか、遠隔転移・リンパ節転移はないか、年齢・部位・深さ・悪性度・大きさ、原発性か転移性か再発性か、といったものがあります。また、手術でとり除けたとしても寝たきりになってしまうと、長期的な生命予後は悪化します。

1970年代以前は、骨肉腫に対する治療は患肢切断による手術療法のみであり、また多くの患者は術後1年以内に肺転移をきたし5年生存率は5~10%でした。それが今では、初診時に肺転移のない骨肉腫の5年生存率は70~80%であり、大きな進歩を遂げていることが分かります。

少し細かい内容になってしまいますが、「骨・軟部腫瘍のステージ別生存率」ではステージ分類、ステージ別生存率、また末期症状とケアに関してまとめています。

治療と副作用

腫瘍の種類が分かれば、次は治療が気になるところです。骨・軟部腫瘍は多種多様であり、化学療法が無効なもの・奏功するもの、分子標的薬が有効なものなど様々です。良性かつ症状がないものに関しては経過観察となることが多く、定期的なフォローのみとなります。症状がある場合や悪性が否定できない場合には生検や手術が基本となります。

治療と副作用については詳しく、「骨・軟部腫瘍の治療について」でまとめています。

全国の病院ランキングトップ10

骨・軟部腫瘍は整形外科医のだれもが手術しているわけではなく、腫瘍という分野をサブスペシャリティーとして選択している整形外科医が行なっています。

明らかな良性腫瘍の手術に関しては一般の病院で行うこともありますが、悪性が疑われる症例や他科とのコラボレーションが必要な症例に対して手術を行える病院は限られています。そのような症例は、北海道から九州まで各主要地域にはがんセンターがあるため、基本的にはその地域の中のがんセンターへの紹介となることが多いです。

最新の平成29年度厚生労働省の”DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告について”に基づいてデータを比較したものを、「手術件数からみる骨・軟部腫瘍の病院ランキングトップ10」にまとめました。また、各病院のHPにも個々で5年生存率や平均生存期間などを公表している病院もあるため、気になる病院があればHPも確認してみてください。

日本整形外科学会骨・軟部腫瘍委員会:全国骨腫瘍登録一覧表、国立がん研究センター,東京,2013日本整形外科学会 骨・軟部腫瘍診断治療相談コーナー
日本整形外科学会認定骨・軟部腫瘍医名簿
各骨軟部腫瘍/がん研有明病院
病気がみえるvol.11 運動器・整形外科
厚生労働省 DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告について
軟部腫瘍診療ガイドライン2012
軟部腫瘍診療ガイドライン2020(仮)
小児慢性特定疾病情報センター | 骨肉腫
WHO Classification of Tumours of Soft Tissue and Bone. Fourth Edition
参照日:2020年3月

植村 元秀

医師 | 日本臨床腫瘍学会専門医/臨床遺伝専門医

大阪府生まれ。1997年(平成9年)大阪大学医学部卒業。医師免許取得後、大阪大学や大阪労災病院の泌尿器科で務める。

2006年東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターで、研究を始める。ホルモン不応性の前立腺がんにおいて高発現する新規遺伝子の同定などを行い日本泌尿器科学会総会の総会賞を受賞する。

成果を一流がん専門誌に掲載、それが認められ、アメリカのジョンズ・ホプキンズ大学に3年間、研究員として留学。
帰国後、大阪大学大学院医学部医学科で、教鞭をとりつつ研究に励む。

その後、大阪大学では、講師、准教授となり、手術などの診療のみならず、後進の指導を行うなども続ける。大阪大学での活動では大阪大学総長賞やヨーロッパなどでの学会で複数回受賞、科研を中心とした公的研究費も多くを獲得するなど、研究活動も熱心に継続。その後、さらに活動を広げるべく、名古屋大学商科大学経営大学院でMBA(経営学修士)を取得。福島県立医科大学医学部の特任教授に招致され、後進の育成や研究の幅を広げている。

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