膵臓がん末期で治った例はある?ステージⅣの生存率と治療法を解説
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膵臓がん末期で治った例はある?ステージⅣの生存率と治療法を解説

膵臓がんは初期の自覚症状が乏しく、発見された時点で進行しているケースが少なくありません。そのため「治る見込みはあるのか」「末期から回復することはあるのか」といった不安を抱かれる方もいらっしゃいます。

本記事では、膵臓がんの生存率や「治った」と言われるケースの実態、末期に現れる症状や急変のリスク、薬物療法・放射線療法・緩和ケアといった治療の選択肢について解説します。ご家族ができることや療養生活に不安がある場合の相談先についても紹介します。

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目次

膵臓がん末期(ステージⅣ)の生存率と「治った」と言われる背景

膵臓がんのステージ(病期)は、0期からⅣ期に分類されます(※1)。末期とされるのは、がんが肝臓や肺、腹膜など膵臓から離れた臓器にまで広がっている「ステージⅣ」に該当する場合です。ここでは、ステージⅣの生存率や「治った」という言葉の背景を見ていきましょう。

ステージⅣの生存率

厚生労働省の「全国がん登録 5年生存率 報告 2018」によると、膵臓がんの5年純生存率は、13.5%(男性14.0%、女性13.0%)でした(※2)。純生存率とは、対象としている病気(がん)以外による死亡がなかったとした場合に、期待される生存率のことです。ステージ別に見ると、ステージⅣ(遠隔)と診断された場合の5年生存率は2.3%と報告されており、他のがんと比較すると依然として低い水準にあります(※2)

生存率が低くなる一因として、初期段階では自覚症状が現れにくく、発見時には病状が進行しているケースが多いことが挙げられます。また、手術の難易度が高く、切除できたとしても高い確率で再発することも影響しています。しかし近年では、薬物療法の進歩に伴い、ステージⅣであっても抗がん剤治療が功を奏し、生存期間の大幅な延長につながるケースも珍しくありません。

「治った」という言葉の背景

SNSやWebサイトなどで見かける「治った」という表現は、必ずしも医学的な意味での「完治」を意味するとは限りません。多くの場合、治療によって進行が抑えられて安定している状態や、予測されていた生存期間を上回る経過が得られたケースを指しています。

再発リスクが高い膵臓がんは、治療によって病状が落ち着いた場合でも経過観察や検査を継続し、再発の有無を確認することが不可欠です。

長期生存につながる要因としては、手術で切除可能かどうか、薬物療法(化学療法)への高い治療効果や、全身状態(パフォーマンスステータス)などが挙げられます。ただし、どのような効果が得られるかは患者さんの状態によって一人ひとり異なります。

膵臓がん末期の症状と急変のリスク

膵臓がんは末期になると、さまざまな体調の変化が現れます。代表的な症状は、食欲の低下や体重減少、腹痛などです。

体重減少は、膵液(すいえき)の分泌低下による消化・吸収障害や、がんによる大腸など消化管の圧迫などが要因と考えられます。また、血糖コントロールを行うインスリンの分泌が低下し、糖尿病を発症(または急激に悪化)するケースも少なくありません。

さらに、末期では他の臓器への転移が見られ、それぞれの臓器に応じた特有の症状を引き起こします。肝臓に転移した場合は、倦怠感や黄疸、肝機能の低下などの症状が現れることがあります。

このような体調変化に伴い、胆管の閉塞による急性胆管炎や、消化管閉塞、あるいは急激な体力低下などをきっかけに、病状が短時間で悪化するケースも少なくありません。気になる症状が出た場合の連絡先や受診の目安を、あらかじめ主治医に確認しておくことが大切です。

膵臓がん末期の治療法

膵臓がんの治療法を選択する際は、「手術で切除可能かどうか」が重要な基準となります。ここでは末期の治療法について解説します。

薬物療法(化学療法)

がんが主要な血管を巻き込んで切除不能なケース、肝臓や肺など他の臓器へ転移しているケース、あるいは手術後に再発したケースでは、抗がん剤による薬物療法が行われます。がんの進行を抑え、症状を和らげる効果が期待できる治療法です。抗がん剤を単独、または複数の薬剤を組み合わせて使用します。

抗がん剤治療では、食欲不振・吐き気・倦怠感・脱毛・血小板減少・肝機能や腎機能の低下といった副作用を伴う場合もあります。副作用は薬剤ごとに異なり、症状の程度には個人差があることを理解しておきましょう。

近年は、副作用を予防する薬の開発も進んでいます。気になる症状がある場合、我慢せずに主治医や薬剤師、看護師などに相談しましょう。

放射線療法

膵臓がんの放射線治療には、2つの治療法があります。治療効果を高めるための化学放射線療法(放射線療法と抗がん剤療法を併用する治療)と、症状緩和を目的とした放射線照射です。

ステージⅣにおける治療は、主に症状の緩和を目的として行われます。例えば、激しい骨転移による痛みを軽減させるケースなどが該当します。

放射線療法でも副作用が起こる場合があり、注意が必要です。倦怠感や吐き気、嘔吐、白血球の減少といった全身的な副作用、皮膚の色素沈着や脱毛などの局所的な副作用が現れます。放射線治療が終了して半年から数年後に症状が出ることもあるため、受診の頻度については主治医の指示に従い、定期的に相談しましょう(※3)

合併症に対する治療

がんそのものへの治療に加え、合併症への対応も重要です。黄疸や発熱が見られる場合は、かかりつけの医療機関へ必ず相談しましょう。

胆管ががんによって圧迫・閉塞され黄疸が現れている場合には、胆汁の流れを改善するために「胆道ドレナージ」が行われることがあります。これは、金属製の筒やプラスチック製のチューブを用い、胆汁の通り道に留置する方法です。皮膚からアプローチする「経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)」と、内視鏡を用いて胃や十二指腸側からアプローチする「内視鏡的胆道ドレナージ」があります。

がんが広がって消化管が閉塞すると、食欲不振や栄養状態の低下を招きます。こうした症状を改善するために、十二指腸ステント術またはバイパス手術が検討されます。十二指腸ステント術は、がんによって胃や十二指腸が狭くなっていた部分に金属製の筒(ステント)を入れ、食べ物の通り道を確保する手術です。これに対し、バイパス手術では、食べ物が十二指腸に流れないよう、胃と空腸を直接つなぎ合わせる手術が行われます。

膵臓がん末期の緩和ケアと自宅療養

緩和ケアは末期だけに限定されるものではなく、がん診断時から始まります。がんの罹患による心身のつらさ、治療の副作用に対するケアをいつでも受けられるのが特徴です。経済面の不安や仕事に関する相談もできます。

がんによる痛みのコントロールも緩和ケアの一つです。痛みの程度に応じて、鎮痛剤や医療用麻薬を用いることもあります。適切な用量と管理のもとで使用すれば、痛みを迅速に和らげる非常に安全で効果的な治療法となります。

緩和ケアは、がん診療連携拠点病院などでの入院・外来のほか、訪問診療や訪問看護を利用することも可能です。自宅療養を希望する場合は、がん相談支援センターや病院の医療相談員に相談することをおすすめします。自宅療養で利用できる制度や地域の緩和ケアの情報を提供していただけるでしょう。

膵臓がん末期の余命の捉え方や家族にできること

がんの経過には年齢や全身状態、治療への反応などさまざまな要因があり、一人ひとり異なります。生存率のデータは、あくまでも統計上の目安であり、すべての方に当てはまるわけではありません。数値だけに捉われずに、今置かれている状況でご自身とご家族ができることを考える姿勢が大切です。

治療を続けるか、緩和ケア中心の療養にするかは、患者さんご自身の意思を尊重しながら、ご家族と医療従事者がともに話し合って進めていくことが望まれます。体調や希望などに応じて、途中で方針を見直すことも可能です。

悩みや不安があるときは、患者会・がん患者の家族会に参加するのも一つの手です。同じような状況にある患者さんやそのご家族の話を聞ける場を紹介していただける場合もあります。なお、病状や生活環境は人それぞれ異なるため、「自分とは違う部分もある」ということを心に留めながら参加すると良いでしょう。

膵臓がん末期の治療方針に迷ったときは専門家に相談を

ステージⅣの膵臓がんは、他のがんと比較すると5年生存率が低いのが実情です。しかし、薬物療法や放射線療法、緩和ケアなど、症状を和らげ穏やかに過ごすための選択肢はあります。

大切なのは、正確な情報をもとに、患者さんご自身とご家族が納得できる治療法や過ごし方を選択することです。判断に迷う場合は、主治医や各地域のがん相談支援センター、オンラインの無料相談窓口に相談することから始めてみてください。

(※1)国立研究開発法人国立がん研究センター|膵臓がん 治療
(※2)厚生労働省|全国がん登録 5年生存率 報告 2018
(※3)国立研究開発法人国立がん研究センター|放射線治療

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医・日本内分泌内科専門医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

プロフィール詳細

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