小児がんの原因は?注意すべき初期症状チェックリスト

小児がんの原因は?注意すべき初期症状チェックリスト

成田 亜希子

内科医

厚生労働省の「人口動態統計」によると、日本では年間で2,000人から2,500人ほどの子どもが小児がんで亡くなっています。年間で40万人近い人ががんで亡くなる大人と比べると、がんで亡くなる子どもは少ないといえますが、5歳から14歳の子どもが病気で死亡する理由の第一位は悪性新生物、つまり、がんが占めています。
参照:がん情報サービス 小児がんの患者数(がん統計)

がんの予後をよくするためには、早期発見・早期治療が何より重要です。そこで本記事では、小児がんの原因や注意すべき初期症状、小児がんの予後について解説します。

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目次

小児がんの原因は?

はじめに、小児がんの原因についてみていきましょう。小児がんとひと口にいっても、がんの種類によって考えられる原因は異なり、基本的に大人のがんとも原因は異なります。

大人のがんとは原因が違う

胃がんや大腸がん、食道がんやすい臓がんなど、大人のがんの最大の原因は老化であり、次いで多いのは生活習慣の乱れとされています。老化によってがんの細胞がつくられやすくなり、喫煙習慣や飲酒、食生活、肥満などが拍車をかけてがんに罹患してしまうのです。

一方、小児がんは老化に関係なく発症し、大人のように生活習慣に起因するものはほとんどないと考えられます。

がんの種類によって原因は異なる

小児がんの原因は、がんの種類によって原因は違います。小児がんに限らず、がんは白血病などの「血液のがん」と、臓器に悪性腫瘍ができる「固形がん」に分かれます。小児がんも血液のがんなのか、固形がんなのかによって主な原因が異なるのです。

血液のがんの原因

小児がんのうち最も発生頻度が多いのが白血病で、全体の38%を占めています。一部の白血病は遺伝子の変異などによって引き起こされることがわかっていますが、残念ながら多くの白血病の原因は未だに明らかになっていません。

リンパ球ががん化する悪性リンパ腫も同様に、原因は未だはっきりしていません。

固形がんの原因

固形がんのなかで、最も発生頻度が高いのは脳腫瘍です。脳腫瘍は150種類ほどありますが、ほとんどの種類で原因が明らかになっていません。ただ、脳腫瘍の一部である神経線維腫症は、親から子への遺伝があることがわかっています。

また、小児がんに多いがんのひとつに、骨肉腫や横紋筋肉腫などの「肉腫」があります。肉腫の多くも原因が明らかになってはいませんが、横紋筋肉腫の一部の原因は、遺伝子変異が関わっている可能性が高いことが最近の研究で明らかになっています。

注意すべき初期症状チェックリスト

子どもの発熱が続いたり、体調不良が続いたりすると、「小児がんかもしれない」と心配する方は少ないでしょう。しかし、小児がんの多くはいわゆる「風邪」のような症状しかみられないことも少なくありません。原因がはっきりわからない体調不良が続いているときは注意が必要です。ここでは、注意すべき初期症状をご紹介します。

発熱

小さな子どもはよく発熱しますが、発熱をきっかけに小児がんがみつかったという例は少なくありません。

風邪などの明らかな発熱の原因がないのに3週間ほど続く発熱を「不明熱」といいます。子どもの不明熱の原因のうち、10%ほどは小児がんといわれています。不明熱が続く場合は、早めに病院を受診しましょう。

頭痛

頭痛はほかの疾患の可能性もありますが、嘔吐を伴う頭痛は脳腫瘍の主症状のひとつとして知られています。そのほか、白血病の際にも頭痛の症状がみられることが多いです。

リンパ節の腫れ

首の周りや耳の下などのリンパ節が腫れることの原因の大半が咽頭炎や扁桃炎です。ただし、なかには小児がんによる腫れもあります。痛みを伴わないリンパ節の腫れには、特に注意してください。

骨や関節の痛み

骨や関節の痛みの原因をがんと結びつけられる人は少ないのではないでしょうか。しかし、小児がんにおいては、骨や関節の痛みはよくみられる症状で、白血病や骨肉腫に罹患したときに現れやすい症状です。

筋肉のしこり

筋肉のしこりが原因の小児がんのひとつに、横紋筋肉腫があります。筋肉のがんです。性器や尿路、膀胱、前立腺などにしこりが出現するほか、腕や脚、体幹部分に、しこりができることも少なくありません。

胸やお腹のしこり

⽩⾎病、リンパ腫、神経芽腫といった一部のがんでみられる症状が、胸やお腹にできるしこりです。しこりが大きくなることによって、息苦しさや咳、動悸のほか、進行すると腹水が溜まるなどの重い症状を伴うこともあります。

あざや鼻血

あざや鼻血の症状がみられるときに考えられるのが、白血病です。白血病により、健康な⽩⾎球が減少したり、⾎⼩板が減少したりすることで、あざや鼻血が現れます。

目の異常

脳腫瘍でよくみられるのが、目の異常です。眼球の動きがおかしい、視力の低下などが代表的な症状です。

また、網膜芽細胞腫の場合は、眼球のなかに腫瘍ができる、黒目の中心が白くみえる「白色瞳孔」の症状が現れることもあります。

小児がんの予後

我が子が万が一、小児がんにかかってしまったとしたら、気になるのは小児がんが完治する見通しではないでしょうか。ここでは、小児がんの予後について詳しくみていきましょう。

小児がんは化学療法が効きやすい

小児がんは、大人のがんより化学療法が効きやすいといわれています。それは、胃がんや肺がんなど大人のがんに多い「上皮がん」より、子どものがんに多い「血液のがん」や「肉腫」のほうが、圧倒的に化学療法が効きやすいからです。そのため、もし診断時にすでに転移があった場合でも、適切な化学療法を行っていくことで、治癒が期待できるケースも少なくありません。

さらに、小児がんのなかで最も多い白血病が医学の進歩により、以前より治りやすくなってきたことも大きいです。白血病は、化学療法の効果が低くても骨髄移植などで完治できるケースが増えています。

5年生存率は70~90%

国立がん研究センターの調査によると、小児がんの5年生存率は、70~90%であることがわかりました。小児がんの5年生存率は、がんの種類によって変動があり、最も生存率が高かったのは胚細胞腫瘍で96.6%に上っています。リンパ腫も5年生存率が高く、90.7%でした。

小児がんで最も多い、白血病も88.0%と高い5年生存率を記録しています。また、脳腫瘍の5年生存率は74.6%、神経芽腫が78.6%、骨肉腫・軟骨腫瘍は70.5%でした。

いずれの種類のがんでも大人より小児のほうが、5年生存率が高いという結果になっています。

小児がんについてまとめ

小児がんの原因や、初期症状、小児がんにかかってしまった場合の予後を解説しました。小児がんはもともと、大人のがんより化学療法が効きやすいこともあり、治りやすいとされています。さらに、医学や医療の進歩により、年々、治療成績はよくなっています。がんの種類によっては、90%以上の5年生存率があるものもあります。そのため、子どもがもし小児がんと診断されたからといっても、絶望する必要はありません。

その予後をよくするためには、大人と同じで、早期発見・早期治療が重要です。子どもの調子がおかしい、いつもと違うと感じたら、できるだけ早く病院を受診しましょう

1.がん情報サービス「小児がんの患者数(がん統計)」
https://ganjoho.jp/public/life_stage/child/patients.html
2.日本対がん協会「がんの動向」
https://www.jcancer.jp/about_cancer_and_knowledge/がんの動向#:~:text=2020年にがんで,トップになっています。
3.まきの消化器内科・外科クリニック「がんと生活習慣病」
http://www.makino-sgclinic.com/cancer/
4.Medical Note「小児がんの原因は?~白血病・脳腫瘍・胎児性腫瘍など種類によって異なる~」
https://medicalnote.jp/contents/201109-004-PU
5.済生会「小児がん(子どものがん) 」
https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/childhood_cancer/
6.再発転移がん治療情報「子どもが小児がんと診断されてもあせらないで」
https://www.akiramenai-gan.com/qol/mental_care/27682/
7.がん情報サービス「小児がんについて」
https://ganjoho.jp/public/knowledge/about_childhood.html
8.大田綜合病院「小児悪性腫瘍(がん)とは」
https://www.ohta-hp.or.jp/n_etc/80med/dep/dep10/d10_05.htm
9.MSDマニュアル家庭版「横紋筋肉腫」
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/23-小児の健康上の問題/小児がん/横紋筋肉腫
10.国立研究開発法人国立がん研究センター「小児がん治療の進歩―いま、そしてこれから」
https://ganjoho.jp/data/public/event/2008/odjrh3000000oh3j-att/20080712_1_ishida.pdf
11.がんサポート情報あきた「[小児がん・希少がん]治りやすい子どものがん」
https://www.sakigake.jp/adv/cancer/2017seminar/article_04.jsp
12.Doctor book「小児がん、7割治る時代に」
https://doctorbook.jp/contents/89
13.日本経済新聞「小児がんの5年生存率70~90% 初集計、大人より高め」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE23BRX0T21C21A2000000/
参照日:2022年3月

成田 亜希子

内科医

2011年医師免許取得。一般内科医として幅広い疾患の患者様の診療を行っている。行政機関に勤務経験もあり、がん対策にも携わってきた。プライベートでは二児の母。

プロフィール詳細

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