20代の大腸がんが世界的に増えている?注意したい危険な症状とは?

20代の大腸がんが世界的に増えている?注意したい危険な症状とは?

「20代の大腸がんが増えている」。

こんな話を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。この話は本当のことなのでしょうか。そして、本当であればなぜ20代の大腸がんが増えているのでしょうか。気になる若い方は多いでしょう。

そこで、20代の大腸がんが増えているのは本当なのかどうか、そしてどのような原因なのかをお伝えします。

若い世代ががんを早期発見する方法もお伝えしますので、同世代の方はぜひ参考にしてください。

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目次

20代の大腸がんが増えているのは本当?

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの「Increasing disparities in the age-related incidences of colon and rectal cancers in the United States, 1975-2010」*1)という研 究では若い世代の大腸がん患者が増えていることが示されています。この研究では、50歳以上の大腸がん患者は1975年から2010年の間で減少していました。

一方で、50歳未満の大腸がん患者は反対に増加の一途をたどっている傾向です。

また、2010年の発症率との比較では、2030年に20~3 歳の結腸がん患者は90.0%、直腸がん患者は124.2%増加すると予想されています。

*1)JAMA Surg. 2015 Jan;150(1):17-22

20代の大腸がんが増えている原因

それではなぜ、20代などの若い世代の大腸がん患者が増えているのでしょうか。

20代特有の大腸がんのリスクなどというものは存在するのでしょうか。

20代の大腸がんのリスク因子とは

まず考えられるのは、20代はなかなか検査に行かないということが挙げられるでしょう。

日本における大腸がん検診の推奨年齢は40歳以上の健常者です。 周りを見ても、20代で大腸がん検診を受けている方は少ないのでしょう。

また、高齢者であれば、便に血が混じっていたり、以前と比べて下痢が多くなったり、あるいは便秘が多くなったなどの排便習慣の変化があれば、多くの方はすぐに病院に行って検査をするでしょう。

しかし、20代は排便習慣の変化や多少の腹痛では病院に行って検査までしようという人は少数派でしょう。

その結果、大腸がんが見逃されてしまうことが十分考えられます。

また、発がんのリスクがあることで知られる赤い肉(牛肉や豚肉)、ハム・ソーセージなどの加工食品の摂取量が多いのも20代の大腸がんのリスク因子として挙げられます。

なぜ最近になって増えている?

20代などの若者が自身の体からの警告に無関心だったり、赤い肉やハム・ソーセージの摂取量が多かったりするのは、ここ最近になって始まったことではありません。

1980年代の若者もそうだったでしょうし、1990年代の若者も同じ傾向にあったでことしょう。

なぜ、最近になって急激に若者の大腸がん患者が増えているのでしょうか。

その原因はまだ明らかになっていません。新型コロナウイルスの感染拡大によるストレスや外出できないことによる肥満の増加などが指摘されてはいます。とはいえ、まだ20代の大腸がんが増えていることとの関連性は明らかになっていません。

20代の大腸がんの特徴と症状、危険性

20代の大腸がんが増えていることがわかりましたが、どのような症状に注意すれば良いのでしょうか。そして、大腸がんとはどのようながんなのでしょうか。20代のがんの危険性とともに見ていきましょう。

こんな症状が出たら要注意

初期の大腸がんは、症状がないことが大半ですが、進行していくとさまざまな症状が出現します。特に次のような症状が出た場合、大腸がんがかなり進行していると考えられます。

  • 下血
  • 血便
  • 便秘と下痢を繰り返す
  • 腹痛を伴う下痢
  • 便が細くなった
  • 残便感がある
  • 貧血
  • 体重減少
  • 吐き気や嘔吐
  • 背中の痛み

大腸がんの特徴

結腸や直腸、肛門にできるがんを総称して大腸がん といいます。

そのうち、日本人で多いのが、便が長く滞留するS状結腸と直腸のがんであり、日本人の大腸がん全体の約70%がS状結腸がんあるいは直腸がんです。

日本医師会のホームページによると、日本人が一生のうちに大腸がんにかかる割合は、男性がおよそ10人に1人、女性はおよそ12人に1人です。 国立研究開発法人国立がん研究センターの統計によると、全てのがんのうち、罹患数が最も多いのが大腸がんで、以下、肺がん、胃がん、乳がん、前立腺がんと続きます。

がんによる死亡数のうち、女性で最も死亡数が多く、男性では肺がんに続いて2番目に死亡数が多いのが大腸がんです。2009年から2011年の統計では、大腸がんの5年生存率は男性が72.4%、女性が70.1% となっています。

20代の大腸がんの危険性

では、20代における大腸がんの5年生存率はどうなっているのでしょうか。

残念ながら、国立研究開発法人国立がん研究センターでは、20代の部位別の5年生存率は発表していません。とはいえ、若年者の大腸がんが高齢者の大腸がんより予後が悪いという研究結果は出ています。

藤田保健衛生大学の外科医による 「40歳未満で発症した若年者大腸癌の臨床病理学的検討」*2)とい う論文には、「根治度Aの手術を施行しえても、若年群では6例(33.3%)に再発を認め、非若年群の114例(14.3%)に比べて有意に高率であった」と記載されています。根治度Aとは、「確実に癌の遺残がない」状態のことです。「確実にがんの遺残がない」にもかかわらず、再発率が非若年者より2倍以上高いことが報告されています。

また、「Stage IIIbにおいて非若年群の5年生存率52.0%に対し,若年群では0%と有意に予後不良であった」とも記載されています。Stage IIIbとは末期がんのことです。非若年群は末期の大腸がんでも半数以上の人が5年後も生存していたのに、若年者で生存者はいなかったという研究結果です。

なお、ステージ別ではない全症例の5年生存率では、若年者と非若年者との間に有意な差は報告されていません。そのため、特に若年者の大腸がんから命を守るためには、どれだけ早く見つけられるかが非常に重要なのです。

*2)日外科系連会誌 34(1):1-8,2009

20代の大腸がんの早期発見方法

それでは、どのようにすれば大腸がんを早く見つけられるのでしょうか。

大腸がんは初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。そのため、早期に発見するには検査をするしかありません。

大腸がんの代表的な検査方法は、便潜血検査、大腸内視鏡検査、大腸CT検査 の3種類です。以下から、それぞれの検査の特徴を見ていきましょう。

便潜血検査

便潜血検査は、便の中に血が混じっていないかを調べる検査です。

いわゆる検便のことです。

大腸にがんやポリープなどができると出血することがあります。出血量は微量で目に見えないため、検査をする必要があります。

大腸内視鏡検査

便潜血検査は有効な検査ですが、出血しているがんやポリープしか発見できません。

出血していないがんやポリープを発見するための検査が大腸内視鏡検査です。大腸内に内視鏡と呼ばれるカメラを挿入し、がんやポリープがないかを調べます。

大腸CT検査

大腸内視鏡検査は検査時間が長く、下剤を服用するため体への負担も大きくなります。

検査時間が短く、体の負担が軽い検査として大腸CT検査を行っている医療機関もあります。炭酸ガスを注入し、膨らませた状態の大腸をCTで撮影し、大腸内にがんやポリープの有無を撮影した3D画像を用いて確認する流れです。

ただし、大腸CT検査では、早期の大腸がんや形が平らな大腸がんは見つけることが難しい場合もあります。また、がんを疑うような症状が見つかった場合には、大腸内視鏡検査による確認が必要です。

20代の大腸がんが増えているのか【まとめ】

20代の大腸がん患者がこのところ増えているという話は本当です。

しかし、まだ何が原因かは明らかになっていません。他のがんにもいえることですが、特に若い世代の大腸がんの予後を左右するのは早期発見できるかどうかです。早期に発見して早期に治療を行えば、それだけ生存確率は上がります。

20代などの若い世代は、腹痛や下痢、便秘などの体からのサインを軽視してしまう人が少なくありません。

がんを早期発見するには、体からのサインを軽視しないことに加えて、定期的に検査を行うことが重要です。これまでがん検診に行ったことが若い世代もいるかと思うので、ぜひ受診を検討してみてはいかがでしょうか。

1.Yahoo!ニュース|20代では133%増加!? 「大腸がん」により死亡する若年層が増えていると米研究で明らかに
2.高齢者より発見が遅れがちで悪性度が高い…20代の大腸がんが「25年で3倍に急増」の背景 50歳以上の大腸がんは減っているのに、若者の罹患が増えている | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)|高齢者より発見が遅れがちで悪性度が高い…20代の大腸がんが「25年で3倍に急増」の背景 50歳以上の大腸がんは減っているのに、若者の罹患が増えている
3.PubMed|Increasing disparities in the age-related incidences of colon and rectal cancers in the United States 1975-2010
4.国立がん研究センター がん情報サービス|大腸がん検診について
5.にしやま消化器内科|大腸がんになりやすい年齢や生活習慣
6.NHK健康チャンネル|大腸がんにつながりやすい病気、なりやすい人とは?20代から発症のケースも
7.イムス総合サービスセンター|大腸がんセルフチェック
8.あなたは大丈夫?大腸がんチェック – カプセル内視鏡と大腸・小腸疾患、クローン病に関するお役立ち情報サイト【飲むだけカプセル内視鏡】|あなたは大丈夫?大腸がんチェック
9.国立がん研究センター 東病院|大腸がんについて
10.日本医師会|大腸がんとは?
11.国立がん研究センター がん統計|最新がん統計
12.地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター|院内がん登録研修会(大阪府内医療機関対象)―わが国に多いがん・比較的少ないがんの要点―参照日:2023年3月

大塚 真紀

総合内科専門医

東京大学大学院医学系研究科卒。医師、医学博士。博士号は、マウスを用いた急性腎障害に関する研究で取得。専門は、腎臓内科、透析。都内の大学病院勤務を経て、現在は夫の仕事の都合でアメリカ在住。医療関連の記事の執筆や監修、医療系動画監修、企業戦略のための医療系情報収集、医療系コンテンツ制作など幅広く行なう。保有資格:医学博士、総合内科専門医、腎臓内科専門医、透析専門医

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