前立腺がんは再発しやすい?再発を予防するにはどうすればいい?

前立腺がんは再発しやすい?再発を予防するにはどうすればいい?

前立腺がんは、骨盤の最も深いところに位置する前立腺にできるがんのことです。前立腺は男性のみに存在する臓器のため、前立腺がんは男性しかかかりません。

2019年の全国がん罹患(りかん)データによると、部位別がん罹患者数のうち男性で最も多かったのは前立腺がんで、1年間に9万4,000人以上の人が罹患しています(※1)

患者数が多いということは、再発のリスクを抱えながら日々を暮らしている人が多いということでもあります。前立腺がんの再発リスクはどれくらい高いのでしょうか。

そして、前立腺がんが再発したらどのような治療が行われるのでしょうか。再発させないための生活習慣とともに詳しくお伝えします。

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目次

前立腺がんの再発率

まずは、前立腺がんは再発リスクがどのくらい高いのかを見ていきましょう。

再発とは

再発とは、治療した後に残った小さながん細胞が再び増殖し始めることを指します。

手術で全てのがん細胞を取りきれたと思っていても、目に見えないほど小さいがん細胞が残っているケースが少なくありません。また、放射線治療や抗がん剤治療でいったん小さくなったがんが再び大きくなることもあります。このようなケースが再発です。

一方、がん細胞が最初に発生した部位や臓器から別の部位や臓器に移動して増殖することを転移といいます。転移は、肺や肝臓、脳、骨など体の至るところに起こります。前立腺がんは再発と転移のいずれの可能性もありますが、転移で特に多いのは、リンパ節と骨です(※2)

術後5年以内の再発率は25~35%

前立腺がんの術後5年以内の再発率は、25~35%と言われています。

「100人の前立腺がん患者のうち、25人から35人が術後5年以内に再発する」と聞くと、非常に多いように思えるでしょう。

しかし、その全ての人がすぐに治療を始めなければならないというわけではありません。

前立腺がんの再発は2種類に分かれる

前立腺がんの再発は、生化学的(PSA)再発と臨床的再発の2種類に分かれます(※3)

前立腺がんの再発をチェックするため、さまざまな検査が行われますが、欠かせない検査の一つが前立腺特異抗原(PSA)の測定です。前立腺がんが再発すると、PSA値が上昇しますが、この段階では多くのケースで再発部位の特定ができません(※4)

PSA再発はPSA値の上昇のみで判定されます。一方、進行が進み、画像診断や組織学的検査などで再発部位が特定できた場合に臨床的再発といいます。

PSA値の上昇から、画像診断などで再発部位が特定されるまで8年かかると言われています(※4)。そのため、高齢者に多い前立腺がんの場合、PSA再発と診断されてもがんが進行しないまま寿命を全うできるケースも少なくありません。また、PSA再発の段階で積極的な治療をすると、患者さんの生活の質(QOL)を大きく損なう恐れがあるでしょう。そのため、PSA再発の段階では経過観察をしつつ、治療をしないという選択肢が取られることもあります。

再発した前立腺がんの治療法

PSA再発の段階では、積極的な治療が行われないことも少なくありません。

しかし、前立腺がんで命を落とすリスク因子を持っている患者さんや、画像診断などで再発部位が特定できる臨床的再発の場合、積極的な二次治療が必要です。前立腺がんが再発した場合、どのような治療が行われるのでしょうか。

治療のメインは薬物療法

前立腺がんの治療方法は、監視療法、手術(外科治療)、内分泌療法(ホルモン療法)、放射線療法、化学療法です(※5)。いずれにおいても再発した場合の治療法は、治療前のがんの悪性度やステージ、PSA値の上昇速度、患者さんの年齢や状態などに応じて決められます。

例えば、手術後に局所的な臨床的再発が見られた場合、放射線療法や内分泌療法薬、抗がん剤と内分泌療法薬の併用などが検討されます。

放射線療法後に局所的な臨床的再発が見られた場合に検討されるのは内分泌療法薬、または抗がん剤と内分泌療法薬の併用です。

また、放射線療法後の再発時には、前立腺全摘除術、がん細胞を凍らせ壊死させる凍結療法、高密度焦点式超音波療法(HIFU)などの先進医療も選択肢に入ってきます。

骨転移の治療法

前立腺がんの転移で多いのが、骨への転移です(※6)。骨へ転移した患者さんの治療で重視されるのが、患者さんの生活の質(QOL)をできるだけ保つことです。

がん細胞が骨へ転移してしまうと、腰や脚に強い痛みが出るケースもあります。痛みが強い患者さんに対しては、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)やオピオイドなどの痛みを和らげる薬の投与や痛みの緩和のために、放射線療法が取り入れられることもあります。

また、がんの骨転移によって骨がもろくなり、骨折してしまう患者さんも少なくありません(※7)。その場合、ビスホスホネート製剤と抗RANKL(ランクル)抗体といった骨修飾薬を投与し、骨が過剰に壊されるのを予防します。

前立腺がんを再発させないために必要なこと

前立腺がんをはじめ、ほとんどのがんには再発リスクがあります。

現在のところ、がんの再発・転移を100%防止する方法は確立されていませんが、再発のリスクを下げることは可能です。どのような生活をすれば、前立腺がんの再発リスクを下げられるのでしょうか。

高脂肪・高コレステロールの食事は要注意

前立腺がんの罹患リスクを高めてしまう食べ物として知られているのが、動物性の高脂肪・高コレステロールの食事です。例えば、肉の脂身、ラード、牛脂、ベーコン、生クリーム、チーズ、バターなどの食材が該当します。

高脂肪・高コレステロールのいわゆる欧米型食事を摂りすぎると前立腺がんのリスクが高まってしまうことは、国立がん研究センターがん対策研究所の調査で明らかになっています(※8)

反対に、野菜や果物、イモ、大豆食品、キノコなどを含んだ食事パターンでは、前立腺がんのリスクが低下したという結果になりました(※8)

特に、大豆に含まれるイソフラボンはさまざまながんの予防効果が期待されています(※9)

がん予防のための生活習慣

国立がん研究センターを主体とする研究グループは、日本人を対象としたがん予防の研究結果を分析しました。

その結果、日本人のがん予防で重要な5つの改善可能な生活習慣を割り出しています。

それは、「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」の5つの生活習慣です。この5つに「感染」を加えた6つの要素を取り上げ、「日本人のためのがん予防法(5+1)」を定めました(※10)

禁煙をし、お酒を飲む場合は、純エタノール量換算で1日あたり23g程度(日本酒1合、ビール大瓶1本)までとしています(※10)。塩分や塩辛い食品を摂りすぎず、野菜や果物を積極的に摂り、可能な限り体を動かす時間を増やすことで適正体重を維持するといった生活習慣が、がん予防に効果的であると推奨されています。

最も重要なのは早期発見・早期治療

がんの再発リスクをゼロにはできません。しかし、再発したがんから命を守ることはできます。そのために最も重要なことは、再発したがんをできる限り早く発見し、治療に進むことです。

再発したがんをすぐに発見できた場合と、1年間放置した場合、命を守れる可能性が高いのはすぐに発見できた場合ということは言うまでもありません。

原発がんと同様、再発がんも早期発見・早期治療であればあるほど、予後は良いものになります。医師の指示を守って定期的に検査を行い、早期発見・早期治療につなげましょう。

前立腺がんの再発について【まとめ】

男性のがん患者のうち最も多いのが前立腺がんの患者であり、年間で9万4,000人以上の人が罹患しています。

前立腺がんは、再発しやすいという特徴があり、術後5年間の再発・転移率は25%から35%です。

前立腺がんは罹患数も多いため、多くの人が前立腺がんを克服したものの再発したために治療を行っています。大半のがんは再発リスクがあり、再発の可能性をゼロに抑えることはできません。しかし、定期的に検査を受け、食生活や生活習慣を見直すことで、再発のリスクを抑えることはできます。この機会に、がんが再発しにくい食生活や生活習慣に変えてみてはいかがでしょうか。

(※1)国立がん研究センター|前立腺
(※2)がん研有明病院|前立腺がん
(※3)日本泌尿器科学会|PSAが高いと言われた
(※4)九州大学医学部|早期前立腺がん 摘出後2割再発
(※5)国立がん研究センター|前立腺がん 治療
(※6)国立研究開発法人科学技術振興機構|講座 前立腺癌と放射線医学
(※7)静岡県立静岡がんセンター |がんの骨への転移と 日常生活
(※8)国立がん研究センター|食事パターンと前立腺がん罹患との関連
(※9)国立がん研究センター|大豆食品・イソフラボン摂取と前立腺がん死亡との関連について
(※10)国立がん研究センター|がんを知る301 科学的根拠に基づくがん予防
参照日:2023年 6月

吉村 友希

神戸大学大学院医学研究科バイオメディカルサイエンス専攻 薬物動態学分野。分子標的薬の副作用に関係する研究について、研究・ディスカッションに参加。大手グローバルCROにて医薬品開発職に従事。

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