食道がんの手術とは?種類・入院期間・術後の生活と治療法を解説
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食道がんの手術とは?種類・入院期間・術後の生活と治療法を解説

食道がんと診断され、医師から手術について説明を受けると、「どのような手術なのか」「入院期間はどれくらいなのか」「術後の生活はどう変わるのか」など、不安を抱く方も少なくありません。

この記事では、食道がん手術の種類や流れ、入院期間、そして術後の生活まで、わかりやすく解説します。

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目次

食道がん手術とは?どのような場合に行われる?

食道は、気管や心臓、大動脈、肺などの重要な臓器や背骨に囲まれています。

食道がんの手術では、こうした部位に生じたがん(病変)の部位と、その周囲のリンパ節を取り除く治療です。多くの場合、がんを取り除くだけでなく、胃などを引き上げて食べ物の通り道を作る「再建」も同時に行うため、非常に大がかりな手術となります。

手術は放射線治療や薬物療法と並ぶ標準治療の一つであり、がんの進行度と全身の状態を踏まえて実施の可否が判断されます。

ステージ別の治療方針の大枠は以下の通りです(※1)

  • 0期:内視鏡的切除(内視鏡でがんを切り取る治療)が標準
  • I期:手術または化学放射線療法
  • II期~III期:手術が治療の中心で、手術前に抗がん剤治療(術前化学療法)を行い、がんを小さくしてから手術に臨むのが標準

なお、内視鏡治療の適応はリンパ節転移のない病期(ステージ)0期のうち、「がんが食道全周に及んでいない場合」、または「全周に及んでいる場合でも病変の長さが5cm以下の場合」とされています(※1)

ただし、同じステージあっても、がんの広がりや転移の有無、患者さんご本人の希望や全身状態によって適した治療は異なるため、実際の方針は担当医と相談しながら決めていきます。

一方、がんが食道の壁を越えて気管や大動脈といった周辺の臓器まで広がっている場合や、重い持病などがあり手術の負担に耐えられないと判断された場合には、手術以外の治療が検討されます。

食道がん手術の種類

食道がんの手術には、複数の術式があります。ここでは、まず全体像を以下の表でまとめています。

術式身体への負担
開胸手術胸を大きく切開するため、傷が大きく身体への負担も大きい
胸腔鏡・腹腔鏡手術小さな傷でとどまるため、開胸手術と比較すると身体への負担が少ない
ロボット支援下手術胸腔鏡手術と同じく小さな傷で行えるうえ、ロボットアームの関節構造を活かした精密な操作が可能
内視鏡治療(EMR・ESD)
※外科手術とは別の治療
口から内視鏡を入れて治療を行うため、身体の表面に傷痕を残さず、食道自体を温存することが可能

開胸手術

従来から現在に至るまで、病状に応じて選択されている外科的な手術の一つです。傷が大きく身体への負担は増えるものの、直接目で確認しながら状態に応じた切除ができるというメリットがあります。

胸腔鏡・腹腔鏡手術

胸や腹部に開けた小さな穴からカメラと器具を挿入する手術です。開胸手術と比較すると小さな穴であり、身体への負担は少ないため、広く普及しています。

技術的に難しい術式ですが、専門施設であれば開胸手術と同等の治療成績が得られると報告されています。

ロボット支援下手術

医師が手術支援ロボットのアームを操作して行う、身体への負担が少ない手術です。2018年からは食道がんのロボット支援下手術が保険適用となりました(※2)。手ぶれを自動的に防止する機能により、より細やかな操作できる点が大きなメリットです。近年では、国内の主要な医療機関を中心に、年間の手術件数が増加傾向にあります。(※3)(※4)

外科手術とは異なる内視鏡治療(EMR・ESD)

内視鏡治療は、身体にメスを入れる外科治療とは異なる治療法です。口から入れた内視鏡でがんを薄く削り取る方法で、内視鏡的粘膜切除術(EMR)と内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)があります。食道を残せることが大きなメリットです。リンパ節転移のない0期の早期がんが対象で、標準治療となっています。

手術の流れ|手術時間・入院期間・費用

手術が決まると、検査や体調管理のために手術の数日前から入院するのが一般的です。手術にかかる時間は、術式やがんの広がり、身体の状態によって変わるため、担当医からの説明で確認しましょう。

術後はICU(集中治療室)などで集中的な管理を経て、術後1週間から10日ほどで水分や食事の摂取できるようになり、経過が順調なら2週間から3週間ほどで退院するのが目安とされています(※5)

ただし、食事の開始時期や退院までの期間は、術式や術後の経過によって個人差があります。医療機関によっても治療計画が異なるため、確認しておきましょう。

食道がんの手術は、原則として保険適用です。さらに、1カ月の医療費の自己負担が上限額を超えた場合は、高額療養費制度が適用されるため、経済的な負担を抑えられます(※6)。上限額は年齢や所得によって異なり、2026年8月から順次見直されているため、最新の金額は加入している健康保険の窓口で事前に確認しておくと安心です(※7)

食道がん手術の合併症・後遺症

食道の周辺には気管や反回神経(声帯の動きに関わる神経)など、重要な組織が集まっているため、手術となると身体への負担が大きくなります。ここでは、術後の合併症と後遺症について解説します。

手術後に起こりやすい合併症

胸部食道がんの手術に伴う、合併症として以下の3つが挙げられます。ここでは各合併症の詳細について見ていきましょう。

合併症症状対処法と留意点
縫合不全
(ほうごうふぜん)
食道や胃などのつなぎ目がほころび、隙間から食べ物や消化液が漏れる状態・食事を一時的に止め、点滴などを用いて栄養補給をしながら回復を待つ
・多くの場合、1週間から4週間ほどで改善するが、手術が追加されることもある(※8)
肺炎誤嚥が起きやすくなり、傷の痛みによって深い呼吸や痰を出す動作がしにくくなる・肺炎予防のために、術後の早い時期から身体を動かしつつ、積極的にリハビリテーションを受ける
・抗菌薬による治療を行っても、人工呼吸器が必要になる場合がある
嗄声
(させい)
声帯を動かす反回神経の動きが一時的に低下し、声がかすれる症状が出る・誤嚥を防ぐため、飲食物を飲み込む際は、顎(あご)を引いて飲み込むことを意識する
・通常は3カ月から6カ月程度で回復することが多い(※1)

合併症によっては入院期間が延びる場合もあるため、起こり得る合併症やその対応については、手術前に担当医から説明を受けておきましょう。

退院後に続くことがある後遺症

手術では、切除した食道の代わりに胃などを使って食べ物の通り道を再建します。

この影響によって食べ物の流れが変わり、食後に動悸(どうき)や発汗、めまいなどを伴う「ダンピング症候群」や、胃液や腸液が逆流し胸やけを感じる「逆流性食道炎」が起こりやすくなります。

いずれも食べ方の工夫や薬で対処できる場合が多いため、症状が続くときは担当医に相談しましょう。

関連記事:食道がん治療と副作用について

食道がん手術後の生活(食事・仕事復帰・飲酒)

退院後の生活で変化が大きいのは食事面です。一度にたくさん食べられなくなるため、少量ずつ回数を分け、ゆっくり、よく噛んで食べることが求められます。柔らかく煮たものや喉ごしの良いものを中心にし、パサつきのある飲食物は避けましょう。食べられる量は数カ月から年単位で徐々に戻るため、焦らず身体を慣らしていくことが大切です。

仕事への復帰時期は、回復の具合によって人それぞれです。仕事の内容やこれまでの生活について担当医に伝え、いつごろから、どの範囲までできるようになるかを確認しましょう。入院が長引くことも考えられるため、職場と早めに調整しておくと安心です。

特に患者さんが注意すべき点は、「飲酒と喫煙」です。飲酒と喫煙は食道がんを引き起こす最大の要因であり、治療後も続けてしまうと残った食道や、口・のど・胃などに別のがん(重複がん)が発生するリスクが極めて高くなります。患者さんご自身の身体を守るためにも、治療後は「禁酒・禁煙」を意識しましょう。

関連記事:食道がんの再発リスクは高い?再発予防に大切なこととは

食道がんで手術ができない場合の治療法

「手術ができない」と言われても、治療が不可能とは限りません。ここでは、手術が難しい場合に検討される治療の選択肢を紹介します。

手術ができないと判断される主な理由

手術ができない主な理由は、以下の通りです。

  • がんが気管や大動脈など周囲の臓器へ直接広がっている
  • 離れた臓器への転移が見られた
  • 年齢や持病などにより身体が手術の負担に耐えられないと判断された

該当する場合は、手術以外の方法でがんを抑える治療へと方針が切り替えられます。

手術以外の治療法

がんが周囲へと広がっているIVa期では、抗がん剤と放射線治療を組み合わせた「化学放射線療法」が標準治療として選択されます(※9)。また、遠隔転移のあるIVb期においても、症状を和らげる目的でこの治療が用いられることがあります(※9)。近年では、免疫チェックポイント阻害薬も使われるようになりました。

関連記事:食道がんのステージ別生存率と平均余命

食道がんの手術が不安なときは専門家に相談を

食道がんの手術に向けて、術式や入院期間、合併症、退院後の食事など、患者さん自身事前に確認しておきたい点がいくつかあります。詳しい説明を受けた後でも不安が残るときは、手術の目的やほかの治療法との違い、術後の生活で気になる点などを担当医に遠慮なく尋ねてみましょう。

治療方針に迷う場合は、担当医以外の専門家に意見を聞くセカンドオピニオンなどを活用するのも一つの方法です。疑問点を一つひとつ整理したうえで、治療に臨むことが大切です。

(※1)国立研究開発法人国立がん研究センター|食道がん 治療
(※2)厚生労働省|科学的な根拠に基づく医療技術の評価の在り方について
(※3)国立研究開発法人国立がん研究センター東病院|食道外科 6.診療実績
(※4)地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪急性期・総合医療センター|消化器外科ロボット食道切除症例数が100例に達しました
(※5)京都大学医学部附属病院 消化管外科|食道がんの治療
(※6)厚生労働省|高額療養費制度を利用される皆さまへ
(※7)協会けんぽ|【制度改正】令和8年8月から高額療養費制度が見直されます
(※8)特定非営利活動法人日本食道学会|手術治療
(※9)東京医科大学病院|食道がんの病期と治療

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医・日本内分泌内科専門医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

プロフィール詳細

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