がんの再建手術は乳がんや食道がんだけじゃない?さまざまながんに対して再建手術ができるって本当?

がんの再建手術は乳がんや食道がんだけじゃない?さまざまながんに対して再建手術ができるって本当?

乳がんや食道がん、胃がんの手術を受ける方の中には、術後のQOL(生活の質)の低下を危惧している方も多いと思います。

QOLの低下を抑えるための手術が「再建手術」です。できる限り元の生活を送るために再建手術が行われます。

この記事では、再建手術がどのような手術で、どのようながんに適用されるのか、さらに再建手術のメリット・デメリットを詳しくお伝えします。これから再建手術を考えている方はぜひ参考にしてください。

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目次

がんの再建手術とは

まずは、がんの再建手術とはどのような手術なのかを見ていきましょう。

手術で切り取った臓器や器官を作り直す手術

がんの再建手術とは、手術で切除した臓器や器官を新たに作り直す手術のことです。

「がんの再建手術」と聞くと、まず乳がんの乳房再建手術を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。もちろん、乳房再建手術もよく行われますが、医療や技術の進歩により、現在ではさまざまな部位の再建手術が行われるようになりました。

再建手術には2種類あり、一つは乳房の再建手術に代表される見た目の欠損を補う手術です。もう一つは、胃がんで胃の一部を切り取った後に、残った胃と十二指腸をつなげるなどの生きていく上で必要な機能を維持するための手術です。

マイクロサージャリーとは

一般的な手術は肉眼でメスなどを用いて行われますが、再建手術は目では確認しづらい細い血管やリンパ管、神経などをつなぎ合わせる手術です。そのため、再建手術ではマイクロサージャリーという手法を用いて行われます。

マイクロは「微小」、サージャリーは「外科」を意味し、手術用の顕微鏡を用いて手術が行われます。マイクロサージャリーにより、2〜3ミリの血管を縫合するということも可能になるわけです。

一方、マイクロサージャリーは手術用の顕微鏡が必要で、医師の高度な手技も不可欠なため、どこの医療機関でも再建手術が行えるというものではありません。

合併症はある?

一般の手術には合併症がつきものですが、再建手術にも合併症のリスクはあるのでしょうか。結論からいえば、再建手術で合併症が発症するリスクはあります。

乳房を自家組織移植した場合、合併症のリスクはそれほど高くありませんが、人工物による乳房再建の場合、合併症のリスクは決して小さくありません。術後10年以内に出血や血腫、細菌感染など何らかの合併症を発症する人は20%ほどといわれています。

また、食道再建手術で最も多いのが、つなぎ目がうまく治癒せずに開いてしまう縫合不全です。10〜15%ほどの割合で起こります。また、肺炎などの呼吸器合併症、食べ物がうまく飲み込めないなどの症状が出るケースも少なくありません。

がんの再建手術の種類

がんの再建手術には、乳房再建のほか、頭頚頸部再建、四肢軟骨再建などもあります。ここでは、それぞれどのような手術なのかを見ていきましょう。

乳房再建

乳房再建とは、乳がんの手術で切除した乳房を再建する手術です。手術を行う時期は切除手術と同時に行うケースと、手術後に改めて時期を見て手術を行うケースの2パターンに分かれます。がんの進行具合や患者さんの体力や要望などを加味した上で、適切な手術時期が選択されます。

手術の方法も大きく2種類に分かれます。一つが自分の体の組織を移植する自家組織移植です。もう一つが、シリコン製の人工物を大胸筋の下に入れる方法です。

頭頸部再建

脳と目を除く、首から上の全ての領域が頭頚部頸部ですが、頭頚部頸部には呼吸、食事、会話といった生活上、非常に重要なことを司る器官があります。手術でそれらの器官を取り除いたままでは、元通りの生活を送ることはできません。そのため、手術で器官を切除した場合には再建手術が行われます。

主な対象疾患は次の通りです。

  • 舌がん
  • 上顎洞がん
  • 中咽頭がん
  • 下咽頭がん
  • 喉頭がん
  • 頸部食道がん

四肢骨軟部再建

四肢骨軟部腫瘍とは、骨や筋肉、脂肪などにできる腫瘍です。悪性でも良性でも、手術によって、広範な組織欠損を伴う場合には再建手術が必要です。主に、自分の体の組織を移植する方法が取られます。主要な動脈を切除する必要があるケースでは、人工血管や静脈の血行再建術も行われます。

がんの再建術のメリット・デメリット

生きていく上で必要な機能を維持するための再建手術は、受けなければ生きていくことが難しいため、患者さんが手術を受けるかどうかを悩む余地はありません。

しかし、乳がん手術を受ける方の中には、「自分が再建手術を受けるべきか迷っている」という方も多いのではないでしょうか。

乳房の再建手術には、2通りの方法があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。乳房の再建手術を受けるかどうか、さらに手術の方法を最終的に選ぶのは患者さん本人です。メリット・デメリットをきちんと把握した上で、自分に最適な手段を選んでください。

メリット

乳房の再建手術を受けることの最大のメリットは、いうまでもなく乳房が戻ることです。女性にとって乳房をなくすことの衝撃は計り知れないほど大きなものです。

せっかくがんが完全に切除できたとしても、「自分の裸を見るのがつらい」「温泉に行けない」「人前で着替えられない」というのでは、元通りの生活に戻ったとはいえません。医療や技術の進歩によって、今では再建手術を行えば、外見に関してはほとんど元通りに戻すことも可能です。

次に、手術方法ごとのメリットを見ていきましょう。乳房再建手術には、自分の体の組織を移植する自家組織移植と、シリコン製の人工物を大胸筋の下に入れる人工物による乳房再建の2種類があります。

このうち、自家組織移植のメリットは、人工物と違って劣化したり破損したりする心配がない点です。また、触感も柔らかく、姿勢によって乳房の形が変わるなど、より実物の乳房に近づけられる点もメリットでしょう。

一方、人工物による乳房再建のメリットは、手術時間や入院期間が短く、体の負担が少ない点が挙げられます。

デメリット

乳房の再建手術を受けることのデメリットは、合併症が発生してしまうリスクがある点です。特に人工物による乳房再建は、術後10年以内に何らかの合併症が起こってしまう確率は20%程度と決して低い確率ではありません。主な合併症には、出血や血腫、細菌感染などがあります。

人工物による乳房再建のデメリットはほかにもあります。例えば、破損したり感染が生じたりした際に人工物を取り除く手術を受けなければならない点です。

一方、自家組織移植にもデメリットはあります。人工物による乳房再建の場合、手術時間は2~3時間、入院期間は2~3日です。自家組織移植の場合、手術時間は6〜12時間、入院期間は10日〜2週間程度と、人工物による乳房再建と比べると長くなり、それだけ体への負担も大きくなります。

【まとめ】がんの再建手術について

胃の一部を十二指腸とつなげるなど、生命維持に必要不可欠な再建手術の場合、患者さん本人が手術を受けるかどうかを悩む必要はありません。しかし、乳房再建などに代表される見た目の欠損を補うための再建手術を受けるかどうかを悩む患者さんは少なくありません。

手術を受けることにはメリットがある半面、合併症などのデメリットもあるため、悩むのは当然のことなのかもしれません。

再建手術を受けるか受けないか、さらに、どのような手術方法を取るのか、医師などのアドバイスはあるにしても、最終的に決めるのは患者さん本人です。メリットとデメリットをよく考えた上で、ご自身にとって最適な選択をしてください。

1. 国立がん研究センター中央病院|再建手術について」
2. 一般社団法人日本マイクロサージャリー学会|一般の方へ 整形外科の視点から
3.一般社団法人 日本頭頚部頸部癌学会|Ⅴ.頭頸部の再建術
4.Doctorbook|食道がんの再建術
5.国立がん研究センター東病院|頭頸部再建について
6.がん研有明病院|各骨軟部腫瘍
7.NHK|第8回「乳房再建のこと」
8.ワコールピンクリボン活動|乳房の形成外科医 草野太郎先生に伺いました「Q&A 乳房再建を考えている患者さんに、よく聞かれることとは?」
9.がんプラス|乳房再建、自分にあった種類・方法・タイミングの選択とは
10.東北公済病院|乳房再建とは
11.社会医療法人 大雄会|乳房再建手術
参照日:2022年11月

大塚 真紀

総合内科専門医

東京大学大学院医学系研究科卒。医師、医学博士。博士号は、マウスを用いた急性腎障害に関する研究で取得。専門は、腎臓内科、透析。都内の大学病院勤務を経て、現在は夫の仕事の都合でアメリカ在住。医療関連の記事の執筆や監修、医療系動画監修、企業戦略のための医療系情報収集、医療系コンテンツ制作など幅広く行なう。保有資格:医学博士、総合内科専門医、腎臓内科専門医、透析専門医

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