胃がんリスク検査(ABC検診)とは何?検査をすると何がわかる?

胃がんリスク検査(ABC検診)とは何?検査をすると何がわかる?

胃がんの検診と聞くと、多くの方が胃カメラやバリウムを思い浮かべるのではないでしょうか。また、「胃にカメラやバリウムを入れるのは苦しいから、できれば受けたくない」という方も多いでしょう。

そういった方はまず、新しいタイプの胃がん検診「ABC検診」を受けてみてはいかがでしょうか。

この記事では、ABC検診がどういった検診なのかという基本的なところから、ABC検診のメリット・デメリットまでお伝えします。

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目次

ABC検診とは

「ABC検診」という検診があることを初めて知った方も多いのではないでしょうか。まずは、ABC検診とはどのような検診なのかを見ていきましょう。

将来の胃がんリスクを予測する検診

ABC検診を一言でいえば、将来の胃がんの罹患リスクを予測する検診です。胃がんの罹患リスクを、ABC分類を用いて評価することから、ABC検診といわれています。

具体的には、ピロリ菌の有無を調べる検査と胃粘膜の萎縮度を調べる検査を組み合わせて、将来の胃がんの罹患リスクを判定します。

分類されるのは、「胃がんになるリスクが低い」と判定されるA群から、「胃がんになる危険性を否定できない」B群、「胃がんになる危険性がある」C群、「胃がんになる危険性が相当に高い」D群の4つです。

ピロリ菌とは

ABC検診では、ピロリ菌の有無が非常に重視されます。

それでは、ピロリ菌とはどういった菌なのでしょうか。何となく、「胃がんの原因になる菌」という印象を持っている方も多いと思いますが、その印象の通りです。

ピロリ菌の正式名称は、「ヘリコバクター・ピロリ」。ヘリコとは、「らせん」や「旋回」という意味で、バクターは「バクテリア(細菌)」を意味します。

ピロリ菌は、慢性胃炎の原因であるとともに、胃がんの原因であることが科学的に立証されています。

よく、塩分過多の食事が胃がんの原因であるとの言説を見かけると思いますが、胃がんの原因として科学的に立証されたものは、ピロリ菌以外にありません。また、ピロリ菌の除去によって、胃がんのリスクを減らせるという研究結果も出ています。

胃カメラやバリウム検査との違い

胃がんの検診で代表的なのは、胃カメラやバリウム検査です。胃カメラやバリウム検査とABC検診とでは、どのような違いがあるのでしょうか。

胃カメラとは、胃にカメラを挿入して胃の状態を確認する検査です。

バリウム検査とは、バリウム(造影剤)を飲んだ状態の胃や食道、十二指腸にX線を照射して、がんや潰瘍、ポリープなどの有無を確認するために撮影する検査です。

胃カメラやバリウム検査、いずれの検査でも、現在の胃の状態を診ることができます。

一方、ABC検診は将来の胃がんの罹患リスクを予測する検診です。

ABC検診の費用

ABC検診の費用は、おおむね3,500円から5,000円ほどです。

とはいえ、医療機関によって費用は若干異なりますので、費用が気になる方は事前に医療機関に確認しておきましょう。

なお、ABC検診でピロリ菌が見つかった場合、ピロリ菌除去には別途費用が必要になります。

ABC検診のメリット

「定期的に胃カメラを受けているからABC検診は必要ない」という方もいるのではないでしょうか。ここではABC検診のメリットを解説していきます。

体の負担と心的ストレスが少ない

ABC検診の一番のメリットは、体の負担と心的ストレスが少ない点です。胃カメラは胃にカメラを挿入するため、少なからず体への負担と心的ストレスが生じます。昨今では技術が進歩し、適切な処置や麻酔を用いればほとんど苦痛はありませんが、初めて胃カメラを受ける方の中には恐怖を覚える方もいるでしょう。

また、バリウムは検査中にゲップを我慢する必要があり、検査後に便秘になった経験がある方も多いのではないでしょうか。

その点、ABC検診は採血のみで検査が可能なため、体の負担と心的ストレスが少ない点が魅力です。

年代に関係なく受診可能

厚生労働省が推奨している胃がん検診は、胃カメラとバリウム検査ですが、どちらも40歳未満の方は対象外です。胃カメラは40歳以上、バリウム検査は50歳以上が対象年齢です。対してABC検診は、厚生労働省の推奨は40歳以上ですが、年代に関係なく受けられます。

低額で受診できる

さらに、低額で受診できる点もABC検診のメリットとして挙げられます。

前述のように、ABC検診は3,500円から5,000円ほどで受診可能です。

胃カメラは健康保険の3割負担の方で自己負担は5,000円から10,000円ほどかかります。

バリウム検査の費用は、3割負担で3,000円から5,000円ですが、対象年齢に達していない場合、保険適用されませんので、10,000円から15,000円となります。

ABC検診のデメリット

ここまでを読んでいただいた方の中には、「体や心の負担が少ないABC検診さえ受けていればよいのでは?」と思う方もいると思います。

しかし、ABC検診と胃カメラ検査、バリウム検査は目的が異なるものです。さらに、ABC検診には注意しなければならない点もあります。

胃がんかどうかは確定できない

ABC検診は、将来の胃がんの罹患リスクを予測するものです。現在、胃がんに罹患しているかどうかはABC検診ではわかりません。

そのため、ABC検診を受ける場合でも、定期的な胃カメラ検査やバリウム検査は必要です。

胃がんの早期発見にはつながらない

ABC検診は、胃カメラやバリウム検査と違って、胃の中を直接観察する検査ではありません。そのため、胃カメラやバリウム検査の場合は、ごく初期の胃がんも発見できますが、ABC検診では発見できません。

ピロリ菌が認められても将来的に胃がんになるとは限らない

ABC検診は、ピロリ菌の有無を調べる検査と胃粘膜の萎縮度を調べる検査を組み合わせたものですが、ABC検診で胃にピロリ菌が認められた場合でも、将来的に胃がんになるとは限りません。

ピロリ菌が胃にいる人の全員が将来的に胃がんに罹患するとは限らず、むしろ胃がんにかかる人は少数です。胃の萎縮の程度や年齢によっても異なりますが、ピロリ菌による胃がんの発生率は3%程度だといわれています。

正しく判定ができない可能性がある人がいる

ABC検診は、年代に関係なく受けられる検査ですが、以下の方は正しく判定ができない可能性がある点には注意してください。

  • 胃や食道、十二指腸の疾患で治療中の方
  • 過去1カ月以内に胃薬や抗菌薬を使用していた方
  • 過去に胃切除手術を受けたことがある方
  • 腎不全の方
  • 過去にピロリ菌を除去したことがある方

【まとめ】胃がんリスク検査(ABC検診)

ABC検診は血液検査だけで、将来の胃がんの罹患リスクを判定できる新しい胃がんの検査です。胃カメラやバリウム検査に比べると、体の負担や心的ストレスが少ないという特徴があります。

ただ、ABC検診はあくまで将来の胃がんの罹患リスクを判定するためのものです。現在、胃がんにかかっているかどうかを知ることはできません。

また、胃がんを早期発見することもできません。そのため、定期的に胃カメラ検査やバリウム検査を行いながら数年に一度、ABC検診を受けることをおすすめします。

さて、ABC検診で将来、胃がんのリスクが高いと判定された場合はどうしたらいいでしょうか。リスクが最も低いA群と判定された方以外は、継続的な検査が推奨されています。ABC検診で、A群以外と判定された方は、医師の指示に従って、しっかりと経過観測を行いましょう。

1.医療法人社団 丸の内クリニック|胃がんリスク検査(ABC検診)について
2.川越駅前胃腸・肛門クリニック|胃がんリスク検診(ABC検診)について
3.一般財団法人日本予防医学協会|胃がんリスク層別化検査(ABC検診)
4.大塚製薬|ピロリ菌について
5.ピロリ菌と胃がんの関係 その1〜除菌による胃がんの発生抑制〜
6.鉄鋼ビル丸の内クリニック|胃部検査(バリウム・胃カメラ・ABC検診)
7.人間ドックのミカタ|胃がん検診の受診年齢と頻度-40歳未満でも受診したほうがよい方とは?
8.人間ドックのミカタ|胃カメラの費用から検査内容まで詳しく解説! 受診時の不快感を減らすコツも紹介
9.赤坂 永沢クリニック|ピロリ菌について
参照日:2022年11月

大塚 真紀

総合内科専門医

東京大学大学院医学系研究科卒。医師、医学博士。博士号は、マウスを用いた急性腎障害に関する研究で取得。専門は、腎臓内科、透析。都内の大学病院勤務を経て、現在は夫の仕事の都合でアメリカ在住。医療関連の記事の執筆や監修、医療系動画監修、企業戦略のための医療系情報収集、医療系コンテンツ制作など幅広く行なう。保有資格:医学博士、総合内科専門医、腎臓内科専門医、透析専門医

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