悪性リンパ腫は、高齢者に多い血液のがんです。70代以降で診断された場合、「高齢でも治療を受けるべきか」「治療しない選択はあるのか」など、悩む方もいらっしゃるでしょう。
また、治療方針は、悪性リンパ腫の種類やステージ(病期)、体力や持病によって異なります。高齢であることだけを理由に、一概に治療ができないと決まるわけではありません。
本記事では、悪性リンパ腫を積極的に治療しない選択肢や治療法、高齢者における治療の考え方について詳しく解説します。
目次
悪性リンパ腫とは?
悪性リンパ腫は、血液中のリンパ球ががん化する病気です。リンパ球とは、病原体やがん細胞から身体を守る白血球の成分の一つです。免疫に関与するリンパ節や脾臓、扁桃腺などで発症しやすい傾向にあり、胃や肝臓、脳で見られる場合もあります。
日本では、人口10万人あたり年間で約30人が発症しており、血液のがんの中では最も頻度が高い病気です(※1)(※2)。
悪性リンパ腫の診断と分類
悪性リンパ腫は100以上のタイプに細分化されますが、大きく「ホジキンリンパ腫(HL)」と「非ホジキンリンパ腫(NHL)」に2つに分類されます(※3)。日本人の場合、約9割以上が非ホジキンリンパ腫です(※3)。非ホジキンリンパ腫は、B細胞リンパ腫・T細胞リンパ腫・NK細胞リンパ腫の3つに分けられます(※3)。
確定診断には、腫れているリンパ節や組織の一部を採取して顕微鏡で調べる生検が必要です。身体のどの部分まで広がっているかを調べるために、CT検査やPET-CT検査、骨髄検査などが行われます。これらの結果に基づいてステージが判断されます。
Lugano分類によるステージ
| ステージ | 病変部位 | |
|---|---|---|
| 限局期 | Ⅰ期 | 1つのリンパ節領域(またはリンパ組織)の病変 |
| Ⅱ期 | 横隔膜の同じ側にある2つ以上のリンパ節病変の集合 | |
| 進行期 | Ⅲ期 | 横隔膜の両側にある複数のリンパ節病変 |
| Ⅳ期 | リンパ節病変と非連続性のリンパ節外臓器の病変 | |
悪性リンパ腫の症状
悪性リンパ腫の代表的な症状は、首や脇の下、足の付け根などに見られるリンパ節の腫れです。ホジキンリンパ腫では首のリンパ節に、非ホジキンリンパ腫では脇の下や足の付け根などにも見られるケースがあります。痛みを伴わないケースもあるため、気づかないうちに進行していることも少なくありません。
全身に広がると、原因不明の発熱や急激な体重減少、大量の寝汗(盗汗現象)が見られる場合があり、皮膚の発疹や腫瘤(しゅりゅう)を伴うことも珍しくありません。
悪性リンパ腫は高齢での発症が多い
悪性リンパ腫は、高齢になってから発症しやすいことが示されています。国立がん研究センターの2023年の統計による「年齢階級別罹患率」は、男女とも60代後半から次第に上昇し、80歳から90歳でピークを迎えています(※1)。
高齢者に多い理由は、現時点で完全には明らかになっていません。加齢に伴う免疫機能の低下や遺伝子の変化やウイルス感染などの関与が考えられています。超高齢社会の日本では、今後の患者数増加に注意が必要です。
高齢者は悪性リンパ腫を「治療しない」選択肢もある?
悪性リンパ腫の治療における判断基準は、患者さんが治療に耐えられる身体の状態かどうかです。必ずしも積極的な治療が適しているとは限りません。治療しない選択肢が検討されるケースもあります。
積極的な治療をしない選択肢
悪性リンパ腫の治療においては、高齢を理由に治療を受けられないわけではありません。しかし、若い方と比べると、心臓・腎臓・肝臓などの働きが低下していたり、持病を抱えていたりすることが少なくありません。薬剤の副作用が強く出たり、回復に時間がかかったりするリスクも考えられます。
治療方針の決定にあたっては、身体や精神の状態なども踏まえ、総合的に判断するのが大切です。
「身の回りのことをどの程度自分でできるか」「説明についての理解力は十分か」「本人はどう過ごしたいか」といった視点で考えるのが不可欠です。医師・看護師・ソーシャルワーカーなどの医療従事者が連携して、より良い選択ができるよう支援します。
積極的な治療をしない場合の予後
治療しない場合の経過は、タイプやステージ、患者さんの身体の状態によって異なります。極めて進行が速いものから、数年単位でゆっくり進行するものまでさまざまです。進行がゆっくりで症状がほとんどなければ、すぐに治療を行わず「経過観察」となる場合があります。一方、進行が速いタイプでは、数週間から数カ月で病状が悪化するケースもあるため、個別の診断に基づいた適切な判断が不可欠です。
悪性リンパ腫全体の5年相対生存率(2009年から2011年)は、67.5%(男性66.4%、女性68.6%)と報告されています(※1)。ただし、これらは治療を行った場合も含めたデータであり、実際の経過はタイプや個々の状態によって異なります。
悪性リンパ腫の主な治療法
悪性リンパ腫の治療法は、タイプやステージ、身体の状態に応じて選択されます。主には、薬物療法・放射線療法・造血幹細胞移植・緩和ケアが挙げられます。
薬物療法(化学療法)
悪性リンパ腫の治療は、抗がん剤や分子標的薬を用いた「多剤併用療法」が基本です。ホジキンリンパ腫では、4種類の抗がん剤を組み合わせたABVD療法が標準治療です(※4)。具体的には、ドキソルビシン・ブレオマイシン・ビンブラスチン・ダカルバジンを投与します。ブレオマイシンの代わりにブレンツキシマブ ベドチンを使用するA-AVD療法が選ばれることもあります。
非ホジキンリンパ腫では、分子標的薬(リツキシマブなど)と抗がん剤を併用する「R-CHOP療法(※)」などの免疫化学療法が治療の中心です。これは、分子標的薬のリツキシマブに、3種類の抗がん剤(シクロフォスファミド・ドキソルビシン・ビンクリスチン)と、ステロイド(プレドニゾロン)を組み合わせるのが特徴です(※4)。がんのタイプ次第で、放射線、療法と併用するケースもあります。
全身状態を考慮し、薬の量を減らしたり、身体への負担が少ない薬剤を使用したりして調整します。
放射線療法
病変が一部に限定されている場合や、ゆっくり進行するタイプでは、放射線療法を単独で行うことがあります。リンパ腫を治療する目的のほか、痛みなどの症状を和らげる目的や造血幹細胞移植前の処置として行われることも少なくありません。
造血幹細胞移植
造血幹細胞移植とは、血液を作るもとになる造血幹細胞を骨髄などから採取し、患者さんに移植する治療法です。方法は2つに大別され、患者さん自身の造血幹細胞を採取・冷凍保存し、患者さんの身体に戻す「自家移植」、ドナー(提供者)からの造血幹細胞を移植する「同種移植」があります(※5)。
ただし、進行状態によっては推奨されないケースもあるため、検討される場合は医師と十分に話し合いましょう。
緩和ケア
高齢者の身体の状態やQOLを優先する場合、あえて薬物療法や放射線療法を行わない選択をすることもあります。その際は、専門病院でのケアはもちろん、在宅医療を利用して自宅で緩和ケアを受けながら過ごすことも可能です。
緩和ケアとは、痛みや息苦しさといった身体の苦痛、将来の不安やつらい気持ちを和らげるケアです。医師や看護師、ソーシャルワーカーなどがチームでサポートします。終末期に限らず、がんと診断されたときからケアを受けられるのが特徴です。
高齢者の悪性リンパ腫で治療を選択するポイント
治療方針を決めるうえで大切なのは、患者さんご本人の気持ちや希望を尊重することです。認知機能が低下していても、周囲が価値観を押し付けるのではなく、本人が理解できるよう丁寧に説明し、意思を確かめる必要があります。
近年は「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」も注目されています。人生会議とは、もしものときのために、どのような医療やケアを望むかについて、家族や医療チームと話し合う取り組みのことです。あらかじめ話し合っておくことで、治療を選択する際の道しるべとなるでしょう。
悪性リンパ腫の治療に迷ったときは専門家へ相談を
高齢者の悪性リンパ腫でも、治療を受けられるケースは十分にあります。しかし、見通しや治療に伴う副作用を考慮すると、どの治療を選べば良いか迷うこともあるかもしれません。お悩みの際は、医療機関でのサポートを受けることが大切です。
全国のがん診療連携拠点病院にある「がん相談支援センター」では、治療や生活全般について相談できます。オンラインでの無料相談窓口もあるため、専門家のサポートを活用するのも方法です。
(※1)国立研究開発法人国立がん研究センター|悪性リンパ腫
(※2)国立研究開発法人国立がん研究センター 希少がんセンター|悪性リンパ腫(あくせいりんぱしゅ)
(※3)国立研究開発法人国立がん研究センター|リンパ腫の原因・症状について
(※4)国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院|リンパ腫の治療について
(※5)国立研究開発法人国立がん研究センター|造血幹細胞移植とは
















