がんがリンパに転移するというのはどういうことか

がんがリンパに転移するというのはどういうことか

「リンパ」という言葉を聞いたことはありますか。リンパマッサージや風邪でリンパ腺が腫れた、などとよく言ったりしますね。

がん治療では、この「リンパ」がとても重要です。なぜならがんはリンパにも転移し、それがステージや治療、再発などに関わってくるからです。

転移と聞いただけで、状況は悪そう…と想像してしまいますが、その通り。リンパ転移は、がん進行のバロメーターとなるのです。

これをお読みの方の中にはがんと診断され、リンパ節転移があると言われた方やそのご家族がいらっしゃるかもしれません。大きなショックをお受けになっていると思いますが、治療にあたって、今の状態を的確に捉えることは必要です。

さらに後半はいくつかのがんにおいて、リンパ節転移が進行や治療にどのように影響を及ぼすかについてご説明しますので、この記事を今後の治療の参考にしていただきたいと思います。

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目次

リンパって何?

まず初めにリンパとは何でしょうか。

体内には血管の他に「リンパ管」というものがあります。血管と同じように、網の目状に全身に分布していて、筋肉の動きを利用して不要になった老廃物やウイルスを静脈へと流すなど、体内における下水道のような役割をしています。

そして、そのリンパ管のところどころに存在する大豆くらいの大きさの節を「リンパ節」といいます。リンパ節は、無数の毛細リンパ管が合流して太くなっている部分のことで、全身に約800個あり、その中でも首、足の付け根、腕の付け根に多く存在しています。

所属リンパ節とは

がん治療という点でみると「所属リンパ節」というものが重要です。

所属リンパ節とは、がんが発生した臓器から直結しているリンパ管からできているリンパ節の集まりのことで、簡単に言うと臓器の周囲を囲んでいるリンパ節のことです。

所属リンパ節転移とステージ

がんは細胞分裂を繰り返して数が増え、発生した臓器が手狭になると他の場所へ移動しようとします。その際に、その臓器の周囲に取り巻くように存在しているリンパ管と所属リンパ節に移って移動してゆきます。リンパ管とリンパ節を移動の手段として使うわけです。

がんが、リンパ管をつたって所属リンパ節に移動してしまうことを、リンパ(節)転移といい、がんによってはリンパ節転移の有無、個数でステージが変わるなど、リンパ節転移はがんの進行を量る大切な目安となります

リンパ節では何が起こってる?

リンパ節は異物をせき止める関所のような働きをしているので、がんの一部はリンパ節で免疫細胞という、体にとって悪いものを攻撃する細胞に攻撃されて死にますが、免疫細胞が殺しきれなかった(敵と判断できなかった)がん細胞はそこで生き続けることになります。

そして、それらがリンパ節で増殖し、リンパ管をつたってさらに別のリンパ節へ移動してゆきます。

リンパ管は最終的に血管と合流しますので、血流にのって別の臓器へ侵入してしまいます。ですので、先ほどご説明したように、リンパ節転移は近い将来、他臓器転移を引き起こしやすいと考えられています。

リンパ節の転移の有無が予後や治療法を決める大きな目印となるのはこの為です。

治療からみるリンパ節転移

最後にリンパ節転移がどのように治療に影響するのか見てゆきましょう。今回は乳がん・悪性リンパ腫・食道がんを例に挙げましたが、その他多くのがんで

共通するリンパ節転移の原則は

  1. リンパ節転移はがんの広がりを示す目安となる。(リンパ節転移の有無でステージが変わる、したがって治療法も変わる)
  2. リンパ管は他の臓器にがんが移る経路なので、転移が確認されればリンパ節を含めて手術で切除する、あるいは予防的に切除する

と言ったことが挙げられます。

例1 乳がん

乳がんの場合、わきの下にあるセンチネルリンパ節がポイントです。

センチネルリンパ節は、わきの下にあるリンパ節(腋窩リンパ節)の中でがんが他の臓器に転移するときに、最初にたどり着く場所です。それゆえ、手術前に腋窩リンパ節に明らかに転移があると診断されたときは、リンパ節を切除して、個数や大きさを調べ、その後行う抗がん剤の参考にしたり、再発を防ぐ目的で切除します。

触診や画像検査で腋窩リンパ節への転移がなさそうなら、術前、あるいは術中に必要に応じてセンチネルリンパ節生検を行い、転移の有無を顕微鏡で調べます。

さらに、術後の放射線は、切除後の胸壁や周辺のリンパ節からの再発を防ぐために行われます。腋窩リンパ節に転移があった人はがん細胞を根絶やしにするために放射線をあてます。

リンパ節を切除したり、放射線をあてることによって、痛みやしびれや浮腫などの後遺症が現れることが難点ですが、全身に転移しやすい乳がんにおいては、センチネルリンパ節に対する治療が大切なポイントとなるのです。

例2 悪性リンパ腫

悪性リンパ腫は血液のがんの一つです。リンパ腫という言葉通り、リンパに腫瘍をつくることが特徴です。

骨の中にある骨髄でリンパ球ががん化し、リンパ管を通じて全身にばらまかれます。そして、それらがリンパ節に集まって腫れるため、しこりやこぶを作ります。

そのため、首やわきの下、足の付け根などのリンパ節が多く集まっているところの腫れ、痛みのないしこりがきっかけで異変に気づく人も多いのです。

しかし、悪性リンパ腫は胃や腸、皮膚などリンパ節以外にも発生する可能性がありますので注意が必要です。さらに急な体重減少やひどい寝汗などの症状も悪性リンパ腫の症状の一つです。

悪性リンパ腫に起こりやすい症状は他の疾病でも見られることが多く、自分では判断ができません。最終的に、リンパ節やしこりを採取して顕微鏡で詳しく見ることでしか確定診断には至りませんので、気になる症状があったら早めに病院を受診しましょう。

悪性リンパ腫のステージや治療法はリンパ節の腫れや広がりだけではなく、リンパ腫のタイプによって変わります。いずれも治療は抗がん剤と放射線がメインとなり、比較的どちらも悪性リンパ腫によく効きます。

例3 食道がん

食道がんは転移・再発率が高いがんの一つです。比較的早期から、がんが食道の外へ散らばってしまうためステージ1でもおよそ半分が再発すると言われています。それは、食道という臓器の構造に理由があります。

食道には、漿膜(しょうまく)という、胃や腸にある一番外側の丈夫な膜がありません。そのため、がんの通り道であるリンパ管や血管までがんが到達しやすく、がんが拡散されやすいという特徴があります。

さらに悪いことに、食道は肺や大動脈といった臓器と隣り合った場所にあるので、そういった理由でも他臓器にがんが移ってしまいやすいのです。

食道がんの手術には、内視鏡というカメラでの手術と開胸・開腹手術の二種類ありますが、どちらもがんが広がっている場合は、転移しているリンパ節の切除と転移予防のためリンパ節郭清を行います。

また、リンパ節転移が確認される場合は術後に抗がん剤を追加し、さらなる再発予防を行います。

食道がんは、リンパ節転移の有無がキーポイントとなります。早期発見・早期治療を行うことが他のがんより一層大切ながんだと言えるでしょう。

リンパ節に転移するよりも早くがんを見つけることが重要

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今回ご説明したように、リンパ節やリンパ管にがんが入り込んでしまうことが、さらなるがんの進行と再発を招くことに繋がります。とは言え、がんがリンパまで届かないようにする方法、などといったものは残念ながらありません。

私たちにできることは、そもそもがんにならないよう生活習慣に気を付けることと、早めにがんを発見することぐらいでしょうか。心もとない手段かと思われるかもしれませんが、現代人にとっては意識しないとできないことだと思います。

今回はリンパ転移についてご説明してきました。この記事をがんに関する知識として、また今後の治療などに活用していただけたら幸いです。

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