大腸がんと直腸がんの違いはどこにある?それぞれの治療法や生存率を解説

大腸がんと直腸がんの違いはどこにある?それぞれの治療法や生存率を解説

日本では男女合わせて年間で約15万人以上の方が罹患(りかん)し、約5万人以上の方が命を落としている大腸がん (※1)。決して珍しい病気ではないため、自分が大腸がんと診断された、あるいは身近な方に大腸がん患者がいるという方も少なくないと思います。

大腸がんの一種に直腸がんがありますが、この記事では、大腸がんと直腸がんの違いやそれぞれの発症原因、治療方法など大腸がんと直腸がんに関して深掘りしてお伝えします。

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目次

大腸がんと直腸がんにおける発症の仕組みについて

そもそも大腸がんと直腸がんの違いはどこにあるのでしょうか。まずはそれぞれのがんの発症の仕組みについて詳しく見ていきましょう。

大腸がんの発症部位

出典:国立がん研究センターがん情報サービス|大腸がん(結腸がん・直腸がん)について

大腸がんとは、大腸に発生するがんの総称です。

大腸とは、小腸を取り囲むように存在する管状の臓器で、口から摂取した食べ物の最後の通り道です。食事で摂取した水分やミネラルを吸収し、不要なものを便として作り、肛門から排泄する役割があります。

大腸の全長は1.5メートルから2メートルにおよび、直腸と結腸にわけられます(※2)つまり、直腸や結腸に発生するがんは大腸がんの一種といえるわけです。結腸は上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸があります。そこに直腸があり肛門につながっていくわけです。

直腸がんの発症部位

直腸がんの発症部位は、直腸です。大腸のうち肛門に近い部分を直腸、肛門から遠い部分のことを結腸といいます。

直腸は、肛門の直前に位置するほぼまっすぐの臓器で、長さは15センチから20センチほどです(※3)。 直腸はさらに、直腸S状部、上部直腸、下部直腸の3種類に分類されます(※4)

大腸がんと直腸がんの主な原因について

がんは、リスク要因が特定されているがんと、原因不明のがんに分類されますが、大腸がんと直腸がんはリスク要因がほぼ特定されているがんとして知られています。ここでは、大腸がんと直腸がんのリスク要因について詳しく見ていきましょう。

大腸がんと直腸がんのリスク要因

大腸がんと直腸がんのリスク要因は共通しています。大腸がんと直腸がんのリスクを上げる要因としてまず挙げられるのは、欧米式の食生活です。

従来の日本の一般的な食事の中心は、穀物、野菜、根菜、果物といった食物繊維の豊富な食材でした。これらの食材には、ビタミンCやカロテノイド、葉酸、フラボノイドといったがん抑制作用があると考えられる栄養素が多く含まれています。

しかし、食生活が欧米化し、赤身肉や加工肉といった発がんリスクが高いとされる食品の摂取量が増加するようになりました。さらに、発がん促進作用のある二次胆汁酸 の生成を高めるといわれている動物性脂肪の摂取量も年々増えています(※5)

国立がん研究センターが公表している統計情報によると、2000年から2020年の20年間で大腸がんによる死亡数は1.5倍に拡大しているのです(※6)

さらに、アルコール摂取や喫煙、運動不足、体重増加なども大腸がんや直腸がんのリスクを高める要因として考えられています(※7)。なお、これらの要因は、大腸がんや直腸がんだけではなく、大半のがんや生活習慣病のリスク要因と考えられています。

大腸がんと直腸がんにおける症状の違い

直腸がんは大腸がんの一種 ですが、両者の症状に違いはあるのでしょうか。大腸がんと直腸がんの主な症状を比較してみましょう。

大腸がんの主な症状

大腸がんの主な症状は、血便や便秘、下痢、腹痛 です。とはいえ、早期の大腸がんでは症状が現れないケースが多く、症状が現れたときには進行していたということも少なくありません。

大腸がんの中でも結腸がんが進行すると、腹部のしこりや下血、下血による貧血、全身の倦怠感などの症状が現れることもあります。さらに、下行結腸がんやS状結腸がんが進行すると、腹痛や腸閉塞などの症状が出現することもあります。

直腸がんの主な症状

直腸がんも大腸がんと同様、初期の場合は自覚症状がほぼ現れないのが一般的であり、進行すると出現する症状として最も多いのが血便です。

比較的鮮血に近い状態で発見されることが多くなります。さらに、便が細くなる、排便した後も残便感があるなどの症状が現れることもあるでしょう。

大腸がんと直腸がんの生存率

大腸がんや直腸がんと診断された方が最も気になることの一つとして、どれくらいの確率で治るのかではないでしょうか。ここでは、大腸がんと直腸がんの5年生存率を見ていきましょう。

なお、大腸がん、直腸がんともに一般的には数カ月から数年かけてステージが進行する、比較的進行スピードが緩やかながんとして知られています。

大腸がんの生存率

国立がん研究センターのがん統計によると、大腸がんのステージⅠ期の5年生存率はネット・サバイバル(「がんのみが死因となる状況」を仮定して計算する純生存率)で、92.3%、ステージⅡ期は85.5%、ステージⅢ期は75.5%、ステージⅣ期は18.3%でした(※8)

直腸がんの生存率

国立がん研究センターのがん統計によると、直腸がんのステージⅠ期の5年生存率はネット・サバイバルで92.7%、ステージⅡ期で85.0%、ステージⅢ期で74.4%、ステージⅣ期は23.1%でした(※9)

大腸がんと直腸がんの治療法

がんと診断された方の中には、これからどのような治療が行われるのか知っておきたいという方もいるでしょう。大腸がんと直腸がん、それぞれの治療法を見ていきましょう。

大腸がんの治療法

大腸がんの治療方針は、ステージごとに細かくわかれています。

ステージⅠの大腸がんの中でも、リンパ節の転移がなく、がんが大腸の粘膜内にとどまっているがんや、粘膜下層に浸潤しているがんのうち浸潤の程度が低いものについては、内視鏡治療が検討されます。

一方、同じステージⅠ期の大腸がんでも粘膜下層の奥深くまで浸潤しているがんや、浸潤度合いが浅くても大きくて内視鏡治療が難しいがんの治療で行われるのは手術療法です。

ステージⅡ期、Ⅲ期の大腸がんに対しては、基本的に手術療法が第一選択肢となります。リンパ節転移がある場合には、大腸の切除に加えて、周辺リンパ節の全切除も行います。

ステージIV期の大腸がんとは、肝臓や肺への転移や腹膜への播種(=がん細胞がこぼれた状態になる、それが種まきのようにバラバラと広がること)が認められた大腸がんのことです。

ステージⅣ期の大腸がんについては、大腸のがん(原発巣)とほかの臓器に転移したがん(転移巣)の両方を安全に切除できる場合は手術によって切除します。原発巣と転移巣の切除が難しい場合、手術は行わず、薬物治療と放射線治療を組み合わせた治療が行われるのが一般的です。

直腸がんの治療法

ステージⅢ期までの直腸がんであれば、手術によって治癒が望めます。

ステージⅣ期にまで進行してしまうと、手術単独での治癒が難しくなるため、化学療法と薬物療法を組み合わせての集学的治療が行われることになります。

早期発見が難しい大腸がん・直腸がんは定期的な検査が特に重要!

大腸がん、直腸がんはともに症状だけでは早期発見が難しいという特徴があります。初期の大腸がんや直腸がんで症状が出るのはまれであり、多くの患者さんは自覚症状がほとんどありません。そのため、症状が出て検査をした際には、すでに進行していたということも決して少なくありません。

大腸がんや直腸がんに限らず、全てのがんに共通していえることですが、がんから命を守るのに何より大切なのは早期発見・早期治療です。大腸がんと直腸がんの早期発見に有効なのは、検診などでの便潜血検査です。気になる症状がなくても、定期的に便潜血検査を受け、大腸がんと直腸がんの早期発見につなげましょう。

(※1)日本対がん協会|がんの部位別統計
(※2)徳山中央病院 |外科 治療・手術について 下部消化管(大腸)
(※3)兵庫医科大学病院|直腸がん(外科治療)
(※4)横浜労災病院|大腸(結腸・直腸)のがん
(※5)農畜産業振興機構|日本人の食と健康
(※6)国立がん研究センター|大腸
(※7)兵庫医科大学病院|大腸がん(外科治療)
(※8)国立研究開発法人国立がん研究センター|院内がん登録生存率集計結果閲覧システム
(※9)国立研究開発法人国立がん研究センター|院内がん登録生存率集計結果閲覧システム
参照日:2024年01月

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

プロフィール詳細

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