厚生労働省が発表した「2021年の人口動態統計」を日本対がん協会が集計した「がんの部位別統計」 によると、部位別がん死亡数で男女ともに多かったのが大腸がんです。
男性は肺がんに次いで2位、女性はトップでした。また、2022年に公表された「2019年の全国がん登録」によると、1年間で男性は約8万7,000人以上、女性は約6万7,000人以上が大腸がんに罹患しています。
大腸がんを克服した方が次に心配すること、それは再発です。
大腸がんの再発率は高いのでしょうか。そして、大腸がんが再発したときにはどのような治療が行われるのでしょうか。大腸がんの再発リスクを低減するための方法とともに詳しく見ていきましょう。
目次
大腸がんの再発率
大腸がんに限らず、大半のがんには再発リスクがあります。とはいえ、再発の特徴はがんの種類によって異なるのが現状です。まずは大腸がんの再発の特徴を見ていきましょう。
ステージが進行した大腸がんほど再発しやすい
大腸がんの再発の特徴としてまず挙げられるのが、ステージが進行した大腸がんほど再発リスクが高くなるということです。
大腸癌研究会が刊行した「大腸癌治療ガイドライン医師用2022年版」によると、大腸がんが筋肉層までにとどまっているステージ1の再発率は5.7%です。大腸がんが筋肉層を超えて周囲に広がっている状態のステージ2の再発率は15%。がんがリンパ節に転移しているステージ3では、再発率は31.8%でした。
このように、ステージが進むにしたがって大腸がんの再発リスクは高くなります。そのため、大腸がんの再発から命を守るためにも、早期発見・早期治療は非常に重要です。
再発しやすい臓器と時期
大腸がんの再発の特徴として、再発しやすい時期が偏っているということも挙げられます。
「大腸癌治療ガイドライン医師用2022年版」によると大腸がんの再発の約86%は3年以内、97%以上が5年以内に見つかっています。
肝臓への再発で見てみると、3年以内の再発率が89.3%、4年以内は93.8%、5年以内は96.4%。5年を経過すると再発率はグッと下がり、0.24%でした。肺への再発でも同様の傾向で、3年以内の再発率が79.2%、4年以内は89.2%、5年以内は95.8%、5年以上の再発は0.22%にとどまります。
大腸がんが再発しやすい臓器としては、肝臓、肺、局所、リンパ節、腹膜、骨、手術で切除してつないだ部分などが挙げられますが、全ての臓器で5年以内の再発が大半という結果になっています。
大腸がんの再発の種類
大腸がんの再発は、局所再発、遠隔転移、腹膜播種(はしゅ)の3パターンに分かれます。
局所再発とは、がんがもともとあった場所に再発することを指します。大腸がんでいえば、大腸への再発です。
遠隔転移は、もともとのがんから離れた場所に再発したがんのことを指します。大腸がんで多いのは、肝臓や肺への遠隔転移です。
腹膜播種とは、大腸の外側を覆う腹膜に転移したがんのことです。腹膜に散らばったがんを手術で全て取りきることは難しいため、抗がん剤や飲み薬による全身化学療法が行われます。
再発大腸がんの治療方針
まだ再発していないものの、万が一の再発に備えて、あらかじめ治療方法を把握しておきたいという方も多いでしょう。大腸がんの再発の基本的な治療方法を見ていきましょう。
完全に切除できる場合は手術
再発した大腸がんの治療の原則は、手術で取り切ることです。
再発したがんが手術によって切除できるようであれば、手術による治療が行われます。
再発した臓器が1つで、完全に取りきれる場合はまず手術が検討されますが、再発した臓器が2つ以上の場合でも、それぞれが切除できると判断された場合には、手術を検討しても良いとされています。
切除不可能でも薬物療法によって切除可能になるケースも
切除不可能と判断された場合、パフォーマンスステータスが1(※肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる)、および2(※歩行可能で、自分の身の周りのことは全て可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす)の人には全身薬物療法や放射線療法が行われます。その結果、再発したがんが小さくなるなどで、手術によって切除が可能になるケースもあります。
※ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group:米国東海岸癌臨床試験グループ、米国の腫瘍学の団体の一つ)が定めた 指標を日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が日本語訳したものです。
切除不可能の場合は薬物療法と放射線療法が中心
切除不可能と判断された場合、治療は薬物療法と放射線療法が中心となります。
延命とがんに伴う諸症状の緩和を目的に治療が行われます。なお、切除不可能と診断された人の生存期間は、以前は6~8カ月とされていました。
しかし、抗がん剤や医療の進歩もあって、年々、延命期間は長くなる傾向にあります。
現在では、切除不能と判断されても、2~3年ほどは延命できるようになっています。
大腸がんの再発予防法
大腸がんに限らず、どのがんにも共通していることですが、がんは再発してしまうと治療が難しくなってしまいます。
一番良いのはもちろん、再発させないことなのですが、どのように再発を予防すればいいのでしょうか。
5年間の経過観察
前述の通り、大腸がんの再発の約86%は3年以内、97%以上が5年以内に見つかっています。そのため、治療後5年間の経過観察が必要とされています。
再発しないことに越したことはありませんが、その次にやっておきたいのが、再発したがんをすぐに見つけ、早期に治療につなげることです。検査に行かないなどで、再発したがんを放置してしまうと、その間にがんは進行してしまいます。
がんは進行すればするほど、予後は悪くなります。再発した大腸がんから命を守る上で、いかに早期に発見できるかが非常に重要です。
通常は、がん治療後3年間は3~6カ月に1回のペースで通院し、内視鏡やCT、腫瘍マーカーなどの検査を受けます。その後、2年間は6~12カ月に1回のペースで検査を実施することが一般的です。再発したがんを早期に発見するために、医師の指導を守って定期的に検査を行いましょう。
再発予防に効果のある食事
国立がん研究センターがん予防・検診研究センターが、2011年日本人に対する疫学調査などをもとにまとめた「がんを防ぐための新12か条 」を発表しています。
ここでは、食事について触れられており、「バランスのとれた食生活を」「塩辛い食品は控えめに」などといった食生活にまつわることが記されています。
他にも、公益財団法人がん研究振興財団 などの機関が、がんの再発を防止するためのレシピ集を公開しています。無料で閲覧できるレシピもありますので、食生活で再発リスクを抑えたい方はぜひチェックしてみてください。
術後補助化学療法とは
手術でがんを全て取りきったとしても、目に見えないほど微小ながん細胞が残っていて、それが再発の原因になることも少なくありません。そうした目に見えない微小ながん細胞をたたき、再発リスクを低減させるための治療方法が「術後補助化学療法」です。抗がん剤で微量のがん細胞を死滅させ、大腸がんの再発のリスクを低くします。
大腸がんの再発について【まとめ】
大腸がんを克服した人が次に心配になること、それは再発です。
初発のがんより再発したがんの方が治療は難しくなってしまいます。また、再発した場合「あんなに治療を頑張ったのに」と、気持ちも大きく落ち込んでしまうでしょう。再発させないことがベストなのですが、残念ながら、がんの再発を100%抑え込むことはできません。
現状のところ、再発したがんをできるだけ早く見つけ、すぐに治療を開始するということが近道となります。そのために重要なのは定期的な経過観察です。がんの再発の97%以上は5年以内 に見つかっているので、少なくとも治療後5年間は医師の指導を守って、定期的な検査を行っていきましょう。
1.PubMed|Increasing disparities in the age-related incidences of colon and rectal cancers in the United States 1975-2010
2.国立がん研究センター がん情報サービス|大腸がん検診について
3.にしやま消化器内科|大腸がんになりやすい年齢や生活習慣
4.NHK健康チャンネル|大腸がんにつながりやすい病気、なりやすい人とは?20代から発症のケースも
5.イムス総合サービスセンター|大腸がんセルフチェック
6.あなたは大丈夫?大腸がんチェック – カプセル内視鏡と大腸・小腸疾患、クローン病に関するお役立ち情報サイト【飲むだけカプセル内視鏡】|あなたは大丈夫?大腸がんチェック
7.国立がん研究センター 東病院|大腸がんについて
8.日本医師会|大腸がんとは?
9.国立がん研究センター がん統計|最新がん統計
参照日:2023年4月