予防医療とは?目的や重要性を知って人生100年時代を健やかに生き抜く

予防医療とは?目的や重要性を知って人生100年時代を健やかに生き抜く

大塚 真紀

総合内科専門医

人生100年時代といわれている昨今、特に注目を浴びている医療に「予防医療」があります。新聞やテレビなどで、予防医療の話題を目にした方も多いのではないでしょうか。

聞き慣れない言葉ではなくなった予防医療ですが、その内容をきちんと理解し、さらに実践できているという方はまだ少数派です。

そこで、本記事では予防医療とはどのような医療なのか、その内容や意義について解説します。

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目次

予防医療とはどのような医療?

はじめに、予防医療とはどのような医療なのかをみていきましょう。医療と聞くと多くの方は、病気と診断されて薬を飲んだり手術を受けたりといった、治療の場面を思い浮かべるのではないでしょうか。

もちろん、治療も医療の大きな役割ですが、医療の役割は治療だけではありません。病気の重症化や再発を防ぐことや、病気の悪化を予防すること、そもそも病気にかからないような日常生活を送ることも医療の範疇に含まれます。

重症化や再発防止、健康の維持や増進に焦点を当てた医療が、予防医療です。

たとえば、健康のために週に3回ランニングをしているという方や、スポーツジムに通っているという方は少なくありません。こうした行動も、予防医療に含まれます。

予防医療の目的

予防医療の最大の目的は、病気にかかることを予防することにあります。

従来は、病気にかかってからその病気を治療するという考え方が主流でしたが近年では、健康寿命(元気に自立して生きていける期間)を少しでも長くするためには、そもそも病気にかからないことが重要という考え方が広まってきています。

福祉大国といわれる北欧諸国では、30年以上前から予防医療が取り入れられ、日本でもここ数年で広く浸透してきました。

スマート・ライフ・プロジェクト

予防医療の考え方を浸透させようと、厚生労働省が2011年に開始した取り組みが「スマート・ライフ・プロジェクト」です。

プロジェクトでは、「健康寿命をのばしましょう」をスローガンに「運動、食生活、禁煙」で具体的な目標を提唱しています。たとえば、運動では毎日10分の運動、食生活では1日にプラス70グラムの野菜、そして禁煙の促進を呼びかけています。さらに、企業や団体にはそれぞれの商品やサービスを通じて、予防医療の意識促進が呼びかけられています。

スマート・ライフ・プロジェクトでは、2020年までに「国民の健康寿命を1歳以上延伸」などを目標に掲げていました。2019年の国民の健康寿命の平均は男性が72.68歳、女性は75.38歳でした。2011年に比べると男性の健康寿命で約2年、女性の場合は約3年延びていることから、当初の目標は達成したことになります。

参考:厚生労働省 健康局 健康課 スマート・ライフ・プロジェクト
https://www.smartlife.mhlw.go.jp/

予防医療で最も大切なのは一次予防

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予防医療は、一次予防、二次予防、三次予防の3つのフェーズに分けられます。ここでは、一次予防、二次予防、三次予防のそれぞれの内容を詳しくみていきましょう。

一次予防

3つのフェーズのなかで、健康寿命を延ばすために最も重要なのが一次予防です。

食生活や運動習慣、睡眠、喫煙などの生活習慣を変えることで、そもそも病気にかかるリスクを下げることが目的です。健康寿命を延ばすには、適切な生活習慣にすることが最も有効だといわれています。

また、予防接種などで危険な感染症にかかりにくくすることも一次予防に含まれます。一次予防は持病や既往歴がある方はもちろん、健康な方にとってもメリットが大きい予防医療です。

二次予防

一次予防の次のフェーズが二次予防です。

定期検診や人間ドック、検査などで病気をいち早く発見することによって、病気の早期治療に取り組むことを指します。

糖尿病でたとえると、糖尿病にならないために生活習慣を改善することが一次予防で、糖尿病を早期に発見し、適切な治療につなげることで重症化や合併症の発症を防ぐことが二次予防にあたります。

三次予防

三次予防は、予防医療に含まれますが、前の2つのフェーズと異なり、病気にかかってしまった後の医療を指します。三次予防で予防するのは、病気の再発や重症化です。

適切な保健指導やリハビリテーションを受けることによって、病気の再発や重症化を予防し、病気治療後の患者さんのQOL(生活の質)を高めることが三次予防の主な目的です。

予防医療が必要とされる理由

2000年に厚生省(現・厚生労働省)によってはじめられた国民健康づくり運動の「健康日本21」や、先述したスマート・ライフ・プロジェクトをはじめ、日本では国を挙げて予防医療に力を入れています。なぜ、予防医療にここまで力を入れているのでしょうか。

それは病気にかかる人を減らすことで、医療費を軽減させるだけでなく、予防医療によって日本人の多くが命を落としている慢性疾患や糖尿病などの生活習慣病の予防、健康寿命の延伸が期待できるからです。

慢性疾患予防

1950年代、日本人の死因で最も多かったのは結核で、次いで脳卒中、肺炎の順でした。その後、日本人の死因は時代の経過とともに大きく変化し、2020年時点での死因の1位は悪性新生物、つまりがんです。全体の27.6%ががんによって命を落としています。次に多かったのは、心疾患(15.0%)です。

がんも心疾患も、慢性疾患に分類されます。日本人の40%以上が命を落とす原因となっている慢性疾患にかかるリスクは、予防医療によって大きく下げることができるのです。

生活習慣病予防

予防医療は、生活習慣が原因で起こる糖尿病などの生活習慣病の予防にも、高い効果を発揮します。厚生労働省は、「糖尿病が強く疑われる」または「糖尿病の可能性を否定できない」という方を含めると、日本における糖尿病の患者は2,000万人以上に上ると推計しています。

糖尿病は直接の死因にはなりませんが、動脈硬化性の病気や感染症にもかかりやすくなります。また、糖尿病は、日本人では大腸がん、肝臓がん、膵臓がんのリスク上昇と関連していることが今までの研究から明らかになっています。

健康寿命の延伸

適切な予防医療を行うことで、寿命はもちろん健康寿命の延伸も期待できます。厚生労働省が予防医療に力を入れ始めて10年ほどになりますが、その10年で男女ともに健康寿命が延びています。

【まとめ】予防医療について

日本は、世界一の長寿大国といわれ、平均寿命は男女ともに80歳を超えています。その一方で、健康寿命と平均寿命のギャップが10年ほど前から問題となっていました。そこで国を挙げて予防医療に積極的に取り組むようになったという経緯があります。早くから予防医療に取り組むことで、病気にかかるリスクを下げられますし、万が一病気にかかってもQOL(生活の質)の低下してしまうリスクも下げられます。

予防医療と聞くと難しそうに思えるかもしれませんが、毎日10分早足で歩くということなども予防医療になります。少しでも病気になるリスクを下げるために、老後を元気に楽しく過ごすために、無理せずできる範囲で今日から予防医療をはじめてみませんか?

1.三菱総合研究所「2030年の予防医療のインパクト」
https://www.mri.co.jp/knowledge/mreview/202110.html#:~:text=%E4%BA%88%E9%98%B2%E5%8C%BB%E7%99%82%E3%81%AF%E6%AE%B5%E9%9A%8E%E3%81%AB%E3%82%88%E3%81%A3%E3%81%A6,%E3%81%AF%E3%80%8C%E4%B8%80%E6%AC%A1%E4%BA%88%E9%98%B2%E3%80%8D%E3%81%AB%E5%BD%93%E3%81%9F%E3%82%8B%E3%80%82
2.日本生命「予防医療の目的と社会に必要とされる理由とは?」
https://www.nissay.co.jp/kaisha/kenkosupport/column/154/
3.予防医療.jp「予防医療とは」
https://www.yobou-iryou.jp/information/about/
4.福岡医健・スポーツ専門学校『「予防医学」とはどういった考え方?』
https://www.iken.ac.jp/work_books/19552/#:~:text=%E4%BA%88%E9%98%B2%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E3%81%A8%E3%81%AF%E7%B0%A1%E5%8D%98,%E3%82%92%E7%9B%AE%E7%9A%84%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
5.一般社団法人JA共済総合研究所「北欧(エストニア、デンマーク)の医療ICTの現状と日本の医療ICTの今後」
https://www.jkri.or.jp/PDF/2016/sogo_73_mano.pdf
6.厚生労働省「スマート・ライフ・プロジェクト (Smart Life Project)」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000036187.pdf
7.サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム「厚労省:健康寿命(2019)が男性72・68歳、女性75・38歳に」
https://www.satsuki-jutaku.jp/journal/article/p=1836#:~:text=%E5%8E%9A%E7%94%9F%E5%8A%B4%E5%83%8D%E7%9C%81%E3%81%AF%E3%80%81%E4%BB%A4%E5%92%8C,%EF%BC%93%EF%BC%98%E6%AD%B3%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
8.保健指導リソースガイド「一次予防・二次予防・三次予防と人間ドック」
https://tokuteikenshin-hokensidou.jp/opinion/002/001/no3.php
9.厚生労働省「健康寿命の延伸に向けた最近の取組み」
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/14/dl/1-03.pdf
10.厚生労働省「令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai20/dl/gaikyouR2.pdf
11.生活習慣病オンライン「糖尿病とは?」
https://www.sageru.jp/diabetesmellitus/knowledge/#:~:text=%E5%85%A8%E5%9B%BD%E3%81%A7%E7%B4%842%2C050%E4%B8%87,%E3%81%AF2%E5%9E%8B%E7%B3%96%E5%B0%BF%E7%97%85%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
12.全国健康保険協会「【糖尿病】 何より怖い合併症」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g5/cat450/sb4502/p014/#:~:text=%E2%97%8F%E7%B3%96%E5%B0%BF%E7%97%85%E3%81%AE%E5%8D%B1%E9%99%BA%E5%9B%A0%E5%AD%90,%E4%B8%8A%E6%98%87%E3%81%97%E3%82%84%E3%81%99%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
13.厚生労働省「国民健康・栄養調査結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000099296.pdf
参照日:2022年2月

大塚 真紀

総合内科専門医

東京大学大学院医学系研究科卒。医師、医学博士。博士号は、マウスを用いた急性腎障害に関する研究で取得。専門は、腎臓内科、透析。都内の大学病院勤務を経て、現在は夫の仕事の都合でアメリカ在住。2歳と4歳の娘たちの育児のかたわら、医療関連の記事の執筆や監修、医療系動画監修、企業戦略のための医療系情報収集、医療系コンテンツ制作など幅広く行なう。保有資格:医学博士、総合内科専門医、腎臓内科専門医、透析専門医

プロフィール詳細

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