ホスピスとは?入院条件や費用、平均滞在期間などを詳しく解説

ホスピスとは?入院条件や費用、平均滞在期間などを詳しく解説

大塚 真紀

総合内科専門医

「ホスピス」とは、どのようなところかご存じでしょうか?ドラマや映画、ドキュメンタリー番組などを見て、その存在を知っている方は多いかもしれません。

しかし、身内にホスピスを利用したことがある方がいない場合、ホスピスがどのようなところでどのような治療が行われるのか、わからないという方も多いかと思います。

そこで本記事では、ホスピスがどのような施設なのか、一般の病院とはなにが違うのかを解説します。

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目次

そもそもホスピスはどんなところ

まずは、ホスピスとはどのような施設なのかをみていきましょう。ホスピスでの治療内容やその特徴、混同されがちなホスピスと緩和ケア病棟の違いなどを解説します。

痛みや不安を和らげる施設

ホスピスとは、端的にいえば患者さんの痛みや不安を和らげることを主眼に置いた施設です。病気そのものはもちろん、患者さんの身体的、精神的、社会的な側面から総合的にケアを行います。

日本では、1981年に静岡県浜松市に「聖隷ホスピス」が初めて開設されました。以来、年々ホスピスは増えていて、2021年時点では全国で9000以上の施設でホスピスケアが受けられます。

ホスピスケアの内容

ホスピスでは、診断治療や手術治療、延命治療といったいわゆる「積極的な治療」は行われません。その代わりに、がんの痛みを訴える患者さんには鎮痛剤や麻酔を用いて痛みを取り除いたり、不安な患者さんには精神面のケアを行ったりと、その患者さんの感じる苦痛や不安を少しでも取り除くためのケアが行われます。

ホスピスで行われるケアは、患者さんの身体面や精神面のケアだけではありません。経済的な不安がある人にはソーシャルワーカーが公的制度を受けられるようにサポートするなど、ホスピスでは全人的なケアが行われます。

適切なホスピスケアによって余命が延びるケースも

ホスピスでは、余命を延ばすような積極的な治療は行われません。ただ、適切なホスピスケアを施すことによって余命が延びるケースもあります。

実際に、「早期からの適切なホスピスケアによって、患者の余命が延長する可能性がある」という趣旨の論文が、世界的な医学雑誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に掲載されています。

参考:ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(日本国内版)
https://www.nejm.jp/

ホスピスと緩和ケア病棟の違い

ホスピスと混合される施設に、「緩和ケア病棟」があります。言葉は違いますが、日本では両者に明確な線引きがされているわけではありません。患者さんの苦痛や不安を取り除くケアを行うという意味では両者は同じです。

違いがあるとすれば、入院する患者さんの病気の進行度にあります。

ホスピスは、治癒が望めない時期や終末期を患者さんが少しでも穏やかに過ごすための施設です。一方で、緩和ケア病棟では病気の進行度に関係なく、患者さんの苦痛や不安を和らげるケアが行われます。

ホスピスケアを受けるための条件

ホスピスには誰もが入院でき、ホスピスケアを受けられるわけではありません。ホスピスに入院するには、日本ホスピス緩和ケア協会が規定したホスピスケアを受けるための条件や、一定の基準をクリアしている必要があります。

がん患者のみを受け入れるホスピスがある一方で、後天性免疫不全症候群(エイズ)の患者も受け入れるホスピスもあるなど、条件は施設によって若干の違いはあります。ただ、おおむね協会の規定に則っている施設が一般的です。

がんなどの生命を脅かす疾患に罹患している

ホスピスケアを受けるための第一条件は、「生命を脅かす疾患に罹患している」ことです。具体的には、終末期のがんやエイズに罹患している患者さんです。筋萎縮性側索硬化症などの難病に罹患している患者さんでも、ホスピスには入院できません。

さらに、がんやエイズに罹患している患者さんのなかでも、ホスピスに入院できるのは手術や抗がん剤などの治療を行うよりも、苦痛を緩和する治療を主に行うほうがよいと考えられる方に限られます。

患者と家族が望んでいる

ふたつめの条件として、患者さんとその家族がホスピスへの入院を望んでいる必要があります。ホスピスケアは、患者さんの苦痛や不安を取り除くために行われるケアです。

患者さんが望むケアを行うのが基本のため、患者さんやその家族が望まないのに、医療施設側が勝手にホスピスに入院させることはできません。

患者が病名や病状を理解している

必須ではありませんが、患者さんが自分の病名や病状を理解していることが望ましいとされています。ただし、告知されていないからといって、ホスピスに入院できないわけではありません。より良い終末期を過ごしてもらうために、ホスピスケアを通じて、病名や病状の告知を行うホスピスもあります。

ホスピスや緩和ケア病棟の費用

ホスピスへの入院をすすめられた方の多くが気になるのは、費用ではないでしょうか。ここでは、ホスピスに入院すると具体的にどれくらいの費用がかかるのかをお伝えします。

入院費用の自己負担分

厚生労働省から「緩和ケア病棟」の指定を受けたホスピスに入院する場合の費用は定額です。入院費用は30日以内、30日以上60日以内、60日以上の3パターンに分けられています。

  入院費用
医療費1割負担 医療費3割負担
30日以内 5,050円 15,150円
30日以上60日以内 4,510円 13,540円
60日以上 3,350円 10,050円

30日以内の入院費の自己負担額は、医療費1割負担の方で1日あたり5,050円、3割負担の方が15,150円です。

30日以上60日以内の場合は、医療費1割負担の方で1日あたり4,510円、3割負担の方で13,540円です。

入院が60日以上の場合の自己負担額は医療費1割負担の方で1日あたり3,350円、3割負担の方で10,050円です。

高額医療費制度を利用することで、一般的な所得の方は、70歳以上の方で月額5万円程度、70歳未満の方で月額9万円ほどに抑えられます。

食事費用の自己負担分

入院費用と別に、食事費用も支払う必要があります。厚生労働省から「緩和ケア病棟」の指定を受けたホスピスの場合、食事費用も定額です。食事費用の自己負担額は、入院期間にかかわらず1食あたり460円、1日1,380円で一律となっています。

差額ベッド代

希望して個室に入院する際にかかる費用が差額ベッド代です。正式には「特別療養環境室料」といいますが、費用は地域や施設によって大きく異なります。差額ベッド代が1日あたり1,000円ほどの施設がある一方、10万円ほどの高額になる施設もあります。

厚生労働省の「主な選定療養に係る報告状況」によると一人部屋の差額ベッド代の平均は1日あたり7,837円、2人部屋の場合は3,119円です。

ただし、こちらはあくまで平均の費用で、実際の費用は施設によって異なります。個室や少人数の部屋を希望する方は、事前に自分が入院するホスピスの差額ベッド代などを調べておきましょう。

【まとめ】ホスピスについて

今回は、ホスピスとはどのような施設で、どのような治療が行われるのかをご紹介しました。ホスピスは、主に終末期を迎えたがん患者が入院できる施設で、がんの痛みや吐き気や息苦しさといった不快な症状や、精神的な不安を取り除くことを主眼としています。

穏やかな最期を迎えたいという方や、最期まで生活の質を落としたくないという方のニーズが高く、ホスピスは年々増え続けています。また、ホスピスでは積極的な治療は行われませんが、適切なホスピスケアを受けることにより、余命が延びたというケースも報告されています。いつか誰しもに訪れる終末期をどのように過ごすかの選択肢のひとつとして考えてみてはいかがでしょうか。

1.ホスピス財団「ホスピス・緩和ケアとはなんですか」
https://www.hospat.org/public_what.html
2.注目!がん看護における最新エビデンス「早期からの緩和ケアは生存期間を延長する可能性がある」
http://plaza.umin.ac.jp/~miya/oncolnurs1.pdf
3.日本ホスピス緩和ケア協会「緩和ケア病棟入院料届出受理施設数・病床数の年度推移」
https://www.hpcj.org/what/pcu_sii.html
4.LIFULL介護「ホスピスとは?特徴や費用、探し方まで」
https://kaigo.homes.co.jp/manual/facilities_comment/list/other/hospice/#:~:text=%E3%83%9B%E3%82%B9%E3%83%94%E3%82%B9%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%80%81%E7%97%85%E6%B0%97%E3%82%92%E6%B2%BB%E7%99%82,%E3%81%AA%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%A0%E3%81%91%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%82%93%E3%80%82
5.MSDマニュアル家庭版「ホスピスケア」
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/01-%E7%9F%A5%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%8A%E3%81%8D%E3%81%9F%E3%81%84%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E7%9F%A5%E8%AD%98/%E6%AD%BB%E3%81%A8%E6%AD%BB%E6%9C%9F/%E3%83%9B%E3%82%B9%E3%83%94%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%82%A2#:~:text=%E3%83%9B%E3%82%B9%E3%83%94%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%82%A2%E8%A8%88%E7%94%BB%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%80%81%E6%84%9B%E3%81%99%E3%82%8B,%E7%8A%B6%E6%85%8B%E3%81%AE%E5%A0%B4%E5%90%88%E3%82%82%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
6.日本産婦人科医会「緩和ケア病棟」
https://www.jaog.or.jp/note/3%EF%BC%8E%E7%B7%A9%E5%92%8C%E3%82%B1%E3%82%A2%E7%97%85%E6%A3%9F/#:~:text=%EF%BC%884%EF%BC%89%E3%83%9B%E3%82%B9%E3%83%94%E3%82%B9%E3%81%A8%E7%B7%A9%E5%92%8C%E3%82%B1%E3%82%A2,%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%8C%E3%81%B0%E3%82%88%E3%81%84%E3%81%A0%E3%82%8D%E3%81%86%E3%81%8B%EF%BC%8E
7.日本ホスピス緩和ケア協会「ホスピス緩和ケアの基準」
https://www.hpcj.org/what/kijyun.html#:~:text=%E3%83%9B%E3%82%B9%E3%83%94%E3%82%B9%E7%B7%A9%E5%92%8C%E3%82%B1%E3%82%A2%E3%82%92%E5%8F%97%E3%81%91%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E6%9D%A1%E4%BB%B6,%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E6%9C%9B%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%84%E3%80%82
8.函館おしま病院「ホスピスQ&A」
https://www.oshima-hp.or.jp/%E3%83%9B%E3%82%B9%E3%83%94%E3%82%B9q-a.html
9.衣笠病院ホスピス「ホスピスQ&A」
https://www.kinugasa.or.jp/files/hospital/docs/hospice-QandA.pdf
10.上尾中央総合病院「緩和ケア病棟の入院費用について」
https://www.ach.or.jp/guide/visit/cancer/pdf/kanwa_ward_nyuuinhiyou201910.pdf
11.「神戸医療センター」緩和ケア病棟に入院するとどのぐらい費用がかかりますか?
https://kobe.hosp.go.jp/cancer-medical/faq/4265.html
12.住友生命「入院にかかる費用「差額ベッド代」って何ですか?」
https://www.sumitomolife.co.jp/lineup/mirailabo/data/nyuuin_bed.html#:~:text=%E3%80%8C%E5%B7%AE%E9%A1%8D%E3%83%99%E3%83%83%E3%83%89%E4%BB%A3%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%AF,%E8%B2%A0%E6%8B%85%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

大塚 真紀

総合内科専門医

東京大学大学院医学系研究科卒。医師、医学博士。博士号は、マウスを用いた急性腎障害に関する研究で取得。専門は、腎臓内科、透析。都内の大学病院勤務を経て、現在は夫の仕事の都合でアメリカ在住。2歳と4歳の娘たちの育児のかたわら、医療関連の記事の執筆や監修、医療系動画監修、企業戦略のための医療系情報収集、医療系コンテンツ制作など幅広く行なう。保有資格:医学博士、総合内科専門医、腎臓内科専門医、透析専門医

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