「がん光免疫療法」日本で承認されたばかりの新たな治療法とは

「がん光免疫療法」日本で承認されたばかりの新たな治療法とは

がんの治療方法と聞いて、どういったものを思い浮かべますか?

手術や化学療法、放射線療法といった治療方法が一般的ですが、「がん光免疫療法」といった新たな治療方法が最近になって確立してきています。

新しい 治療方法だけに、詳しくは知らない方が多いと思います。そこで、この記事では「がん光免疫療法」がどのような治療方法なのかを詳しくお伝えします。

効果や副作用、費用に加えて、どの医療機関で受けられるのかも紹介しますので、がんの治療方法に迷っている方はぜひ参考にしてください。

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目次

がん光免疫療法とは

まずは、がん光免疫療法がどのような治療方法で、どういったがんが対象なのかといった基本的なところを見ていきましょう。

レーザー光でがん細胞を死滅させる

がん光免疫療法は、簡単に言えば、「レーザー光をがん細胞に照射して死滅させる」療法です。

がん細胞だけに結合する特殊な抗体を利用した治療方法で、まず、その抗体に化学反応を起こす特殊な化学物質を付着させ、静脈内に投与。がん細胞に到達し結合した抗体にレーザーを照射します。すると、化学反応を起こして、がん細胞が破壊されるというメカニズムです。レーザー照射からわずか1~2分でがん細胞は破壊されます。

頭頸部の扁平上皮がんが対象

がん光免疫療法は、現在のところ、すべてのがんを対象とした治療方法ではありません。がん光免疫療法の対象となっているのは、頭頸部の扁平上皮がんです。さらに、適応症は「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部がん」に限定されています。手術や放射線治療などが可能な場合は、ほかの治療方法を優先することがガイドラインで定められているのです。光免疫療法に関しては、ほかの選択肢が残されている場合、そちらが優先されます。

治療を受けるには条件を満たす必要がある

さらに、治療の適応であっても、光免疫療法を受けるには一定の条件を満たす必要があります。まず、絶対条件としては、手術ができないこと、過去に放射線療法などの治療を受けたことが挙げられます。つまり、頭頸部の扁平上皮がんになったからといって、すぐに光免疫療法を受けることはできません。その上で、次のような条件を満たす必要があります。

・頸動脈など大血管への腫瘍浸潤がない。
・全身麻酔下で光照射が可能な病変である。
・薬剤投与後4週間、強い光や直射日光を避けることが可能である。

上記の条件に当てはまらない場合、残念ながら光免疫療法を受けることはできません。

がん光免疫療法の効果・副作用・費用

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がんの治療方法を決める上で重要なのは、その治療方法にどれだけの効果があるのかです。加えて、副作用も気になるところでしょう。誰しも、効果が高く、副作用が少ない治療方法を選びたいものです。

さらに、その治療方法にどのくらいの費用がかかるのかも重要です。ここでは、がん光免疫療法の効果・副作用・費用を詳しく見ていきましょう。

効果

現在、日本では約60の医療機関で、がん光免疫療法を実施しています。その中のひとつ、愛知県がんセンターでは、今年(2022年)1月時点で7人の患者さんにがん光免疫療法を実施していますが、いずれの患者さんにおいても、がんの縮小が認められ、そのうち2人でがんが消滅しました。

また、海外で30人に対して行われた第2相試験では、9人でがんが縮小し、2人のがんが完全に消失したという結果も出ています。

新しい治療方法かつ、誰でも受けられる治療方法ではないため、この治療を実施した患者さんの総数は少ないのですが、十分高い効果は得られていると言っていってよいでしょう。

副作用

効果の次に気になるのが、副作用です。がん光免疫療法のメリットのひとつが、副作用の少なさと言われています。

治験においては、副作用らしい副作用は報告されていません。ただ、実際に治療を受けた患者さんの中には、患部の痛みを訴える方も少なからずいました。とはいえ、入院を要するような重篤な副作用が出現した例は、今のところ見られていません。

費用

新しい治療方法と聞くと、費用が心配という方も多いのではないでしょうか。手術や放射線治療といった標準治療に比べると、先端医療と呼ばれる新しい治療方法は、高額になるケースが多いです。がん光免疫療法も標準治療と比べると高額になります。1回の治療で数百万円かかるケースも少なくありません。

高額ではありますが、がん光免疫療法は保険適用が承認されており、高額療養費制度の適用が受けられます。そのため、患者さんの自己負担を軽減することが可能です。

がん光免疫療法はどこで受けられる?

手術や化学療法などの標準治療と違い、がん光免疫療法はどこの医療機関でも実施しているわけではありません。現在、国内では約60の医療機関でがん光免疫療法を実施しています。以下から、一覧形式で実施医療機関を見ていきましょう。

がん光免疫療法を受けられる医療機関一覧

北海道エリア

北海道大学病院

東北エリア

秋田大学医学部附属病院
岩手医科大学附属病院
宮城県立がんセンター

関東エリア

茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンター
亀田総合病院
がん研究会有明病院
北里大学病院
群馬大学医学部附属病院
国立がん研究センター中央病院
国立がん研究センター東病院
埼玉医科大学国際医療センター
自治医科大学附属病院
順天堂大学医学部附属順天堂医院
千葉県がんセンター
筑波大学附属病院
東京医科歯科大学病院
東京医科大学病院
東京医療センター
東京都立多摩総合医療センター
横浜市立大学附属市民総合医療センター
横浜市立大学附属病院

北陸エリア

金沢医科大学病院
金沢大学附属病院
新潟大学医歯学総合病院
福井大学医学部附属病院

東海エリア

愛知医科大学病院
愛知県がんセンター病院
岐阜大学医学部附属病院
聖隷浜松病院
名古屋市立大学病院
名古屋大学医学部附属病院
浜松医科大学医学部附属病院
藤田医科大学病院
三重大学医学部附属病院

近畿エリア

大阪国際がんセンター
大阪大学医学部附属病院
関西医科大学附属病院
京都大学医学部附属病院
神戸市立医療センター中央市民病院
神戸大学医学部附属病院
奈良県立医科大学附属病院
兵庫県立がんセンター

中国・四国エリア

愛媛大学医学部附属病院
岡山大学病院
高知大学医学部附属病院
四国がんセンター
徳島大学病院
鳥取大学医学部附属病院
広島大学病院

九州・沖縄エリア

九州医療センター
九州がんセンター
九州大学病院
熊本大学病院
久留米大学病院
佐賀大学医学部附属病院
琉球大学病院

治療可能な医療機関は順次拡大予定

がん光免疫療法は、楽天グループの子会社「楽天メディカル」が主体となって普及を進めています。同社によると、実施施設は今後も順次拡大していく方針だと言います。どこで治療を受けられるかなどの最新の情報は、同社ホームページに記載されています。

【まとめ】がん光免疫療法について

がん光免疫療法は、手術では取り切れなかったがんや、放射線療法や化学療法が効かなかったがんに対して、高い効果が期待される画期的な治療方法です。新しい治療方法で、まだ多くの患者さんに対して実施されてはいないものの、この治療法によって、がんが完全に消滅した方も少なくありません。

日本では現状、60ほどの医療機関で実施されており、標準治療のようにどこの医療機関でも受けられるというものではありません。ただ、この治療方法の普及を目指している「楽天メディカル」によると、順次、実施医療機関を拡大していく方針だと言います。「がん光免疫療法を受けたい」という方は、まずは担当医に相談してください。

関西医科大学 光免疫療法とは
https://www.kmu.ac.jp/research/pit/commentary/index.html
【2022年版】光免疫療法によるがん治療のすべて
https://www.cancer-photoimmunotherapy.net/pitnew/
がんプラス 光免疫療法が目指すがん治療の未来―「がんで死なない治療」への挑戦
https://cancer.qlife.jp/series/as005/article10706.html
がん光免疫療法全般に関する Q&A https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/topics/2021/0209/NCCHE_illuminoxQA_20210209.pdf
頭頸部がん 保険適用1年 「光免疫療法」手探り続く 患者ら期待 副作用検証を
https://www.tokyo-np.co.jp/article/160307
【2022年版】光免疫療法によるがん治療のすべて 費用や保険診療の適用など
https://www.cancer-photoimmunotherapy.net/pitnew/cost.html
楽天メディカル、アキャルックス®とBioBlade®レーザシステムによる頭頸部アルミノックス治療(光免疫療法)が提供可能な施設について、今春には60施設以上に拡大
https://rakuten-med.com/jp/news/press-releases/2022/04/19/8071/
参照:2022年7月

成田 亜希子

内科医

2011年医師免許取得。一般内科医として幅広い疾患の患者様の診療を行っている。行政機関に勤務経験もあり、がん対策にも携わってきた。

プロフィール詳細

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