内臓脂肪とがんは関係あるの?どんな人が要注意

内臓脂肪とがんは関係あるの?どんな人が要注意

「内臓脂肪が増えるとがんのリスクが増大する」

こんな話を聞いたことがある方もいるかもしれません。

内臓脂肪や肥満に悩む方にとって、非常に気になるポイントだと思います。実際に、内臓脂肪とがんに相関関係はあるのでしょうか。そして、なぜ内臓脂肪が増えるとがんのリスクが増大してしまうのでしょうか。

内臓脂肪とがんの関係性、なぜ内臓脂肪は増えてしまうのかといったところを詳しく見ていきましょう。

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目次

肥満はがんのリスクを高める

結論から言えば、内臓脂肪が増えれば増えるほど、がんのリスクは増大します。国際がん研究機関(IARC)は、4万人以上を対象にした研究結果から、「内臓脂肪はがんのリスクを高める」と報告しています。

肥満は10種類ものがんのリスクを高める

IARCによると、腹囲が11センチ増えるごとに、がんのリスクが13%増大したという研究結果が得られました。

大腸がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆嚢がん、膵臓がん、子宮がん、卵巣がん、腎臓がん、乳がんの10種類ものがんが腹囲の増加と特に関係が深く、内臓脂肪の増加はがんのリスクを高めることが研究から分かりました。

特に要注意なのが内臓脂肪

脂肪には、内臓脂肪のほかに皮下脂肪がありますが、がんと関係性が高いのは内臓脂肪です。

内臓脂肪は、さまざまな炎症物質を放出しているため、「炎症」が持続している状態になっています。この慢性炎症ががんをはじめ、糖尿病や代謝異常を引き起こす原因であるということが最近の研究結果で明らかになっているのです。

さらに、近年「FGF2」という物質が特に注目されています。内臓脂肪から放出されるFGF2によって、がん化が促されることが研究で分かっています。

食欲が止まらない原因も内臓脂肪に

内臓脂肪を減らすためには、食べ過ぎないことや適切な運動が欠かせません。しかし、内臓脂肪を減らしたい方の中には、「食べ過ぎないようにしたいけれど、ついつい食べてしまう」という方や、「食欲が抑えられない」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。

実は、食欲が止まらない原因の一つも内臓脂肪にあります。脂肪細胞から放出される「レプチン」という物質が、脳の満腹中枢にサインを送って食欲を抑制します。レプチンは、食欲を正常に保つための鍵のような物質です。ところが、内臓脂肪が増えすぎてしまうと、レプチンが脳の満腹中枢にサインを送っても、脳が反応しづらくなってしまうと考えられています。

内臓脂肪が増えすぎると食欲の抑えが効かなくなり、内臓脂肪がさらに増えてしまうという悪循環に陥ってしまうわけです。

内臓脂肪はなぜ増える?

がんをはじめ、糖尿病などの生活習慣病に深く関与している内臓脂肪。誰もが、内臓脂肪などためたくありません。しかし、内臓脂肪に悩む方は多くいます。なぜ、内臓脂肪がたまってしまうのでしょうか。

摂取エネルギー過多

内臓脂肪が増えてしまう一番の原因は、消費カロリーより摂取カロリーが多くなることで、簡単に言えば、食べ過ぎです。

そもそも皮下脂肪にしろ、内臓脂肪にしろ、脂肪が体内に蓄積されるのは、食事でとったエネルギーが運動などでの消費エネルギーを超えた時です。高カロリーの食事を続ければ続けるほど、運動などではエネルギーを消費しきれなくなり、だんだんと内臓脂肪が蓄積されてしまいます。

基礎代謝の低下

摂取カロリーの増加とともに、内臓脂肪が蓄積する大きな理由が、消費カロリーの減少です。

特に、基礎代謝の低下は内臓脂肪の蓄積に大きく関係します。基礎代謝とは、生命を維持するために必要なエネルギー消費量のことで、生きているだけで消費されます。運動によるエネルギー消費量よりはるかに大きいのが、基礎代謝です。

基礎代謝は、加齢や運動不足による筋肉量の減少で、低下してしまいます。結果的に、摂取したエネルギーが消費されにくい体になってしまい、内臓脂肪が蓄積されてしまうのです。

参考:厚生労働省 e-ヘルスネット 加齢とエネルギー代謝

睡眠不足

意外に思う方もいるかもしれませんが、睡眠不足も内臓脂肪を増やす一因と考えられています。睡眠不足が続くと、脳に満腹を感じさせるホルモンが減少する一方で、食欲を増進するホルモンが増加します。

つまり、睡眠不足が続くと、内臓脂肪をためこみやすい体に変わってしまうわけです。また、睡眠不足が続くと体力も低下するため、運動の意欲も低下してしまいます。

皮下脂肪との違い

皮下脂肪は、名前の通り、皮膚の下につく脂肪のことです。一方、内臓脂肪とは内臓周りにつく脂肪のことを指します。一番の違いは、内臓脂肪が健康リスクに関わる脂肪という点です。

脂肪細胞からは、「アディポカイン」という物質が放出されますが、放出量が多いのは内臓脂肪になります。内臓脂肪が多くなればなるほど、アディポカインの放出量が増え、高血圧、脂質異常、高血糖などの発症リスクが増えることが研究から明らかになっています。

がん抑止のために減量しよう

ここまで見てきたことからも分かるように、内臓脂肪が増えすぎると、がんをはじめ、あらゆる病気のリスクが高まってしまいます。内臓脂肪の減少は、健康増進の鍵と言っても過言ではありません。

とはいえ、どうやって内臓脂肪を減らしたらいいのか分からない方も多いのではないでしょうか。そこで、内臓脂肪を減らす具体的な方法をお伝えします。

有酸素運動が効果的

皮下脂肪と比べると、落ちやすいのが内臓脂肪の特徴です。

内臓脂肪を落とすために効果的なのが、ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動です。後述しますが、有酸素運動は短い時間では効果が薄いということが分かっています。無理をせずに長時間できるような運動メニューで取り組みましょう。

1回あたり30~60分を目標に

有酸素運動を行う上で、特に心掛けたいのが、運動時間の長さです。有酸素運動を始めてしばらくの間は、血液中の脂肪がエネルギー源とWして利用されます。

有酸素運動を始めて20分以上経過した頃から、内臓脂肪が使われるようになります。もちろん、20分以内の有酸素運動でも全く効果がないわけではありません。しかし、効率良く内臓脂肪を落とすためには、30~60分を目標にしましょう。さらに、基礎代謝をアップさせるために、スクワットなどの筋トレも取り入れるとより効果的でしょう。

内臓脂肪を落とす食事内容

内臓脂肪を落とすために、有酸素運動とともに取り組みたいのが、食事内容の改善です。せっかく有酸素運動を頑張っても、暴飲暴食をしていては意味がありません。

内臓脂肪の蓄積は、摂取カロリーに消費カロリーが追い付かないことによるものです。揚げ物などの脂質の多いメニューはできるだけ避け、野菜を多めに豆腐などでタンパク質を積極的に摂取しましょう。

【まとめ】内臓脂肪とがんの関係について

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内臓脂肪の増えすぎはがんに限らず、さまざまな病気のリスクを高めるものです。病気のリスクを少しでも抑えるために、誰でもできることが減量です。

アメリカ国立衛生研究所(NIH)は、「がんの最大の要因は喫煙」としながらも、「肥満はそれを追い抜こうとしている」と警告しています。それだけ、肥満を原因とするがんが増えているということです。

また、内臓脂肪がたまりすぎると、食欲を抑えられなくなるといった研究結果も報告されています。内臓脂肪がさらなる内臓脂肪を呼び込むという負のスパイラルに陥ってしまうのです。がんをはじめ、病気のリスクを少しでも抑えるために、今日から運動や食事内容の改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。

1.創新社|糖尿病ネットワーク「内臓脂肪が増えるとがんリスクが上昇 腹囲の増加は「危険信号」
2.東洋経済新報社|東洋経済オンライン「医師が警告!「内臓脂肪」に潜む怖い病気リスク」
3.慶応大学病院医療・健康情報サイト|KOMPAS「食べ過ぎが糖尿病や心血管疾患の発症を起こすメカニズムを解明」
4.ルネサンス|ルネサンスマガジン「内臓脂肪と皮下脂肪、体脂肪の違いとは?原因とそれぞれの落とし方」
5.KAOヘルシア「内臓脂肪とは? 体脂肪・皮下脂肪との違い」[S5] 
6.ルネサンス|ルネサンスマガジン「内臓脂肪の効果的な減らし方とは?食事と運動のポイントを紹介」
参照日:2022年08月

大塚 真紀

総合内科専門医

東京大学大学院医学系研究科卒。医師、医学博士。博士号は、マウスを用いた急性腎障害に関する研究で取得。専門は、腎臓内科、透析。都内の大学病院勤務を経て、現在は夫の仕事の都合でアメリカ在住。医療関連の記事の執筆や監修、医療系動画監修、企業戦略のための医療系情報収集、医療系コンテンツ制作など幅広く行なう。保有資格:医学博士、総合内科専門医、腎臓内科専門医、透析専門医

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