第8回 保険外診療(自由診療)の考え方

第8回 保険外診療(自由診療)の考え方

弊社に一番相談が多いのがこちらの内容になります。

保険外診療とは

保険以外の治療すべてを指します。
統合医療、代替医療、民間療法、自由診療、先端医療などは基本的には同じ意味の言葉として使うことが多いです。

保険外の治療を肯定的に見ている人は先端医療ということが多いですが、否定的に見ている人は民間療法ということが多いです。

弊社では自由診療という単語を使うことが多いのでこの記事では自由診療で統一したいと思います。

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目次

先進医療

先進医療は簡単に言うと、厚生労働省の管轄の自由診療です。保険で認可されていないので自費診療という部分は同じなのですが、保険診療との混合診療が可能になります。
自由診療という大きな枠組みの中の一部に先進医療という枠組みがあるという感じです。

普通の自由診療との大きな違いは、混合診療が出来るというのもありますが、厚生労働省の管轄で信頼度が高く、民間のがん保険や生命保険などで先進医療特約が使えるという点です。

先端医療と表記している自由診療専門のクリニックなどでやっている治療に対しては、先進医療特約は使えないので注意が必要です。
インターネットなどの検索サイトで「先進医療 一覧」などで調べると100近い種類の治療が出てきます。
これは毎月更新されるので気になる人は定期的な確認が必要です。ただ、毎月更新しているのにも関わらず、一覧に載っていても「今はやっていない」と言われることもあるので、該当の医療機関に直接電話をして確認して下さい。

ただ、基本的には先進医療の中に患者様に行える治療はほとんどないのが現状です。

先進医療はほとんど使えない。

先進医療はほとんど使えないというのは、別に効果がないという意味ではなく、使える状態の患者様が少なくて、先進医療の対象となることがほとんどないという意味です。

例えば先進医療の代表的な治療で「重粒子線」、「陽子線」というのがあります。

「小児がん」や「頭頚部のがん」、「骨軟部肉腫」、「前立腺がん」などは保険診療の対象になりますが、それ以外は自由診療になります。

自由診療は基本的にはお金を払って先生が良いと言えばどんな治療でも自由に受けられます。
ただ、先進医療は厚生労働省の枠組みなので、自由度が極端に低いです。

例えばすい臓がんで肝臓に転移があると、重粒子線、陽子線で決められたがんの状態ではないので先進医療では重粒子線や陽子線を照射出来ないということになります。でも、自由診療ならば先生が良いと言えば肝臓とすい臓両方に重粒子線や陽子線を照射することが出来ます(ほとんどの医療機関ではそれでも照射してくれないとは思いますが・・・。)。

肝臓に転移が無く、すい臓にのみがんがある場合だと先進医療で重粒子線や陽子線を照射することが出来る可能性が高いですが、その場合は手術も出来ることが多いです。がんを無くすということにかけては手術に勝る治療はないので、当然、重粒子線や陽子線ではなく手術をするという話になります。

何よりこういった場合、がんを告知されるとすぐに手術の日程が決まり、考える余地すらないのがほとんどだと思います。手術が終わった後に冷静になって、他の治療を探し出して、重粒子線や陽子線にたどりつくのですが、手術が終わった後だと見えているがんがない状態なので、重粒子線や陽子線もどこに照射するのかが分からないので治療の対象にはなりえません。

主治医の先生が先進医療も含めて自由診療について薦めてくれることは絶対にない理由

仮に手術がどうしても嫌で、主治医に「重粒子線や陽子線を先進医療で受けたい」と言ったとします。
国で認可をしていない治療なので、主治医がそういった治療を推奨してくれることは基本的にはないです。

むしろ「そういう治療受けるのであれば、再発して戻ってきても僕は知らないよ」と言われる可能性の方が圧倒的に高いです。

先日も記事で伝えました(第7回 治療方法がありませんと言われたら)が、先生の立場に立って考えてみてほしいです。

国や学会で「診療ガイドライン」というマニュアルを作っています。
“このがんのこのステージならこういった治療をしなさい“というのがマニュアル化されています。もちろんこのガイドラインは保険診療以外の治療は対象にはなりません。

仮に手術をする方が良いとガイドラインに載っていた時に、その手術をやらないでガイドラインに載っていない重粒子線治療を行ったとします。その重粒子線治療を受けて必ずがんが治るのであれば問題がないのですが、一定の確率で再発して治らない患者様が出ます。

治らなかった患者様が「手術でなく重粒子線をしたから治らなかった」ということで裁判などを起こした場合、主治医は裁判に負けることがあり得ます。
「何故、ガイドラインで手術を推奨しているのに、手術をしないで重粒子線を行ったのですか?」となります。

仮に先進医療が保険診療よりも治療成績が優れていたとしても関係ないです。先進医療に関わらず自由診療を先生が薦めることはあり得ないですし、相談したとしてもすべて反対されます。

上記のすい臓がんの例の場合、手術の後にTS-1という抗がん剤をします。その後5年間の経過観察となるのですが、重粒子線や陽子線の施設でそういったことはしてくれません。
元の病院に戻って抗がん剤治療をすることになります。

基本的に主治医の反対を押し切って、手術を断り重粒子線や陽子線を受けたとして、その後その病院に戻ってきて元の先生に診てもらう話になります。
たいていは主治医に反対された時点で先進医療を諦める方向に向かいます。

これも先進医療がほとんど使えないという大きな理由の一つです。

先生の立場からするとガイドラインに載っていない治療なので、「自分は反対したけれども、患者様の強い意志で勝手に受けた」というポジションで居たい訳です。
自由診療にしても健康食品にしても、「相談されても国で認可されていない治療なので、ダメと言われるのは当たり前なのに、相談しないで下さい。」、「知らなかったと言わせてくれるなら、自己責任で受けても良いよ」というのが本音としてあります。

健康食品も含めてどうしても良いと思える治療に出会った時は、その治療を受けるにあたって先生の立場を考えて、先生を巻き込まないという優しさも考える必要があると思っています。

自由診療について

例えば自由診療の免疫細胞療法について主治医に相談すると「エビデンス(科学的根拠)がない」、「安全性が担保されていない」という話になります。

「じゃあ、免疫細胞療法ってどんな治療ですか?」と主治医に聞くと、「知らない」と答えます。

免疫細胞療法などは、今はだいたい上場企業などが中心となって行っています。その治療に関する論文も多数出ていて、症例数も何万とあることも多く、その結果も発表している治療も多いです。

それでも「エビデンス(科学的根拠)がない」と主治医の先生が言うのは、勉強不足としか言いようがないと思っています。

標準治療をやらずに自由診療をするのはお薦めできません。

ただ、勘違いしないでほしいのは、保険診療で行う標準治療と呼ばれている治療は標準ではなくて、世界最高水準の治療方法です。

標準治療を避けて、自由診療に向かったとしても標準治療よりも良い結果が出ることは少ないと思います。

例えば、局所治療でがんを無くすということに於いて、手術よりも優れた治療方法は存在しません。

手術よりも治療成績は落ちるけれども体に優しいという治療方法が無数に存在しているに過ぎません。ただ、手術の場合はがんは無くなったけれども寿命は短くなったということが多々あります。
年齢や体調なども考慮して、体に優しい治療方法を選んだ方が、治らないまでも寿命が長くなったという例がたくさんあるので、自由診療の存在意義があるのです。

後は、残念ながら標準治療をガイドライン通りに全部受けたとしても、半分以上の方が亡くなっているのが現実としてあります。
その上、最後まで治療をしてくれる訳ではなくて、2年ぐらいで「治療方法がありません」と病院から追い出されます。

自由診療のことを補完代替医療とも言います。

最高水準と呼ばれる標準治療を主治医の指示に従って全部受けたとしても、亡くなることが凄く多いのであれば、それに何かプラスして治療したいと思うのは患者様として当然の権利だと思っています。

最近では抗がん剤にプラスで免疫細胞療法や遺伝子治療を受ける患者様が多くなってきています。手術の後の再発予防で遺伝子治療という選択を取る患者様も多いです。もちろん主治医は許可しないので、主治医に内緒で受けるケースがほとんどです。体感ではそういった治療を受ける患者様の9割以上がそうだと思います。

最後に

自分自身の話をすると中学2年生の時に十二指腸潰瘍になりました。良い薬が多いので、薬を飲むといったんは治ります。ただ、季節の変わり目になるとまた再発します。

竹内 規夫

がん治療専門コンサルタント

がん相談実績20,000件以上の実績を誇る、がん治療コンサルタント。
メディアにも多く取り上げられ、「産経ニュース」、「賢者グローバル」、「医療最前線」(千葉テレビ)、「AERA」(朝日新聞出版)、「FLASH」(光文社)、「現代ビジネス」(講談社)など出演多数。

プロフィール詳細

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