健診と検診って違うものなの?知っておきたい健診と検診の違い

健診と検診って違うものなの?知っておきたい健診と検診の違い

「会社の定期健診をしているから、がん検診は必要ない」。

このように思っている方もいるのではないでしょうか。健診と検診は同じく「けんしん」と読むため、同じようなものと思っている方もいると思います。

しかし、「健診」と「検診」では、目的も内容も全く違うものです。

健診では何が行われ、検診ではどういったことがわかるのでしょうか。そして、がん検診ではどのようなことが行われて、どういったメリットがあるのでしょうか。

これまで検診を受けたことのない方はぜひ参考にしてください。

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目次

健診と検診の違い

健診と検診を混同している方も少なくないと思います。

健診と検診は同じ読みのため、特に会社の定期健診しか受けたことがない方の中には違いがわからない方も多いのではないでしょうか。まずは、健診と検診の違いについて詳しく見ていきましょう。

健診とは

健診とは健康診断の略で、自身の健康状態を把握することで、病気にならないことを目的としています。健診は「病気を発見する」というよりは、現在の健康状態を確認し、病気を予防することに主眼が置かれたものです。

会社や学校で行われる定期健診は、誰もが一度は受診したことがあるのではないでしょうか。企業では、労働者に対して年に1 回以上の定期健診を行うことが法律で義務付けられています。また、学校での児童・生徒への健診も法律によって義務付けら れています。

健診でチェックされるのは、肥満はないか、血圧は正常か、血液検査や尿検査でおかしなところはないかといったことです。健診の結果、病気の可能性がある場合には再検査が促されます。

また、40歳から74歳を対象にしたメタボリック症候群に特化した「特定健康診査 」、いわゆる「メタボ健診」は、生活習慣病のリスクを診断するものです。健診の結果、生活習慣病のリスクが高いと判断された場合、栄養士や保健師による生活習慣指導が実施されます。

検診とは

一方、検診とは、特定の病気を早期に発見することを目的に行われるものです。がんの早期発見を目的としたがん検診や、虫歯や口腔内の病気を早期に発見するための歯科検診などが代表例です。

特にがんの死亡リスクを下げるには早期発見・早期治療が重要で、肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮がん、卵巣がんなどさまざまな種類のがんにおいて、検診が行われています。超音波検査やCT検査、MRI検査、PET検査などの検査技術の進歩によって、より早期のがんの発見もできるようになってきています。

健診が全身の状態を総合的に検査するもので、検診は胃がん検診なら胃、大腸がん検診なら大腸といったように、特定の部位への検査のことと覚えておいてください。

健診と検診でわかることは違う?

健診と検診とでは、目的が異なるため、検査によってわかることも違います。例えば、全身の健康状態を把握するために行われる健診では、体の大まかな健康状態は把握できますが、がんなどの特定の疾患の有無はわかりづらいといえます。

「検診でわかること」と「健診でわかること」を理解しておきましょう。

健診でわかること

健診では、全身の健康状態を把握するためにさまざまな検査が行われます。例えば、肥満かどうか、視力や聴力に問題はないか、高血圧(または低血圧)の有無、肝臓の機能に問題はないか、動脈硬化の兆候はないか、糖尿病のリスクはないかなどを調べることが可能です。

健診で行われた各種検査の結果が基準範囲内であるかどうかはもちろん、基準範囲内であっても過去の数値からの推移や変化などをチェックすることで、より適切に自身の健康状態を管理できるようになります。

とはいえ、健診で行われるのは、あくまで全身の健康状態を把握するための検査です。がんなどの特定疾患を見つけることはできません。

検診でわかること

全身の健康状態を診断して病気の兆候がないかがわかる健診に対して、特定の病気にかかっていないかどうかがわかるのが検診です。検診の検査項目は、健診より多岐にわたることが一般的です。

健診では血液検査や胸部X線検査などが行われますが、検診ではそれらに加えて、肺機能検査、胸部・腹部CT検査、腹部超音波検査、腫瘍マーカー、胃カメラ、マンモグラフィーなどの検査が行われます。さらに、検査する方が希望する場合は、より細分化された検査をオプションとして追加することも可能です。

胃がん検診であれば胃カメラ、乳がん検診であればマンモグラフィーといったように、詳細な検査を行うことで、健診だけではわからなかった特定の疾患の有無を明らかにしていくのが検診です。

がん検診とは

検診の代表例といえば、がん検診です。

この記事を読んでいる方の中にも、「職場の健診を毎年受けているけれど、がん検診も受けた方がよいのか」と考える方も多いのではないでしょうか。

がん検診とはその名の通り、がんにかかっていないかどうかを調べる検査のことです。ここでは、がん検診の流れや種類と対象者、メリットと注意点を詳しくお伝えします。

がん検診の流れ

がん検診とは、検診そのものだけではなく、「体にがんがある」あるいは「体にがんがない」ということが明らかになるまでの全ての過程のことです。

例えば、がん検診で「がんの疑いがない」と判明した場合、がん検診はそこで終了です。

一方、がん検診で「がんの疑いがある」と診断された場合、次に精密検査が行われます。精密検査の結果、がんと診断されればがん治療に移行します。

その過程もがん検診の一部です。精密検査の結果、「異状なし」あるいは「良性の病変(身体的変化)」と診断された場合、がん検診は終了します。

がん検診の種類と対象者

国が推奨しているがん検診と対象者は以下の通りです。

がん検診の種類対象者
胃がん健診50歳以上(胃部X線検査は40歳以上)
子宮頸がん検診20歳以上の女性
肺がん検診40歳以上
乳がん検診40歳以上の女性
大腸がん検診40歳以上

これらのがんは、ある年齢から発症率が高まるといわれています。そのため、対象年齢から補助を行う自治体も少なくありません。がんの死亡リスクを下げるには、何より早期発見・早期治療が重要です。

対象年齢になったら、がん検診を積極的に受けることをおすすめします。

がん検診のメリットと注意点

がん検診の最大のメリットは、がんの早期発見・早期治療ができることによる死亡リスクの低下です。がんは早期発見・早期治療であればあるほど、予後はよくなります。

がんは早期であれば治癒する可能性が高く、治療も軽く済むことが多いため、身体的負担、経済的負担ともに小さくなります。

一方、がん検診の結果が「100%正しい」とは言い切れない点には注意が必要です。

がん検診での「異常なし」という診断は、「体にがん細胞が一切ない」ということとイコールではありません。がん検診の技術は年々進歩していますが、まだ見つけ切れないがんも残念ながらあります。

【まとめ】健診と検診の違いについて

全身の健康状態を把握することで、病気の予防につなげることが健診の目的です。

一方、胃がんや大腸がん、乳がんなどの特定の疾患にかかっているかどうかを調べるのが検診です。

多くの方が健診を毎年受けていると思います。しかし、がんのような大きな病気を早期発見するのには、健診だけでは不十分といわざるを得ません。健診と検診、どちらか一方だけではなく、どちらも定期的に行うことをおすすめします。どちらも定期的に行うことで、健康状態の維持や大きな病気の予防に役立てられるでしょう。特に、国が推奨するがん検診は、ある年齢から発症リスクが高まるがんの健診です。

自治体が補助 するケースも少なくありませんので、対象年齢になったら積極的に受けましょう。

1.健康マスター検定協会|ご存知ですか? 健診と健診の違い
2. ミッドタウンクリニック名駅|同じ“けんしん” 「健診」と「検診」はどう違う?
3. e-Gov法令検索|学校保健安全法
4. ささき医院|健診と検診の違いって?
5. e-ヘルスネット|検診
6. 船員保険会|健康診断でわかること
7. 東京高輪病院|健康診断でわかること
8. 船員保険会|血液検査(一般検査)
9. T-PEC|何がわかる?健康診断
10. ミッドタウンクリニック名駅|意外と知らない!?「健康診断」と「人間ドック」の違い
11. がん情報サービス|がん検診について
12. 人間ドックなび|胃がん検診の受診推奨年齢は?受診頻度から費用までを解説
13. 公益財団法人東京都予防医学協会|子宮がん検診
14. がん情報サービス|肺がん検診について
15. がん情報サービス|乳がん検診について
16. がん情報サービス|大腸がん検診について
17. 公益財団法人日本対がん協会|がん検診のメリット・デメリット
参照日:2022年12月

大塚 真紀

総合内科専門医

東京大学大学院医学系研究科卒。医師、医学博士。博士号は、マウスを用いた急性腎障害に関する研究で取得。専門は、腎臓内科、透析。都内の大学病院勤務を経て、現在は夫の仕事の都合でアメリカ在住。医療関連の記事の執筆や監修、医療系動画監修、企業戦略のための医療系情報収集、医療系コンテンツ制作など幅広く行なう。保有資格:医学博士、総合内科専門医、腎臓内科専門医、透析専門医

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