「腫瘍マーカー検査は健康診断で受けるべき?」
健康診断を受診する際に腫瘍マーカーを受けるべきかお悩みの方がいるのではないでしょうか。腫瘍マーカーにどのような意味があるのかわからず、迷う方もいるでしょう。
本記事では、腫瘍マーカーのメリットや検査項目の意味などについて解説します。検査の重要性を知り、必要に応じて適切な検査を受けましょう。
目次
腫瘍マーカーとは

腫瘍マーカーとは、主にがん細胞によって作られるたんぱく質を含む物質です。
がんの種類や臓器によって複数の特徴があります。腫瘍マーカー検査とは、がんの診断や治療後の経過観察、治療効果判定のサポートとして活用される検査のことです。腫瘍マーカーの値が上昇するとがんの量が増加し、減少するとがんの量が減ると想定されています(※1)。
腫瘍マーカー検査は、あくまでがんの診断をサポートする位置づけです。
そのため、がんの診断や経過観察などを行う際は、画像診断検査や病理検査などを含め、医師が総合的に判断しなければなりません。腫瘍マーカーの値のみでがんと診断されるわけではないことに注意しましょう。
腫瘍マーカー検査のメリット・デメリット
腫瘍マーカー検査にはメリットもあれば、デメリットもあります。これから検査を受けるか悩んでいる方は、両方を踏まえ、受診を検討してください。
腫瘍マーカー検査のメリット
腫瘍マーカーによる検査は比較的簡単に実施できますが、単独の場合ではがんと診断することが難しいとされています。
しかし、CTやMRI、病理検査や内視鏡検査などを組み合わせると、がんを発見できる確率が高まります(※2)。
腫瘍マーカーは、がんと診断されたあとの治療効果を判断したり、治療後の状態を把握したりするための指標として重要です。
腫瘍マーカー検査のデメリット
腫瘍マーカーの検査では、良性の病気であったとしても陽性と判定されるケースがあります。腫瘍マーカーの値は、糖尿病や腎機能障害、肝機能障害や組織の炎症といった代謝・排泄の変化に影響されます。そのため、陽性判定だったとしてもがんが必ず存在するわけではありません。
また、早期がんの場合、腫瘍マーカーが陰性となるケースもあります。腫瘍マーカーには臓器特異性(特定の臓器にのみ認められるような病態や症状、または特定の臓器に転移する性質)の高いものと低いものの両方が存在するのが特徴です。
特異性が低い場合や値が異常値であってもどの臓器に発症したがんかが判別できません。
このように、がんを診断するためには腫瘍マーカーだけでは不十分であるため、必ず病理学的診断や画像診断をもとに判断する必要があります。
腫瘍マーカー検査の費用

腫瘍マーカー検査の費用は、再発とかの確認フォローでない限り基本的に自費診療扱いです。費用の目安としては、1項目あたり2,000〜6,000円程度(※税込)です。一方で、複数の項目をまとめて検査する場合は、8,000円程度になる場合もあります。
医療機関によって検査できる腫瘍マーカー検査の項目は異なるため、受診を検討している病院・クリニックがある場合は、検査項目を確認してみましょう。とはいえ、どの項目を選ぶべきか迷う方が多いのではないでしょうか。このような場合は、医療機関を受診する際に、担当の医師に相談してください。
腫瘍マーカー検査が保険適用になる条件としては、がんの確率が高い場合もしくはがんと診断された場合のみです。
腫瘍マーカーの種類
腫瘍マーカーの種類はさまざまです。以下の表を確認し、医師の指示のもと、適切な検査を受けましょう。(※5)
腫瘍マーカーの種類 | 概要 |
---|---|
γ-Sm(γ-セミノプロテイン:gamma-seminoprotein) | 前立腺組織に存在する前立腺特異抗原の1種。前立腺肥大症では陽性の確率が高いため、他の前立腺腫瘍マーカーと一緒に用いる。 |
TPA (組織ポリペプチド抗原:tissue polypeptide antigen) | 特異性の低い腫瘍マーカー。複数の悪性腫瘍で陽性を示すものの、良性の病気における陽性の確率も高い。がんの進行度に応じて測定値が増えたり減ったりする。治療効果の判定に用いる。 |
CEA (がん胎児性抗原:carcinoembryonic antigen) | 大腸がん組織の抽出物。胎児の消化管にも存在する。食道・胃・直腸などの腫瘍マーカーとして活用される。糖尿病などでも上がりやすい。 |
NSE (神経特異エノラーゼ:neuron-specific enolase) | 神経内分泌細胞に含まれる酵素。神経内分泌系の腫瘍マーカーとして用いられる。 |
SCC (扁平上皮がん関連抗原:squamous cell carucinoma-related antigen) | 扁平上皮がん細胞から抽出された抗原。子宮頸部・肺・食道・皮膚の扁平上皮がんで高値を示し、扁平上皮がんの診断や治療効果の判定に用いられる。 |
CA19-9 (carbohydrate antigen19-9) | 膵臓・胆道がんで陽性の確率が高い。膵臓がんの治療効果の判定や腫瘍のスクリーニングなどで用いられる。 |
AFP (α-フェトプロテイン:alpha-fetoprotein) | 胎生期の卵黄のうや肝臓で生理的に生成されるがん胎児性蛋白。肝芽細胞腫・ヨークサック腫瘍・肝硬変・肝炎・妊娠後期にも高値を示す。肝細胞がんのスクリーニングや治療効果の判定として用いられる。 |
PIVKA-Ⅱ (異常プロトロンビン:protein induced by vitamin K absence-2) | ビタミン欠乏時に産生される。肝臓がんの診断や治療経過の観察の際に用いられる。 |
DUPAN-2 (膵がん関連糖蛋白抗原:pancreatic cancer associated antigen) | 膵がん、胆道がん、肝がんで高い陽性の可能性が認められ、消化器系の腫瘍マーカーとして用いられる。 |
CA125(carbohydrate antigen125) | 卵巣がんで8割程度の陽性率を認める(※4)。しかし、子宮内膜症や性周期、妊娠により血中濃度が上昇するため判定には注意が必要。 |
IAP(免疫抑制酸性蛋白:immunosuppressive acidic protein) | 主にマクロファージで産生され、免疫能を抑制する。免疫機能の低下や炎症性の疾患などでも測定値の上昇を示すため、がんとの区別が必要。 |
腫瘍マーカー検査や項目について詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひご覧ください。
腫瘍マーカー検査に関するよくある質問
腫瘍マーカー検査に関するよくある質問をまとめました。以下の内容を確認し、腫瘍マーカー検査について理解を深めましょう。
Q1:腫瘍マーカー検査は意味ないですか?
A1:腫瘍マーカーの値は、がんが存在するのに低かったり、がんが存在しないのに高くなったりするため、必ずしも有効ではありません。しかし、がんの診断や診断後の経過観察、治療効果の判定をサポートする手段としては有効です。
Q2人間ドックで腫瘍マーカーの値が高かったのですがどうすればいいでしょうか?
A2:腫瘍マーカーの値は、がんが存在しなくても高くなることがあります。そのため、がんと断定されるとは限りません。医療機関を受診し、医師の指示に従う形で精密検査を受けましょう。
Q3:腫瘍マーカーのなかで女性・男性特有の項目は何ですか?
A3:男性特有の項目は、前立腺がん早期発見をサポートするPSA(Rostate Specific Antigen)です。女性特有の項目は、子宮内膜症や性周期、妊娠によって値が上昇するCA125です。
自分に合った腫瘍マーカー検査を選択しよう

腫瘍マーカー検査は、がんを診断するための十分な検査ではありません。しかし、診断を補助したり、がんと診断されたあとの治療効果を判断したりするために有用な検査です。腫瘍マーカー検査の費用や、受診できる項目は医療機関によって異なります。
どの項目の検査を受けるべきか迷う方は、一度医療機関を受診し、担当の医師に相談してください。自分にとって必要な検査を受け、健康管理につなげましょう。
(※1)国立研究開発法人国立がん研究センター|腫瘍マーカー検査とは
(※2)順天堂大学医学部附属順天堂医院|がん治療センターニューズレター
(※3)東京慈恵会医科大学附属病院新橋健診センター|年齢・性別でおすすめのオプション検査
(※4)独立行政法人国立病院機構大阪医療センター|1.腫瘍マーカーとは
参照日:2024年12月