血液検査でわかることは何?どんな病気を見つけられる?もしも異常値が出たらどうすればいい?

血液検査でわかることは何?どんな病気を見つけられる?もしも異常値が出たらどうすればいい?

皆さんは定期的に血液検査を受けていますか?中には、「受けてはいるけれど内容はよくわかっていない」「ほとんど受けたことがない」といった方もいるのではないでしょうか。

本記事では、「血液検査で何がわかるの?」「血液検査を受けるメリットは?」「検査で異常な数値が出たらどうすればいいの?」といった血液検査にまつわる疑問を解決していきます。これまで定期的に血液検査を受けたことがない方はもちろん、「なんとなく受けていた」といった方もぜひ参考にしてください。

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目次

血液検査を受けるメリット

「そもそも何のために血液検査を受けるの?」と疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。まずは血液検査を受けるメリットについて見ていきましょう。

血液は血管を通して、私たちの体の隅々に酸素や栄養などを送り届ける役割を果たしています。血液検査は、血液に含まれる細胞や抗体、酵素などを数値化して、病気の発見や将来的な病気のリスクを判定する検査です。

生活習慣病の中には、初期段階では自覚症状がほとんどない病気も多く、自覚症状が出現する頃には病気が相当進んでしまっている場合も少なくありません。血液検査を行うことで、早期に病気のリスクを把握でき、生活習慣の改善など病気の予防に役立てられます。

血液検査の基準値について

血液検査の基準値とは、検査を受けた人が病気であるのか、あるいは問題がないのかを判定するための数値となります。

ただし、ここで注意しなければならないのは基準値から外れていたからといって必ずしも病気というわけではない点です。また、基準値に収まっていたとしても問題がないわけではありません。

基準値と正常値はイコールではありません。基準値とは、健康な人の95%が含まれる値のこと です。反対に言えば、健康であっても5%の人が基準値から外れることになるわけです。一つの値だけに注目するのではなく、検査結果を総合的に見ていく必要があります。

血液検査でわかる病気

次に、血液検査でわかる病気について詳しく見ていきましょう。

肝炎や栄養障害の疑い

AST(GOT)、ALT(GPT) の検査では、肝炎や脂肪肝などがわかります。ASTは肝細胞や心臓、腎臓、筋肉に存在する酵素 で、ALTは肝臓や胆管などに存在する酵素 です。いずれも基準値は30U/L以下であり(※1) 、数値が高い場合、肝臓の疾患の可能性があります。ASTが高いとアルコール性肝炎、ALTが高いと脂肪肝や肝炎などが疑われるでしょう。

総たんぱくの基準値は6.5~7.9g/dLですが、低くても高くても病気が疑われます(※2)。数値が低い場合の異常値は6.1g/dL以下(※2)。栄養障害、肝臓がんなどが疑われます。数値が高い場合の異常値は8.4g/dL以上。多発性骨髄腫、慢性炎症、脱水の可能性があります(※2)

腎不全の疑い

腎臓系の病気を判断するための数値は、Cr(クレアチニン)とeGFR(イージーエフアール)です。クレアチニンは筋肉量が多いほどその量も多くなるため、基準値は男女によって異なります。男性の基準値は1.00mg/dL以下、女性は0.70mg/dL以下(※3)。異常値は男性が1.30mg/dL以上、女性が1.00mg/dL以上ですが、高すぎる数値は腎臓の機能が低下していることを意味します(※3)

クレアチニンより精度の高い指標がeGFRです。eGFRは、クレアチニンに年齢や性別の要素を補正して算出するため、基準値や異常値に男女差はありません。基準値は60.0mL/分/1.73㎡以上。44.9mL/分/1.73㎡以下の場合 、腎機能の低下していることを意味します(※2)

生活習慣病の疑い

HDLコレステロール、LDLコレステロール、Non-HDLコレステロールなどの数値からは生活習慣病のリスクがわかります。

HDLコレステロールの基準値は40~119mg/dL(※4) 。34以下が異常値で、数値が低くなると脂質代謝異常や動脈硬化などが疑われます(※2)

LDLコレステロールは俗に「悪玉コレステロール」と呼ばれるものです。基準値は60~119mg/dL。異常値は180mg/dLです。LDLコレステロールが多すぎると動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞の将来的なリスクが増大します(※2)

Non-HDLコレステロールの基準値は90~149mg/dL(※2)。高すぎても低すぎても異常と判断され、89mg/dL以下の場合は肝硬変、栄養障害、低βリポたんぱく血症など、210mg/dL以上の場合は動脈硬化、甲状腺機能低下症、脂質代謝異常、家族性高脂血症などが疑われます(※2)

糖尿病の疑い

糖尿病の有無や糖尿病のコントロール状況を判定するための数値はFPG(空腹時血糖値)とHbA1C(ヘモグロビン・エーワン・シー)です。

血糖値の基準値は99mg/dL以下。異常値は126mg/dL以上で、数値が高い場合に疑われる疾患として、糖尿病、膵臓(すいぞう)がんなどがあります(※2)

糖尿病のコントロール状況を知るには、過去1~2カ月の血糖値の平均値であるHbA1Cを確認しましょう。糖尿病と判断する数値として、FPG が126mg/dL以上、なおかつHbA1cの値が6.5%以上となります(※2)

貧血や感染症の疑い

血球系検査の検査では、貧血など血液系の病気の有無がわかります。赤血球の数が多すぎると多血症、少なすぎると貧血が疑われます。

血色素は酸素の運ぶ役割を担っています。男性が12.0g/dL以下、女性が11.0g/dL以下が異常と判断され、数値が減少している場合、鉄欠乏性貧血が疑われるでしょう(※2)

血液全体に占める赤血球の割合が、Ht(ヘマトクリット)です。この数値が低い場合の疑われる症状として、鉄欠乏性貧血、高い数値だと多血症、脱水などがあります。CRPの数値で、細菌・ウイルス感染、炎症、がんなどがわかります。なお、基準値は0.30mg/dL、異常値は1.00mg/dLです(※2)

痛風の疑い

UA(尿酸)の値からは、痛風のリスクが判断できます。基準値は2.1~7.0mg/dL(※2)。異常値は9.0以上で、数値が高くなると、高尿酸血症と判断されます。高尿酸血症が続くと結晶として関節にたまり、痛みを伴うと痛風発作を引き起こしやすくなります(※2)

がんの疑い

NSE、CA-125、CEA、SLX、CYFRA、SCCなどの腫瘍マーカーの数値 からは、がんの有無を判断できます。例えば、大腸がんや胃がん、肺がんなどが発生すると、CEAの値が上昇します(※5) 。ただし、糖尿病などでもマーカーの値はあがるので、画像検査など含め総合的に判断が必要です。

異常値が出た場合の対処法

血液検査で異常値が出た場合、通知の種類には「要経過観察」「要再検査」「要精密検査」の3段階があります。

要経過観察は、数値に異常値が出たものの、すぐに治療が必要というものではありません。 1年後の人間ドックや健康診断で経過を観察すれば問題ない場合が一般的です。しかし中には、3カ月後、半年後のタイミングで検査を勧められるケースもあります。その場合は勧めにしたがって、適切なタイミングで検査を受けましょう。

要再検査とは、「数値に異常があったので再度同じ検査を受けてください」という通知です。同じ検査を再度受けることで、数値が悪かったのが一過性のものなのか、病気を原因としたものなのかを判断する意味合いがあります。 要再検査の診断結果票が届いたら、時期や検査内容を確認したうえで速やかに再検査を受けましょう。

要精密検査となった場合、できるだけ早く専門医療機関を受診しましょう。 専門医療機関とは、例えば、糖代謝異常であれば糖尿病内科、血圧異常は循環器内科、肝機能異常は消化器内科などです。

自覚症状が伴わない病気の早期発見のためにも定期的に血液検査を受けましょう

血液検査は、がんをはじめとしたさまざまな病気の早期発見にとても有効的です。血液検査では、肝臓や腎臓の病気、糖尿病をはじめとした生活習慣病などさまざまな病気の有無がわかりますが、それらの多くは初期段階で強い自覚症状は伴いません。ただし、血液検査を受けない状況が続くと、気づいたときには病気が相当進行してしまっているということになりかねません。

どのような病気でも早期に発見できれば症状は軽度であり、治療の効果も高くなります。自覚症状が伴わない病気の早期発見のためにも定期的に血液検査を受けましょう。

(※1)全国健康保険協会|肝機能の数値が高いと考えられる意外な病気!?
(※2) 日本人間ドック学会|検査表の見方
(※3)東京大学 保健センター|クレアチニン
(※4)厚生労働省|行政との連携による健保組合のコラボヘルス取組事例
(※5)国立国際医療研究センター病院|検査結果の見方
参照日:2024年2月

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

プロフィール詳細

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