高度異形成は「がんではないが、がんに近い状態」と説明されることが多いため、診断後に不安を抱える方もいるでしょう。
本記事では、高度異形成の原因や自然治癒の可能性、円錐(えんすい)切除などの治療法について、詳しく解説します。
目次
高度異形成とは?がんとの違いと位置づけ

高度異形成は子宮頸がんの前段階とされ、子宮頸部上皮内腫瘍(CIN:Cervical Intraepithelial Neoplasia)とも呼ばれています。
子宮頸部の扁平上皮病変は異常な細胞が上皮のどの深さまで広がっているかによって、以下に分類されます。
- 軽度異形成(CIN1)
- 中等度異形成(CIN2)
- 高度異形成、上皮内がん(CIN3)
病変が上皮全体に広がった「上皮内がん」は、CIN3に該当します。異形成が起きるのは子宮頸部を覆っている上皮細胞と、その下にある間質細胞(非上皮性細胞)ですが、高度異形成は上皮の全層の2分の3以上に異常細胞が見られる状態です。また、基底膜を超えておらず、この段階で他臓器へ転移することも稀と言われています。
また、このような異形成があったとしても、すぐにがんに進行するとは限りません。あくまで、進行する可能性のある「前がん病変」に分類されます。
なぜ高度異形成が見つかるのか|原因とHPVとの関係

高度異形成は、自覚症状がないケースがほとんどです。
そのため、子宮がん検診をきっかけに発見される場合が少なくありません。
子宮頸がんや高度異形成の主な原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV;Human Papillomavirus)の持続感染です。高度異形成の段階では、ハイリスク型HPVの検出率が90%以上と検出される頻度が多い点も特徴です(※1)。多くの場合、性交渉をきっかけに生じます。
HPVは日常的によくある菌で多くの方が感染するとされていますが、感染したすべての方が子宮頸がんになるわけではありません。多くの場合は免疫機能によって、ウイルスは自然と排出されています。
高度異形成が発見される年代は、20代と30代の女性が最も多いとされています(※1)。また、HPV感染は男性でも起こり得るもので、肛門がんや陰茎がん、中咽頭がんを引き起こす要因となります。他にも、HPV感染以外の危険因子として、喫煙やヒト白血球抗原(HLA;白血球の血液型)、出産回数などが挙げられます。
高度異形成と診断されるまでの検査の流れ
異形成を診断する場合、まずは子宮頸部の細胞を取り顕微鏡で調べる「細胞診」を行うのが一般的です。同時に、細胞診によって採取した細胞がハイリスクHPVに感染しているか調べる検査も実施します。
細胞診で異常が見られた場合、どの程度の異常が起きているかを調べるために、二次検診として、コルポスコピー診と組織診の精密検査が行われます。
コルポスコピー診では、コルポスコープ(拡大鏡)を用いて膣や子宮頸部の表面を観察して、正常・異常・浸潤がん・評価不能の4つのカテゴリーから評価します(※2)。また、組織診は、病変が疑われた部位から数ミリの組織を採取して、病変の深さを調べます。がんの診断で行われる病理検査であり、細胞診よりも組織の構造を詳しく調べられ、診断の精度が高いとされています。
高度異形成と診断された場合は、子宮以外にも異常がないか調べるために、エコーやCTなどの画像検査が行われます。画像検査では、病巣の広がりや子宮頸部の状態確認を詳細に行うことが可能です。
高度異形成は自然に治る?経過観察と治療の考え方
子宮頸部異形成と判断された場合、異形成の程度によって治療の考え方は異なります。
ここでは経過観察が可能な状態の目安と、高度異形成に対する基本的な治療方針について説明します。
高度異形成は自然に治ることがあるのか
子宮頸部異形成の原因されるハイリスク型のHPVに感染しても、軽度異形成(CIN1)の段階であれば、その多くは自然治癒します。一方で、HPV感染が持続した症例の一部が数年から10年の長期間で子宮頸がんに進展するとも言われています(※1)。
基本的に子宮頸部異形成が「軽度」または「中等度」の場合、自然治癒の見込みがあるため経過観察の対象です。しかし、高度異形成の場合は、治療が必要と判断されるケースが少なくありません。
高リスク型HPVの感染が多く、細胞の変化も進んでいるため、自然に治癒する割合は極めて低いとされているからです。
なぜ治療や手術が勧められることが多いのか
がんの前段階とされる高度異形成ですが、なぜ経過観察ではなく治療や手術が必要とされるケースが多いのでしょうか。
その理由としては、確定診断にあります。高度異形成と診断された場合、上皮内がん(AIS)と見分けがつかないケースも少なくなく、確定診断のために円錐切除術を行う必要があるからです。
一方で、慎重な経過観察を選択するケースもあります。例えば、妊娠を希望されている患者さんの場合、年齢や病変の広がり方などを考慮して、経過観察で様子を見ます。円錐切除術を行うことにより、将来的に妊娠が困難になったり、または早産率が高まったりする懸念がゼロではないからです。手術のリスクも含めて、主治医と相談する必要があります。
円錐切除とは|必要性と将来への影響

高度異形成の標準的な治療方法は円錐切除です。治療という側面以外にも、これは病変を取り除く治療だけでなく、がんが隠れていないかを詳しく調べる確定診断を兼ねた重要な手術でもあります。
ここでは、具体的な手術方法や妊娠や出産への影響について、具体的に解説していきます。
円錐切除とはどんな手術か
円錐切除とは、子宮頸部を円錐状に切り取る手術で、高度異形成に有効な治療法です。治療以外にも、上皮内がんに進行していないか見極めるといった診断の側面も担っています。
手術は麻酔下で行われ、30分程度で終了するのが一般的です。日帰りや1泊から2泊程度の短期間入院で実施されます。基本的に膣から器具を入れて行う手術のため、お腹に傷が残ることもありません。
切除部分はかさぶた状になっているため、退院後に稀に少量の出血が見られる場合があります。傷が治るまで4週間から7週間程度かかるとされているため、その期間はスポーツや性交渉は避けましょう。
円錐切除は子宮を温存できる治療法ですが、子宮の入り口が狭くなる(頸管狭窄:けいかんきょうさく)ことで、経血の排出に支障をきたしたり、不妊につながったりするリスクがあります。
円錐切除後の妊娠・出産への影響
円錐切除後は子宮を温存することができますが、切除によって子宮頸管(子宮の出口)が短くなるため、その後の妊娠・出産においてリスクを伴うことがあります。
実際に、円錐切除後に妊娠した場合の早産率は約17%とされており、手術を受けていない場合の早産率約6%と比べて高いという報告もあります。円錐切除後に妊娠した場合は、早産のリスクを念頭に置き、定期的な妊婦健診をきちんと受けながら慎重に経過を見ましょう。
一方で、妊娠中に高度異形成が見つかった場合、通常は出産後に手術を検討します。妊娠中の円錐切除は流産や出血のリスクが高いため、浸潤がんが強く疑われるなど緊急性が高いケースを除き、慎重に経過を見るのが一般的です。
将来的に妊娠を希望されている場合は、がん化のリスクと妊娠・出産への影響を考慮し、治療方針を選択する必要があります。不安や疑問点は担当医と十分に相談し、納得のいく治療を決定しましょう。
高度異形成で迷ったときは専門医に相談へ
がんの前段階とされる高度異形成と診断されると、「自然治癒しないのか」「手術は本当に必要なのか」と、不安を抱く方は少なくありません。
高度異形成の手術は治療が基本です。治療内容によっては妊娠や出産への影響を考慮するため、治療方針の決定には慎重な判断が求められます。
治療方針に迷いがある場合は、自己判断せず、主治医とは別の視点から専門家の意見を聞くことも一つの選択肢です。必要に応じて無料相談などを活用し、納得できる形で治療を選択していきましょう。
(※1)東邦大学医療センター大橋病院 産婦人科|子宮頸部異形成について
(※2)国立がん研究センター|子宮頸がん 検査

















