がんになったら不妊治療や妊娠は諦めないといけないのか。妊活とがん治療について

がんになったら不妊治療や妊娠は諦めないといけないのか。妊活とがん治療について

最近、よく妊活という言葉を聞きます。

妊活は「子どもを希望するカップルが妊娠のためにする行動」

このような認識でしょうか。

今回のテーマである不妊治療というのは妊活の一つだと言えますが、不妊症(妊娠を希望し、性交渉をするも一定以上の期間妊娠しないこと)のカップルをサポートするための治療全般のことを指します。おおむね、医師からの適切な指導、薬物治療、人工授精、体外受精、顕微授精などが含まれます。

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目次

不妊治療をする前にすすめられるがん検査

不妊治療は、婦人科や不妊治療の専門病院などで受けることができます。まずは男女ともに妊娠しやすい体かどうかを調べるため複数の検査を行うのが一般的です。

病院ごとにばらつきは見られるようですが、がんの検査という点からみると、最も重要視されているのは「子宮頸がん」の検査です。

子宮頸がん検査を不妊治療前に行うことによって、もしがんが発症していたら、場合によってはがん治療を優先することになります。

また、不妊治療でよく使われる「排卵誘発剤」という女性ホルモンをコントロールする薬を服用することでがんが進行する可能性も指摘されているため、子宮頸がんではないことを確認してから不妊治療を行うことは大事なことなのです。

がん治療の妊娠への影響

不妊治療においては、治療開始前に予めがんではないことを確認することが大事だとわかりました。それでも、もし不妊治療中にがんが見つかってしまった場合はどうなるのでしょうか。

妊孕性のこと

女性が妊娠する能力のことを「妊孕性(にんようせい)」と言います。

近年、がん治療の技術が向上し、がん患者さんの予後が改善されたため、がんを克服したあとの人生にも目が向けられ始めました。その結果、妊娠を希望する人の妊孕性まで考慮することが重要視されてきたのです。

それにもかかわらず、がん治療というのは厳しいもので、一度治療によって妊孕性が低下すると現代の医学では回復させることはできません。それゆえ、なおさら今後妊娠を希望する場合は、妊娠する力や胎児への影響を考えなければいけません。

がん治療はがんの進行によって治療法が異なりますが、妊娠や胎児に影響を及ぼすものとそうでないものがあります。それゆえ、不妊治療とがん治療、必ずしもどちらかをあきらめる必要はありません。しかし、その一方で悪影響を与えると考えられる治療には注意が必要です。

以下にそれらをご紹介します。婦人科系のがんに限らずすべてのがん治療に共通です。

抗がん剤

抗がん剤によって、卵巣機能の低下や早期閉経が起こり、患者によっては妊孕性が一過性もしくは完全に失われてしまうことがあります。これを抗がん剤の卵巣毒性といいます。毒性の強さは抗がん剤の種類によって異なります。

なお、乳がんの抗がん剤は治療が長期にわたることがあり、さらに抗がん剤後6か月間妊娠は避けたほうが良いとされています。妊娠中も経過観察が必要です。

カップルの年齢によっては妊娠を急ぐ場合もありますので、治療に時間を取られることで起こる卵子や精子の質の低下なども気になります。

手術

卵巣や子宮の切除範囲によります。両側卵巣摘出、単純子宮全摘、広範子宮全摘では卵巣や子宮を全て切除するため、その後妊娠が望めなくなります。

妊娠を希望する場合にはそれを考慮した切除範囲に変更することもできますが、がんの進行次第です。また、手術で癒着があった場合に、妊娠中の腸閉塞や帝王切開時の腸管損傷などのリスクが高まるとされています。

放射線

放射線を当てる場所と量が関係します。卵巣に影響を及ぼす、骨髄移植前の全身照射、腹部骨盤への照射、ホルモンをつかさどる脳への全脳照射が影響を及ぼすとされています。

腹部骨盤への照射は流産・早産の可能性が高まり、低出生体重児の可能性も高まるとされています。全脳照射は、ホルモンの分泌が不十分になることで妊孕性の低下が指摘されます。

今後の妊娠希望者にはなるべく生殖器に放射線をあてないよう治療する場合もあります。

妊孕性の温存

治療による妊娠への悪影響が避けられない場合「凍結」という手段もあります。治療を行う前に、前もって卵子や胚を凍結しがん治療に臨むのです。

白血病、乳がん、(非)ホジキンリンパ腫が適応です。

胚、卵子凍結保存

がん治療前に胚や卵子を採取し凍結します。治療が終わった後、子どもを望んだタイミングで胚を子宮に戻します。処置の期間が最大2か月を要しますので、治療が迫っている場合は困難です。

卵巣組織凍結保存

卵巣皮質を凍結する方法です。初経前の女性やがん治療の開始まで時間的余裕がない人に有効です。凍結卵巣組織を移植することでがん細胞を再度挿入してしまうリスクがあり、安全性が確立されていないため研究段階の処置といえます。

がん治療と妊娠の両立

もし、不妊治療を経て妊娠が確認されたあとがんがみつかったら、がんの種類と妊娠周期によってはがん治療と妊娠を両立できることがあります。13周期から16周期以降であれば手術や放射線も可能な場合があります。

「命」に関わる治療だから正しい情報を活用しましょう

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がん治療と不妊治療という大きなテーマでしたが、妊娠に関しては女性だけの問題ではありません。男性へのがん治療においては精子への影響や性機能障害などが関係してきます。
こちらのサイトをご覧ください。

本記事参考:がんと妊娠の相談窓口(男性がん患者のことについても参考にしてください)

また、国立がんセンターではがん医療と妊娠の相談窓口を設けています。お困りの方はこちらも参考になさってください。

国立がんセンターホームページ

不妊治療もがん治療も共に「命」の治療です。
後悔のないよう、いろいろ活用してみてはいかがでしょうか。

がんメディカルサービス株式会社

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がんメディカルサービス株式会社はがん治療の総合コンサルタントです。
がんの種類やケース、状況によって最適な治療法は異なります。
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