抗がん剤治療と食事。食べてはいけないものはある?注意点を見てみよう

抗がん剤治療と食事。食べてはいけないものはある?注意点を見てみよう

成田 亜希子

内科医

抗がん剤治療は、がん三大治療のひとつです。医学の進歩により、抗がん剤のみで治る見込みのあるがんも増えつつあります。

しかし、抗がん剤は副作用が強いというイメージを持っている方も少なくないでしょう。確かに抗がん剤には副作用がありますが、日常生活を工夫することで症状を軽減することができます。

そこで今回は、抗がん剤治療の副作用を軽減するための食事のポイントや、控えるべき食事について詳しく解説します。

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目次

抗がん剤治療中は体にどのような変化がある?

抗がん剤は、がん細胞を攻撃して増殖を抑える薬です。高い効果が医学的に立証されている抗がん剤も多くありますが、抗がん剤が攻撃するのはがん細胞だけではありません。

正常な細胞も攻撃するため、副作用が生じることも少なくないのです。まずは、抗がん剤治療ではどのような副作用が生じるのか詳しく見てみましょう。

吐き気・嘔吐

吐き気や嘔吐は、抗がん剤でよく見られる副作用のひとつです。抗がん剤で吐き気や嘔吐が引き起こされる原因はいくつかありますが、抗がん剤に嘔吐を誘発する物質が含まれていることや、消化管の粘膜を刺激すること、精神的な要因などが原因として挙げられます。

症状が現れるまでの時間には個人差がありますが、一般的には治療直後から一週間以内に生じることが多いとされています。

下痢・便秘

抗がん剤は、排便習慣にも影響を与えます。抗がん剤の種類にもよりますが、消化管の運動を促す副交感神経が刺激を受けることや、消化管の粘膜がダメージを受けることで下痢を引き起こすと考えられています。

一般的には、治療後2週間以内に現れる症状ですが、頻回な下痢によって体力を消耗してしまうことも少なくありません。

逆に、消化管の動きを鈍くするタイプの抗がん剤では、重度な便秘になることがあります。

味覚の変化

味を感じるための舌の細胞が抗がん剤によってダメージを受けると「味を感じられない」、「特定の味がわからない」など、味覚の変化が生じることがあります。また、抗がん剤治療中は唾液の分泌量が減ることも多く、口腔内環境の悪化が味覚変化の原因となることも少なくありません。

口内炎

抗がん剤が口腔内の粘膜にダメージを与えると、新たな細胞の産生を抑制することで口内炎ができやすくなります。抗がん剤治療中は唾液分量が減って口腔環境が悪くなりやすいため、口内炎も重症化しやすい傾向にあります。潰瘍になって出血を起こすケースもあり、強い痛みで水分すら摂れなくなる方もいます。

治療後数日から10日目頃に発症することが多いとされていますが、口内炎ができたときは重症化する前に適切な対処を講じることが大切です。

免疫力の低下

抗がん剤は、白血球など体の免疫力を司る細胞をつくる骨髄の機能を低下させることがあります。白血球などの細胞が減少すると、免疫力が低下して感染症にかかるリスクが高くなります。健康な人なら感染しても特に問題がない細菌や、カビで重篤な肺炎などを発症してしまうケースもあるため注意が必要です。

免疫力の低下は、一般的に、治療後一週間ほどで始まり、二週間目くらいでピークを迎えて徐々に改善していくとされています。

抗がん剤治療中の食事はどう工夫すればよい?

抗がん剤治療中には体に多くの変化が生じます。少しでもこれらの症状を軽減し、快適な治療生活を送るにはどのような食事の工夫をしたらよいのでしょうか?

のど越しがよいもの

抗がん剤治療中の食事でおすすめなのは、ゼリー、プリン、茶わん蒸し、冷ややっこ、そうめん、とろみをつけたおかずなど、のど越しのよいものです。抗がん剤の副作用で口内炎や唾液量の減少があるときは、できるだけ口の中やのどを刺激しない食事を選びましょう。

また、吐き気や嘔吐があるときものど越しがよく食べやすいものがおすすめです。温度は冷たくしたほうが食べやすいですが、過度な冷やしすぎは禁物。口腔内や消化管を刺激してしまうので、人肌より少し冷やした程度がよいでしょう。

味やにおいが薄いもの

吐き気や嘔吐があるときは、薄めの味付けを心がけ、においが少ない食材を選ぶのがポイントです。個人差はありますが、特定のにおいで症状が強くなることもありますので、苦手なものは無理して食べる必要はありません。

また、口内炎がひどいときは粘膜を刺激しないよう、塩分を控えて出汁で味を調えるのがおすすめです。

一方、味覚の変化によって味が感じられない場合は、ゴボウやこんにゃくなど、食感の強い食品を取り入れるのがよいとされています。味覚を刺激するため、口内炎がひどくない場合は食前にレモン水などを口にするのもよいでしょう。

少量・頻回を意識!

抗がん剤治療中は、口腔内から腸まで多くの消化器官にダメージが生じます。口内炎、吐き気、嘔吐、下痢、便秘など、さまざまな消化器症状が生じますので、負担をかけないためにも食事は少量ずつ摂ることが大切です。

ただし、栄養が足りなくなると治療経過に影響を与えることもありますので、食事回数を増やして必要な栄養を補いましょう。吐き気などの症状が強いときも、食べられるものを少量ずつ、小まめに摂るのがポイントです。

栄養バランスを意識

抗がん剤治療中も、栄養バランスにはできる限り注意しましょう。食事が偏るとビタミンやミネラルなどは不足しがちになるため、注意が必要です。特に亜鉛は、味覚をキープするうえで大切なミネラル。不足するとさらに味覚の変化が悪化することがありますので、ココアやチーズなどを間食に摂るのもおすすめです。

必要な栄養素が摂れないときは、栄養補助食品などを活用することもできるので、医師や栄養士に相談してください。

抗がん剤治療中に控えたほうがよいものは?

最後に、抗がん剤治療中に控えたほうがよいものをご紹介します。

生もの

抗がん剤治療中は骨髄機能が低下しやすいため、白血球が減って免疫力が低下することがあります。普段なら問題にならないような細菌などで重症な感染症を発症することもありますので、生ものは避けましょう。肉や魚もしっかり中まで火を通してから食べるようにしてください。

固いもの

口内炎、吐き気や嘔吐、下痢、便秘などの消化器症状があるときは、歯ごたえのある固いものは避けたほうが無難です。口腔内の粘膜を刺激するだけでなく、吐き気や嘔吐を誘発してしまうことも少なくありません。また、消化管を刺激して下痢を悪化させることも。不溶性食物繊維が多いものは便秘をひどくすることもあるので、注意が必要です。

パサパサしたもの

水気のないパンやクッキーなどは、唾液分泌量が少ないときはNGです。口腔内の粘膜にも刺激を与え、消化もよくないので、吐き気や嘔吐を引き起こすこともあります。  

パンなどの水気が少ないものを食べたいときは、スープに浸して柔らかくしてから口にするなど、できるだけ刺激が少なくなるように工夫してください。

柑橘類

抗がん剤の種類によっては、グレープフルーツやハッサクなどの柑橘類を摂取することで、抗がん剤の体への吸収量が増えて思わぬ副作用を招くことがあります。これは、グレープフルーツなどに含まれるフラノクマリン類という物質が抗がん剤の分解を遅らせるためと考えられています。

グレープフルーツジュースやゼリーなどの加工品にもフラノクマリン類が含まれる可能性があるので、注意が必要です。

グレープフルーツの影響を受けやすいのは、肺がんや乳がんなどに使用されるイリノテカンが挙げられますが、抗がん剤治療中の方は必ず医師や薬剤師に確認してから食べるようにしましょう。

なお、同じ柑橘類でもオレンジ、みかん、レモンなどは、抗がん剤の作用に影響を与えることはありません。吐き気が強いときなどにおすすめの果物でもありますので、心配せずに摂ってください。

まとめ

抗がん剤治療中は、さまざまな副作用に悩まされる可能性があります。特に、抗がん剤は口内炎、吐き気、嘔吐、下痢、便秘など「食事」に大きく関わる症状が出やすいのが特徴です。しかし、食事をしっかり摂ることは必要な栄養を補うことだけでなく、日常生活の楽しみのひとつ。食事を楽しめるか否かは、治療中のQOLを左右すると言っても過言ではありません。

今回は、副作用を軽減させるための食事の工夫と、抗がん剤治療中に避けたほうがよいものをご紹介しました。副作用の現れ方は人によって異なりますので、ご紹介したポイントを参考にしながら、ご自身に合った食事を摂るよう工夫していきましょう。

また、十分な食事が摂れないときや、食事が極端に偏ってしまうときは、栄養補助食品などを活用するのもおすすめです。医師や栄養士に相談してみてください。

1.国立研究開発法人国立がん研究センター|薬物療法
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/drug_therapy/dt02.html#side_effects
2.熊本大学|抗がん剤の副作用にはどんな症状がありますか?
https://www2.kuh.kumamoto-u.ac.jp/gairaichemo/manual-pdf/01_04.pdf
3.熊本大学|抗がん剤治療中、食事に気を付けることはありますか?
https://www2.kuh.kumamoto-u.ac.jp/gairaichemo/manual-pdf/02_21.pdf
4.日医工株式会社|イリノテカン塩酸塩点滴静注液40mg「日医工」 イリノテカン塩酸塩点滴静注液100mg「日医工」 添付文書
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00061467.pdf
参照日:2021年12月

成田 亜希子

内科医

2011年医師免許取得。一般内科医として幅広い疾患の患者様の診療を行っている。行政機関に勤務経験もあり、がん対策にも携わってきた。プライベートでは二児の母。

プロフィール詳細

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