ヴィーガンの食習慣ががんにかかりにくいは本当?菜食主義が体に与える影響とは

ヴィーガンの食習慣ががんにかかりにくいは本当?菜食主義が体に与える影響とは

昨今、注目のライフスタイルの一つとしてヴィーガンがあります。「最近、ヴィーガンという言葉をよく聞くようになった」と感じている方や「ヴィーガンは何となく健康に良さそう」というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、がんとの関係を含めたヴィーガンの健康面のメリットについて詳しくお伝えします。

受付中がんの臨床試験、研究・治験広告のご案内

製薬企業や医療機関、研究グループから依頼を受け、治験審査委員会の審議で承認された臨床試験、治験を掲載しています。

がんワクチン療法がんワクチン療法

目次

ヴィーガンとは

ヴィーガンとは、動物由来の食品を口にしないライフスタイルとイメージしている方が多いでしょう。確かに狭義のヴィーガンはその通りです。

しかし、広義のヴィーガンは、食品に加えて、動物由来の製品の使用も禁止しています。「動物を苦しめない」という信念のもとに提唱されたのが、ヴィーガンというライフスタイルです。

その信念のもと、肉や魚、乳製品、ハチミツなどの動物由来の食品を食べないことに加えて、毛皮、毛皮・皮革などの動物の革製品、動物実験により開発された化粧品も消費しないことが一般的です。

ベジタリアンとの違い

肉や魚を食べないと聞くと、ベジタリアンと思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。ベジタリアンとヴィーガンとの厳密な違いはありません。ベジタリアンという大きなくくりの中の一つがヴィーガンです。

国際ベジタリアン連合によると、ベジタリアンは大きく以下の3種類に分けられます。

  • ヴィーガン、トータルベジタリアン
  • ラクト・ベジタリアン
  • ラクト・オボ・ベジタリアン

ヴィーガン・トータルベジタリアン

ヴィーガンは、動物由来の食品や製品を一切食べない、使わないライフスタイルのことです。トータルベジタリアンは北米ではヴィーガンと同じ意味で使われています。

ラクト・ベジタリアン

ラクト・ベジタリアンとは、牛乳や乳製品を摂取する菜食主義者のことであり、インドではよく見られる食のスタイルです。ヒンズー教の教えに基づき、動物の命を大切にする考えと結びついており、インドの食文化を象徴する特徴の一つとも言えるでしょう。

ラクト・オボ・ベジタリアン

ラクト・オボ・ベジタリアンは、乳製品に加えて卵も摂取する菜食主義者のことであり、西洋で広く見られる食事スタイルとされています。

ヴィーガンのメリット

ここではヴィーガンの主なメリットの詳細について、見ていきましょう。

ダイエット効果が期待できる

ダイエット効果が期待できる点がヴィーガンの代表的なメリットとして挙げられます。

肉や乳製品といった食品は、野菜と比べると高脂質になります。高脂質の食品を避けるヴィーガンは、一般的な食事と比べるとトータルの摂取カロリーが低くなりやすいのです。そのため、ダイエット効果が期待できると言われています。

また、ヴィーガン志向の方がメインに食べる野菜をはじめとする植物性の食品は食物繊維が豊富に含まれています。食物繊維には便秘の予防、血糖値上昇の抑制、血液中のコレステロール濃度の低下など多くの健康効果があることが明らかになっています。食物繊維を摂りやすい点もヴィーガンのメリットでしょう。

免疫力向上につながる

免疫力の向上につながる点もヴィーガンのメリットです。植物性の食品には、免疫機能を高める効果が期待できる栄養素が豊富に含まれています。

肉食がメインの場合、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンC、ビタミンE、亜鉛といった栄養素が不足しがちです。ビタミンや亜鉛が不足してしまうと、体の免疫機能が正常に働かなくなり、風邪をひきやすくなるなど、健康の維持が難しくなります。ただ、免疫機能にはタンパク質も重要であり、一概に免疫力が必ず向上するわけではありません。

がんや生活習慣病の予防が期待できる

がんや糖尿病などの生活習慣病の予防が期待できる点もヴィーガンのメリットの一つです。

野菜、全粒穀物、大豆、豆類、ナッツ類、果物といった植物由来の食品を意識して食べることで、通常の食生活をしている方に比べて2型糖尿病のリスクが減少することが報告されています。

ハーバード大学T.H.Chan公衆衛生大学院が行った研究によると、植物性食品がベースの食事を摂取している方は、それ以外の方と比べて、2型糖尿病のリスクが20%以上も低下しています。

また、がんは生活習慣病としての側面がある病気で、肥満は発症リスクを高めることが明らかになっています。一般的な食事をする方より摂取カロリーが低めで、BMIも低いヴィーガン食を摂取する方のほうが、胃癌、大腸がん、食道がん、膵臓がんといった生活習慣に起因するがんの発症リスクが低いといわれています。

ヴィーガンの注意点

ヴィーガンにはメリットがある一方で、注意点もあります。以下の注意点も把握したうえでヴィーガン食の実践を検討することが重要です。

栄養不足に陥る可能性がある

植物性食品からは多くの栄養素を摂取できますが、一部の栄養素が不足しがちになってしまいます。例えば、ビタミンB12です。

ビタミンB12は、造血作用があり、末梢神経の修復にも役立つ栄養素です。植物性食品にはほとんど含まれず、レバーやあさりなどに多く含まれています。そのため、ヴィーガン食を続けているとビタミンB12が不足することによる大球性貧血などの症状が出現する可能性があります。

ビタミンB12が添加された食品やサプリメントを摂取するなど、栄養不足に陥ってしまわないための工夫が必要です。

食費がかさみやすい

ヴィーガン食を実践する前に必ず確認しておきたいのが、食費がかさみやすい点です。

肉や魚を買わなくて済むため、食費は抑えられるのではと思う方もいることでしょう。しかし、野菜や穀物といった植物性食品だけで必要な栄養素をまかなうと、一般的な食事より食費は高くなる傾向です。

また、足りない栄養を補うためのサプリメントにお金がかかる点にも注意が必要です。

外食に困る

欧米では市民権を得て、数多くのレストランやカフェなどにヴィーガンメニューが用意されていますが、今の日本でそのようなお店はまだ多くないのが現状です。そのため、ヴィーガン志向の方が外食に悩むことは少なくありません。また、友人や知人などとの外食が難しい点もヴィーガン食の悩みのひとつです。

自分のできる範囲でヴィーガン食を取り入れてがんを予防しよう

肉や魚、乳製品といった動物由来の食品を食べないヴィーガンというライフスタイルは、欧米の社会では受け入れられ、一般的なものになっています。

ヴィーガンは、日本では定着していない状況ですが、都心部を中心にヴィーガンメニューを提供するレストランやカフェが徐々に増えてきています。今後、日本でもヴィーガンが一般的になっていく可能性もあるでしょう。

ヴィーガン食は、ダイエット効果が期待できる、免疫力向上につながる、がんや生活習慣病の予防が期待できるなどのさまざまなメリットがあると言われています。健康への好影響を考えて実践してみたいという方もいるかと思うので、まずは自分のできる範囲で健康習慣の一つとしてヴィーガン食を実践してみてはいかがでしょうか。

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医・日本内分泌内科専門医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

プロフィール詳細

受付中がんの臨床試験、研究・治験広告のご案内

製薬企業や医療機関、研究グループから依頼を受け、治験審査委員会の審議で承認された臨床試験、治験を掲載しています。

がんワクチン療法 がんワクチン療法

各がんの解説