GIST(消化管間質腫瘍)とは、胃や小腸などに発生するまれな腫瘍です。診断を受けた方やご家族からは「手術で治るのか」「高リスクと言われたが再発しないか」と疑問の声もあります。
本記事では、GISTの原因や症状、検査、リスク分類、治療法を解説します。
目次
GIST(消化管間質腫瘍)とは?
GIST(Gastrointestinal Stromal Tumor;ジスト)は、消化管の壁の中にある「カハール介在細胞」から発生する腫瘍です。この細胞は、消化管の動きを調整するペースメーカーのような役割を担っています。
胃がんや大腸がんが消化管の内側の粘膜から発生するのに対し、GISTが生じるのは粘膜の下の層です。内視鏡で観察すると、粘膜に覆われたなだらかな盛り上がりに見えます。このように由来する細胞が異なるため、治療の進め方も変わってきます。
最も多い発生部位は胃で、全体の60%から70%を占めます。次いで小腸に多く、大腸や食道に生じることもあります。男女の罹患傾向には大きな差はなく、発症は60代に多く見られます。年間の発症は10万人あたり1人から2人程度と、極めてまれな腫瘍です(※1)。
GISTの原因と主な症状

GISTの発生には、細胞の増殖に関わる遺伝子の変化が関係しています。また、初期は自覚症状が出にくいのも特徴です。
GISTが起こる原因
GISTの主な原因は、腫瘍細胞の表面にある「KIT(キット)」または「PDGFRα(Platelet-derived growth factor receptor α)」というタンパクの異常です。
これらは細胞へ「増殖」の指令を伝えるスイッチのような存在ですが、遺伝子の変化によりスイッチが常に入った状態になると、細胞が際限なく増え続けて腫瘍となります。
この変化は生まれつきではなく、多くは後天的に生じたものです。食生活や飲酒・喫煙が原因になるとは考えられておらず、遺伝する例もごくまれです。「何かをしたから発症した」という病気ではありません。
あらわれやすい症状
初期はほとんど症状がなく、健康診断の胃カメラで偶然見つかるケースが目立ちます。腫瘍が大きくなると、次のような症状があらわれることがあります。
- 腹痛、お腹の張りや違和感
- 吐き気、嘔吐
- 下血、黒いタール状の便、吐血
- 貧血によるだるさ、めまい、息切れ
- お腹に触れるしこり
中でも多いのが、腫瘍の表面から少しずつ出血して起こる下血や貧血です。健診で貧血を指摘され、原因を調べる過程で見つかる方もいます。いずれもGISTに限った症状ではありませんが、症状が続くようなら消化器内科へ相談しましょう。
GISTの検査・診断方法

GISTの検査は、腫瘍を発見するだけでなく「ほかの粘膜下腫瘍と区別する」ためにも行われます。粘膜の下の盛り上がりには、脂肪腫など治療の要らないものも含まれるためです。
- 内視鏡検査
- 超音波内視鏡検査(EUS;Endoscopic Ultrasonography)
- 生検
- CT・MRI検査
GISTと確定していない小さな粘膜下腫瘍で、症状がない場合は、定期検査で変化を見る「経過観察」となる場合もあります。
GISTのリスク分類と進行の速さ
GISTと確定診断されると、再発のしやすさを示す「リスク分類」が行われます。判断材料は次の3つです。
- 腫瘍の大きさ
- 発生した部位
- 細胞増殖のスピード
これらの組み合わせで、超低リスク・低リスク・中リスク・高リスクの4つに分類されます(※2)。
知っておきたいのは、「高リスク=末期ではない」という点です。
あくまで手術後に、再発予防を目的として薬を使うかを決める目安であり、高リスクでも腫瘍を取りきれていれば再発せずに経過観察となる方は少なくありません。
進行の速さにも個人差があり、数年かけてゆっくり大きくなるものもあれば、短期間で増大するものもあります。
GISTの治療法

GISTの治療法は、主に「手術での切除」と「分子標的薬による薬物療法」の2つが中心となります。腫瘍の大きさや部位、転移の有無、リスク分類をもとに、どちらをどの順で行うかが決まります。
手術
転移がなく切除できる場合、まず検討されるのが手術です。GISTはリンパ節への転移がまれなため、胃がんのようにリンパ節を広く取り除く必要はありません。腫瘍とその周囲だけを切り取る部分切除が中心となり、食事や消化の機能をできるだけ残せます。
5cm以下の胃や小腸のGISTでは、腹腔鏡下手術が選ばれることもあります(※3)。傷が小さく、身体への負担や入院期間を抑えやすいのが利点です。
薬物療法
薬物療法で使うのは、KITなどのスイッチをピンポイントで抑える分子標的治療薬です。主に次の場面で用いられます。
- 転移があり、手術で取りきれない場合
- 再発した場合
- 高リスクと判断され、再発予防を目的とする場合
以前は使用できる薬が限られていましたが、現在は最初の薬が効きにくくなった場合に使用する二次・三次の薬も登場しています。これにより、転移があっても長く病気とつきあえる方が増えています。
一方、まぶたや足のむくみ、吐き気、下痢、発疹といった副作用が出ることもあります。薬の量の調整で対処できる場合があるため、無理に服用を継続せず速やかに主治医に伝えることも大切です。
手術後の生活と食事
胃や腸を切除すると、一度に食べられる量が減ったり、消化に時間がかかったりします。そのため、以下のように工夫して食事を摂ることが大切です。
- よく噛んでゆっくり食べる
- 少量ずつ回数を分ける(間食を含めて1日5〜6回)
- 食欲がない日は無理をしない
術後しばらくは、ごぼうやキノコ類など消化されにくい食物繊維の多いもの、揚げ物といった油脂の多いものを控えめにすることで、お腹の張りや下痢が軽くなることがあります。体調が落ち着けば、食べられる範囲は徐々に広がっていくでしょう。
胃を切除した場合は、食べたものが逆流して胸やけが起こりやすくなります。食後すぐ横にならず、上半身を高くして休むと効果的です。
GISTが再発・転移した場合の治療

手術で取りきれた場合でも、時間が経ってから再発することがあります。多いのは術後数年以内で、転移先は肝臓や腹膜が代表的です。そのため治療後も定期的な検査が続きます。
再発時に中心となるのも、分子標的治療薬です。
「再発=打つ手がない」と思うかもしれませんが、薬で腫瘍の増大を長期間抑えられる事例もあり、仕事を続けながら通院する方もいます。
なお、GISTは放射線が効きにくく、放射線治療が中心になることはありません。ただし骨転移の痛みが強いときなど、症状をやわらげる目的で行う場合はあります。
GISTの予後・生存率の考え方
GISTについて調べると生存率などのデータが気になるかもしれませんが、これらの数字は多くの方の平均値に過ぎず、患者さん個人の経過を直接示すものではありません。
生存率は腫瘍の大きさや部位、リスク分類、転移の有無で大きく変わります。ベースになる統計も数年前の治療成績が中心で、新しい薬が使える現在を反映していないこともあるため、数字の情報については参考程度にとどめておきましょう。
また、痛みや吐き気をやわらげる緩和ケアは終末期だけのものではなく、診断時から治療と並行して受けられる支援です。症状によるつらさがある場合は早めに伝えましょう。
治療方針に迷ったときは専門家に相談を
GISTは患者数が少なく、身近に同じ病気の人がいないため、情報を集めにくい病気です。治療方針に迷ったら、主治医以外の医師(または担当医とは別の医師)に意見を聞く「セカンドオピニオン」という方法があります。
また、専門の相談窓口を頼るのも一つの方法です。治療の不安はもちろん、仕事や経済面、家族との向き合い方といった悩みも対象です。一人で抱え込まず、まず話すことから始めてみてください。
(※1)国立研究開発法人国立がん研究センター|GIST(消化管間質腫瘍)(じすと(しょうかかんかんしつしゅよう))
(※2)浜松医科大学 外科学第二講座 |GIST(消化管間質腫瘍)について②
(※3)慶應義塾大学病院 KOMPAS|消化管間質腫瘍 (GIST)

















