食道がんとはどんな病気なのか。食道がんの初期症状や危険因子について
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食道がんとはどんな病気なのか。食道がんの初期症状や危険因子について

食道がんは、消化器のがんの中では発生数がそれほど多くないものの、早期には自覚症状が乏しく、周囲の臓器に広がりやすいという特徴を持つ、早期発見が重要ながんです。

近年は、内視鏡技術の進歩による早期発見や、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)、ロボット支援手術、免疫チェックポイント阻害薬など、治療の選択肢も大きく広がっています。本記事では、食道がんの基本的な知識と、予防、早期発見のポイントをご紹介します。

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目次

食道はどんな臓器?

食道の仕組みと働き

食道は、喉(咽頭)と胃の入り口をつなぐ、長さおよそ25cm・太さ2~3cmの管状の臓器です。消化器官の1つですが、消化機能はなく、飲食物を胃に運ぶことが主な働きです。飲食物を飲み込むと、食道の筋肉が波打つような動き(蠕動運動)で胃まで運ばれます。

食道は大きく、「頸部食道」「胸部食道」「腹部食道」の3つに分かれます。このうち胸部食道がもっとも長く、食道の大部分を占めます。胸部食道の周囲には肺、心臓、気管、大動脈、横隔膜など生命維持に重要な臓器が密集しています。

食道の構造

食道の壁は、内側から「粘膜」「粘膜下層」「固有筋層」「外膜」という薄い層が重なった構造になっています。粘膜下層には血管やリンパ管が豊富に走っています。

胃や腸の多くは「漿膜(しょうまく)」という強く硬い膜で外側が覆われていますが、食道にはこの漿膜がありません。このため、食道に発生したがんは周囲の臓器やリンパ節に広がりやすく、進行が速いとされています。

食道がんとはどんな病気?

食道がんは、食道の粘膜から発生するがんです。

食道の内腔側に盛り上がるように進行する場合と、食道の壁の奥へ深く浸潤していく場合があり、リンパ節や離れた臓器への転移を起こしやすい性質があります。

1か所だけでなく複数箇所に同時発生することもあり(多発がん)、食道内を円形に広がることもあります。

組織型と発生部位

日本食道学会や国立がん研究センターのデータによると、日本人の食道がんの約9割は「扁平上皮がん」で、残りはバレット食道から発生する「腺がん」などです。欧米では逆に腺がんが多数を占めますが、日本でも胃食道逆流症の増加などを背景に腺がんの割合が徐々に増えてきています。

発生部位としては、胸部中部食道がもっとも多く、全体の約半数を占めます。次いで胸部下部食道、胸部上部食道に多く、頸部食道や食道胃接合部にもできることがあります。

早期がんと進行がん

食道がんの病期(進行度)は、がんが食道の壁のどこまで深く入り込んでいるか(深達度)、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無で決まります。

  • 早期食道がん:がんが粘膜内にとどまっているもの
  • 表在食道がん:がんが粘膜下層までにとどまっているもの(リンパ節転移の有無を問わない)
  • 進行食道がん:がんが固有筋層より深くに達しているもの

粘膜下層にはリンパ管や血管が多く走っているため、がんが粘膜下層まで達するとリンパ節転移の頻度が上がり、治療方針も大きく変わります。深達度によって治療の選択肢や予後(治療成績)が変わるため、早期発見が極めて重要です。

食道がんの主な治療法

食道癌診療ガイドライン2022年版では、ステージや患者さんの状態に応じて、以下の治療を組み合わせる集学的治療が基本とされています。

  • 内視鏡治療(EMR:内視鏡的粘膜切除術/ESD:内視鏡的粘膜下層剥離術)
  • 外科手術(開胸手術、胸腔鏡下手術、ロボット支援下手術、縦隔鏡下手術)
  • 放射線治療、化学放射線療法
  • 薬物療法(化学療法、免疫チェックポイント阻害薬)

粘膜内にとどまる早期食道がんに対しては、食道を温存できる内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が標準治療として位置づけられています。ESDは2008年に食道がんに対して保険適用となり、大きな病変でも一括で切除できる方法として広く普及しました。

進行食道がんに対する外科手術では、胸腔鏡下食道切除術やロボット支援下食道切除術といった低侵襲手術が保険適用で行われています。ロボット支援下食道切除術は2018年に保険適用となり、食道癌診療ガイドライン2022年版でも「行うことを弱く推奨する」とされました。

また、切除不能な進行・再発食道がんに対しては、ニボルマブ(オプジーボ)やペムブロリズマブ(キイトルーダ)といった免疫チェックポイント阻害薬が、化学療法との併用療法を含めて標準治療となっており、治療成績が向上しています。術前化学放射線療法後の補助療法としても、ニボルマブが使用されるようになっています。

食道がんにならないために

食道がんには、発症リスクを高める「危険因子」が比較的はっきりしているがんの1つです。

国立がん研究センターや日本食道学会の情報では、以下のような因子が挙げられます。

たばこ

喫煙は食道扁平上皮がんの確実な危険因子です。たばこの煙に含まれる有害物質が食道の粘膜を直接傷つけるとともに、発がん物質としても作用します。食道だけでなく、肺・咽頭・喉頭・胃など多くのがんの原因となります。

飲酒とアルコール代謝の体質

アルコールと、体内で分解される過程で生じる「アセトアルデヒド」には発がん性があり、国際がん研究機関(IARC)によりヒトに対して発がん性があるグループ1に分類されています。

日本人を含むモンゴロイドには、アセトアルデヒドを分解する酵素「ALDH2」の働きが弱いタイプの人が多く、少量の飲酒でも顔が赤くなる「フラッシング反応」を起こしやすい体質の方がいます。国立がん研究センターの多目的コホート研究では、ALDH2の働きが弱い遺伝子型かつ大量飲酒者では、頭頸部・食道がんのリスクが中等度以下の飲酒者に比べて約6倍高いことが示されています。

厚生労働省のe-ヘルスネットでも、「コップ1杯のビールで顔が赤くなる体質の人が飲酒家になると、頭頸部・食道の発がんリスクが特に高くなる」とされており、「本来は飲めなかったのに鍛えて飲めるようになった」という方は特に注意が必要です。

熱い飲食物・刺激の強い食事

熱い飲食物が食道粘膜にくり返し刺激を与えることも、食道がんの発生に関与している可能性があるとされています。世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関は、65℃以上の高温の飲料をヒトに対しておそらく発がん性があるグループ2Aに分類しています。辛い料理や塩辛いものを頻繁に摂取することも、慢性的な粘膜への刺激となる可能性があります。

野菜・果物の摂取不足

野菜や果物の摂取は、食道扁平上皮がんの予防因子として国立がん研究センターのがん予防エビデンス評価で「ほぼ確実」と位置づけられています。

肥満と胃食道逆流症(食道腺がん)

欧米人に多い食道腺がんでは、肥満と胃食道逆流症(GERD)、それに伴って生じるバレット食道が、確立した危険因子とされています。日本でも肥満と胃食道逆流症の増加に伴って、食道腺がんが徐々に増えてきていると報告されています。

食道がんの症状

食道がんは、早期には自覚症状がほとんどないため、進行するまで気づかれにくいがんです。症状が現れるのは、がんが大きくなって食道の内腔を狭めたり、周辺の臓器を圧迫したりするようになってからです。

早期のサイン

国立がん研究センターでは、次のような症状を「早期発見のための危険サイン」としています。

  • 飲食物を飲み込むときに胸の奥がチクチク痛む
  • 熱いものを飲み込むとしみる感じがする
  • のどや胸に違和感が続く

こうした症状は一時的に消えることもあるため、「治った」と思って放置しないことが大切です。症状が続く場合は、耳鼻科ではなく消化器内科で上部消化管内視鏡検査を受けることが推奨されます。

喉や胸がなんだかおかしい…くらいのはっきりしない違和感が継続する場合もあり、続く場合は一度病院を受診した方が良いでしょう。

進行がんの症状

がんが進行すると、次のような症状が現れます。

  • 食べ物がつかえる感じ、飲み込みにくさ
  • 食事のたびに胸やのどに痛みを感じる
  • 体重減少、食欲低下
  • 胸や背中の痛み
  • 声のかすれ(反回神経への浸潤・リンパ節転移による圧迫)
  • 咳、血痰(気管・気管支への浸潤)

とくに「声がかすれる」「飲み込みづらい」という症状は、食道がんの初発症状として頻度の高いサインです。

食道がんの早期発見のために

食道がんは早期に発見できれば、ESDなどの内視鏡治療で食道を温存したまま治療できる可能性が高くなります。一方、進行すると治療が複雑になり、予後も大きく変わります。

国立がん研究センターがん対策研究所は、食道がんについて専用の対策型検診(市区町村の住民検診)は設定されていないものの、以下のような方は任意型検診として定期的な上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を受けることを推奨しています。

  • 喫煙習慣がある、または喫煙歴のある方
  • 飲酒習慣がある方(特に顔が赤くなる体質の方)
  • 熱い飲食物を好む方
  • 野菜・果物の摂取が少ない方
  • 50歳以上の方(食道がんは50代以降に増加する)
  • 頭頸部がん(口腔・咽頭・喉頭がん)の既往がある方

内視鏡検査では、特殊な光(NBI:狭帯域光観察)や色素散布を併用することで、きわめて小さな早期食道がんも発見できるようになっています。症状が出る前の段階で見つけることが、食道を残したまま治療できる可能性を高めるもっとも確実な方法です。

食道がんの要因となり得る病気

食道がんは、いくつかの食道の病気が発生の下地となる場合があります。これらの病気を持つ方は、定期的な検査が特に重要です。

胃食道逆流症(GERD)・逆流性食道炎

胃と食道の境目にある下部食道括約筋がゆるみ、胃酸を含む胃の内容物が食道に逆流する状態です。胸やけ、のどの違和感、酸っぱいものがこみ上げる感じなどが主な症状ですが、軽い胸やけとして見過ごされやすい病気です。食道の粘膜が炎症を繰り返すと、次のバレット食道へ進展することがあります。

バレット食道

長期間にわたる胃食道逆流症によって、下部食道の粘膜が胃の粘膜に似た円柱上皮に置き換わった状態です。バレット食道は食道腺がんの前がん病変とされ、欧米では食道がんの主要な発生母地となっています。日本ではまだ頻度が高くないものの、食生活の変化とともに注意が必要です。

食道アカラシア

下部食道括約筋の弛緩不全と食道の蠕動運動の低下により、飲食物が食道にとどまってしまう機能性疾患です。食道内に食べ物が長くとどまることで慢性的な食道炎を繰り返し、食道がんのリスクが上昇することが知られています。誤嚥性肺炎の原因にもなり得るため、早期の診断・治療が重要です。

おわりに

食道がんは、早期発見と早期治療が特に重要ながんです。近年はESDやロボット支援手術、免疫チェックポイント阻害薬など、治療の選択肢が広がり、5年生存率も少しずつ改善してきています。

一方で、食道がんの多くは自覚症状が現れる前に進行している可能性があります。喫煙・飲酒・熱い飲食物など生活習慣を見直すこと、そして定期的に内視鏡検査を受けることが、食道がんから身を守るもっとも確実な方法です。

気になる症状がある方や、リスクの高い生活習慣をお持ちの方は、早めに消化器内科を受診し、上部消化管内視鏡検査について相談することをおすすめします。

日本食道学会|食道癌診療ガイドライン2022年版
国立がん研究センター がん情報サービス|食道がん
国立がん研究センター|食道がんの治療について
日本食道学会|食道がんの疫学・現状・危険因子
国立がん研究センター がん対策研究所|飲酒と食道がんリスク
国立がん研究センター がん対策研究所|飲酒とアルデヒド脱水素酵素遺伝子の多型を考慮した頭頚部食道がんリスク
厚生労働省 e-ヘルスネット|アルコールとがん

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