がん罹患の危険性を高めるリスク因子とは?がんの種類ごとに解説

がん罹患の危険性を高めるリスク因子とは?がんの種類ごとに解説

「がんは予防できない」と思っている方も多いと思います。確かに、がんの中には発生原因が不明で、現代の医療では予防できないものもあります。しかし、発生原因がはっきりしていて、予防できるがんも少なくありません。

日本では、男性のがんの約43%、女性のがんの約25%が、生活習慣が原因と言われています。生活習慣を見直すことで予防が可能なことがわかっています。

がんの原因となり得る生活習慣やそれぞれのがんの発生要因、さらにがん予防の具体的な方法を見ていきましょう。

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目次

がんのリスク因子一覧

日本や海外の研究結果から、がんのリスクとなり得る因子は、ある程度、明らかになっています。

喫煙

がんのリスク因子の中で、最も大きな影響があるのが喫煙習慣です。

男性のがんの約23%、女性のがんの約4%の原因が喫煙習慣だと言われています。さらに、喫煙はタバコを吸う本人だけではなく、家族など周りの人にもがんなどの健康被害を引き起こします。

飲酒

「世界がん研究基金」の研究によると、飲酒は口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、大腸がん、肝臓がん、乳がんのリスクを高めると報告されています。その原因はエタノールにあります。

飲酒により体内に取り込まれたエタノール(アルコールの一種)が、発がん性物質であるアセトアルデヒドとして代謝されることによりがん発生リスクが高まると考えられています。

食べ物

食べ物については、因果関係が明らかなものと明らかでないもの、さらに、リスクを高めるものと下げるものに分かれます。

研究から確実にがんのリスクを高めると考えられているのが牛・豚・羊肉などのいわゆる赤肉とハムやソーセージといった加工肉です。これらは大腸がんのリスクを高めると言われています。

加工肉は胃がんのリスクとなる可能性も大きいと考えられています。一方、食物繊維を含む食品は大腸がんのリスクを下げるという研究結果が出ています。

運動習慣

運動習慣は結腸がんのリスクを下げるという研究結果が出ています。また、閉経後の乳がんと子宮体がんのリスクも、運動をしている人の方が低いです。

太りすぎ、痩せすぎ

太りすぎはがんのリスクを高めることで有名です。肥満は、食道がん、膵臓がん、肝臓がん、大腸がん、閉経後乳がん(閉経前)、子宮体がん、腎臓がんのリスクを高めます。一方、日本人を含むアジア人の場合、痩せすぎによるがんのリスクも報告されています。

感染

日本人における男性のがんの約18%、女性のがんの約15%が感染による発生だと言われています。これは全リスクのうち、喫煙に次いで高いものです。日本人において、感染が原因となるがんで多いものには、肝臓がん(肝炎ウイルス)、子宮頸がん(ヒトパピローマウイルス)、胃がん(ピロリ菌)などがあります。

化学物質

国際がん研究機関の研究によると、さまざまな化学物質で発がんリスクがあると報告されています。アスベスト、ラドン、クロロメチルエーテル、クロム酸、ニッケルなど、その数は実に200種類以上もあります。肺がんのリスクになる化学物質が最も多くなっています。肺がんのほか、皮膚がんや喉頭がん、悪性胸膜中皮腫などのリスクが高まる化学物質も報告されています。

それぞれのがんの発生要因

「遺伝的に肺がんのリスクがある」「肺がんの発生要因はなに?」など、特定のがんの発生要因を知りたい方も多いと思います。そこで、日本人に多いがんの発生要因をまとめます。

肺がん

肺がんの最も危険なリスク因子は、言うまでもなく喫煙です。

喫煙者は非喫煙者と比べると、肺がんの罹患リスクが男性で4.4倍、女性で2.8倍高くなります。また、喫煙は喫煙者本人だけではなく、家族など周りにも健康被害をもたらし、受動喫煙による肺がんのリスクは2~3割ほど高くなります。

喫煙のほかに肺がんのリスクを高めるのは、有害化学物質、大気汚染、遺伝、高齢などです。

胃がん

胃がんの発生要因は、主に3つです。喫煙、ピロリ菌の感染、さらに塩蔵食品など高塩分の食べ物の摂取が胃がんのリスクを高めると報告されています。

胃がんの予防には、がん全般の予防と同様、禁煙、お酒を飲みすぎない、栄養バランスの良い食事、適切な運動習慣、感染予防が良いとされています。

食道がん

食道がんのリスクを高めるのは、喫煙と飲酒の2つです。特に、食道がんの中でも扁平上皮がんは、喫煙と飲酒に強い関連があります。

さらに、熱いものを食べたり飲んだりすることも食道がんのリスクを高めると報告されています。

大腸がん

大腸がんの発生リスクと関連が強いのは、生活習慣です。

牛、豚、羊といった赤肉やハムやソーセージなどの加工肉の摂取、喫煙、飲酒が大腸がんのリスクを高めます。また、肥満も大腸がんのリスクを高めるとされています。

肝臓がん

肝臓がんの要因で最も多いのは、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスの感染です。

ウイルスが長期間体内にとどまることによって、がんになると考えられています。ウイルスの感染以外で多い要因は、肝硬変、過度な飲酒、喫煙、肥満、脂肪肝、糖尿病などです。

膵臓がん

膵臓がんの発生リスクと関連が強いものは、糖尿病、飲酒、喫煙、肥満などが挙げられます。また、慢性膵炎や膵管内乳頭粘液性腫瘍の既往歴がある人、膵臓がんを患った家族がいる人なども膵臓臓がんの発生リスクが高くなると言われています。

がんのリスクを下げるためには

がんのリスクとなり得る要因と、それぞれのがんごとのリスク要因を把握したところで、どのようにがんのリスクを下げていったら良いのでしょうか。

どういった点に気をつけて生活していけば、がんのリスクをより下げることにつながるのか解説していきます。

予防ガイドライン「日本人のためのがん予防法」

国立がん研究センターは、日本人におけるがんの要因として、「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」「感染」の6つを取り上げ、がん予防のガイドライン「日本人のためのがん予防法」をまとめました。

ガイドラインでは6つの要因のうち、感染以外の5つについて、目安を示しています。

  • 喫煙習慣に関しては、禁煙する
  • 食生活を見直し、栄養バランスのとれた食事を心がける
  • 適正体重を維持する
  • 身体を動かす
  • お酒を飲むのであれば節度のある飲酒をする

ガイドラインでは、以上の5つの生活習慣が奨励されています。さらに、感染に関しては、肝炎ウイルスやピロリ菌の検査をすることが推奨されています。

5つの生活習慣に気をつければがんのリスクは半減

「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」の5つの生活習慣を取り入れている人と、取り入れていない人とでは、がんのリスクにどのような差が生じるのでしょうか。

国立がん研究センターの調査によると、5つの生活習慣のうち、0または1つ取り入れた人のがん罹患率を100とした場合、5つを実践した人は男性で43%、女性で37%が、がんのリスクが低下したことがわかりました。

なお、この調査によると、実践した生活習慣の数が多ければ多いほど、がんのリスクは低下しています。

【まとめ】がん罹患の危険性を高めるリスク因子について

がんの予防はできないと思っている方も多いかもしれませんが、生活習慣を要因としたがんの予防は可能です。

「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」に気をつければ、男女ともにがんのリスクを4割ほど低減できます。

5つの生活習慣を全て取り入れるのが、がん予防の観点からは有効ですが、初めから全てを実践するのは難しいという方もいるでしょう。そういった方は、自分のできる範囲で適切な生活習慣を取り入れてみてはいかがでしょうか。

国立がん研究センター|がん対策研究所 予防関連プロジェクト「塩分・塩蔵食品と、がん・循環器疾患の関連について」
「日本人のためのがん予防法」
IARC MONOGRAPHS ON THE IDENTIFICATION OF CARCINOGENIC HAZARDS TO HUMANS「List of Classifications」
国立がん研究センター|がん情報サービス|それぞれのがんの発生要因
国立がん研究センター|がんの発生要因」
国立がん研究センター|肺がん 予防・検診
国立がん研究センター|胃がん 予防・検診
国立がん研究センター|食道がん 予防・検診
国立がん研究センター|大腸がん(結腸がん・直腸がん)予防・検診
国立がん研究センター|肝細胞がん 予防・検診
国立がん研究センター|膵臓がん 予防・検診
国立がん研究センター|科学的根拠に基づくがん予防
参照:2022年8月

大塚 真紀

総合内科専門医

東京大学大学院医学系研究科卒。医師、医学博士。博士号は、マウスを用いた急性腎障害に関する研究で取得。専門は、腎臓内科、透析。都内の大学病院勤務を経て、現在は夫の仕事の都合でアメリカ在住。医療関連の記事の執筆や監修、医療系動画監修、企業戦略のための医療系情報収集、医療系コンテンツ制作など幅広く行なう。保有資格:医学博士、総合内科専門医、腎臓内科専門医、透析専門医

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