がん予防にサプリは有効?予防効果が期待できるサプリを解説

がん予防にサプリは有効?予防効果が期待できるサプリを解説

コンビニやスーパーなどでも手軽に購入できるサプリメントを健康管理に役立てている方も多いのではないでしょうか。さまざまな栄養を効率的に摂取できるのがサプリの利点ですが、がん予防にも効果があるのでしょうか。

本記事では、がん予防にサプリは効果があるのかを解説するとともに、がん予防効果が期待できるサプリを具体的に紹介します。がん予防のためにサプリの摂取を考えている方はぜひ参考にしてください。

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目次

がんとサプリの考え方

私たちの身体では1日あたり約5,000個ものがん細胞が生まれているとも言われています(※1)

そのがん細胞がなぜ増殖せずに、私たちが健康でいられるのかと言えば、元々私たちの身体に備わっている免疫機能ががん細胞を死滅させているからです。

免疫機能ががん細胞を死滅させるスピードより、がん細胞が増殖するスピードが速ければ、理論上がん細胞は増え続けてしまいます。つまり、免疫力を高めてがん細胞を死滅させるスピードを速めれば速めるほど、がんにかかりにくくなるとも言えるでしょう。

免疫力を高める手段の1つとしてサプリメントの摂取が挙げられます。食事だけでは補いきれない栄養素をサプリメントで摂取することで、身体の栄養状態を高め、免疫力の向上につなげることができます。

サプリメントでがん予防できる?

免疫力の向上という意味では、サプリメントの摂取は一定の意味があるかもしれません。

ただし、サプリメントには、免疫力の向上や体調を良くする効果はありますが、その一方でがん予防に本当に有効なのかは医学的に証明されていません。

そもそもがんの原因はさまざまです。生活習慣や、飲酒・喫煙習慣、遺伝的要因、あるいはそれらが複合してがんになる可能性もあります。そうしたさまざまな原因に対して、全て予防できるサプリメントが存在しないことは、容易に想像がつくことでしょう。

とはいえ、先ほどお伝えしたようにサプリメントには食事だけではカバーしきれない栄養を摂取し、免疫力を高めたり体調を整えたりといった効果が期待できます。

サプリメントを摂取することで副作用などのマイナス面がない場合は、差し支えなく取り入れることができるでしょう 。

ただし、今使っている薬との飲み合わせは問題ないのか、本当に安全なのかなど、サプリメントを摂取する際は医師に直接確認することをおすすめします。

がんにおけるサプリの役割

サプリメントは2種類に分類されます。

一つは、「ベースサプリメント」。人間が生きるために必要な栄養素を含むサプリメントで、ビタミン、ミネラル、食物繊維、乳酸菌、アミノ酸などが該当します。ベースサプリメントで栄養状態を改善することで、免疫力の向上や体調が良くなることが期待されます。

もう一つが「オプショナルサプリメント」であり、体調の回復や身体の調子を整えることを目的としたサプリメントです。アガリクス、シイタケ菌糸体などのキノコ成分がこれに該当します。

がん予防効果を謳ったオプショナルサプリメントも少なくありません。オプショナルサプリメントを摂取する際には、摂取量や摂取方法、医薬品との飲み合わせなどを確認する必要があります。

サプリメントでがん予防をするには、ベースサプリメントとオプショナルサプリメントをうまく組み合わせて摂取することが重要です。

がん予防効果が期待できるサプリ

多種多様なサプリメントが販売されていますが、その中から具体的にどのサプリメントでがん予防効果が期待できるのでしょうか。

ここでは、がん予防の効果が期待できるサプリメントを具体的に紹介します。

マルチビタミン

がん予防に対する効果が明らかに示された研究報告があるのは、マルチビタミンです。

マルチビタミンとは、複数のビタミンを最適の割合で混ぜたビタミン剤のことです。ビタミン剤は過剰摂取すると頭痛、吐き気、皮膚のかゆみなど副作用が出ることもありますが、マルチビタミンは単独のビタミン剤よりも副作用が出にくいという利点もあります。

過去に発表された研究の中には、マルチビタミンのがん予防効果を示唆するものが3つあります。それらの研究結果をまとめると、全がんの発症リスクを約7%低下させ、肺がんのリスクを約25%低下させることが報告されています 。

なお、3つの研究はいずれもアメリカやカナダ、ヨーロッパなど欧米を対象としたものであり、現時点、アジア系の日本人にも同じ効果が期待できるかどうかは医学的には証明されていません。

DHA・EPA

ドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA)は、がん細胞の増幅抑制効果に加えて、がんの予防やがん治療の効果を高めることが明らかになっています。

DHAとEPAは青魚に豊富に含まれており、がん細胞の増殖抑制効果が示唆されています。また、魚を多く食べている人はがんにかかりにくいという疫学的研究も報告されていますが、この関連性の詳細なメカニズムについてはさらなる研究が求められています。

国立国際医療研究センターなどが実施した多目的コホート研究によると、魚介類から摂取したEPAやDHAが最大のグループは最小のグループと比べるとすい臓がんの発症リスクが30%も低下していました。

ビタミンD

ビタミンD剤には、「がんの再発予防効果が期待できるのではないか」という研究報告があります。

東京慈恵会医科大学が行った研究によると、p53がん抑制タンパク質の異常発現に免疫反応が見られる消化管がん患者がビタミンD剤を連日服用したところ、再発または死亡リスクが内服していない場合と比べると73%も減少していました(※2)

こちらの研究は、ビタミンDサプリメントが免疫機能を高め、患者の予後を改善している可能性を示唆しています。

アガリクス

アガリクスが、がん予防効果が期待できることを、ご存じの方もいることでしょう。

アガリクスとは学名「Agaricus blazei Murill(アガリクスブラゼイムリル)」であり、ハラタケ属のキノコの総称です。単独でアガリクスというキノコは存在しません。

キノコの持つ多糖体は免疫力を高める効果がありますが、アガリクスは他のキノコに比べて多糖体の種類が豊富です。

免疫力を高める成分としてアガリクスには多糖体類、β–グルカン、α–グルカン、β–ガラクトグリカン、核酸(RNA)、ペクチドグルカン、キシログルカンなどがあります。

シイタケ菌糸体

シイタケ菌糸体とは、普段私たちが食べている傘の部分ではなく、シイタケの母体となる糸状の部分のことです。菌糸体に栄養が蓄積されると傘の部分が作られます。

シイタケのがん予防効果は古くから注目されてきました。1985年にはシイタケの傘の部分から抽出されたレンチナンという成分が免疫力を高め、がん予防効果が期待できることから医薬品として国に認可されました(※3)

その後、シイタケ菌糸体のがん予防効果の研究も進み、がん患者を対象とした臨床研究も複数回実施されており、有効性を示す研究結果もいくつか報告されています。

基本はバランスの良い食事、サプリは補助食品として摂取しよう

サプリメントには食事で補給しきれない栄養素を補完することによって、免疫力を高め、体調を良くするという効果があります。そのため、栄養状態の改善を通じて健康維持に寄与する可能性はありますが、がん予防の明確な証拠があるわけではありません。とはいえ、がん予防に最も効果的なのは普段からバランスの良い食事を取ることです。バランスの良い食事を心がけつつ、サプリはあくまで栄養を補助する食品として摂取するようにしましょう。

(※1)国立がん研究センター|二人に一人が、がんにかかる時代版
(※2)東京慈恵会医科大学|報道発表資料
(※3)国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター|加齢に伴う免疫力低下とβ-グルカンの是非

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医・日本内分泌内科専門医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

プロフィール詳細

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