骨肉腫とはどんながん?気になる症状や治療方法を解説

骨肉腫とはどんながん?気になる症状や治療方法を解説

がんは、全身のあらゆる器官や臓器に発生するものであり、まれなパターンですが骨にも発生します。骨に発生するがんのうち、最も多いとされているのが骨肉腫です(※1)

日本国内での骨肉腫の発生頻度は人口100万人あたり1~1.5人程度(※1)、年間では200人程度しか罹患しない希少がんのため(※2)、「どのような病気なのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、骨肉腫とはどのような病気なのかといった基本的なことから、症状、治療方法まで詳しく解説します。

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目次

骨肉腫とは

骨肉腫とは、骨に発生する悪性腫瘍(がん)の一つです。

中学生や高校生などの思春期に発生することが多い病気ですが(全体の約60%)、40代以上の発症率に関しては約30%となっています(※1)

また、冒頭部分でも述べた通り、日本国内で骨肉腫に罹患する人は1年間で200人ほどのため(※2)、がんの中では非常にまれな希少がんの一つです。なお、罹患する男女比は1.5:1と、女性よりも男性の方が発症する度合いが高いとされています(※1)

骨肉腫が発生しやすい部位

骨肉腫が最も発生しやすいのは、大腿骨と脛骨の膝関節側、つまり膝の上下部分であり、患者さんの約60%はこの部位に骨肉腫が発生します(※2)

次いで、肩から肘までの腕の骨(上腕骨)のうち、肩に近い部分、足の付け根から太ももまでの骨(大腿骨)のうち、足の付け根に近い部分などが、多い傾向です。

また、骨肉腫の特徴の一つに転移が多いという点があります。

骨にできた肉腫が血管を通して全身に運ばれ、その先でがん細胞が増殖することで転移するのです。骨肉腫で最も多いのが肺への遠隔転移で、その次に多いのが、原発巣と同じ骨の中、別の骨への転移となります。

骨肉腫の種類

骨肉腫は、世界保健機関(WHO)の組織型分類により、通常型骨肉腫、血管拡張型骨肉腫、小細胞型骨肉腫の3種類に分類されます(※3)

最も一般的なのは、通常型骨肉腫です(※1)。悪性度が高く、⼩児に発⽣する⾻⾁腫の大半は通常型骨肉腫に該当します。

骨肉腫の症状

骨肉腫の最初の症状は、発生した部位の痛みと腫れです。骨肉腫の初期には、症状が現れないこともありますが、多くの場合は腫瘍(がん)が発生した場所に痛みや腫れ、熱感などの症状が現れ、徐々に悪化していくとされています。

痛みの程度は、初めのうちは運動時に痛みを感じる程度ですが、病状が進行すると運動をしていないときにも痛みを感じることもあります。痛みや腫れ、熱っぽさといった症状は数カ月から半年ほど継続することもあるため、症状が長引く場合には医療機関の受診を検討しましょう。

さらに、骨肉腫が進行すると骨がもろくなり、ちょっとした衝撃でも骨が折れやすくなります。骨折による受診をきっかけに骨肉腫が見つかることも少なくありません。骨折をしてしまうと骨肉腫の治療が困難になってしまうため、骨肉腫が疑われる症状がある場合は、骨折に至る前にできるだけ早く専門医に受診しましょう。

また、骨肉腫と診断された患者さんのうち、10%から20%程度の割合で診断時に肺に転移していると言われています(※1)。肺への転移が進行すると呼吸障害が起こることもあるため注意が必要です。

骨肉腫の治療法

骨肉腫の治療方法の基本は、手術(外科治療)と薬物治療の2つです。

この2つに放射線治療や緩和ケア・支持療法が組み合わせられて治療が行われることもあります。ここでは、再発した場合の治療方法も含めて、骨肉腫の治療方法を詳しく見ていきましょう。

手術(外科治療)

骨肉腫の基本的な手術は、広範切除です。これは、腫瘍の切除に加えて周囲の健康な組織も切除する流れとなっており、手足に栄養を送る重要な血管や、神経を残すことが可能であれば、手足を切断しなくてもすみます。手術で切除した骨の部分には、人工関節を入れたり、手術で切除した骨のがん細胞を死滅させ元の位置に移植したりといった形で再建術が行われます。

骨肉腫は、新しい骨組織をつく出して骨を伸ばす役割を持つ細胞である「骨端線(こったんせん)」のすぐ近くにできることが多く、手術の際に「骨端線」を残すことはほぼ不可能なことが多いと言われてます。

例えば、10歳以下などの成長期以前の子どもの場合、「骨端線」を取ってしまうと、成長が終わる頃には手術をしていない足に比べて10センチ以上も短くなってしまう恐れもあり、生活の質(QOL)を大きく低下させてしまいます。そのため、「大腿骨を切断し義足」という選択肢が取られることも少なくありません。ただし、最近では医学・医療の進歩によって延長することが可能な人工関節の登場など、10歳以下の子どもでも手足を残す患肢温存手術が行われることもあります。

薬物療法

骨肉腫の再発率を下げ、治癒率を上げるために行われるのが薬物療法です。

1970年代まで骨肉腫は患肢切断手術のみであり、その当時の再発率は90%近くでした。しかし、現在では、手術と薬物療法を組み合わせることによって、再発率を大幅に下げることができています(※1)

近年では、2カ月から3カ月間の薬物療法を行った後、手術を行い、手術後さらに数カ月間薬物療法が追加されることが一般的です(※4)。薬剤はメトトレキサート、シスプラチン、アドリアマイシンの3つに加えて、イホスファミドが使われることもあります。抗がん剤には、他にもさまざまな種類がありますが、この4つ以外の薬剤が骨肉腫に有効なのかはまだ立証されていません。

主な副作用は、吐き気や嘔吐、だるさ、口内炎、白血球の減少に伴う感染症などです。また、シスプラチンは腎障害や聴力障害、アドリアマイシンでは心臓障害の恐れがあります。さらに、シスプラチンとイホスファミドは妊孕性(にんようせい)に影響を与えることがわかっています。

放射線療法

放射線療法は、手術、薬物療法と並ぶ、がんの標準治療ですが、骨肉腫ではほとんど行われません。それは、放射線療法が骨肉腫には効きにくいからです。

一方で、手術前あるいは手術後に補助的な治療として放射線療法が行われることもあります。また、腫瘍ができた部位の問題から安全な広範切除が難しい場合に粒子線治療で対応することもあります。

緩和ケア・支持療法

緩和ケアとは、がん治療に伴う心身の苦痛を取り除く治療です。がんと診断されて心身の負担を感じたときに、いつでも治療を受けることができます。

支持療法とは、がんの症状やがん治療に伴う副作用や後遺症、合併症を和らげるための治療やケアのことを指します。

再発した場合の治療

骨肉腫が再発した際の治療方法は、再発の部位やどのような治療方法が行われてきたかによって異なります。例えば、少数の転移が肺にだけ生じている場合の治療方法の基本は手術です。多数の肺転移があり、手術で取り切ることが難しい場合は、薬物療法が選択されます。

痛みが長引く場合は我慢せずに専門医に相談しよう

骨肉腫の代表的な症状は腫瘍が発生した場所の痛みや腫れです。とはいえ、痛みや腫れは一般的によくあるもののため、これらの症状が出ただけでは多くの方は骨肉腫を疑わないでしょう。

しかし、多くのがんと同様、骨肉腫も放置すると、治療は困難になり、命を落とすリスクも高まります。原因不明の手足の痛みや腫れが長引く場合は、できるだけ早く専門医を受診し検査を行いましょう。

(※1)国立がん研究センター希少がんセンター|骨肉腫
(※2)国立がん研究センター|骨肉腫〈小児〉について
(※3)東京医科歯科大学 整形外科|骨肉腫
(※4)国立がん研究センター|骨肉腫〈小児〉 全ページ表示
参照日:2024年8月

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

プロフィール詳細

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