がんのリンパ節転移になるとどうなる?発症の原因や治療法を解説

がんのリンパ節転移になるとどうなる?発症の原因や治療法を解説

リンパ節転移と聞いても、どのような状態なのかわからず、適切な治療法をわからない方がいるのではないでしょうか。放置すると、症状が重篤化し、最悪の場合は命を落とす可能性があるのです。

本記事では、リンパ節転移の原因となるがんや、適切な治療法について解説します。リンパ節転移に関する知識を深め、適切な治療を受けましょう。

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目次

がんがリンパ節転移するとどうなる?

がんの転移とは、原発巣(がん細胞が発生した箇所)からリンパ節・肺・肝臓などの臓器に移動し、増殖して腫瘍を作ることです。がん細胞が原発巣にとどまっている状態で増殖という状態であれば、手術で取り除くことは可能です。一方で、さまざまな場所へ転移する場合は全てを除去することは難しくなり、場合によっては命を落としてしまうケースもあります。

リンパ節転移とは原発巣のがん細胞が周りのリンパ管へ侵入し、リンパ流によってリンパ節へ移動し、腫瘍ができることです。

原発巣の近くのリンパ節に転移した後は、リンパ管を経由してリンパ節へと広がっていきます。

リンパ節転移の原因となるがんの治療法

リンパ節転移を治療するためには、転移の原因となっているがんを把握し、適切な治療法を受けることが大切です。

甲状腺がん

甲状腺がんとは、甲状腺結節(甲状腺にできたしこりのこと)のうち悪性になるものです。リンパ節へ転移する甲状腺がんとしては、主に以下の3つが挙げられます(※2)

乳頭がん

乳頭がんは、甲状腺がんの約90%を占めるがんです(※1)リンパ節転移になるケースが多いものの、ゆっくりと進行するため、突発的に命の危険を脅かすことは少ないとされています。

一方で、一部の乳頭がんは再発の繰り返しになるケースがあり、ごくまれなケースとして悪性度の高い未分化がん(成熟していないがん)に発展する場合があるでしょう。

乳頭がんは、がんの転移の有無やサイズによって超低リスク・低リスク・中リスク・高リスクに4つ分かれ、治療法がそれぞれで異なります(※1)。超低リスクの場合は経過観察するケースがありますが、低リスク・中リスクの場合は甲状腺の一部を取り除くための手術が施されます。中リスク・高リスクの場合は転移したがんを消滅させるため、放射性ヨウ素内用療法と呼ばれる方法を実施するケースが多い傾向です。また手術後は、TSH(甲状腺刺激ホルモン)抑制療法を行うことを検討する必要があります。

濾胞(ろほう)がん

濾胞(ろほう)がんは、甲状腺がんの中で最も多い乳頭がんの次に多いとされるがんです(※1)。良性の甲状腺腫瘍と判別が難しく、血液を経由して骨や肺などの臓器に転移する傾向があり、まれにリンパ節への転移も起こります。

他の臓器への転移がない場合は、比較的予後が良好とされているのが特徴です。

遠隔転移(離れた臓器への転移)がない場合は、腫瘍が存在する側の甲状腺を取り除く手術が実施され、体の状態やがんの大きさによっては甲状腺を全て摘出するケースがあります。

髄様(ずいよう)がん

髄様がんは、甲状腺がんの中で約1~2%を占めるがんと言われています(※1)乳頭がんや濾胞がんと比較して悪性度が高く、リンパ節・肺・肝臓などへ転移しやすい傾向です。

髄様がんは遺伝子に家族性変異が見られる場合があるため、遺伝子検査を受ける必要があります。

遺伝子検査を受けたうえで、甲状腺の全てを取り除くか、一部を取り除くかの治療方針を決めなければなりません。

大腸がん

大腸がんの場合、リンパ液の流れる方向に沿ってリンパ節転移が起こることがわかっています。結腸の壁の周りにある腸管傍リンパ節に転移した後、中間リンパ節に広がり、腸管に血液を送る血管の根本に存在する主リンパ節にまで転移するケースがあるでしょう。

治療するためには、予防としてリンパ節を切除するリンパ節郭清を実施しなければなりません。なお、リンパ節郭清は、大腸がん手術の基本的な手技とされています(※3)

食道がん

食道がんは、リンパ節転移を起こしやすいがんとされており、リンパ管が豊富な粘膜の下層にがんが広がると、一定の確率でリンパ節転移が起こる可能性があります(※2)。がんが膜下層を超え、固有筋層へ広がると、リンパ節転移の頻度がさらに高まるでしょう。なお、治療する際は、内視鏡治療・放射線治療・手術・化学療法などの選択肢があります。

肺がん

肺にがんが生じると、がん細胞が血液あるいはリンパの流れに沿って他の臓器に移動します。リンパ節転移では、最初に近くのリンパ管に侵入し、リンパ節・肺門リンパ節・縦隔リンパ節・反対側のリンパ節の順で広がっていくでしょう(※3)。肺がんの治療は、手術・薬物療法・放射線治療などの選択肢があります。

リンパ節転移を検査する方法

リンパ節転移の有無を検査する主な方法は以下の通りです。担当の医師に従い、適切な検査を受けましょう

超音波検査

超音波検査とは、超音波を体表に当て、臓器から跳ね返ってくる反射の様子を画像化する検査です。腫瘍の大きさや性質、リンパ節転移の有無などを確認できます。

超音波検査は、放射線による被ばくや痛みの心配がなく、体にかかる負担が比較的少ない検査方法です。1回の検査で複数の臓器をあらゆる角度から確認できる一方で、骨の中や骨に囲まれた部位、空気を含む肺などの臓器の検査はできません。

CT検査

CT(Computed Tomography、コンピューター断層撮影)検査とは、体の周囲からX線を当てて撮影することで体の断面を画像として確認できる検査を指します。腫瘍の大きさや深さ・広がり、リンパ節転移の有無などを調べる際に有効です。

造影剤を活用して撮影すると、がんの広がりや周りの臓器に転移しているかが確認できます。

なお、CT検査は、10~15分程度で広範囲をより詳しく撮影できるため、がんの形や広がりがより詳しく確認できます(※4)。1回あたりの放射線被ばく量は、X線検査よりも多いものの、被ばくの影響を過度に心配する必要はありません。しかし、胎児の場合は放射線の影響を受けやすいため、妊婦の方は担当の医師に相談してください。

CT検査についてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

MRI検査

MRI検査とは、強力な磁石と電波を使用して体を撮影することで、断面を画像として確認する検査です。CT検査に比べてがん組織と正常な組織の区別がしやすく、がんの性状や広がり、リンパ節転移の有無を確認することが可能です。

X線を使用しないため、被ばくの心配はありません。一方で、MRI検査で活用する磁石や電波は金属の影響を受けるため、検査前に体の内外にペースメーカーなど含め金属類がないかを確認することが重要です。

MRI検査についてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

がんを治療する際の考え方

がんの治療を進める際には、病期(ステージ)を考慮しながら方針を立てます。がんの病期(ステージ)とは、がんの進行の程度を示すものです。例えば、大腸がんの場合の病期を段階的に以下の5つのステージに分けられます(※5)

病期(ステージ)状態
0期がんが粘膜の中にとどまっている
Ⅰ期 がんが固有筋層にとどまっている
Ⅱ期がんが固有筋層の外まで広がっている
Ⅲ期リンパ節転移が見られる
Ⅳ期 腹膜転移(腹膜播種)もしくは血行性転移(肺転移・肝転移)が見られる
出典:国立がん研究センター|大腸がん(結腸がん・直腸がん)治療「表1 大腸がんの病期」

0期~Ⅲ期の大腸がんを治療する場合、主にがんの切除の可否を判断し、切除が可能であれば手術もしくは内視鏡治療が進められます。また、再発リスクが高いⅡ期もしくはⅢ期の場合は手術後に薬物療法を施すことも推奨されています。

Ⅳ期では肝臓や肺、リンパ節などに転移したがんの切除の可否を判断し、可能な場合は手術を行うことが可能です。遠隔転移巣(他の臓器に転移したがん)が切除できたとしても、原発巣(最初に発生したがん)が取り除けない場合は放射線治療や薬物療法が推奨されます。遠隔転移巣の切除が不可であり、原発巣を取り除くことが可能で、原発巣に関わる症状があるときは原発巣の手術が行われます。

リンパ節転移を防止するために健康管理を徹底しよう

リンパ節転移を引き起こすがんは、甲状腺がんや食道がん、大腸がんや肺がんなどが挙げられます。転移した場所によって、治療法は異なります。担当の医師の指示に従い、適切な治療を受け、改善を図りましょう。

がん細胞が原発巣だけでなく、さまざまな臓器に転移すると、治療の難易度が高まります。最悪の場合、命を落とすケースもあるでしょう。手遅れになる前に、日頃から定期検診を受け、健康管理に努めていきましょう。

(※1)国立がん研究センター|大腸がんの手術について
(※2)国立がん研究センター|1.⾷道がんとは
(※3)日本肺癌学会|Q4 肺癌が転移しやすい場所と症状について教えてください
(※4)国立がん研究センター|甲状腺がんについて
(※5)国立がん研究センター|大腸がん(結腸がん・直腸がん) 治療
参照日:2024年7月

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医・日本内分泌内科専門医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

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