膀胱がんの再発を解説!再発率から再発した場合の治療法、再発予防法まで

膀胱がんの再発を解説!再発率から再発した場合の治療法、再発予防法まで

日本において、2019年の1年間で新たに膀胱(ぼうこう)がんと診断された人は2万3,000人以上に上ります(※1)

膀胱がんに限らず、毎年、がんと診断されたことのある人は増え続けていますが、中にはがんを克服した人も増えていきます。

がんを克服した人が次に気になるのが、再発のリスクです。

膀胱がんの再発率はどれくらいなのでしょうか。そして、再発させないためにはどのような点に注意して生活を送ればいいのでしょうか。

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目次

膀胱がんの再発率はどれくらい?

がんの再発率は、原発がんの種類によって大きく異なります。再発リスクが極めて高いがんもあれば、再発率が低いがんもあります。それでは、膀胱がんの再発率はどれくらいなのでしょうか。以下から詳しく見ていきましょう。

5年以内の再発率は30~80%と高い

膀胱がんの治療後5年以内の再発率は、一般的には30~80%といわれています。膀胱がんは、数あるがんの種類の中でも再発率が高いがんとして知られています。

がん細胞が膀胱表面の粘膜にとどまり、膀胱の筋肉にまで達していないがんが表在性膀胱がんです。表在性膀胱がんの膀胱内再発率は特に高く(※3)、術後1~2年の間に実に60~70%の患者さんが再発するといわれています。そのため、術後は3カ月ごとなど短いスパンで検査を繰り返していかなければなりません(※4)

膀胱がんの再発はどこに多い?

体のどの部位や臓器に再発が多いかは、原発がんの種類によって異なります。

膀胱がんの再発で多いのが、肺、リンパ節、肝臓、骨などです。また、膀胱全摘除術後にもともと膀胱があった場所の付近や尿道などにがんが再発することもあります(※5)

膀胱がんはなぜ再発しやすい?

なぜ膀胱がんは再発しやすいのでしょうか。明確な理由はまだ明らかになっていません。

考えられる理由として、手術でがん細胞を取りきれたと思っていても、肉眼では見えないような小さながん細胞が残っており、その小さながん細胞が増殖するということがあります。

再発した膀胱がんの治療法

膀胱がんは再発リスクが高いため、再発したときにどのような治療が行われるかをあらかじめ把握しておきたい方も多いと思います。

再発した膀胱がんの治療法は、初回の治療方法や膀胱がんの種類、悪性度によって変わります。それぞれ、どのような治療が行われるのかを見ていきましょう。

筋層非浸潤性膀胱がんで初回の治療が抗がん剤膀胱内注入療法

がん細胞が、膀胱の粘膜下層までにとどまっている膀胱がんのことを筋層非浸潤性膀胱がんといいます。

筋層非浸潤性膀胱がんで、初回の治療が抗がん剤を膀胱内に注入する治療法だった場合、再発時は同じ抗がん剤膀胱注入療法のほか、次に説明するBCG膀胱内注入療法が行われます。

筋層非浸潤性膀胱がんで初回の治療がBCG膀胱内注入療法

再発のリスクが中リスクの一部の層と高リスクの層では、初回の治療法は、BCG膀胱内注入療法となります。

がん細胞を攻撃するBCGという薬剤を膀胱に注入する治療法です。初回治療がBCG膀胱内注入療法で、再発したがんが上皮内がん以外の治療法は、TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術:がん細胞を電気メスで切除する治療法)です。

上皮内がんの場合は、2回目のBCG膀胱内注入療法が行われます(※6)

筋層浸潤性膀胱がんで初回の治療が膀胱全摘除術

膀胱の筋層に浸潤したがんが、筋層浸潤性膀胱がんです。

筋層浸潤性膀胱がんで初回の治療が膀胱を摘出する手術だった場合、再発時の治療の中心は化学療法や薬物療法となります。なお、遠隔転移したがんを手術で取り除くケースもあります。

筋層浸潤性膀胱がんで初回の治療が膀胱温存療法

筋層浸潤性膀胱がんで初回の治療が膀胱温存療法、なおかつ再発したがんが筋層非浸潤性膀胱がんの場合、筋層非浸潤性膀胱がんの初回治療と同じ治療が行われます。

再発したがんが筋層にまで浸潤していた場合に行われるのは膀胱全摘除術です。遠隔転移の場合、治療の中心は化学療法となります。

膀胱がんの再発を予防するにはどうすればいい?

膀胱がんに限らず、ほとんどのがんには再発リスクがあります。そして、現在のところがんの再発リスクをゼロにする方法は確立されていません。

しかし、がんの再発リスクをゼロにはできなくても、リスクを抑えることは可能です。

膀胱がんの再発リスクを下げるための方法にはどのようなものがあるのでしょうか。以下から詳しく見ていきましょう。

膀胱がんの再発を予防する「膀胱内注入療法」とは

膀胱内注入療法とは、TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)の後に、膀胱がんの再発や増殖を抑えることを目的として、抗がん剤やBCGという薬剤を膀胱内に注入する治療法です。

上皮内がんでは、BCG膀胱内注入療法により80~90%のがん細胞が消失するといわれています(※7)。再発リスクが中リスク群の一部と高リスク群の上皮内がんに対しては、TURBTの後に膀胱内注入療法を行うのが標準治療となっています。

副作用として多いのが頻尿や排尿時の痛み、血尿、発熱などです(※8)

日常生活で気をつけること

膀胱がんに限らず、すべてのがんのリスクを低下させる生活習慣があることはご存じでしょうか。

国立がん研究センターなどの研究グループでは、日本人とがんの関係を示すさまざまな研究結果を分析。その結果をもとに、日本人におけるがん予防のために重要な要素として、「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」の5つの生活習慣に「感染症」を加え、「日本人のためのがん予防法(5+1)」を定めました(※9)

「日本人のためのがん予防法(5+1)」では次の生活習慣ががん予防に効果的であると推奨されています。

  • 禁煙する
  • お酒を飲む場合は純エタノール量換算で1日あたり23g程度(日本酒1合、ビール大瓶1本)(※9)まで
  • 食生活を見直す(減塩する、野菜と果物を摂取する、熱い飲み物や食べ物は冷ましてから取る)
  • 運動をする
  • 太りすぎず、痩せすぎず適正体重を維持する
  • がんの要因となる感染を予防する

最も重要なのは再発した膀胱がんを早く見つけること

残念ながら、現在のところがんの再発リスクをゼロにすることはできません。ほとんどのがんに再発リスクがあり、特に膀胱がんは再発リスクの高いがんとして知られています。再発リスクをゼロにすることはできませんが、再発したがんから命を守ることは可能です。

がんを完治させる上で早期発見・早期治療は非常に重要です。

がんの発見が遅れれば遅れるほど、治療のスタートが遅れ、その間にもがん細胞は増殖を続けます。ステージ(病期)が進行してしまえば、治療は難しくなり、命を落とす確率も高くなってしまいます。

再発した膀胱がんから命を守るためには、定期的な検査が欠かせません。経過観察の期間中は医師の指導を守り、定期的な検査を行いましょう。

膀胱がんの再発について【まとめ】

膀胱がんの治療後5年以内の再発率は、一般的には30~80%といわれています。

数あるがんの種類の中でも、膀胱がんは再発率が高いがんの一つです。

また、表在性膀胱の膀胱内再発率は手術後1~2年以内に多く見られ、その期間は3カ月に一度など、頻繁に検査を繰り返さなければなりません。中には「何度も検査に行くのは面倒くさい」と思う方もいることでしょう。

しかし、定期的に検査をしていくから再発したがんを早期に発見できるのです。再発したがんの発見が早期であればあるほど、生存率は高まります。膀胱がんは再発しやすいため、特に症状がなくても医師が決めた期間はきちんと検査に行きましょう。

(※1)国立がん研究センター|膀胱
(※2)北海道医療センター|膀胱がん 泌尿器科
(※3)岐阜大学大学院医学系研究科 泌尿器科|膀胱癌
(※4)名古屋大学大学院医学系研究科 泌尿器科学教室|泌尿器科の病気について
(※5)国立がん研究センター|膀胱がん
(※6)国立がん研究センター|膀胱がん 治療 10.転移・再発
(※7)四国がんセンター|治療について
(※8)国立がん研究センター|膀胱がん 治療
(※9)国立がん研究センター|科学的根拠に基づくがん予防
参照日:2023年7月

吉村 友希

医薬品開発者

神戸大学大学院医学研究科バイオメディカルサイエンス専攻 薬物動態学分野。分子標的薬の副作用に関係する研究について、研究・ディスカッションに参加。大手グローバルCROにて医薬品開発職に従事。

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