高濃度ビタミンC点滴療法は、抗がん剤や放射線などの標準治療を補完する目的で検討されることがあります。標準治療で期待した効果が得られない場合や、副作用への不安がある場合の選択肢の一つとなり得ますが、一方で「意味がない」との声を耳にすることも少なくありません。
本記事では、高濃度ビタミンC点滴療法の概要や、意味がないと言われる背景、治療を受ける際の注意点について解説します。
目次
高濃度ビタミンC点滴療法とは?

高濃度ビタミンC点滴療法とは、大量のビタミンC(アスコルビン酸)を静脈から点滴によって注入する治療法であり、がん治療における補完医療の一つです。
ビタミンCを食事やサプリメントで大量に摂取しても、消化管からの吸収によって調節されるため、血中濃度は一定以上を超えることはありません。しかし、点滴投与することで、通常の血中濃度の数十倍から百倍以上に相当する「薬理学的濃度」まで到達できるため、がんの治療で用いられることもあります。
ただし、手術や抗がん剤、放射線といった標準治療の代わりになるものではないことを理解しておくことが大切です。現時点では、「ビタミンC点滴単独の投与」でがんが治癒するという科学的根拠は確立されていません。
期待できる効果と選ばれる理由
高濃度ビタミンC点滴が選ばれる大きな理由は、ビタミンCの酸化によって過酸化水素が生成される点にあります。点滴でビタミンCを投与した場合、条件によって血中で過酸化水素を生成するとされており、これががんに対して細胞障害性を示す可能性が指摘されています。
一方、正常細胞は「カタラーゼ(※)」という酵素を持ち、過酸化水素を分解する仕組みが備わっていることが特徴です。このため、がん細胞に選択的に作用する可能性があるとされていますが、実際の治療効果においては限定的であり、あくまで個人の状態や条件に応じた補助的な役割として検討するのが一般的です。
がんに対するビタミンCの抗酸化作用や免疫機能の向上作用が注目されていますが、有効性について結論は定かではありません。
また、高濃度ビタミンC点滴療法は、特定の抗がん剤や放射線治療などの治療との併用が可能です。嘔吐(おうと)や脱毛といった副作用は、一般に抗がん剤治療と比べて少ないとされています。そのため、副作用が強く、かつ標準治療の継続が困難な場合に行われることがあります。また、従来の治療で目に見えた効果が見られない場合や、体調を維持しながら寛解期を延長したい時にも検討されることがあります。
(※)カタラーゼ:動物や植物、微生物といった好気的細胞の中に存在する酵素のこと
「意味がない」と言われる理由と実際の位置付け
高濃度ビタミンC点滴は、「意味がない」との声も上がっています。これは、「標準治療を上回るがん消失効果」を期待した大規模な臨床試験において、単独での生存率改善が明確に証明されていないことが、大きな要因の一つとして考えられています。FDA(Unites States Food and Drug Administration、米国食品医薬品局)が、がん治療におけるビタミンCの使用を承認していないことが、背景にあります。
過去に発表された2つの研究では、ビタミンC投与群とプラセボ投与群の間に、症状や日常生活の質、生存率に関して有意差は認められませんでした。一部の報告では、前立腺がんや肝細胞がんの細胞の増殖を抑えることが報告されていますが、データとしては不十分というのが現状です。
さらに、経口ビタミンCと一部の抗がん剤(ボルテゾミブ)を併用すると、抗がん剤の効果を阻むリスクも示唆されています。こうした背景もあり、がんの標準治療として確立されていません。
高濃度ビタミンC点滴療法を受けるうえでの注意点
高濃度ビタミンC点滴療法は、副作用が比較的少ないと言われていますが、効果や安全性の評価は状況により異なります。治療を受けるうえでの3つの注意点を見ていきましょう。
治療を受けられない人
治療を受けられない人は、以下のケースに該当する場合です。
- グルコース-6-リン酸脱水素酵素(以下、G6PD)欠乏症である
- 高度の腎不全・透析治療中である
- 心不全・強い浮腫がある
G6PD(※)欠乏症とは、赤血球が破壊されて貧血を引き起こす先天性疾患の一つです。この欠乏症を持つ人は、生まれつき酵素が少なかったり、その働きが弱かったりするため、貧血などが起こりやすくなります。したがって、初回投与前のG6PD欠乏症のスクリーニング検査は必須です。
高濃度ビタミンC点滴は、体内で過酸化水素を発生させるため、G6PDが不足している人が受けると溶血を起こしやすくなります。重篤な溶血につながるおそれがあるため、原則として実施されません。
高度の腎不全や透析中の人は、腎結石や腎不全の症状が悪化するおそれがあるため禁忌とされています。心不全の人も症状が悪化する可能性があり、注意が必要です。
(※)G6PD:赤血球に含まれるヘモグロビンの安定性を維持するために欠かせない酵素
副作用について
高濃度ビタミンC点滴療法の主な副作用は、以下の通りです。
- 点滴刺入部の痛み、血管痛(浸透圧が高いため)
- 吐き気や頭痛
- 眠気(ビタミンCの抗ヒスタミン作用による)
- 低血糖
- 偽高血糖(血糖値の誤測定)
高濃度ビタミンC点滴は浸透圧が高く、刺入部や血管に痛みを感じやすくなる場合があります。そのため、滴下速度を遅くしたり、温めたりすると痛みが和らぐでしょう。
点滴の滴下速度や体調によっては吐き気や頭痛が見られることもあります。眠気も比較的起こりやすい副作用の一つです。ビタミンCにはアレルギー症状を抑制する抗ヒスタミン作用があり、それが抗ヒスタミン薬を服用したような眠気を引き起こすことがあります。
ビタミンCの化学構造は、ブドウ糖と化学的構造が似ているため、投与後に血糖値の変動を招く可能性があるといわれいます。高濃度のビタミンCが血液中に大量に入ると、インスリンが過剰に分泌され、低血糖を引き起こす可能性があります。これを防ぐためにも、点滴前には必ず食事を摂ることが大切です。
また、簡易血糖測定器で測定する際も要注意です。測定器がビタミンCをブドウ糖と間違えて反応し、実際の血糖値よりも高い数値が出る場合があります。この誤った数値でインスリンを使用すると低血糖を招くおそれがあるため、特に糖尿病で治療中の場合は、医師に必ず相談しましょう。
事前に確認すべきこと
納得できる治療を受けるためには、G6PDのスクリーニング検査の有無、製剤の品質管理について確認しておきましょう。
日本人の0.1%から0.5%は、G6PD活性が低いという報告があります。該当者が50g以上の高濃度ビタミンC点滴療法を受けると、溶血を起こすリスクがあるため、初回の点滴前に検査の実施有無を確認しましょう。また、使用する製剤の成分や保存条件は製品によって異なるため、実施する医療機関で成分や規格、保管方法など品質管理体制を調べることが必要です。
高濃度ビタミンC点滴療法では、品質を維持するために厳密な温度管理のもとで、輸送・保管された輸入ビタミンC製剤を用いるのが一般的です。抗がん剤や放射線など標準治療を行っている方は、必ず主治医に治療の相互作用を相談したうえで、検討することが重要です。
高濃度ビタミンC点滴療法の治療頻度・費用

がん治療やQOL(生活の質)の改善を目的として、高濃度ビタミンC点滴を行う場合の頻度は、週に2回から3回、3カ月が一つの目安とされています。自覚症状や血液検査の結果を踏まえたうえで、継続の検討が行われます。
現在、日本での高濃度ビタミンC点滴は、保険適用外(自由診療)です。がん治療の補完目的であっても、原則として全額自己負担となります。
費用は、医療機関やビタミンCの投与量によって異なりますが、1回あたり15,000円から50,000円程度が一般的です。これに加え、初回受診時は初診料や血液検査費用などが別途発生します。
標準治療と併用して長期間継続する場合、年間で総額100万円を超える場合もあります。国内で未承認の治療ゆえに、経済的な負担が大きくなる傾向です。治療を選択する際は、総額を事前に確認したうえで、経済面も含め主治医と相談することをおすすめします。
高濃度ビタミンC点滴療法は主治医や第三者に相談して選択しよう
高濃度ビタミンC点滴療法は、標準治療の補完として、副作用の軽減やQOL(生活の質)を維持する目的で検討されるケースもあります。がん治療の基本は、手術や抗がん剤、放射線といった標準治療であり、本療法はそれらを代替するものではありません。
また、標準治療のタイミングを問わず、自己判断で高濃度ビタミンC点滴療法を開始することは避け、必ず主治医や第三者に相談してから判断しましょう。納得のいく選択をするためにも、セカンドオピニオンの検討やがんの相談窓口の活用も有効な手段といえます。
















