黄疸が出たら、余命はどれくらい?病気と黄疸の関係を解説

黄疸が出たら、余命はどれくらい?病気と黄疸の関係を解説

内臓疾患の重篤な症状の一つに黄疸があります。黄疸とは、皮膚や目の白い部分が黄色くなる症状のことです。

初めて黄疸になった方の中には、鏡に映った自分の姿に戸惑う方もいることでしょう。

黄疸はがんの末期症状としても考えられているため、余命と関連付けて考える方もいます。本記事では、黄疸と余命の関係を詳しく解説します。

受付中がんの臨床試験、研究・治験広告のご案内

製薬企業や医療機関、研究グループから依頼を受け、治験審査委員会の審議で承認された臨床試験、治験を掲載しています。

がんワクチン療法がんワクチン療法

目次

黄疸とは

黄疸とは、皮膚や白目の部分が黄色くなる症状です。血液中の「ビリルビン」という、赤血球が分解される際に生成される黄色の色素が過剰になることが原因で起こるとされています。ビリルビンは、古くなった赤血球が破壊されるときに生成されるものです。

健康な身体の場合、肝臓で代謝されたビリルビンは、胆汁に含まれて便とともに排出されます。しかし、何らかのトラブルで便から排出されなくなると、ビリルビンが血液中に逆流し、それが体内に蓄積されることで黄疸が発生します。

黄疸が出たら余命はどれくらい?

「黄疸=重篤な病気」というイメージを抱く方もいることでしょう。確かに黄疸を伴う疾患は重症であることが多く、早急に医療機関で受診することが求められています。

また、肝臓がんや膵臓がん、胆道がんを発症すると、黄疸の症状が現れることは事実です。とはいえ、黄疸が表れても必ずしも余命が短いというわけではありません。

例えば、胆道がんの場合、胆管の通りが悪くなり、胆汁が溢れてしまうことで発症します。このような症状となると、塞がってしまった胆管を内視鏡やカテーテルを用いて開通させることができれば、黄疸の症状は緩和されると考えられています。

しかし、胆道がんがさらに進行すると通りの悪くなった胆管を開通させることが困難です。そうなると黄疸の治療は難しくなり、余命が短くなるおそれがあります。

また、肝臓がんでも黄疸が出ることがありますが、黄疸は主に肝臓の機能の状態を示す指標の一つです。黄疸のみで、肝臓がんのステージが決まるわけではありません。肝臓がんのステージは、黄疸を含めた肝機能の状態だけではなく、がんの数や大きさ、リンパ節転移や遠隔転移の有無などで決まります。つまり、余命は黄疸の有無のみではなく、病気の進行状況、広がり方で決まると考えられます。

黄疸が出たときに考えられる病気

黄疸は、血液中の「ビリルビン」という色素が過剰になる症状です。前述の通り、ビリルビンは古くなった赤血球が破壊された際に生成されるものです。古くなった赤血球は脾臓(ひぞう)で破壊され、血液の流れに沿って肝臓に運ばれ代謝されたのち、胆汁の中に入り込む形で排泄されます。排出されたビリルビンは胆管を通って十二指腸に流れ、最終的に便として排出されます。

ビリルビンの生成から排出までの流れのいずれかの臓器に問題があるときに現れやすくなるのが黄疸です。ここでは、黄疸を発症したときに考えられる病気をお伝えします。

膵臓がん

膵臓(すいぞう)がんの多くは、膵臓から送り出された膵液(すいえき)を十二指腸へと運ぶ器官である膵管(すいかん)に発生します。5年相対生存率(がんの診断から5年後に生存している人の割合を表す指標)は8.5%です(※1)。この数値からもわかるように、膵臓がんは腹部のがんの中では悪性度の高いがんの一つといえるでしょう。

膵臓がんの生存率が低い理由の一つとして、早期に発見しにくい点にあります。がんが発生しても初期段階ではほとんど自覚症状がないとされているため、自覚症状で初期の膵臓がんを発見することは極めて困難です。

また、膵臓は腹部の他の臓器に囲まれているため、触診や一般的な腹部エコー、MRI、PET/CT検査を行っても発見が難しく、見つかったときには膵臓がんがすでに進行している場合もあります。

胆道がん

胆道とは、肝臓で作られた胆汁が十二指腸まで運ばれるまでの通り道のことであり、胆管、胆のう(たんのう)、十二指腸乳頭部の3つに分類されます。胆管にできたがんは「胆管がん」、胆のうにできたがんは「胆のうがん」と、細分化されます。

胆道がんの5年相対生存率は、男性26.8%、女性22.1%です(※2)。がん全体の5年相対生存率が男性62.0%、女性66.9%であることから、胆道がんは予後の厳しいがんといえるでしょう(※3)

初期の胆道がんは無症状の場合が多く、膵臓がんと同様、自覚症状だけでの早期発見は難しいがんです。がんが進行すると黄疸、右わき腹の痛み、体重減少などの症状が現れます。

胆石症・総胆管結石症

胆石症とは、胆のうや胆管に結石ができたことで、激痛を伴うなどさまざまな症状を引き起こす病気の総称です。食事で摂取したコレステロールが十分に代謝されずに、胆汁の中で結晶化したことで発症します。

胆石症は多くの場合、無症状ですが、胆石が胆管を塞ぐと右季肋部痛やみぞおちの痛み、黄疸、吐き気、嘔吐などの症状が出現します。日本人の10人に1人が胆石を持っているとされており、胆石症の患者は年々増加傾向です。

また、胆管の一部である総胆管にできた場合は総胆管結石症といい、主な症状として上腹部や右季肋部の痛み、黄疸、発熱、吐き気、嘔吐などがあります。

急性ウイルス性肝炎

急性ウイルス性肝炎とは、肝炎ウイルスによって引き起こされる肝臓の炎症です。2025年5月時点、急性ウイルス性肝炎を引き起こすウイルスは、A型からE型まで5種類が確認されています(※4)。そのうち、最も発症頻度が多いのがA型肝炎ウイルス、次いでB型肝炎ウイルスです(※4)

A型肝炎ウイルスは経口感染し、B型肝炎ウイルスは主に体液や血液を介した形で感染します。C型肝炎ウイルスは血液を通して感染し、D型肝炎ウイルスはB型肝炎ウイルスの感染と同様に体液や血液を介します。さらに、E型肝炎ウイルスは、食物や水などの摂取によって感染すると考えられています。

急性ウイルス性肝炎の症状は、ウイルスの種類や個人差によって異なります。一般的には全身倦怠感、食欲不振、嘔吐、発熱、右上の腹部痛、黄疸などが症状として見られます。また、軽い風邪と区別できないような軽微な症状で済む場合もあるため、体調の変化を細かく確認することが大切です。

アルコール性肝疾患

アルコール性肝疾患(ALD)は、長期間の飲酒によって肝臓の機能を著しく低下させることで起こる疾患です。全ての肝臓の疾患に占めるアルコール性肝障害の割合は約10%~15%という結果が公表されています(※5)。また、2017年の日本のアルコール性肝疾患の患者数は約3.7万人でした(※6)

初期のアルコール性肝疾患はほとんど無症状といわれており、健康診断のときに見つかることもあります。疾患が進行すると、倦怠感、食欲不振、吐き気、黄疸、肝臓の腫大、腹水などの症状が現れるとされています。

肝硬変・肝がん

肝臓の慢性的な炎症や障害が続いた結果、肝臓の機能を失った状態が肝硬変です。肝硬変が進行すると肝がんになるケースもあります。

肝硬変の主な原因は、長期にわたるアルコールの過剰摂取、B型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)による慢性感染、生活習慣病によって引き起こされる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、自己免疫性肝炎、薬物の摂取による肝臓に炎症や損傷などです。

初期には自覚症状がないことが多く、進行すると腹水、黄疸、浮腫、食道静脈瘤、肝性脳症などの症状が出現します。

黄疸と余命は関係ない!希望を捨てずに前向きに治療に臨もう

黄疸は皮膚や白目が黄色くなるなど、外見でも明らかにわかる症状のため、初めて発症した際には戸惑う方もいることでしょう。

また、膵臓がんや胆道がんといった治療が難しいとされるがんの末期に現れることもあるため、「余命があまりないかもしれない」と不安を抱く方も少なくありません。

しかし、黄疸が出たからといって、すぐに命に関わる重い疾患とは限りません。重篤な疾患でなくても黄疸が見られることもあります。

大切なのは、黄疸が現れたからといって希望を捨てず、早期に医療機関を受診し、原因を正確につきとめることです。その原因を把握したうえで、前向きに治療に臨みましょう。

(※1)がん情報サービス|黄疸
(※2)Medical Note|黄疸
(※3)国立がん研究センター東病院|胆道がん

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医・日本内分泌内科専門医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

プロフィール詳細

受付中がんの臨床試験、研究・治験広告のご案内

製薬企業や医療機関、研究グループから依頼を受け、治験審査委員会の審議で承認された臨床試験、治験を掲載しています。

がんワクチン療法 がんワクチン療法

各がんの解説