脳腫瘍の予防はできる?予防方法や自覚症状、予兆も解説

脳腫瘍の予防はできる?予防方法や自覚症状、予兆も解説

日本では、年間で人口10万人に対して10~12人が脳腫瘍に罹患していると推計されています (※1)

決してよくある病気ではないため、脳腫瘍がどんな病気なのかがよくわからないという方も少なくないでしょう。とはいえ、脳腫瘍が脳にできるがんであるということは多くの方が知っていると思います。そのため、頭痛が続くときなど、「もしかして脳腫瘍かも」と不安を抱く方もいるでしょう。

この記事では、脳腫瘍とはどのような病気であるか、予防方法について詳しく解説します。

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目次

脳腫瘍とはどんな病気?

まずは脳腫瘍という病気について詳しく見ていきましょう。

脳腫瘍は、原発性脳腫瘍と転移性脳腫瘍の2種類に分かれます(※2) 。それぞれの特徴について、以下の通りです。

原発性脳腫瘍

原発性脳腫瘍とは、脳細胞や脳を包む膜、脳神経など、脳に発生した腫瘍のことです。

組織学的には多種多様に分類され、150種類以上に分類されます 。

また、原発性脳腫瘍は良性と悪性に分けられ、増殖スピードが速く、周囲の組織に浸潤する脳腫瘍が悪性脳腫瘍です。一方、増殖スピードが遅く、正常な組織との境界が明瞭なのが良性脳腫瘍です(※3)

主な原発性脳腫瘍には、以下のものがあります(※2)

  • 神経膠腫(=グリオーマ)
  • 中枢神経系原発悪性リンパ腫
  • 髄膜腫(ずいまくしゅ)
  • 下垂体腺腫(かすいたいせんしゅ)
  • 神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)
  • 頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ) など
出典:東京医科大学 脳神経外科|脳腫瘍総論

神経膠腫は、脳実質 を形成する神経膠細胞が腫瘍化したものです。脳から発生した悪性リンパ腫を中枢神経系原発悪性リンパ腫と言います。

髄膜種は、脳を包んでいる髄膜に生じる腫瘍で、原発性脳腫瘍の中では最も多い腫瘍です(※4) 。脳の中心部にある下垂体の一部が腫瘍化したものを下垂体腺腫と言います。

神経鞘腫は、脳から出る神経を支えている神経鞘という組織から生じた腫瘍です。下垂体と視神経の近くに生じる腫瘍が頭蓋咽頭腫です。

転移性脳腫瘍

転移性脳腫瘍とは、他の臓器や部位でできたがん細胞が、血管を通じて脳に運ばれ、増殖することによって発生した腫瘍です。

転移性脳腫瘍は脳腫瘍全体の約17.4%とされていますが、高齢化やMRIなどの医学の進展により、増加傾向にあります。

最も脳に転移しやすいがんは肺がんで、全ての転移性脳腫瘍の60%を占めます。他に脳に転移しやすいがんは、消化器系がん(15.7%)、乳がん(10.6%)、腎泌尿器系(6.4%)などです(※5)

脳腫瘍は予防できる?

悪性脳腫瘍全体の診断からの平均余命は79カ月、5年生存率53.4%となっています。 他のがんと比べると、脳腫瘍は決して予後がよいがんとは言えません。そう聞くと、多くの方が気になるのは脳腫瘍の予防法ではないでしょうか。

ここでは脳腫瘍にまつわることについて解説してきましょう。

有効な予防法は確立されていない

現在のところ、脳腫瘍の有効な予防法は残念ながら確立されていません。

「これをすれば確実に脳腫瘍の予防につながる」というものはありません。とはいえ、脳腫瘍はがんの一種です。

そのため、がん予防に効果のある生活習慣や食生活は脳腫瘍の予防にも効果があるのではと期待されています。

日本人を対象とした調査の結果、がん予防には禁煙、節度のある飲酒、バランスの取れた食事、運動、適正体重の維持、感染予防などが有効であるとわかっています。

脳腫瘍の原因

脳腫瘍の原因は、遺伝子の変異とされていますが、それ以上のことは明らかになっていません。現在までの研究結果では、特定のことが原因で脳腫瘍になるというわけではありません。

しかし、脳腫瘍の進行を早めてしまう要因として、高たんぱく食品や高脂肪食品の過剰摂取、過度のストレス、喫煙などがあることがわかっています 。

また、脳腫瘍のリスクを高める要因として、別の臓器や部位にがんがある場合や家族に脳腫瘍を発症した方 がいる場合があります。

脳腫瘍は何歳に多い?

2017年に発表された「脳腫瘍全国統計」によると、悪性脳腫瘍は、小児から高齢者まで幅広い年齢層で発生していますが、中でも多いのが60~69歳です。50~59歳、70~79歳でも多くなっています。

男女別で見てみると、悪性脳腫瘍は男女比6:4で男性の方が多いのですが、良性脳腫瘍は反対に男女比4:6で女性が多いという特徴があります(※7)

脳腫瘍の症状とセルフチェックの方法

脳腫瘍になってしまうと、どのような症状が現れるのでしょうか。

症状が現れ始めてから、脳腫瘍になっていることがわかることも少なくありません。

そのため、早期発見のためにはあらかじめどのような症状が出現するのかを把握しておく必要があります。ここでは、症状の特徴とセルフチェックの方法を解説していきましょう。

初期から現れる症状

脳腫瘍の初期から現れる症状として多いのが、慢性的な頭痛です。初期のおよそ2割、進行した脳腫瘍のおよそ7割で慢性的な頭痛が症状として現れます。

痛みの強さは起床時が最も強く、時間の経過とともにやや改善するという傾向があります。

また、腫瘍ができると脳浮腫という脳のむくみが生じます。その結果、頭蓋内の圧力が高まり、吐き気、意識障害などの症状が現れるケースも少なくありません。頭痛とともに強い吐き気が続いたり、嘔吐したりといった場合もあります。

さらに、腫瘍が大きくなることで神経が圧迫されることにより、物が見えづらい、視力が低下する、手足のしびれや麻痺、言葉が出てこない、歩けない、ふらつく、人の話が理解できないなどさまざまな症状が出ることもあります(※7) 。こうした症状は、良性でも悪性でも同じです。そのため、悪性である場合を考えて、症状が出た際はできるだけ早く受診しましょう。受診する際は、CTやMRIのある脳神経内科や脳神経外科がよいでしょう。

セルフチェックの方法

自分でできる簡単なテストで、脳に異常がないかをチェックできます。

両方の手のひらを上にして、腕が上がるかをチェックする両上肢挙上試験では、麻痺をしている側の手は内側を向いて下がります。

また、片足立ちをして、ふらついたり、立てなかったりする場合は脳に何らかの異常があるということを疑ってみてもよいでしょう。

さらに、まっすぐ伸ばした人差し指を繰り返し鼻の頭につけるテストでは、脳に異常がある場合、指先が鼻の頭からずれてしまいます。セルフチェックの結果、少しでも不安な点がある場合は、できるだけ速やかに専門医を受診してください。

【まとめ】脳腫瘍の特徴や症状について

脳腫瘍の予防法は現在のところ確立されていませんが、がん全般を予防するための生活習慣や食生活は脳腫瘍の予防にも効果があるのではと期待されています。

この機会に、がん全般を予防するためにも、生活習慣や食生活を見直してみてはいかがでしょうか。

また、脳腫瘍は他のがんと違い、セルフチェックで発見することも可能です。例えば、片足立ちをした際にふらついたり、きちんと立てなかったり、箸やペンが思うように使えなかったりした場合には、できるだけ早く専門医を受診しましょう。他のがんと同様、脳腫瘍から命を守るためにはできるだけ早期に発見し、すぐに治療につなげることが最も重要です。脳腫瘍は良性でも悪性でも同じような症状が出るという特徴があります。気になる症状が出たり、セルフチェックの結果、不安な点があったりした場合には早めに専門医を受診してください。

(※1)九州大学病院 がんセンター|脳腫瘍
(※2)国立がん研究センター|脳腫瘍(のうしゅよう)
(※3)国立がん研究センター|脳腫瘍〈成人〉について
(※4)東京大学医科学研究所附属病院 脳腫瘍外科|髄膜腫
(※5)東京大学医科学研究所附属病院 脳腫瘍外科|転移性脳腫瘍
(※6)独立行政法人国立病院機構 岡山医療センター|脳腫瘍
(※7)大阪医科薬科大学|脳腫瘍の症状
参照日:2023年9月

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

プロフィール詳細

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