「がん予防には野菜を食べたほうがいい」と聞いたことはありませんか?その背景には、野菜に含まれる「ファイトケミカル」という成分の働きが関係しているといわれています。
この記事では、ファイトケミカルとがんとの関係や効果的な摂り方について解説します。
「がん予防を簡単にできることから始めたい」と思っている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
ファイトケミカルとは?植物が持つ天然の「防御物質」

ファイトケミカルとは、植物が自らを紫外線や害虫、病原菌などから守るために産出する天然の成分のことです。野菜や果物の鮮やかな色素、辛味、渋味や苦味、ぬめり成分などに多く含まれており、身体に良い効果をもたらすことが明らかになっています。
しかし、ファイトケミカルは体内では合成できないため、普段から野菜や果物を積極的に摂取することが求められています。
また、日本人の野菜摂取量は不足しているのが現状です。
厚生労働省は1日あたり350g以上の摂取を推奨していますが(※1)、2023年に厚生労働省が発表した「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」では、平均摂取量が256gでした(※2)。この結果でもわかるとおり、ファイトケミカルの摂取量も十分とはいえません。
ファイトケミカルの働き
ファイトケミカルには、がん予防や老化の抑制、動脈硬化や肥満の予防、免疫力の向上など、さまざまな作用があるとされています。そのほかにも、中性脂肪を減らす作用や血糖値の上昇を抑える作用、骨の強化に寄与する働きなどといった健康効果が明らかになってきています。
ファイトケミカルの種類
ファイトケミカルには多数の種類があると確認されており、その中でも代表的なものに「ポリフェノール」「カロテノイド」「含硫化合物」などが存在します。
ポリフェノールは、植物の苦味や渋味、色素に関わる成分です。抗酸化作用により老化予防や美容効果が期待されています。特にブルーベリーや赤ワインに豊富に含まれています。
カロテノイドは人参やトマトなどの色素成分で、がんや生活習慣病の予防に役立つとされています。
含硫化合物は匂いや辛味のもとになる成分で、ニンニクやニラなどに豊富に含まれています。
ファイトケミカルががん予防に効果があるといわれる理由
ファイトケミカルには、過剰な活性酸素から細胞を守る「抗酸化作用」があり、この作用によってがんの予防や炎症の抑制が期待されます。
野菜や果物を日常的に摂取している方に比べ、そうでない方はがんの発症リスクが高まると示唆されています。例えば、野菜や果物を多く摂取している方は、胃がんや食道がんなどのリスクが低下しているという報告もあります。こうしたことから、摂取不足がさまざまながんのリスク増加と関連している可能性があるとされています。
ファイトケミカルが豊富な食品一覧【身近な食材でOK】

ファイトケミカルは、スーパーで売っている身近な食材から摂取できます。ここでは日常的に手に入る食材のうち、ファイトケミカルが豊富に含まれている食材について解説します。
野菜・果物
野菜や果物は、ファイトケミカルの宝庫です。特に濃い色の野菜や、辛味や苦味の強い野菜に多く含まれているとされています。
ポリフェノール
なす、紫芋、ブルーベリー、ブドウ、レモン、ピーマンなど
カルチノイド
人参、かぼちゃ、トマト、柿、グレープフルーツ、すいか、唐辛子、赤ピーマン、ほうれん草、トウモロコシ、みかん、ももなど
含硫化合物
にんにく、ねぎ、玉ねぎ、にら、ブロッコリー、わさび、かぶ、大根、キャベツなど
その他の食品
野菜や果物以外に、大豆製品や緑茶などの食品にも、ファイトケミカルが含まれています。詳細は以下の通りです。
成分 | 多く含む食品 |
---|---|
ポリフェノール | 緑茶、大豆、大豆製品など |
カロテノイド | 海藻類 |
セサミン | ごま |
クルクミン | ウコン |
カフェイン | コーヒー、紅茶など |
クエン酸 | 柑橘類、酢、梅干しなど |
グルコサミン | エビ、カニ |
カカオ | チョコレート |
ファイトケミカルの日常生活への取り入れ方

ここからは、日々の生活において効率的に野菜や果物を摂取する方法や工夫について解説します。
調理のコツ
ファイトケミカルの抗酸化作用は、適度な加熱によって高まるとされています。そのため、スープやカレーなど、野菜を加熱して調理するレシピが効果的だといわれています。
中でもスープは、一度にさまざまな野菜をバランスよく摂取できる点でもおすすめです。作り置きして、冷蔵や冷凍で保存しておけば、忙しい日でも手軽に野菜を取り入れることができます。
無理なく続けるための工夫
ファイトケミカルの摂取を習慣づけるには、無理のない方法で行いましょう。例えば、色とりどりの野菜や果物を食事に取り入れたり、スムージーで効率よく野菜や果物を摂取したりするのもひとつの手です。また、忙しい日は具だくさんのレトルトのスープなどを活用するのもよいでしょう。
ただし、腎機能の低下などで医師から注意を受けている方は、スープやスムージーを過剰に摂取すると、体内のカリウムが十分に排泄されず、高カリウム血症などのリスクを引き起こすことがあります。そのため、食生活で取り入れる際には、必ず主治医に相談しましょう。
過信は禁物!ファイトケミカルに関する注意点
ファイトケミカルは、健康維持やがん予防に役立つ成分として注目されていますが、過信や過剰摂取は避けましょう。ここでは、日常生活に取り入れる際に知っておきたい注意点をご紹介します。
あくまでも補助的に考える
ファイトケミカルは、あくまで「普段の食事の中で自然に取り入れる健康習慣のひとつ」として捉えることが大切です。
「野菜や果物さえ食べていればがんにならない」「サプリで摂取しておけば大丈夫」などといった過信をしないようにしましょう。
また、がんは、喫煙や感染、化学物質、放射線、飲酒、遺伝など、さまざまな要因で発症するといわれています。そのため、ファイトケミカルのみでは予防できない点も理解しましょう。
サプリメントに関しては、以下の記事もご覧ください。
バランスの取れた食事を心がける
普段の食事でファイトケミカルを意識することも大切ですが、食生活の基本は「栄養バランスの取れた食事」です。野菜や果物に偏ることなく、主食・主菜・副菜をバランスよく摂りましょう。
また、がんのリスクを上げるとされている食品にも注意が必要です。特に以下の食品は、適度な摂取が推奨されています。
- 塩蔵食品(漬物・干物など):胃がんリスクの上昇
- 高温の飲食物(過度な熱さの茶やスープ):食道がんリスク
- 加工肉(ベーコン・サラミ・ハム・ソーセージなど):大腸がんとの関連がされていると指摘あり
- 赤身肉(牛、豚、羊):大腸がんとの関連がされていると指摘あり
- アルコール:食道がんや肝臓がんのリスク
「何を摂るか」だけでなく、「何を控えるか」という視点も意識しましょう。
生活習慣やリズムを整える
がん予防には、日々の生活習慣を整えることが重要です。例えば、喫煙は、肺がんをはじめとする多くの要因とされており、禁煙はがん予防の基本となっています。
また、飲酒や肥満もがんの発症のリスクとされています。一方で、身体活動を適度に心がけることで、大腸がんや乳がんなどの発症リスクを下げる可能性があるともいわれています。日頃から運動を意識しながら、健康な身体づくりを心がけるのが大切です。
がん検診の重要性
日頃から生活習慣に気をつけていても、がんを完全に防ぐことは難しいでしょう。だからこそ、「早期発見・早期治療」が重要です。
がんは初期には症状が出にくいものも存在します。そのため、年齢や性別に応じた検診を継続的に受診し、予防と一緒に早期発見・早期治療にも意識を向けるのが重要です。
ファイトケミカルで無理なくがん予防の一歩を

今回は、ファイトケミカルとがん予防についてご紹介しました。
ファイトケミカルは、私たちの身近な食材に含まれている成分です。摂取する際に大切なのは、あまり難しく考えすぎずに「少しずつ、毎日」意識して続けることです。無理のない範囲でファイトケミカルを食事で取り入れて、未来の健康づくりにつなげましょう。
(※1)厚生労働省|栄養・食生活
(※2)厚生労働省|令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要