日本人の2人に1人はがんにかかると言われており(※1)、がんという病気は身近なものになっています。
最近では不治の病というイメージも少なくなりつつありますが、それでもがんと告知されたとき、人は誰でも大きなショックを受けるものです。不安な気持ちに押しつぶされてしまいそうになる人もいるでしょう。
この記事では、がんと診断されたときにその事実を上手に受け止める方法や、がんと診断されたときに行わなければならないことなどを詳しくお伝えします。
がんと告知された患者さんはもちろん、患者さんのご家族の方もぜひ参考にしてください。
目次
診断結果を上手に受け止める方法
がんと診断されたら、誰もが大きなショックを受けます。「これからどのような生活になるのか」「仕事は続けられるのか」など、さまざまな不安が頭をよぎると思います。
しかし、それは誰もが同じです。
がん患者さんは皆、そういった不安や心配事を乗り越えた上で治療に臨んでいます。
がん患者さんは、がんという診断結果をどのように受け止めたのでしょうか。心の持ち方を見ていきましょう。
誰でもショックを受けるもの
がんと診断されたら、誰でも大きなショックを受けるものです。がんと告知されて動揺しない人などいません。
「ショックで何も覚えていない」「頭が真っ白になった」という人もたくさんいます。中には、「どうして自分が」と怒りが込み上げてくる人や、「つらい治療を乗り切れるか不安」という気持ちになってしまう人もいるでしょう。そのほか、気持ちが前向きになれない、食欲がない、眠れないといった心の動揺は誰にでも起こることです。がん患者さんは皆、そうしたショックを乗り越えて治療を行っているのです。
家族や友人につらい気持ちを話してみる
最近では、がんは種類にもよりますが、おおよそ不治の病というイメージはほぼありません。早期発見・早期治療であれば、がんは十分完治できる病気になりつつあります。
それでも、ほかの病気と比べて、がんと告知されたときのショックは大きいでしょう。「この病気で死んでしまうかも」と絶望感にさいなまれてしまうこともあると思います。
そんなときは、つらい気持ちを家族や友人に話してみましょう。
中には、心配をかけたくないからと言って、身近な人に気持ちを話すのをためらってしまう方もいます。しかし、つらい気持ちを自分一人で抱え込んでしまうと、どんどんと気持ちが落ち込んでいってしまう恐れもあります。
解決策は見いだせなくても、「誰かに」不安な気持ちを打ち明けるだけで、落ち込んでいた気持ちが楽になるということも少なくありません。
不安なときに無理にがんに向き合う必要はない
がんと告知されたときのショックやつらい気持ちは、多くの場合、時間とともに軽くなっていくものです。
がんと告知されたばかりで大きなショックや不安の真っただ中にいる中で、無理にがんに向き合う必要はありません。
音楽を聴くことが趣味の人であれば音楽を聴いたり、読書が好きな人であれば本を読んだり、映画鑑賞が好きな人であれば映画を観に出かけたりなど、自分が楽しめる、リラックスできることを行ってみましょう。そうして、一番つらい時期を乗り越えられれば、気持ちが徐々に前向きになっていくでしょう。
がんと告知されたらまず行うこと
がんと診断されてから間もない時期は、大きなショックの中にいます。しかし、そんなショックの中でも、その時期に最低限行うべきことをやっておくと、落ち着いた気持ちで今後の治療のことを考えられるようになるでしょう。ここでは、がんと診断されたときにまず行うことをお伝えします。
まずは自分の病状を知る
がん治療は、患者さん自身が自分の病状を知るところからスタートします。
がんと一口に言っても、がんの種類、進行度合いによって、治療方法や入院期間は大きく異なります。とはいえ、がんと告知されたばかりの頃は、詳しい病状や治療方針を説明されても、落ち着いて理解することは難しいでしょう。
「担当医と相談しながら日をおいて改めて受診する」「家族や親しい人と一緒に話を聞くようにする」などすると、多少は落ち着いて話を聞けるかもしれません。
担当医から話を聞くときには、どのようなことを聞いたのか、どんな疑問点があるのかなどを書き留めておきましょう。そのメモは、後日、医師からより詳しい説明を受けるときに、自分の病状を知る上でとても役立つ資料になります。
多くの方は診察室に入ると緊張して聞きたいことが聞けないので、事前に聞きたい質問のリストを紙に書いておくとスムーズです。
疑問点を医師に聞く
担当医から、どのようにがんと診断したのかの説明があります。その時に疑問点があれば、率直に担当医に聞いてみましょう。
まず聞いておきたいのが、「がんと確定しているのか、それともまだ疑いの段階なのか」です。それによって、今後の対応は大きく変わります。
「がんはどこにあってどれくらい進行しているのか」「追加の検査は必要なのか」「今の段階で担当医はどのような治療方法を推奨しているのか」なども聞いておきましょう。また、その治療方法を推奨している理由についても確認してください。
がんという病気や今後の治療方法について、わからないことや疑問に思うことがあれば、どんなに些細なことでも担当医に聞いてみましょう。
情報を集める
一刻も早く治療を開始しなければならないがん以外、がんと診断されてから治療が開始されるまで入院待ちの時間があるのが一般的です。
この時間で、自分に必要な情報を集めましょう。
自分の病状や治療方法などの理解が進めば、「必要以上に怖がる必要はない」と思えるなど、より落ち着いた状態で治療に臨めます。
がん患者の心の変遷
がんと診断されたときは皆、大きなショックを受けます。絶望的な気持ちになったり、前向きに治療に臨むことが難しい精神状態になったりといった患者さんも少なくありません。
しかし、多くの患者さんはそういった気持ちを経た上で、前向きに治療に臨んでいます。どのような心境の変化を 経て、前向きに治療に臨めるようになるのでしょうか。
否定や絶望の時期
がんと診断されたばかりの頃は誰しもが大きなショックを受けます。中には、「この診断結果は間違っているのでは」と否定する患者さんも少なくありません。
否定や絶望といった気持ちは自己防衛の働きと考えられており、人間の心の正常な反応と言っていいでしょう。この期間はがんの告知から1週間ほど続くことが多いと考えられています。
抑うつの時期
最初の1週間を過ぎると、抑うつの時期に入ります。物事に集中できない、眠れない、食欲がわかないなど、心身に変調をきたします。
「なぜ自分だけがこんな目に遭わなければならないのか」といった気持ちになることもありますが、これもがんという病気を受け止めるための心の正常な働きです。
立ち直りの時期
抑うつの時期から2週間ほど過ぎると、徐々に気持ちが前向きになってきます。気持ちが少しずつ落ち着いていき、本来の自分の姿を取り戻す時期に入ります。
この段階になると、がんの情報を集めたり、がん患者としての先輩に話を聞いてみたりといったことができるようになります。反対に言えば、この時期に至るまでは、無理にがんと向き合う必要はありません。
がん相談支援センターとは
家族や友人など身近な人に不安な気持ちを話すことが、がんという病気と向き合うためにとても有効です。
しかし、中には心配をさせたくないから話したくないといった方や、身近な人には話しにくいといった方いることでしょう。
そういった方は、がん相談支援センターに相談してみてはいかがでしょうか。
がん相談支援センターは、全国のがん診療連携拠点病院などに設置されているがんの相談窓口です(※2) 。がんに詳しい看護師やソーシャルワーカーに、がんに関するあらゆることを相談できます。誰でも無料、匿名で利用可能であり、治療中はもちろん、がんと疑われるときや経過観察中、治療後の療養生活中、社会復帰してからなどいつでも相談できます。
【まとめ】がんと告知されたら
日本では2人に1人が何らかのがんにかかると言われており、一昔前に比べて「がん=死」というイメージは薄れてきました。
しかしそれでも、がんと告知されたときのショックは計り知れないほど大きなものでしょう。
不安と恐怖感で何も手につかないという状態になってしまう患者さんも少なくありません。がんと告知されたら誰しもが大きなショックを受けますが、その多くは時間が楽にしてくれます。告知されてからしばらく経つと、多くの人が前向きに治療にあたれるような気持ちになれます。その時が来るまでは、がんと無理に向き合う必要はありません。自分が好きなこと、リラックスできることをしながら、前向きな気持ちになれるのを待ちましょう。
(※1)国立がん研究センター|最新がん統計
(※2)国立がん研究センター|「がん相談支援センター」とは