20代の乳がん患者は増えている?一般的な乳がんとの違い、若い世代の乳がんの現状と治療法

20代の乳がん患者は増えている?一般的な乳がんとの違い、若い世代の乳がんの現状と治療法

女性特有のがんとして知られる乳がん。乳がん患者でピークと言われているのは、40代後半~50代ですが、20代など若くして乳がんに罹患する人も少なくありません。

若い世代の乳がんにはどのような特徴があるのでしょうか。そして、若くして乳がんになってしまった場合、出産や妊娠に影響するのでしょうか。

乳がんを早期に発見するための乳がん検診の内容とともにお伝えします。20代女性の方はぜひ参考にしてください。

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目次

20代の乳がんの特徴

まずは、乳がんの特徴、そして20代の乳がんが増えているのかどうかなどを詳しく見ていきましょう。

乳がんは女性が最も罹患するがん

1年間で新たにがんと診断された数は、男性が約56万例、女性が約43万例に上ります(2019年)(※1)

そのうち、部位別に見て女性で最も多いのが乳がんです(※1)。2019年の1年間で乳がんと診断された人は約9万7,000人に上ります(※1)女性のがんのうち、20%以上を占めるのが乳がんというわけです。そして、年間で約1万4,000人以上の人が乳がんで命を落としています(※1)

20代の乳がん患者は増えている

それでは、20代の乳がん患者は増えているのでしょうか。

結論から言えば、20代の乳がん患者は増え続けています。と言っても、20代だけが増えているというわけではありません。日本における乳がん全体の患者数が増えているのです。

1970年代後半は人口30万人あたりの乳がん罹患数は20人ほどでしたが、2008年の段階で罹患率は人口30万人あたり70人台にまで上昇しています。そのうちの3%程度が、20代や30代といった若い世代と言われています。

20代の乳がんの特徴として挙げられるのは、40代以降の乳がんよりがんが進行しているケースが多いという点です。15~39歳までは、乳がん検診の対象になっていないため、がんが進行した状態で見つかることも少なくないのです。

乳がんの原因

乳がんの原因は、いまだ明らかになっていません。

しかし、乳がんの発生や増殖には女性ホルモンの一つであるエストロゲンが深く関わっていることがわかっています。体内のエストロゲンレベルに影響を与えるようなものが乳がんのリスク要因として考えられています。主なリスク要因は、初潮が早く閉経が遅い、出産歴がない、初産年齢が遅い、授乳経験がない(※2)、閉経後の肥満(※3)、飲酒習慣(※4)などです。

妊娠や出産に影響する?

20代などの若い世代の多くは、将来的に妊娠や出産を望んでいると思います。

そのため、乳がんが妊娠や出産にどう影響するのかを心配する人も多いでしょう。20代の乳がんは妊娠や出産に影響を及ぼすのでしょうか。

抗がん剤によって卵巣がダメージを受けるリスクも

乳がんの標準治療は、手術、放射線治療、薬物療法の3つです(※5)

そのうち、中心となるのが手術で、乳がんの治療は手術によってがん細胞を切除することが基本となります。ただし、全身にがんが広がりやすいタイプの乳がんの場合、手術後に抗がん剤による薬物療法が行われることもあります。

抗がん剤投与を受ける場合に気をつける必要があるのが、抗がん剤によって卵巣がダメージを受けるリスクがある点です(※6)

卵巣がダメージを受けた結果、抗がん剤治療中や治療後に月経が止まってしまう患者さんが少なくないのです。月経が止まってしまえば、妊娠は難しいでしょう。

現在、抗がん剤による卵巣へのダメージを減らす研究が行われていますが、2023年7月時点では有効な結論は得られていないという状況にあります。

治療後は妊娠が可能

抗がん剤によって卵巣がダメージを受けなかった場合でも、抗がん剤治療中の妊娠はおすすめできません。抗がん剤に限らず、どのような薬剤でも胎児に影響を与える可能性があるからです。

一般的な医薬品でも妊娠中の女性には使用できない医薬品もあります。そのため、抗がん剤治療中は妊娠をしないように注意する必要があります。

抗がん剤治療終了後は、妊娠をすることが可能です。ただし、投与した薬剤によっては、体内に数週間から数カ月とどまるものもあります。

例えば、乳がんの増殖を抑えるためのタモキシフェンという薬剤は2カ月体内にとどまるという報告があります(※6)。そのため、タモキシフェンを使用した場合、2カ月間は妊娠を避けた方が無難でしょう。いずれにしても、治療後に妊娠を希望する場合は、早めに担当医に相談しましょう。

乳がん検診は何歳から受けるべき?

乳がんに限らず、全てのがんは早期発見・早期治療が極めて重要です。

乳がんで死亡する人は少なくありませんが、早期に発見し、すぐに治療を開始できれば、命を守れる確率は上がります。がんの早期発見に有効なのはがん検診ですが、乳がん検診は何歳から受けるべきなのでしょうか。

各自治体による乳がん検診は40歳から

乳がん検診は各自治体が行っていますが、各自治体による乳がん検診は40歳から受けられます。

乳がんは40歳以降の患者数が多いため、国の指針として40歳以上の乳がん検診が定められていますが(※7)20代や30代といった若い世代で乳がんになる人も少なくありません。そのため、「40歳まで受けなくてもいい」というものではありません。

20代や30代でも、不安な方は子宮がん検診とともに乳がん検診を受けることをおすすめします。

乳がん検診の内容

乳がん検診でまず行われるのが視診と触診です。

乳房の形やただれの有無、乳頭からの分泌物の有無などを目で見て観察していきます。そして、指で乳房を触ってしこりの有無などを確認。しこりがあった場合は、しこりの大きさや硬さなどを確認します。

次に、視診や触診では確認できないようながん細胞を発見するために行うのが、マンモグラフィという検査です。

マンモグラフィは乳房専用のX線撮影のことで、乳房を専用の板で圧迫し、病変の位置や広がりを確認します。乳がんはリンパ節への転移も少なくありません。リンパ節への転移の有無を確認するために行うのが、超音波(エコー)検査です。乳がん検診の場合、血流を見るために、造影剤を使用して超音波検査を行います。

乳がん検診の費用

自治体が行う検診で乳がん検診を受ける場合の費用は自治体によって異なりますが、一般的には無料から3,000円程度です。会社の健康組合による検診では、費用は無料もしくは1,000円程度です。

人間ドックで乳がん検診を全額自己負担で受ける場合の費用は、「触診・視診+マンモグラフィ+超音波検査」のトータルで1万円前後です。マンモグラフィのみを受ける場合の費用は、5,500円前後、超音波検査のみを受ける場合の費用は、4,000円前後となっています。

自覚症状がない場合の乳がん検診は、全額自己負担です。しかし、自覚症状があって医療機関を受診し、医師から検査の必要があると診断された場合、乳がん検診は保険適用となります。その場合の自己負担額は3割となります。

セルフチェックの方法

乳がんはほかのがんと違い、自分でチェックすることで発見できることもあります。チェックポイントは、以下の通りです。

  • 乳房にえくぼのようなくぼみはないか
  • 乳房に変形はないか
  • 乳房に左右差はないか
  • しこりがないか
  • ただれがないか
  • 乳頭からの出血や分泌物はないか

定期的にセルフチェックを行い、異常を感じたら、すぐに医療機関を受診しましょう。

20代の乳がんについて【まとめ】

がんの中で日本人女性に最も多いのが乳がんです。乳がんの罹患数は年々多くなっており、今や9人に1人の女性が生涯に乳がんを罹患すると言われています(※1)。乳がんの罹患数は30代後半から多くなり、40~50代でピークを迎えますが、20代の患者さんも少なくありません。乳がんに限らず、大半のがんは早期に発見し、すぐに治療を行えば、命を守ることはできます。

早期発見するために重要なのが定期的ながん検診です。国は40歳以上の女性に2年に1回の乳がん検診を呼び掛けていますが、20代や30代で乳がんになる人も少なくありません。そのため、乳がん検診は40歳になるまで受けなくてもよいというものではありません。乳がんが心配な40歳未満の方は、この機会に乳がん検診を受けてみてはいかがでしょうか。

(※1)国立がん研究センター|最新がん統計
(※2)国立がん研究センター|乳がん 予防・検診
(※3)国立がん研究センター|閉経前・後ともに肥満は乳がんのリスクに
(※4)国立がん研究センター|飲酒と乳がん罹患との関係について
(※5)国立がん研究センター 東病院|乳がんの治療について
(※6)一般社団法人日本乳癌学会|Q63.将来,妊娠・出産を希望しています。どうしたらよいでしょうか。
(※7)厚生労働省|市町村のがん検診について

吉村 友希

神戸大学大学院医学研究科バイオメディカルサイエンス専攻 薬物動態学分野。分子標的薬の副作用に関係する研究について、研究・ディスカッションに参加。大手グローバルCROにて医薬品開発職に従事。

プロフィール詳細

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