がんと飲酒の関係とは?がんになったら飲酒できないのか?徹底解説!

がんと飲酒の関係とは?がんになったら飲酒できないのか?徹底解説!

「飲酒をすると、がんになりやすい」という話を聞いたことがある方は多いと思います。

特に、お酒好きな人にとっては心配になる話ですが、飲酒とがんは本当に関係があるのでしょうか。また、現在がん治療中の患者さんの中には、「治療後の飲酒を楽しみに頑張っている」という方もいるかもしれません。

がん治療後に飲酒をしても問題はないのでしょうか。本記事では飲酒とがんの関係を詳しく解説していきます。

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目次

飲酒とがんの関係

日本では、昔から「酒は百薬の長」という言葉があり、適量のお酒は健康によいと信じられてきた背景があります。

しかし、ここ最近になって、「お酒は少量でもがんの原因になる」という話が一般によく聞かれるようになりました。

本当にお酒を飲むとがんに罹患しやすくなってしまうのでしょうか。

飲酒は口腔がんや咽頭がんなどの原因とされている

「お酒が大好きで、毎日の晩酌が1日の楽しみ」という方は少なくありません。

そういった方にとってはショックなことかもしれませんが、お酒はがんのリスクを高めるという報告が相次いで出されています。

世界保健機関(WHO)は2007年、飲酒は口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肝臓がん、大腸がん、さらに女性の乳房のがんの原因となるとの評価を出しました。 2017年には、米国臨床腫瘍学会(ASCO)が、飲酒が口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がんなど複数のがんと因果関係があるとの声明を出しています。

声明によると、大量飲酒者のがんの発生リスクは、飲酒を全くしない人と比べて、喉頭がんが2.65倍、口腔がん・咽頭がんは5.13倍という結果が出ました。

アルコールでがんが発生するメカニズム

なぜ、飲酒をするとがんが発生しやすくなってしまうのでしょうか。飲酒によって体内に取り込まれたアルコールは、アセトアルデヒドという有毒物質に分解されます。その後、アセトアルデヒドは肝臓で酢酸に分解され、最終的には水と二酸化炭素として体外に排出されます。

アルコールをアセトアルデヒドに分解する能力や、アセトアルデヒドを酢酸に分解する能力は人それぞれです。分解する能力が弱く、長期間、アルコールやアセトアルデヒドが体内に長くとどまった場合、どうなるでしょうか。

アルコールとアセトアルデヒドは、いずれも発がん性があります。発がん性があるアルコールとアセトアルデヒドが分解しきれずに体内に長くとどまった結果、がんの罹患リスクが上昇してしまうのです。

飲酒と喫煙が重なるとリスクはさらに増大

アルコールとともに、喫煙もがんの罹患リスクを高めるものです。

飲酒習慣に加えて、喫煙習慣もある方は、がんの罹患リスクがより増大してしまいます。

愛知県がんセンターと国立がん研究センターの共同研究によると、喫煙習慣と飲酒習慣の両方ある人は、食道がんの罹患リスクが喫煙も飲酒もしない人の8.32倍にもなることがわかりました。

がん治療中の飲酒はOK?

がんの治療中でも、毎晩の晩酌を楽しみにしているという方は少なくないでしょう。

前述のように、アルコールとがんの発生リスクは関係していますが、がんになったからといって、絶対にお酒を飲んではいけないのでしょうか。

自己判断はせずに主治医に相談を

お酒を飲むことが唯一のストレス発散方法という方も少なくありません。

がんの闘病中は、ただでさえ普段の生活よりストレスがかかるものです。そうした生活の中、ささいな楽しみまで失ってしまうと、闘病のモチベーションや生きる意欲まで低下してしまう可能性もあります。

がんと一口にいっても、部位や治療の進行度合い、心身の状態など、患者さんによってさまざまです。同じがんでも、お酒を禁止される患者さんもいる一方で、少量なら問題ないと判断される患者さんもいます。

がんの治療中にお酒を飲んでもよいのか、どれくらいの量なら問題ないのか、自己判断せずにまずは主治医に相談しましょう。

抗がん剤治療では飲酒はNG

「お酒を飲んでもOK」と医師から判断された方でも、がんの治療中にはお酒を飲んではいけない時期があります。それは、抗がん剤治療をしている期間です。

抗がん剤の投与量は、患者さん一人一人の状態に合わせて、厳格にコントロールされています。もちろん、医師は患者さんが飲酒することを前提としていません。

そんな中、患者さんがお酒を飲んでしまったら、抗がん剤の正しい効果が得られないばかりか、副作用を強めてしまうリスクもあります。また、抗がん剤治療の終了後も、体内に薬剤が残っている可能性があります。

抗がん剤治療後に、いつからお酒を飲んでもよいかは、担当の医師に必ず確認しましょう。

手術前の飲酒も控えるべき

がんの手術前も飲酒を控えるべきです。アルコールで、肝臓の機能が弱っていると、手術後の合併症のリスクが高くなっ てしまうからです。

また、アルコール依存は手術後のせん妄(時間や場所が急にわからなくなる見当識障害や、注意力・思考力の低下など)のリスクも高めてしまいます。 少なくとも、手術の1週間前から禁酒するようにしましょう。

がん治療後の飲酒

がん治療を頑張っている方の中には、治療後のお酒を楽しみにしている方も多いと思います。とはいえ、お酒を飲み過ぎるとがんのリスクが上昇してしまいます。

どのような点に気を付けてお酒を楽しめばよいのでしょうか。

適量を守ることが重要

お酒は少量でも、がんのリスクが上昇してしまうことが、さまざまな研究で明らかになっています。しかし、少量の飲酒より大量飲酒の方が、よりがんの罹患リスクが高まることも報告されています。

国立がん研究センターのがん予防・検診研究センターの研究によると、お酒を全く飲まない人のがんの罹患リスク(大腸がん)を1とした場合、「週に1回未満」の人は1.0~1.1と、お酒を全く飲まない人とがんの罹患リスクはほぼ同一でした。ところが、1日あたりの平均アルコール量が46g以上の飲酒で2倍、69g以上の飲酒で2.2倍もがんの罹患リスクが高まることがわかりました。

つまり、お酒を大量に飲めば飲むほど、がんのリスクが高まってしまうということです。お酒を楽しみたい方は、適量を守ることが重要です。

1日あたりの適量はどれくらい?

それでは、アルコールの1日あたりの適量とはどれくらいの量なのでしょうか。厚生労働省のガイドラインには以下のように記載されています。

通常のアルコール代謝能を有する日本人においては「節度ある適度な飲酒」として、1日平均純アルコールで20g程度である

飲酒のガイドライン – e-ヘルスネット – 厚生労働省

純アルコールで20gとは、おおむね、「ビール中ビン1本」「日本酒1合」「7%程度の缶チューハイ(350ml)1本弱」「ウィスキーダブル1杯」「ワイン1杯半」に相当します。

【まとめ】がんと飲酒の関係について

日本には、「酒は百薬の長」という言葉があり、お酒は健康によいという印象を持っていた方も多いと思います。

しかし、最新の研究によれば、大量の飲酒が習慣化すると発がんリスクが上昇してしまうことがわかっています。とはいえ、「毎日の晩酌が楽しみ」という方も少なくないでしょう。

また、治療後のお酒を楽しみに毎日頑張っているという方もいると思います。がん治療中に飲酒が可能かどうかは、がんの部位や治療の進み具合、患者さんの心身の状態によって異なります。

治療中にお酒を楽しみたい方は、まずは担当医に相談してみてください。また、治療後にお酒を飲みたい方は、適量を守って楽しんでください。

1.e-ヘルスネット|アルコールと癌(がん)
2.一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会|健康寿命への挑戦 機能を守る耳鼻咽喉科
3.国立研究開発法人 国立がん研究センター|飲酒とがん全体の発生率との関係について
4.国立研究開発法人 国立がん研究センター|飲酒とがん死亡率との関係について:たばこの影響
5.非営利型一般社団法人 あきらめないがん治療ネットワーク|酒は百毒の長!?飲酒で高まるがん罹患リスク、節度ある飲酒を
6.非営利型一般社団法人 あきらめないがん治療ネットワーク|【QOL(生活の質)】がんになっても|飲酒を楽しみたい。がん患者さんと飲酒
7.国立研究開発法人 国立がん研究センター|手術といわれた?こころとからだの準備
8.岡山の医療健康ガイド MEDICA|第5回手術前の心がけ ―知って得する手術と麻酔のお話
9.e-ヘルスネット|飲酒のガイドライン
参照日:2022年11月

大塚 真紀

総合内科専門医

東京大学大学院医学系研究科卒。医師、医学博士。博士号は、マウスを用いた急性腎障害に関する研究で取得。専門は、腎臓内科、透析。都内の大学病院勤務を経て、現在は夫の仕事の都合でアメリカ在住。医療関連の記事の執筆や監修、医療系動画監修、企業戦略のための医療系情報収集、医療系コンテンツ制作など幅広く行なう。保有資格:医学博士、総合内科専門医、腎臓内科専門医、透析専門医

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