がん医療に対して海外と日本の違いとは?日本とどのように違う?

がん医療に対して海外と日本の違いとは?日本とどのように違う?

「日本のがん医療はアメリカやヨーロッパより遅れている」。

そんなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。

「海外では日本では認められていない先端的な治療が受けられる」と思っている方も多いと思います。しかし、そのイメージは果たして本当なのでしょうか。

日本はアメリカやヨーロッパと比べて、医療水準が劣っているのでしょうか。日本と海外のがん治療の違いを詳しく見ていきましょう。

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目次

日本のがん治療は海外より遅れている?

日本は海外、特にアメリカやヨーロッパに比べてがん治療の水準が劣っているというイメージを持っている方も多いと思います。そのイメージは果たして本当なのでしょうか。

海外より遅れているということはない

結論からいえば、がん治療において日本がアメリカやヨーロッパより劣っているという事実はありません。

そもそも、日本では国民皆保険制度が導入されています。

そのため、アメリカ・ニューヨーク市などの一部地域のように、専門医の診療費だけで1,000ドル(約14万円)、入院費が1日あたり1万ドル(約140万円)など、非常に高額な医療費は必要なく誰もががんの治療を受けられます。

診療内容にしても、現在、アメリカやヨーロッパで受けられる治療のほぼ全てを日本でも受けることが可能です。少なくとも現在のところ、日本がアメリカやヨーロッパと比べてがん治療において遅れているとはいえません。

日本発のがん治療薬も多い

それでは、「日本のがん治療が海外と比べて遅れている」というイメージはどこから来るものなのでしょうか。恐らく、「ドラッグ・ラグ」が問題視されて、マスコミでセンセーショナルに報じられたことに原因の一端があると思われます。

確かに、かつてはアメリカやヨーロッパで認可されているのに日本では使えない、アメリカやヨーロッパで治療薬として認可されてから日本で認可されるまでの「ラグ(時間の遅れ)」があるドラッグ・ラグが生じていました。アメリカで認可された治療薬が日本で認可されるまで3年から5年ほどかかることも少なくありませんでした。

しかし、最近は高い効果が期待される新たな治療薬については、日本も早い段階から開発に参加しているケースが多く、ドラッグ・ラグが生じたとしてもほんのわずかなものでしかありません。

また、がん免疫療法に用いられる「オプジーボ」や、乳がんや胃がんの新薬「エンハーツ」など日本発の治療薬も続々と登場しており、少なくとも、「海外で使える効果のある治療薬が日本で使えない」という状況にはありません。

アメリカでがん治療を受けるには

日本は世界と比べてがん治療の分野で後れを取っているわけではないとはいえ、アメリカのがん治療が世界最先端のものであることは事実です。

どうしても、アメリカでがん治療を行いたいという方もいるでしょう。そういった方はどのような手続きを取る必要があるのでしょうか。

受け入れ可否を調べる

アメリカで治療を受けたい方はまず、治療を行っている現地の病院の受け入れ可否を調べなければなりません。

該当の病院が受け入れ可能だった場合、治療歴のレポート、検査データ、所定の書類をそろえた上で、該当病院に送付します。

渡米しセカンドオピニオンを受ける

受け入れ病院が決まったら次に、アメリカに渡り、該当病院でセカンドオピニオンを受けます。この際、放射線画像や病理のスライドなど病態を示す現物を用意しなければなりません。そして、担当診療科の医師による初診を受けます。

初診では、今までの病状や症状、病歴、治療歴などの聞き取りが中心となります。

その後、必要な検査を行った後に、2回目の診察が行われます。2回目の診察が行われるのは、初診から1週間ほどです。2回目の診察では検査結果をもとに、選択可能な治療法が提示されます。

日本で治療を行うか、そのままアメリカで治療を続けるかを選択します。

海外でのがん治療をサポートするサービスも

ここまで、アメリカでがん治療を受ける手順を説明しましたが、「自分にはハードルが高い」と思った方も多いのではないでしょうか。

しかし、そういった方のために、海外でのがん治療をサポートするサービスを提供している会社もあります。

例えば、「メディエゾン」という会社では、渡米前の手続きから渡米後の病院内の付き添いまでをトータルでサポートするサービスを提供しています。気になる方は、一度、問い合わせてみてはいかがでしょうか。

海外の医療の仕組み

海外でがん治療を受ける上で必ず考えておかなければならないのが、日本と海外では医療制度が全く異なるという点です。

各国の医療水準だけではなく、医療制度も考慮した上で、どこで治療するのが自分にとってベストなのかを考えましょう。

アメリカ

アメリカといえば、「医療費が高い」というイメージを持っている方は多いと思います。「アメリカで、盲腸で入院して数百万円請求された」という話は珍しくありません。

そのイメージ通り、アメリカでは日本の公的医療保険にあたるものがなく、民間の医療保険しか存在しません。

自己負担率は加入する保険によって異なり、保険に加入していないと、医療費は非常に高額になり、専門医の診療だけで1,000ドル(約14万円)、入院費が1日あたり1万ドル(約140万円)も請求されてしまうということもあります。

イギリス

イギリスの医療保険制度は、9割を公的医療保険が占め、残りの1割が民間医療保険です。イギリスで提供されている医療サービスには、国民保険サービス(NHS)とプライベート医療サービスの2種類があります。

NHSは無料で受診できますが、あらかじめ決められた医療機関でしか受診できません。また、がんなどの専門医の診療はNHSの一般医からの紹介が必要です。

さらに、新型コロナウイルスの感染拡大の前から、NHSは常に混雑していて、一般医の診療を受けるのに、数カ月待つということも珍しくありません。

一方、プライベート医療は、患者が自由に医療機関や専門医を選んで受診できますが、医療費は原則自己負担のため、非常に高額になります。

ドイツ

ドイツの医療水準も非常に高く、緊急医療体制も充実していることで知られています。

ドイツの医療保険制度は、皆保険制度で、公的医療保険が9割、民間医療保険が1割という割合です。外来患者の自己負担は原則無料ですが、入院費用はかなり高額になります。

日本

日本は、ご存じのように国民皆保険制度が行き渡っており、自己負担率は3割(75歳以上は1割、70歳から74歳までは2割)です。

自己負担率の上限もあり、上限を超えた場合には、その超過分を支給してもらえる高額医療費制度が用意されています。

【まとめ】がん医療に対して海外と日本の違いについて

現在の日本では、一昔前のように、欧米で使われている効果の高い薬が使えなかったり、欧米で認められている最先端の治療が受けられなかったりということはありません。

現状、日本で受けられるがん治療が世界の最先端の治療といっても差し支えないでしょう。しかも、日本では国民皆保険制度が広く行き渡っており、高額医療費制度も整備されているため、自己負担率も欧米と比べると抑えられます。

とはいえ、それでもアメリカやヨーロッパで治療を試してみたいと思う方もいるでしょう。そういった方は、自分で全て決めてしまう前に、まずは主治医にどのような治療を受けたいかを相談してみてください。

1.yomiDr.|日本のがん治療は海外より遅れているんですか?
2.外務省|アメリカ合衆国(ワシントンDC周辺)
3.外務省|アメリカ合衆国(ロサンゼルス周辺)
4.ONCOLOGY|各種がんについて知る
5.KEGG|医療用医薬品:エンハーツ
6.がんサポート|がん治療最前線の米国で治療を受けるための手順と留意点
7.メディエゾン|渡米するセカンドオピニオン
8.日本医師会|日本と諸外国の医療水準と医療費
9.厚生労働省|イギリスの医療制度
10.外務省|英国
11.外務省|ドイツ
12.厚生労働省|医療費の一部負担(自己負担)割合について
参照日:2022年11月

大塚 真紀

医師|総合内科専門医・腎臓内科専門医・透析専門医

東京大学大学院医学系研究科卒。医師、医学博士。博士号は、マウスを用いた急性腎障害に関する研究で取得。専門は、腎臓内科、透析。都内の大学病院勤務を経て、現在は夫の仕事の都合でアメリカ在住。医療関連の記事の執筆や監修、医療系動画監修、企業戦略のための医療系情報収集、医療系コンテンツ制作など幅広く行なう。保有資格:医学博士、総合内科専門医、腎臓内科専門医、透析専門医

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