【知っておきたい!】臨床試験と治験の違いをわかりやすく解説。臨床試験に臨むうえで重要なこととは?

【知っておきたい!】臨床試験と治験の違いをわかりやすく解説。臨床試験に臨むうえで重要なこととは?

最近になって、よく聞かれるようになった言葉があります。「臨床試験」や「治験」という言葉です。「ファイザーが海外で実施した臨床試験では――」「モデルナ、変異ウイルスに 特化したワクチンの治験開始」といったニュースを目にした方も多いのではないでしょうか。

それでは、臨床試験と治験、なにがどう違うかご存じでしょうか。

「なんとなく意味は知っているけれど……」という方が大半だと思います。そこで本記事では、臨床試験と治験の違いをわかりやすく解説します。

臨床試験に参加することのリスクとベネフィットについてもあせて紹介しますので、臨床試験や治験に参加してみたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

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目次

臨床試験と治験の違い

国語辞典で調べると、臨床試験は「新薬の効果を確かめたり、既存の薬剤の追跡調査をしたりするため、患者や健康な人に服用させて試すこと」などと説明されています。

一方、治験の説明は「製薬会社で開発中の医薬品や医療機器を患者や健康な人に使用してもらい、データを収集して有効性や安全性を確認する試験」となっています。

両者の違いは、これだけではわかりにくいのでもう少し詳しく説明していきます。

臨床試験とは

臨床試験とは、既存の医薬品より優れた効果が得られる医薬品や治療方法を開発する際、本当に優れた効果が得られるのか、その新薬を服用したことによって人体に悪影響はないか、重大な副作用は見られないかなどを調べる試験のことです。

試験は、健康な人や新薬の適用となる患者さんのなかから協力者を募って行われます。

治験は臨床試験の一部

治験と臨床試験は、実はまったく別物ではありません。治験は臨床試験の一部です。新薬として販売されるためには、厚生労働省の承認を得る必要があり、この厚生労働省の承認を得るための試験が治験になります。

臨床試験と比べると治験は、「倫理的や科学的に問題がないか」「治験参加者にわかりやすく説明をし、正しく理解をしてもらったうえで参加してもらっているか」など、より厳しい基準をクリアしなければなりません。

治験を受けるうえで知っておきたい重要なこと

特にがん治療などを行っている方のなかには、「既存の薬より優れている可能性がある薬をいち早く使うことができる」と治験を希望する方もいます。

確かに、欧米では認可されて優れた効果が出ているものの、まだ日本では未承認などと聞くと「自分も試したい」と思う方も多いでしょう。

ただ、高い効果が得られる可能性がある一方で、新しい薬は医師ですら把握できていない副作用が起きる可能性もあります。医師や治験コーディネーターとよく話し合って納得したうえで、治験に参加するかどうかを決めましょう。

がんの臨床試験の種類

数多くの治験が行われている領域のひとつが、がん治療。つまり、抗がん剤の治験です。国立がん研究センターのホームページでは、現在行われている抗がん剤の治験を検索できます。

ここでは、抗がん剤の治験にはどのような種類があるのか、それぞれの治験の目的や治験ではどのようなことが行われるのかについて見ていきましょう。

なお、治験は第Ⅰ相試験、第Ⅱ相試験、第Ⅲ相試験に分かれます。第Ⅰ相試験と第Ⅱ相試験の結果、もしくは第Ⅰ相試験から第Ⅲ相試験の3つの試験の結果をもとに、効果と安全性が厚生労働省によって審査されます。

第Ⅰ相試験

第Ⅰ相試験とは、治験の最初に行われる試験です。

少数の患者を対象に行われる試験で、次のステップである第Ⅱ相試験での容量や用法を決めることが目的です。主な評価項目は、その薬を服用したことによって有害事象が発生しないか、期待したような効果が得られそうかなどが調べられます。

第Ⅱ相試験

第Ⅰ相試験の後に行われるのが、第Ⅱ相試験です。

がんの種類や病状を特定したうえで、第Ⅰ相試験より多くの患者を対象に行われます。第Ⅰ相試験で有効性が確認された容量や用法で、薬の有効性や安全性を確認していく試験です。第Ⅲ相試験を行うかどうかを決めることや、有害事象がないかをより広く確認することを目的としています。主な評価項目は、短期的な有効性や副作用などの有害事象の有無です。

第Ⅲ相試験

第Ⅱ相試験で効果が得られることが確認された後に行われるのが第Ⅲ相試験です。

第Ⅱ相試験よりさらに多くの患者を対象として試験が行われます。既存の薬や治療(標準治療)、偽薬(プラセボ)などと比較し、がんの標準治療となり得るかどうかを確認することを目的としています。また、3年生存率や5年生存率といった長期的な有効性や有害事象の有無などが主な評価項目になります。

がんの臨床試験に参加するベネフィットとリスク

これまでになかった効果が期待される新薬と聞くと、「自分も試してみたい」と思う方も多いでしょう。臨床試験に参加するかどうかを決めるのは患者自身ですが、的確に判断をするためには臨床試験とはどのようなものなのかを正しく知る必要があります。

ここでは、抗がん剤の臨床試験に参加することのベネフィット(効果や利益)とリスク(危険性)を解説します。

臨床試験に参加するベネフィット

臨床試験に参加することの患者側の最大のベネフィットは、治療の選択肢が増える点でしょう。臨床試験に参加することで、まだ日本では未認可の新たな治療薬や、海外では承認されていて高い効果が報告されている治療薬をいち早く試すことができます。

また、費用負担の面でもベネフィットがあります。臨床試験で使われる治療薬の費用や検査にかかる費用の一部、あるいは全額を負担するのは製薬会社です。臨床試験の期間中の通院費の負担軽減のため、通院費用の一部が補助されることもあります。

さらに、将来同じ病気で苦しむ人に画期的な新薬を残すという社会貢献もできます。

臨床試験に参加するリスク

臨床試験には、多くのベネフィットがある一方で、リスクも少なくありません。

患者にとっての一番のリスクは、重篤な副作用が起きる可能性がゼロではないという点です。臨床試験は、安全性に十分配慮して行われますが、医師も把握できていなかった副作用が起きてしまう可能性もゼロではありません。

また、通院や検査の回数が増える可能性があることもリスクのひとつです。臨床試験に参加している間は、治療薬の有効性を詳細に診ていく必要があるため、どうしても通院や検査の回数は増えてしまいます。なかには、入院が必要な臨床試験もあります。

最後に

臨床試験と治験の違いはなにかということを中心に、がんの臨床試験の種類やがんの臨床試験に参加するベネフィットとリスクなど、臨床試験について解説しました。

臨床試験や治験に参加すると、効果が期待できる新薬をいち早く試せることや治療薬や検査の費用の負担が減ることのほか、将来同じ病気で苦しむ人に画期的な新薬を残すという社会貢献もできるといったベネフィットがあります。その一方で、医師ですら予測できなかった副作用が起きてしまう可能性もゼロではありません。診療や検査の回数が増えてしまうため、日常生活が不自由になってしまうこともあるでしょう。

医師や治験コーディネーターの説明をよく聞き、ベネフィットだけではなく必ずリスクも把握し、ご自身が納得したうえで臨床試験や治験に参加するかどうかを決めてください。

1.長崎大学病院臨床研究センター|臨床研究ってなに?
http://www.mh.nagasaki-u.ac.jp/research/rinsho/patients/whats_qa.html
2.静岡県立静岡がんセンター|臨床試験・治験とは
https://www.scchr.jp/clinicaltrial/information/about.html
3.金沢大学附属病院先端医療開発センター|あなたが臨床試験・治験への参加を勧められたら
https://icrek.w3.kanazawa-u.ac.jp/clinical/check/
4.がんプラス|がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
https://cancer.qlife.jp/clinical-trial/article3974.html#head01
5.国立研究開発法人国立がん研究センター|がんの臨床試験を探す
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/clinical_trial/search2.html
6.日本製薬工業協会|ベネフィット・リスク調査
https://www.jpma.or.jp/information/evaluation/results/allotment/lofurc0000007hlh-att/benefitrisk_3.pdf
7.福井県立病院|治験参加のメリット・デメリットは?
https://fph.pref.fukui.lg.jp/comedical/wp-content/uploads/sites/15/2016/05/03b24577e1a24c7901e397a74cfd9780.pdf
8.沖縄県立南部医療センター・こども医療センター|治験参加のメリット・デメリット
https://nanbuweb.hosp.pref.okinawa.jp/chiken/pat_general/merit/
9.QLife医療総合サイトQLife(キューライフ)|治験参加のメリット・デメリット
https://join.qlife.jp/chiken_03
参照日:2022年1月

大塚 真紀

総合内科専門医

東京大学大学院医学系研究科卒。医師、医学博士。博士号は、マウスを用いた急性腎障害に関する研究で取得。専門は、腎臓内科、透析。都内の大学病院勤務を経て、現在は夫の仕事の都合でアメリカ在住。医療関連の記事の執筆や監修、医療系動画監修、企業戦略のための医療系情報収集、医療系コンテンツ制作など幅広く行なう。保有資格:医学博士、総合内科専門医、腎臓内科専門医、透析専門医

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