【基礎知識】治験とは?治験の3つのステップや薬ができるまでの流れを解説

【基礎知識】治験とは?治験の3つのステップや薬ができるまでの流れを解説

がんをはじめとしたあらゆる病気を治療する際には、治療薬が使われます。治療において薬は重要で、画期的な新薬が開発されることによって、それまでは救えなかった多くの患者さんを救うことができるようになります。

新薬を開発する際に欠かせないのが、新薬の効き目や副作用の有無をテストする「治験」です。治験に参加したことのない方のなかには「治験ってなに?」「治験ではどのようなことをするの?」といった疑問を持っているのではないでしょうか。

そこで、本記事では治験とはなにかといった基本的なところから、新薬開発の流れや治験の役割、治験に要する期間について解説します。治験への参加をお考えの方はぜひ参考にしてください。

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目次

そもそも治験とは?

治験という言葉はニュースでも流れてきます。特にここ数年は、「新型コロナウイルスのワクチンや治療薬の治験が開始された」といったニュースで、治験という言葉がよく聞かれるようになりました。

しかし、「治験という言葉はよく聞くけれど、詳しくは知らない」という方も多いのではないでしょうか。ここでは、治験の役割について解説します。

治験は臨床試験のひとつ

治験とよく混同される言葉に、「臨床試験」があります。臨床試験と治験は、同じカテゴリーに分類されますが、厳密に言えば違うものです。

新薬の候補を、人に対して投与する試験全般のことを臨床試験と言います。薬を製造し、販売するためには厚生労働省の認可を得なければなりません。そしてこの厚生労働省の認可を得るために必要なデータを集める試験のことを治験と言います。つまり、治験は数ある臨床試験のひとつとも言えるわけです。

治験の役割とは

新しい治療薬を開発する場合は、その新薬候補が本当に病気に対して有効なのか、重篤な副作用が発現しないかどうか、さらにどのような人に対して使用すべきなのか、といったことをデータに基づいて評価をしなければなりません。

十分な効果が得られなければかえって治療の妨げになることも考えられるため、その薬は認可されることはありません。さらに、効果が得られても重篤な副作用が認められるのであれば、そのような薬は認可されません。

また、抗がん剤の領域では、短期的な有効性のデータはもちろん、3年生存率や5年生存率など長期的なデータも必要になります。新薬候補の有効性や安全性の評価を行うためのデータを集めるのが治験の主な役割です。

新薬開発の流れ

薬の開発を成功させることは非常に難しく、開発には9年から17年ほどかかるのが一般的です。「そんなに長いの?」と思った方も多いのではないでしょうか。そこで、新薬開発の流れと各工程でどれくらいの期間が必要なのかを見ていきましょう。

新薬の候補を選定する

まずは、化学合成や、植物、土壌中の菌、海洋生物などから発見された物質のなかから、新薬の候補になり得る物質を抽出し、その可能性を探っていく研究が行われます。「基礎研究」とも言われるこの工程は、2~3年ほどの期間が必要です。

動物で効果を確認する

「基礎研究」で新薬になる可能性がある物質を選定した後に行われるのは、動物や試験管で培養された細胞に対して効果を確認する試験です。有効性や安定性を確認するほか、動物の体内でどのように吸収されて、どのような影響を及ぼしていくのかなどを見ていきます。この過程を「非臨床試験」と言います。3年から5年ほどの期間が必要です。

人で効果を確認する

非臨床試験で有効性や安全性をクリアした薬は、ようやく人で効果を確認する段階に移ります。この工程が先ほどからお伝えしている治験です。健康な人や薬の対象となる疾患を持つ患者さんに対して、薬を投与しデータを収集します。薬としての有効性や安定性を繰り返し試験するので、3年から7年ほどの時間を要します。

厚生労働所に申請する

治験によって薬の有効性や安全性が確認できたら、厚生労働省に承認申請を行います。申請後、医薬品医療機器総合機構の審査、薬事・食品衛生審議会の審議を経て、厚生労働大臣が許可を出すと、新薬として製造、販売が可能になります。この工程には、1年から2年ほどかかるのが一般的です。

製造販売後調査

新薬として製造、販売が許可されたからといって、それで終了ではありません。「製造販売後調査」という、より長期的な調査が行われます。製造販売後調査では、長期的な有効性や安全性に関する調査、腎機能障害や肝機能障害などの特定疾患を有する患者への安全性や有効性の調査などが行われます。

第Ⅰ相試験~第Ⅲ相試験の役割と期間

治験とひと口に言っても、第Ⅰ相試験から第Ⅲ相試験までの3つのフェーズがあり、それぞれの試験ごとに特徴や役割が異なります。ここでは、第Ⅰ相試験、第Ⅱ相試験、第Ⅲ相試験では目的や内容がどのように違うのかを、それぞれの試験の期間とともに解説します。

第Ⅰ相試験

最も初期の治験が第Ⅰ相試験です。第Ⅰ相試験では通常、健康な人を対象に、治験薬の有効性や安全性、体内でどのように吸収されて排出されるのかといった体内動態などの試験が行われます。また、第Ⅱ相試験に進むかどうかの判断もこの工程で行われます。半年から1年ほどかけて行われるのが一般的です。

第Ⅱ相試験

第Ⅰ相試験で安全性や有効性が認められた新薬候補は、第Ⅱ相試験に移ります。第Ⅱ相試験では、安全性や有効性、用法・用量などを調べるために、第Ⅰ相試験より対象者を増やして試験が行われます。第Ⅲ相試験を行う前に、投与回数や投与期間、投与間隔などの投与の仕方、最も効果的な投与量などを明確にする目的もあります。第Ⅱ相試験の期間は、1年ほどです。

第Ⅲ相試験

第Ⅱ相試験で得られた新薬候補の有効性、安全性、使い方を最終的に確認していくフェーズが第Ⅲ相試験です。現在、標準的な治療薬がある場合にはその治療薬との比較、標準的な治療薬がない場合には偽薬(プラセボ)と比較して、有効性を比較していきます。200人以上の多数の患者に対して行われることが一般的です。また、長期間に渡る有効性や安全性を調べる必要があるため、第Ⅲ相試験の期間は2年から3年ほどと、第Ⅰ相試験、第Ⅱ相試験と比べると長期になります。

まとめ

治験とはなにかを解説し、治験の3つのフェーズや新薬開発の流れについてご紹介しました。新薬開発は非常に難しく、開発期間も9年から17年ほどと長期に渡ります。新薬を開発するのに必要不可欠なのが治験で、薬の安全性や有効性を慎重に調べます。治験に参加することの社会的貢献度はとても高く、「後世に画期的な新薬を残したい」と治験への参加を検討する方も多いかもしれません。治験に参加したい、あるいは治験に参加してもよいという方は、医師や治験コーディネーターの話をよく聞き、ベネフィットやリスクをよく理解したうえで参加するかどうかを決めましょう。

1.QLife医療総合サイトQLife(キューライフ)|3分でわかる治験のはなし
https://join.qlife.jp/chiken_01
2.国立成育医療研究センター|治験ってなあに?
https://www.ncchd.go.jp/scholar/clinical/chiken/patient/about.html
3.厚生労働省|「治験」とは
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/fukyu1.html
4.独立行政法人国立病院機構四国がんセンター臨床研究センター|治験とは
https://shikoku-cc.hosp.go.jp/rinsyo/trial/about/
5.製薬協|Q33.1つのくすりを開発するのに、どれくらいの年月がかかりますか。
https://www.jpma.or.jp/about_medicine/guide/med_qa/q33.html
6.株式会社アールピーエム|製造販売後調査(PMS)とは
https://www.rpmedical.co.jp/service/pms/
7.公益社団法人日本薬学会|薬学用語解説|第Ⅰ相試験
https://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?%E7%AC%AC%E4%B8%80%E7%9B%B8%E8%A9%A6%E9%A8%93
8.WAM NET|治験の段階
https://www.wam.go.jp/wamappl/bb13GS40.nsf/0/022f1cf5363d46574925721800217bce/$FILE/shiryou3_2.pdf
9.公益社団法人日本薬学会|薬学用語解説|第2相試験
https://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?%E7%AC%AC2%E7%9B%B8%E8%A9%A6%E9%A8%93
10.群馬大学医学部附属病院臨床試験部|治験の3つのステップ
https://ciru.dept.showa.gunma-u.ac.jp/general/cr-steps/
参照日:2022年1月

大塚 真紀

総合内科専門医

東京大学大学院医学系研究科卒。医師、医学博士。博士号は、マウスを用いた急性腎障害に関する研究で取得。専門は、腎臓内科、透析。都内の大学病院勤務を経て、現在は夫の仕事の都合でアメリカ在住。医療関連の記事の執筆や監修、医療系動画監修、企業戦略のための医療系情報収集、医療系コンテンツ制作など幅広く行なう。保有資格:医学博士、総合内科専門医、腎臓内科専門医、透析専門医

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