乳がんで抗がん剤治療はどうやって決まる?判断基準や迷ったときの相談先を解説
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乳がんで抗がん剤治療はどうやって決まる?判断基準や迷ったときの相談先を解説

乳がんと診断され、「抗がん剤をやるか、やらないか」で迷う方は少なくありません。抗がん剤はがんの再発を防いだり、手術前にしこりを小さくしたりするための重要な治療ですが、脱毛や倦怠感(だるさ)といった副作用や日常生活への影響を考慮すると、なかなか決断しにくいでしょう。

この記事では、抗がん剤治療を行う目的や治療方針が決まる仕組み、さらに「治療をやらない」という選択肢の有無についてわかりやすく解説します。

後悔のない、自分らしい選択をするために、事前に確認しておくべきポイントもまとめました。

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目次

乳がんで抗がん剤を行う目的とは?

乳がんの治療には、手術や放射線治療、薬物療法など、いくつかの方法があります。抗がん剤はその中の薬物療法の一つです。

手術や放射線治療ががんのある場所を狙う「局所」の治療に対し、抗がん剤は血液に乗って全身を巡るため、体内に散らばったがん細胞にも効果を発揮します。

この抗がん剤治療は、使うタイミングによって役割が異なり、大きく「手術後の再発を防ぐため」と「手術前にがんを小さくするため」の2つに分けられます。

手術後の再発リスクを下げるため

手術でしこりを取り除いても、目に見えないほど小さながん細胞が、血液やリンパの流れに乗って身体に残ることがあります。これが時間をかけて増殖すると、数年後に再発として現れてしまいます。

手術後に行う「術後補助療法」は、体内に残存している可能性のあるがん細胞を根絶し、将来の再発リスクを抑える治療です。特に再発の可能性が高いと判断された場合に検討されます。すぐ効果が見えるわけではありませんが、5年先、10年先の再発を防ぐ「予防の治療」と考えるとわかりやすいでしょう。

手術前にがんを小さくするため

抗がん剤は手術前に使うこともあり、これを「術前化学療法(ネオアジュバント療法)」と呼びます。

しこりが大きく、そのままでは手術で取りきるのが難しい場合に、先にがんを縮ませてから手術に臨みます。

がんが小さくなれば、乳房を大きく切り取らずに済んだり、乳房を残す「温存手術」を選びやすくなったりするのが利点です。
さらに、その薬が自分のがんに効いているかを、しこりの縮み具合から確かめられます。

乳がんの抗がん剤はどうやって決まる?

「抗がん剤をやるか、やらないか」は、患者さんの希望だけでも、医師の一存でも決まりません。乳がんの性質や大きさ、検査結果といった、いくつかの情報を組み合わせて方針が立てられます。判断のもとになる主な材料を見ていきましょう。

乳がんのタイプによって治療方針が変わる

乳がんは見た目が似ていても、その「性質」によっていくつかのタイプに分かれ、効きやすい治療も変わってきます。
代表的なのが「ホルモン受容体陽性」「HER2(ハーツー)陽性」「トリプルネガティブ」の3分類です。

乳がんのタイプ効きやすい治療特徴
ホルモン受容体陽性ホルモン療法女性ホルモンの働きを抑える治療が効きやすい
HER2陽性分子標的薬HER2というタンパク質を狙う薬と、抗がん剤をセットで使う
トリプルネガティブ抗がん剤ホルモン療法・分子標的薬の効果が期待しにくく、抗がん剤が治療の中心となりやすい

自分の乳がんがどのタイプかによって、抗がん剤が治療の選択肢に入るかどうかも変わってきます。

がんの大きさやリンパ節転移の有無

がんそのもの(しこり=腫瘍)の大きさや、乳房のすぐ近くにあるわきの下のリンパ節(腋窩リンパ節)へがんが転移していないかどうかも、大切な判断材料です。

リンパ節は、がん細胞が体内を移動するときの通り道の一つです。ここに転移があったり、しこりが大きかったりすると、それだけがんが進んでいて再発リスクも高いと考えられ、抗がん剤の検討される可能性が高くなります。反対に、ホルモン受容体陽性タイプなどでしこりが小さく転移もなければ、再発の心配が少ないと判断され、抗がん剤を使わずに済むこともあります。

オンコタイプDXなどの遺伝子検査

最近は、がん細胞の遺伝子を調べて治療の参考にする検査も行われます。その代表が「オンコタイプDX」です。

これは主に「ホルモン受容体陽性かつHER2陰性」の早期浸潤性乳がんの患者さんを対象に、複数の遺伝子の働きを調べ、結果を点数(スコア)で表す仕組みです。このスコアから、「抗がん剤がどのくらい再発予防に役立ちそうか(抗がん剤の上乗せ効果)」を予測できます。「スコアが低ければ使わない、高ければ取り入れる」といった判断の手がかりになり、効果が見込みにくい抗がん剤を避けられるのが大きなメリットです。

乳がんで抗がん剤をやらない選択はある?

「乳がんになったら、誰もが抗がん剤をすることになる」と思う方はいらっしゃるでしょう。しかし実際には、あえて抗がん剤を行わない選択をするケースもあります。

例えば、しこりが小さくリンパ節転移もなく、オンコタイプDXでも再発リスクが低いと診断された場合です。再発の可能性が元々低ければ、脱毛やだるさといった身体への負担や副作用が大きい抗がん剤を投与する意味は薄く、この治療を行わない方針もありえます。

乳がんの治療は抗がん剤だけではありません。手術や放射線治療、ホルモン療法などから、一人ひとりの状況に合わせて適切な方法が検討されます。

ただし、「やらない」という選択が自分に合うかは、検査結果やがんの状態次第で大きく変わります。「副作用が怖いから」という個人的な理由で治療を止めるのは危険です。必ず主治医とよく話し合い、納得したうえで治療方針を決定しましょう。

乳がんで抗がん剤をやるメリットと副作用

抗がん剤を考える際、得られる効果(メリット)と、身体の負担になる副作用の両方を知っておくことが不可欠です。ここではメリットと副作用について、それぞれを見ていきましょう。

抗がん剤で期待できる効果

抗がん剤の効果(メリット)は、再発のリスクを下げてくれることです。身体に潜むごく小さながん細胞にまで薬が行き渡り、手術で取りきれない部分を補って、ぶり返す可能性を減らします。

また、がん細胞を縮ませる力もあり、手術前に使えば手術がしやすくなって乳房を残せる可能性も高まります。特にトリプルネガティブのように抗がん剤が治療の要となるタイプでは、生存率を高めることがわかっています。

抗がん剤で起こりやすい副作用

一方で、抗がん剤には避けて通れない副作用もあります。一般的に知られているのは、次のようなものです。

  • 吐き気・食欲の低下
  • 脱毛
  • だるさ(倦怠感)
  • 免疫力の低下
  • 手足のしびれ

副作用の現れ方や重さは薬や体質で個人差があります。つらさを和らげる対策(支持療法)も進んでいるので、症状があれば主治医や看護師に必ず伝えましょう。

乳がんの抗がん剤治療で後悔しないために大切なこと

抗がん剤を受けるにしても、受けないにしても、一番大切なのは「自分が納得したうえで決める」ことです。ここでは、抗がん剤を決断する前にやっておきたい3つを紹介します。

抗がん剤をした場合としない場合の違いを確認する

まず確認したいのが、抗がん剤を受けた場合と受けなかった場合とで、再発リスクや治療の中身がどう変わるのかという点です。

「抗がん剤を受けると再発の可能性がどれくらい下がるのか」「やらないとどんな治療になるのか」を、検査結果の意味とあわせて主治医に確認しましょう。主治医から具体的な数字や見通しを示してもらえれば、納得のいく選択がしやすくなります。

自分が大切にしたいことを医師に伝える

治療の選択において、何を最優先にしたいかは人それぞれです。「再発だけは防ぎたい」という方もいれば、「副作用を避けて今の生活を保ちたい」という方もいるでしょう。患者さん自身がこうした価値観や希望を伝えることで、主治医は適切な治療プランを提案しやすくなります。

質問をメモして診察時に相談する

診察の場では緊張のあまり、聞こうと思っていたことを忘れてしまう患者さんもいます。例えば、「副作用はどのくらい続くのか?」「やらなかった場合、再発はどれくらいか?」など、質問したいことはメモしておきましょう。また、患者さん一人で主治医と話すのが心細ければ、ご家族に付き添ってもらうのも良いでしょう。診察後に内容を一緒に振り返ることで、聞き逃しも確認できます。

乳がんの抗がん剤治療をやるかやらないか、迷ったら専門家へ相談を

「抗がん剤をやるか、やらないか」の答えは、がんのタイプや進行具合、検査結果によって一人ひとり異なり、唯一の正解があるわけではありません。最後に頼りになるのは、患者さんご自身とがんの状態を最も知っている主治医です。

主治医の説明でも迷いがある場合は、別の医師や専門医に意見を求める「セカンドオピニオン」という方法もあります。これは、患者さんご自身が納得して治療に向き合うための、大切なステップです。

乳がんという病気と向き合うのは大きな不安を伴いますが、気になることがあれば主治医や医療スタッフへ早めに相談し、専門家の力を借りながら、最善の治療を選びましょう。

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医・日本内分泌内科専門医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

プロフィール詳細

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