花咲乳がんとは?症状・原因・治療法から余命まで詳しく解説

花咲乳がんとは?症状・原因・治療法から余命まで詳しく解説

乳がんは早期に発見し治療を始めることが重要な病気です。しかし、中には、がんが進行してから見つかるというケースもあります。

特に皮膚にまで進行した「花咲乳がん」というがんは、患者さんの身体に大きな負担をもたらすとされています。

本記事では、「花咲乳がん」の症状や原因、治療法、余命の目安まで詳しく解説します。

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目次

花咲乳がんとは?

花咲乳がんとは、正式には「がん性皮膚潰瘍」という名称です。

乳がんが皮膚にまで進行し、乳房の表面に現れた状態を指します。この病変は、見た目が花が咲いたように広がって見えることから、「花咲乳がん」と呼ばれています。

花咲乳がんの多くは、「ステージⅢB」または、すでに他の臓器に転移している場合は「ステージⅣ」に分類されています(※1)。このステージは、手術による切除が困難であるか、または再発の可能性が高くなる傾向です。また、皮膚にできた潰瘍により、出血や臭い、浸出液、痛みなどが伴うため、患者さんのQOL(生活の質)にも深刻な影響を及ぼす可能性があるとされています。

なぜ放置してしまう人が多いのか?

乳がんの早期発見が遅れる理由の一つとして、初期の段階では自覚症状がほとんど見られないことが挙げられます。また、2022年の厚生労働省の「国民基礎生活調査」によると、日本の乳がん検診の受診率は47.4%でした(40~69歳対象の数値)(※1)

この数値は、イギリスやアメリカなどの諸外国の受診率が60%~70%であるのと比較すると、日本が非常に低いことを示しています。

さらに、民間療法やインターネット上の真偽がわからない情報を鵜呑みにする方が、医療機関を受診せず自己判断で対処しようとするケースも見られます。こうした背景から適切な検査や治療のタイミングを逃してしまうことも少なくありません。

花咲乳がんの主な症状と初期段階の見た目

前述の通り、花咲乳がんの代表的な症状として、皮膚に変化が表れます。例えば、乳房の皮膚が赤みを帯びている、または、しこりのような盛り上がりが見られる場合もあります。また、潰瘍ができた部分からは出血や浸出液を伴うこともあります。

乳房にこのような所見がある場合、乳がんが進行している可能性が考えられます。異常だと感じたら、直ちに受診し、医師に相談しましょう。

花咲乳がんの原因・進行メカニズム

花咲乳がんを発症する要因の一つとして、家族に乳がんの患者がいるなどの遺伝的要因が含まれます。また、初産年齢の上昇や出産や授乳の未経験、閉経後の肥満や飲酒習慣なども、乳がんのリスクを高める要因と考えられています。

これらの要因が乳がんを引き起こし、治療の遅れや再発が重なることで、最終的に重度の進行状態に至ることもあります。

皮膚からがんが飛び出すとはどういうこと?

花咲乳がんについて「皮膚からがんが飛び出す」という表現に驚く方もいることでしょう。実際に、乳がんが進行すると、がん細胞が乳腺内に留まらず乳房の奥から周囲の組織、さらに皮膚に向かって浸潤し、最終的には皮膚が赤くなったり、しこりが盛り上がったりなどの病変が表面に現れます。

花咲乳がんの治療法

花咲乳がんは進行がんの一つであり、遠隔転移が見られない場合は「ステージⅢB」、遠隔転移がある場合は「ステージⅣ」と診断されます(※2)

一般的に、乳がんの治療は「標準治療」に基づいてある程度決まっており、ステージⅢB・Ⅳの状態では、薬物治療が主な治療法とされています。手術療法や放射線治療は、患者さんの症状や全身状態に応じて行われる場合とそうでない場合があるということです。ケースバイケースですが、まず薬物療法で腫瘍を小さくしてから手術を検討することも少なくありません。

ステージによって、手術目的が異なります。ステージⅢBの場合は治癒を、ステージⅣの場合はがんの進行や症状を抑えQOLを維持することを目的とすることが一般的です。

薬物療法(抗がん剤・ホルモン療法など)

基本的に、進行がんは薬物療法が中心です。抗がん剤やホルモン療法などによる治療は、腫瘍の縮小による症状の緩和や、延命を目的として行われます。

薬物療法で用いる薬剤は、がんの特性に応じて選びます。例えば、乳がんはエストロゲン受容体とHER2(ハーツ―)の発現の有無に基づいて、4つのサブタイプに分類され、それぞれのタイプに応じて異なる薬剤が用いられます。HER2はがん細胞の増殖に関わるタンパク質であり、HER2陽性乳がんでは、このHER2タンパクが過剰に発現しています。

放射線療法

進行がんの花咲乳がんでも、局所や遠隔に転移した場合、症状を緩和する目的として放射線治療を行うことがあります。

手術(切除)は難しい

乳がんの場合、手術の適応範囲はステージ0期からⅢ期とされています(※3)。花咲乳がんでは、遠隔転移が見られない「ステージⅢ」と診断された場合、手術が適応されることもあるでしょう。

しかし、遠隔転移があり「ステージⅣ」と診断された場合、根治を目指すことは難しいと判断される可能性が高いでしょう。

花咲乳がんの余命|ステージⅢ・Ⅳの位置づけ

前述の通り、花咲乳がんは、「ステージⅢB」または「ステージⅣ」の進行がんに分類されると考えられます。

国立研究開発法人国立がん研究センターの調査データによると、乳がんの10年生存率は、ステージⅢでは63.8%、ステージⅣでは17.0%です(※4)

さらに、「ステージⅠ」と「ステージⅡ」の生存率は、それぞれ93.7%、85.4%とされています。これらの数値からも、早期に発見し、治療に努めることの重要性が理解できるでしょう。

これらの数値は統計的なデータであり、個人差があるため、参考としてとどめておくとよいでしょう。また、治療法の進歩により年々生存率は改善している傾向です。

花咲乳がんの放置は危険!まずは医師へ相談を

花咲乳がんは、乳がんが進行した状態を指します。見た目に変化が現れるため、不安を感じる方も多いかもしれませんが、乳がんは早期に見つけて治療を始めれば、治る可能性があるといえるがんのひとつです。

日ごろから乳房のセルフチェックや、定期的な検診によって、早期発見・早期治療につなげられます。

「大丈夫かな?」と気になる症状がある場合は、一人で抱え込まず、まずは信頼できる医師に相談してみましょう。

(※1)厚生労働省|がん検診受診率の推移
(※2)国立がん研究センター|乳がん 治療
(※3)国立がん研究センター 東病院|乳がんの治療について
(※4)国立研究開発法人国立がん研究センター |院内がん登録生存率集計結果閲覧システム

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医・日本内分泌内科専門医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

プロフィール詳細

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