直腸がんになるとどんな症状が現れる?原因や治療方法も解説

直腸がんになるとどんな症状が現れる?原因や治療方法も解説

食生活の欧米化に伴い、日本での大腸がん罹患(りかん)者が年々増えています。中でも多いのが直腸がんで、大腸がんのうち約40%が直腸がんです(※1)。数にすると年間で約5万2,000人が直腸がんと診断されています(※2) 。珍しくない病気なだけに、直腸がんにかかるのが心配という方も多いでしょう。

そこでこの記事では、直腸がんの原因や症状、治療法について詳しく解説します。すでに直腸がんと診断された方や身近な方が直腸がんに罹患したという方はぜひ参考にしてください。

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目次

直腸がんの基本的な特徴

直腸がんとは、大腸のどのようなところにできるがんで、生存率はどのくらいなのでしょうか。まずは直腸がんがどのような病気なのかといったところを見ていきましょう。

直腸がんとはどういうがん?

出典:国立がん研究センターがん情報サービス|大腸がん(結腸がん・直腸がん)について

大腸は大きく、直腸と結腸に2つにわかれていますが、直腸は肛門(こうもん)から15センチから20センチほどの場所にある臓器です(※3) 。この部分にできるがんを直腸がんといいます。

気になる生存率について

直腸がんの5年相対生存率は進行度合いによって大きく異なります。

原発臓器にとどまっているがんを「限局がん」 といいますが、限局の直腸がんの5年相対生存率は95.7%です(※2)

がんが直腸周りの臓器に浸潤した状態が「領域がん」ですが、領域がんの5年相対生存率は74%(※2)

遠隔の臓器まで転移が進んだ状態になると、5年相対生存率は19.7%にまで下がります(※2)

直腸がんに限ったことではありませんが、がんから命を守るには早期発見・早期治療が何より重要ということがデータからも読み取れるでしょう。

直腸がんの原因

直腸がんを含む大腸がんの原因として考えられているのは、欧米式の食生活が日本でも定着したことが挙げられます。

従来の日本の一般的な食事は、食物繊維の多い穀物や野菜、果物、根菜でした。これらの食材には、ビタミンCやカロテノイド、葉酸、フラボノイドといったがん抑制作用があると考えられている栄養素が多く含まれています。

そのため、従来の日本では直腸がんを含む大腸がんの罹患率は低かったといわれています。

しかし、日本の食生活の欧米化に伴い、穀物の摂取量が減り、食肉や乳類の摂取量が増加するようになりました(※4)特に赤身肉や加工肉は発がんリスクがあることで知られています(※5) 。さらに、私たちが普段から食べる料理にも、動物性脂肪も多く使われるようになりました。動物性脂肪を摂取すると発がん促進作用のある二次胆汁酸の生成を高めるといわれています。

また、食生活以外の生活習慣でも直腸がんの原因になり得ると考えられています。運動不足や肥満、過度の飲酒などは直腸がんだけではなく、大半のがんの罹患率を高める要因 です。

前兆症状

直腸がんに前兆らしい前兆はありません。直腸がんは、進行するにつれて症状が顕著に現れるようになるという特徴があります。

早期の段階では自覚症状はほとんどないため、症状だけで早期発見することは極めて困難といえるでしょう。

直腸がん発見に至るよくあるきっかけ事例

直腸がんが見つかることが多いのは、検診などで行う便潜血検査 です。直腸は神経が通っていないため、痛みを感じることはありません。がんが進行しても痛みはありません 。

進行してがんが大きくなると、便秘や便が細くなる、下痢、腹痛などの症状が現れます。こういった症状がきっかけで検査を行った結果、直腸がんが見つかることも少なくありません。

直腸がんの症状について

直腸がんに罹患するとどのような症状が現れるのでしょうか。よく見られる症状を初期段階と進行段階にわけて見ていきましょう。

初期症状はほとんどない

直腸は自律神経によって支配されている臓器で痛みを伝える神経は存在しません。そのため、がんなど直腸に異常があったとしても痛みを感じることもなく、初期症状はほとんどありません。

早期発見には定期的に検診などで便に血が混じっていないかを調べる便潜血検査を行う必要があります。

進行段階の代表的な症状は血便や下血

初期段階では直腸がんの自覚症状はほぼありませんが、がんが進行するとさまざまな症状が現れます。進行した直腸がんの症状で最も多いのが便に血が混じることです。

このときに異常を感じて検査をした結果、直腸がんが発見されるケースもあります。

また、排便に伴う症状が出現することも直腸がんの特徴です。便秘、便柱が細くなる、排便がなくても頻繁に便意を感じる、腹痛などの症状も現れるでしょう。

ただし、がんがかなり進行しても症状が一切出現しないケースも少なくありません。

直腸がんは治せる?治療法について

直腸がんと診断された方が、最も気になるのはどのような治療が行われるか、そして、直腸がんは治るのかではないでしょうか。

直腸がんは、同じ大腸がんの一種である結腸がんと比べるとステージ4における5年生存率は7%ほど低い数値ではありますが、治癒が見込めない病気ではありません(※6)(※7)

がんという病気全体を指してもいえることですが、ステージが進めば進むほど治療が困難になり、命を落とすリスクが高まります。特に、初期段階では自覚症状がほぼない直腸がんを早期発見するには、検査が欠かせません。

自覚症状がなくても、検診などで定期的に便採血検査を行うようにしましょう。

現在の主な治療法

直腸がんの主な治療方法は、がんの進行度合いによって変わります。直腸がんを含む大腸がんはステージⅢ期までは手術療法で治癒が望めます。

直腸がんに対する手術の基本は、直腸前方切除術 です。がん部分を中心に十分な安全域をとって、腸管切除と領域リンパ節郭清を行い、切除した腸管の端を縫い合わせます。この場合、肛門は温存できます。

しかし、がん部分が肛門に近い下部直腸がんの場合、比較的早期のがんであっても、直腸を肛門とともにくりぬく手術が必要となることも少なくありません。この場合は、人工肛門となります。

がんの進行が進み、ステージⅣ期になると手術療法単独では治癒が望めないことが多く、化学療法や放射線治療を組み合わせる集学治療が行われるのが一般的です。

初期の自覚症状のほとんどない直腸がんは検査で早期発見しよう

日本では年間で約5万2,000人の方が直腸がんと診断され、そのうち男性は約1万人、女性は約6,000人が命を落としています(※2)直腸がんはほかのがんと比べて、予後の良いがんとはいえませんが、その大きな理由は発見したときに進行しているケースが多い点にあります。

初期段階の直腸がんでは、自覚症状はほとんどありません。見ただけでわかるような血便も下血も、初期の直腸がんではほぼ出現しません。

血便や下血、便秘、下痢などの症状は、がんが進行しなければ出現しないのが一般的で、中にはがんが相当進んだ状態でも自覚症状がほとんど見られないケースもあります。そんな直腸がんを早期発見するためには、定期的な便潜血検査が欠かせません。

気になる症状がある方はもちろん、現在、症状がない方であっても、検診などで定期的に検査をすることをおすすめします。

(※1)大阪ろうさい病院|大腸がん
(※2)国立がん研究センター|直腸
(※3)兵庫医科大学病院|直腸がん(外科治療)
(※4)厚生労働省|日本人の栄養と健康の変遷
(※5)IARC|IARC Monographs evaluate consumption of red meat and processed meat
(※6)国立研究開発法人国立がん研究センター|院内がん登録生存率集計結果閲覧システム
(※7)国立研究開発法人国立がん研究センター|院内がん登録生存率集計結果閲覧システム
参照日:2024年01月

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医・日本内分泌内科専門医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

プロフィール詳細

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