がんによる苦痛の種類と、体や心の痛みをやわらげる方法について

がんによる苦痛の種類と、体や心の痛みをやわらげる方法について

今回は「がんの苦痛」についてご説明します。
がん治療というと、いかにも苦しく辛いものと考えがちですが、現在はそれらの苦痛を緩和させる方法があります。
がんになったときにどのような苦痛が伴い、そしてどのように対処すればよいのか知っていただきたいと思います。

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目次

がんの苦痛はいろいろある

がん患者さんの苦痛にはさまざまなものがあります。

がんの部位や進行状況によって異なりますが、がんである限り患者さんには必ず何らかの負担がかかるものです。

皆さんがまず思い浮かぶのは手術や抗がん剤などによる体の負担かもしれません。副作用や合併症、あるいは体の一部を失うという大きな苦痛が伴います。

そして、体だけではなく精神的な負担もかかります。

がんと告知されれば冷静でいられる人はいないでしょう。頭が真っ白になり、医師の言葉も覚えていないという人はたくさんいます。それから時間が経つにつれ絶望感や死を意識することで「うつ病」になる人もいるほどです。
体の負担に加えて心の負担も非常に大きいものなのです。

国立がんセンターのホームページ「がん情報サービス」によると、がん患者が抱える苦痛を4つに分類することができます。

身体的苦痛

  • 痛み
  • 息苦しさ
  • だるさ
  • 吐き気
  • 動けないこと

精神的苦痛

  • 不安
  • いらだち
  • 孤独感
  • おそれ
  • うつ状態
  • 怒り

社会的苦痛

  • 経済的な問題
  • 仕事上の問題
  • 家庭内の問題
  • 人間関係
  • 遺産相続

スピリチュアルペイン

  • 生きる意味への問い
  • 死への恐怖
  • 自責の念
  • 死生観に対する悩み
  • 価値体系の変化
  • 苦しみの意味

※国立がんセンター「がん情報サービス」がんの療養と緩和ケア P2より204W.pdf (ganjoho.jp)

これらをまとめて「トータルペイン」と呼び、がんの苦痛は体と心の両方の側面から複雑に絡みあって起こることがわかります。

辛いのは当たり前?

このように、がんの苦痛といえば直接的、あるいは間接的に広い意味を持っています。

患者さん個人によって受け取り方や許容の程度は異なるものですが、知っておきたいのは、このような苦痛や痛みはある程度やわらげることができるということです。

多くのケースでがん治療には苦痛が伴うものですが、しかしそれは「苦痛は当たり前だから我慢すべきである」ということにはなりません。

がんに限らず、日常生活のなかで腹痛や体のだるさ、大きな心配事などを抱えることは私たちにとって非常に大きな負担となります。

そのような観点から、痛みというものは人間にとって大きな苦痛で、それらを改善することは、がんそのものを治療するのと同じくらい重要だと考えられるようになってきました。

それゆえ、現在これらの苦痛に対してはさまざまな手段を通じ、ある程度対処することが可能になっています。

治療によって苦痛を緩和できる?

ではどのように対策することができるでしょうか。

痛みや苦痛を緩和するためにいくつかの方法があります。
その患者さんの苦しい症状を和らげるためにどの方法がベストなのか複数の選択肢から適切なものを選ぶのが医師の役目です。

今回は治療として行うことが一般的だと考えられている放射線と手術を例に挙げます。

放射線

痛みの緩和というと薬物治療が思い浮かぶ人も多いでしょう。
しかし、放射線も痛みの緩和に効果的とされています。
放射線は通常、がんを「治す」ための治療ですが、痛みやその他の「症状をやわらげる」ためにもよく使われます。

例えば

  • 脳転移などによる吐き気や嘔吐など
  • 胸水や肺転移からくる呼吸困難
  • 食道がんなどで食べ物が飲み込みにくくなる嚥下障害
  • 骨転移などからくる疼痛

など、原因となるがんを小さくすることによって症状の緩和が期待できます。
治すための治療の場合よりも放射線量は少ないため、副作用はそれほど問題にはなりません。

手術

手術が苦痛の改善策というと疑問に思うかもしれませんが、場合によってはそうとも限りません。
人工肛門の手術やステントの留置、バイパス手術などは、がんによって塞がれやすい胃や大腸内部の通り道を確保することで吐き気や嘔吐、腹水などの症状を改善させ、食欲が戻ることがあります。
患者さんのQOLを大きく向上させることができるのです。

痛みの治療はいつから?

がんの治療において「痛みは我慢するべきだ」「がんで落ち込んでも、それは人に相談するようなことではない」などと考えている人はいないでしょうか。

その昔このような「根性論」ともいえる考えがまかり通っていました。

患者さんにとって、我慢することがある種の美徳とまではいかないまでも、痛みや苦痛は我慢しなければならないと考えている人は多かったように思います。
しかし、その意識は見直すべきものです。

痛みや苦痛は積極的に医師に伝え、取り除くよう対処した方が良いものです。
痛みは体の一部が傷ついたときに生じる不快な感覚ですから、今痛みを感じるのであれば今対処するべきものであり、早期がんだから、とか、がんと関係ない痛みかもしれないから、と思わないことです。
心の負担も人に頼ることなく、辛い気持ちを抱え続けるべきではありません。
積極的に医師に伝え、原因を探り対処するべきものなのです。

体の痛みを伝えるには

もし、あなたが体のどこかが痛いことを人に伝える場合、どのように伝えたら上手く伝わるでしょうか。
痛みは目に見えませんし、発熱や血液検査の異常などのように数値でわかるものではありません。
痛みの受け取り方も個人差があります。

このように抽象的なものを具体的に医師や看護師に伝える手段として「痛みを測るものさし」というものがあります。

日本緩和医療学会では、痛みの強さを0から10までの数字や「全く痛みなし」から「最悪の痛み」まで、患者さんが自分の痛みはどの程度であるのか示せるように「ものさし」を紹介しています。

※日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 第2章の2 痛みの包括的評価 痛みの強さ 図2」ガイドライン|日本緩和医療学会 – Japanese Society for Palliative Medicine (jspm.ne.jp)

自分の言葉で伝えるのが難しい場合は、このように痛みの程度がどの段階なのか伝えると良いでしょう。加えて・体のどこが・いつ痛みが生じるのか・どんな感じの痛みかということも伝えましょう。
「とても痛い」ではなく「ときどき起き上がれないほど痛む」など具体的に伝えることを念頭に置いてください。

緩和ケアと在宅医療

がんの痛みは早期から感じるものもありますが、やはりがんが進行し、末期になるに比例して、患者さんが感じる肉体的、精神的痛みや苦痛は大きくなります。
ここでは終末期に感じる肉体的苦痛の緩和、いわゆる終末期医療について考えてゆきたいと思います。

当然ながら、がん患者さんが望むのは終末期でも痛みを感じず過ごすことです。
先にもご説明した、緩和目的の放射線や手術、あるいは薬物で対処することで、かなり多くの末期がんの苦痛をやわらげることができるようになってきました。

では、そのケアをどこで受けることができるでしょうか。

  1. 一般病棟
  2. 緩和ケア病棟
  3. 自宅

一般的にこの3つの選択肢があります。

一般病棟

一般病棟においては末期に限らず早期から入院中、通院中の患者さんを対象に主治医の依頼によって、専門の医師や看護師からなる緩和ケアチームによってケアが行われます。

緩和ケア

緩和ケア病棟は、末期がんの患者さんのための施設で一度入ったら出てこれない、などといったイメージがあるかもしれませんが、現在はそうではありません。
必ずしも末期である必要はなく、苦痛の強い患者であれば緩和ケア病棟に入院することが可能で、症状が辛いときだけ一時的に入院することも可能です。
末期がんで緩和ケア病棟の入院を希望していても、病床数が少ないことからスムーズに移行できないこともありますので、早めにかかりつけの病院で情報を得ておくのが良いでしょう。

自宅

一方、在宅での緩和ケアは、患者さんが自宅で療養し、そこへ医師や看護師が訪れ、症状緩和のためのケアするものです。
在宅医療を行う医師や訪問看護ステーション、調剤薬局などが連携し一人の患者さんを支えますが、家族の協力なくしては在宅医療は成立しません。
医療機関に入院するよりも様々な準備や心構えが必要となるでしょう。

おわりに

がんが原因で起こる痛みや苦痛は、我慢するべきものから、できる限りの方法でやわらげるべきものへと概念が変わってきました。
がんを治すためには苦痛を感じるのも仕方ないと我慢するのではなく、がんを治すため、あるいはがんと共存するために苦痛を緩和する手段を探すことが大事だということです。私たちはそんな意識改革をしなくてはいけません。
積極的にご自身がより楽に過ごせる方法を探してみてください。

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がん治療専門コンサルタント|がんメディ編集部

がんメディカルサービス株式会社はがん治療の総合コンサルタントです。
がんの種類やケース、状況によって最適な治療法は異なります。
私たちの役割は、患者様にとって最適な治療法を一緒に見つけていくこと。がん治療専門のコンサルタントが、電話やメール、面談にて患者様の状況を伺い、最適な治療法をご提案いたします。

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